ランニングマシンは音が大きいと速く感じる?機械音と歩くリズムを分けて読む

ランニングマシンの音が気になるとき、音量だけで速度や運動の効果を判断していないだろうか。機械音を遮った歩行実験、動作を知らせる人工音、走行時の衝撃を返す音の研究を読み分け、表示速度・足運び・体感を混同せずに記録するための見方を考える。歩行とランニングの違いも押さえる。

隣のランニングマシンの音が大きい。自分の表示を見直し、「こちらは遅すぎるのか」と思う。ベルトを踏む音まで重なると、隣だけずっと速く走っているように聞こえる。ただ、耳に届いた迫力を、そのままベルトの速さへ換算するわけにはいかない。

機械音は歩き方に関わる手掛かりになりうる。自分の歩き方に応じて速度が変わるマシンで、機械音が聞こえる条件と遮る条件を比べた実験では、歩行速度や足運びの時間に違いがあった。[10] 一方、この結果を「音が大きいほど速く感じる」「大きな音の機械ほど有酸素運動の効果が高い」という規則にするのは飛躍である。音の条件で動作が変わることと、速さをどう感じるかは、区別して考えたい。

既存記事「ウォーキングマシンを降りると速く感じる?床とベルトで変わる歩く感覚を読む」は、降りた後の感覚に譲る。既存記事「HIITのランニングマシンは表示どおりの速さ?別の機械へ設定を移す前に読む」には速度の確認を、「ダイエットのランニングマシンは弾むほど楽?床が戻る時機と走るリズムを読む」には床の弾力を譲り、ここでは乗っている最中の聴覚を扱う。音を消すべきかという二択より、何の音を聞き、何を手掛かりにしているのかを見直すための読み物である。

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機械音を遮ると、歩く時間配分も変わった

中心になるのは、参加者31人が自分の歩行に追従して速度が変わるトレッドミルを歩いた比較実験である。トレッドミルとは、動くベルトの上を歩いたり走ったりする運動機器だ。この研究の装置は、一定速度を設定して維持する一般的な使い方とは異なり、歩き手に合わせて速度を調節する仕組みだった。[10]

参加者はヘッドホンなしの条件と、ノイズキャンセリング機能のあるヘッドホンでブラウンノイズを流し、モーター音を覆う条件を、それぞれ5分間経験した。ブラウンノイズは、この実験では機械音を聞こえにくくするための音として使われた。条件間で、脚を前へ運んでいる時間、歩の時間、歩行速度の平均値に有意な違いが生じた。[10]

比較したのは、静かな部屋と騒がしい部屋という単純な条件差ではない。ヘッドホンの装着と、別の音によるマスキングを組み合わせている。マスキングとは、ある音を別の音で覆うことだ。比較の単位は、その音環境を含む条件全体になる。したがって、実験の結果を音量のつまみだけの作用として読むのは適切でない。[10]

また、速度が変わる装置では、モーター音の変化が自分の動作に伴って生じる。研究者は、歩き手がその音を歩行の計画に取り込む可能性を指摘している。[10] 音は背景として聞こえると同時に、装置の動きを知る手掛かりにもなる、という読み方だ。「気のせい」で片付ける必要はないが、耳が速度計になると考える必要もない。

この実験が測ったのは、足運びの時間や歩行速度である。[10] 「速そうに聞こえた」という印象と、実際に歩いた結果とは別の欄に置きたい。速さの錯覚を説明したつもりで、歩き方の変化の研究を紹介すると、答えている問いが途中で入れ替わってしまう。ランニングマシンの効果的な使い方を考える出発点も、音の迫力と運動の記録を分けることである。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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音には、機械の気配と動作の情報がある

モーターが発する音、足がベルトに触れる音、センサーの値から作った音は、いずれも耳に入る。しかし、伝えている情報は同じではない。動作の情報を本人へ返す仕組みは、バイオフィードバックと呼ばれる。音を使う場合でも、何を測り、その結果をどの音へ変換するかで課題が変わる。[2][12]

健康な参加者20人を対象にした実行可能性の研究では、身に着けたセンサーを使い、歩行を低い区切りのある音や連続した音へ変換した。参加者はトレッドミル上で、音によるフィードバックなしの条件も含めて歩いた。区切りのある低音は、かかとの接地など、特定の歩行局面への意識を高めた。一方、連続音は体幹や股関節への意識にもつながったが、ときに気を散らす音と受け止められた。[12]

同じ「音を足す」でも、足の接地を知らせるのか、体の動きを連続的に聞かせるのかで、聞き手の注意の向け先が異なる。研究では全体的な体験を肯定的に評価した参加者が90%いたが、意欲に関する結果は一様ではなく、主観的な評価と生体力学的な測定値の間に有意な相関も認められなかった。[12] 音の好みと動作の測定値は、分けて評価する必要がある。

ここで健康な参加者の使い心地を調べた結果は、18〜39歳の女性だけを対象とした成績としては扱えない。[12] 音が心地よかった、歩き方が分かりやすかった、数値が改善した。この言葉をひとまとめに「効果があった」とすると、読者は何が起きたかを追えなくなる。実行可能性の研究は装置の使い心地を考える材料になり、動作の測定は別の問いに答える。[12] 音が苦手なら使い方を見直す理由になるが、好みだけで負荷の大小を決める理由にはならない。

足音そのもののタイミングを加工した研究もある。健康な若年成人12人が自分のペースで動くトレッドミルを歩き、片側の足音を実際より早く、あるいは遅く聞いた。加工によって、左右の脚を振り出す時間の比には変化が生じたが、左右の歩幅の比は変わらなかった。[16] 健康な若年成人の結果であり、18〜39歳の女性に同じ変化が起きるかは、性別や年齢層をそろえた検証が必要になる。 音を変えれば体のすべてが同じ方向へ変わる、という話ではない。

この結果は、音の「いつ鳴るか」と音の「大きさ」を混同しないためにも役立つ。足音をずらす操作は、機械をうるさくする操作とは違う。研究で時間的な左右差が変わったからといって、家庭で音量を上げることを歩幅の調整法にする根拠にはならない。[16] 研究の道具を紹介するときほど、音のどの性質を変えたのかを省かずに読む必要がある。

ランニングの研究で減ったのは、まず負荷の指標だ

歩行の実験から走る人の使い方へ進むときには、対象と測定値を切り替える必要がある。ランナーのリアルタイム・バイオフィードバックを扱った系統的レビューとメタ分析は、24研究を統合した。系統的レビューとは一定の手順で研究を集めて吟味する方法で、メタ分析は複数研究の結果を統計的にまとめる方法である。[2] 対象はランナーであり、18〜39歳の女性が日常の運動として歩く場面に、そのまま当てはめることはできない。

この分析の主な対象は、すねの骨の加速度の最大値や、接地時に力がどれほど急に増すかを表す負荷率だった。視覚と聴覚のフィードバックはいずれも、介入直後と継続した訓練後の負荷指標の低下に結び付き、訓練後の変化がより大きかった。また、この分析では視覚による方法の方が聴覚による方法より有効だった。[2]

別の系統的レビューは、健康なランナーと、膝蓋大腿痛や慢性労作性コンパートメント症候群のあるランナーを扱った。[4] この対象構成を踏まえると、18〜39歳の女性全体への適用は、健康状態と走る習慣を分けて考える必要がある。取り上げた10研究のうち方法論的な質が高いものは2研究、中程度が8研究であり、特定のフィードバック方法が最も優れるとは特定されなかった。[4] 後の分析で視覚が優位だったことだけを抜き出し、「音は役立たない」とするのも違う。研究の集まりと評価する指標によって、方法同士の比較の見え方は変わる。[2][4]

そもそも、ここで低下した負荷率は、運動のきつさや消費エネルギーと同じ意味ではない。これらのレビューが示す結果は、走り方や接地に関わる測定値の変化として扱いたい。[2][4] 「音で負担を下げる」という表現を使うなら、どこの、何の負担なのかまで添える。疲れにくさも、けがの予防も、ひとつの測定値に丸ごと預けない。

読者が研究から受け取る「音が効く」という印象にも、注意が要る。視覚と聴覚を比べたレビューは、意図して動作の情報を返す介入を扱っている。[2][4] スピーカーから何かが流れているだけの環境と、測定した値を本人へ知らせる環境を同じものにすると、手順の核心が抜け落ちる。大切なのは音の存在だけでなく、音が何を知らせ、本人が何を調整する課題なのかだ。

訓練を続けた後の変化が大きかったという結果も、その場で音を変えるだけの使い方とは分けておきたい。[2] 学習を目的に組まれた介入と、仕事帰りにいつもの運動をする場面では、目標の置き方が異なる。研究の結果を参考にするなら、まず「今日は運動を続ける日なのか、動作の修正を学ぶ日なのか」を自分の言葉にしてみる。修正の目標も測定もないまま、聞こえる音だけを追いかける必要はない。

歩行の機械音実験とランナーのレビューを並べる意味は、歩く人にも同じ訓練効果を約束することではない。前者は装置から自然に聞こえる音の条件を問い、後者は意図した動作の修正を助ける仕組みを問う。[10][2] この区別を保つと、気になるモーター音の相談と、走り方を学ぶ相談で、確認したいことも変わってくる。

数字で読む音とトレッドミル

31人:機械音が聞こえる条件と覆う条件を比較した歩行実験の参加者数である。[10]

各5分間:同じ歩行実験で、それぞれの音条件を経験した時間を示す。[10]

20人:動作を音へ変換する仕組みの使い心地などを調べた健康な参加者数である。[12]

24研究:ランナーのリアルタイム・バイオフィードバックを統合したレビューの採用数である。[2]

27%:すねへの衝撃が大きいランナーを対象に、音を返す条件で減った衝撃の割合である。[17]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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