女性のプロテインは苦いほど消化が速い?加水分解の度合いと味を分けて選ぶ

プロテインの苦味を、消化や吸収が速い証拠と思っていないだろうか。加水分解したたんぱく質の研究から、分解の度合い、ペプチドの性質、胃から出る速さを分けて読む。男性を対象とした短期試験と食品実験の違いも確かめ、女性が味を我慢して選ぶ前に確認したい表示と飲み方を考える。

シェーカーの泡が落ち着いても、舌に苦味だけが残る。「分解してあるから吸収が速いのだろう」と飲み込む前に、その推測を止めたい。苦味にはたんぱく質の分解で生じた成分が関わるが、苦さの順に消化の速さを並べることはできない。魚のたんぱく質を扱ったレビューでも、苦味には分解の度合いだけでなく、使う酵素やアミノ酸の並びが関わっている。[7]

実際、えんどう豆由来のたんぱく質を飲んだ男性の短期比較試験では、より苦い試料のほうが分解の度合いは低く、胃から出る動きも遅くなった。18〜39歳の女性にも同じ反応が出るかは、この男性の試験だけでは判断できないが、「苦いほど分解済みで、すぐ体に入る」という連想を見直す材料になる。[6]

既存記事「女性のプロテインは分解済みなら吸収が違う?加水分解と筋肉への反応を読む」は加工と筋肉の反応を、「甘くないプロテインはなぜ苦い?加水分解ペプチドの味と甘味で隠れる仕組みを読む」は甘味による味の変化を扱っている。それらの問いには踏み込まず、ここでは苦味を消化の指標にできるかを確かめる。

粉の扱いやすさは既存記事「女性のプロテインは溶けやすい粉ほど消化も速い?造粒加工と吸収を分けて読む」に譲る。ここで確かめるのは、水に散る様子ではなく、分解されたたんぱく質の苦味から体内の出来事をどこまで読み取れるかである。

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加水分解の度合いは、苦味の点数ではない

たんぱく質を酵素で分解して得た素材が、たんぱく質加水分解物である。その中にはアミノ酸がつながったペプチドが含まれる。魚の加水分解物を整理したレビューは、苦味に関わる要素として、分解の度合い、分子の大きさ、酵素の種類、アミノ酸配列などを挙げている。同じ「加水分解」という名前でも、出来上がる成分の組み合わせは一様ではない。[7]

分解の度合いは、研究では加水分解度として表される。これは試料の分解状態を表す指標であり、飲んだ人が感じる苦味そのものの尺度ではない。えんどう豆のヒト試験では、加水分解度35%の試料が苦味の弱い側、23%の試料が苦味の強い側だった。この組み合わせだけでも、数字が大きいほど必ず苦い、という読み方が成り立たないことが分かる。[6]

苦さを単に「細かくなった印」と考えると、分解後に何ができたかを見落とす。魚のレビューでは疎水性、つまり水となじみにくい性質も苦味に関わる要素である。加えて、ペプチドの中でアミノ酸がどう並ぶかも関わる。長さだけ同じでも、味に関係する特徴まで同じになるわけではない。[7]

袋に加水分解という言葉があったときは、製造方法の情報として読むのが出発点になる。そこから「苦いはず」「苦くなければ加工が不十分」と進む根拠にはならない。分解と苦味の関係を調べるには、原料や酵素を含めた条件をそろえる必要がある。レビューが複数の要因を挙げているのは、味を単独の目盛りにできないためでもある。[7]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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さらに分解して、苦味が弱くなった実験がある

食品の加工実験には、「分解を進めるほど苦味が増える」という見方と反対の例がある。カゼイン、大豆、藻類のたんぱく質から作った加水分解物を、乳酸菌由来のアミノペプチダーゼという酵素で処理した研究である。出発時の加水分解度は20〜22%で、その後の処理により原料ごとに異なる水準まで分解が進んだ。[5]

カゼインでは40〜42%、大豆では46〜48%となり、加水分解度が40%を超えたこれらの試料では苦味がごく小さかった。酵素でさらに処理した結果、分解度が高くても強い苦味を持たない素材が得られたのである。これは工場での素材設計に関する実験で、家庭で同じ酵素処理をする提案ではない。[5]

大豆の別の加工実験では、従来の処理と、途中で得た液を再び酵素処理する方法を比べている。変更した方法では、消化試験の前後で加水分解度が比較試料のそれぞれ1.5倍、1.6倍となり、電子舌で測った苦味は4分の1に低下した。研究は消化性の改善も報告している。少なくとも、この大豆試料では分解の進展と苦味の低下が両立している。[4]

電子舌とは、味の特徴を機器で評価する方法である。人が口にしたときの好みや、飲んだ後の快適さと同じ測定ではない。それでも、処理を変えると苦味と分解度が逆方向に動いた点は、苦味から分解度を逆算する考えへの具体的な反例になる。苦いものを選ばなければ消化性を得られない、という二者択一にはならない。[4][5]

ここで大切なのは、大豆だから必ず苦くない、カゼインなら同じ結果になる、と原料全体に広げないことだ。これらの実験が比較しているのは、決まった原料に決まった酵素処理を施した試料である。製法の違いで味が変わるという知見を、店頭にあるすべての粉の性質へ置き換えることはできない。[4][5][7]

男性の短期試験では、苦い試料で胃の動きが遅れた

体の中の反応に近づくため、ヒトで比べた試験を見る。対象は、体格指数が25〜30の範囲にある、やや過体重の男性19人であった。短期のランダム化比較試験で、ブドウ糖75gにえんどう豆たんぱく質加水分解物15gを加えた条件などを比較している。普段の食卓や運動後の水割りとは異なる、条件を設定した飲み方であり、18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできない。[6]

比べた試料は、苦味が弱く加水分解度が35%のものと、苦味が強く加水分解度が23%のものだった。苦味の弱い試料では、食欲に関わるグレリンと、ペプチドの働きに関係する酵素DPP-4の水準が低下した。一方、苦味の強い試料では胃排出、つまり胃の内容物が先へ出ていく動きの遅延が示された。反応の経路が同じではなかったのである。[6]

この結果を「苦いものは吸収されない」と読むのも飛躍になる。胃から出る速さと、消化による分解、吸収、体内での利用は、それぞれ別の問いだ。この試験からまず読めるのは、苦味の強い試料が、胃から速く出る試料ではなかったということだ。口の苦さを体内の全行程の速さへ翻訳することはできない。[6]

また、比較した試料は苦味だけでなく加水分解度も異なる。「苦味だけを強くすれば胃が遅くなる」という操作の証明にはならない。試料ごとに違う特徴と、そのとき観察された反応を組にして読む必要がある。味の印象だけを抜き出して、苦味を足す飲み方へ進める試験ではない。[6]

女性の読者にとっては、対象が男性であった点も外せない。運動の有無、飲料の構成、体格、評価する時間が変われば、同じ問いでも検証する条件が変わる。この短期試験は、女性が毎日どの味を飲むべきか、長期に体重がどう変わるかを決める処方にはならない。苦味と速さを短絡させないための比較として読むのが妥当である。[6]

比較の順序を紙に書くなら、まず「何を飲んだか」、次に「何を測ったか」を置くとよい。この試験での入口は、苦味と加水分解度の異なるえんどう豆の試料である。出口は、胃排出や食欲に関わる指標だった。入口にある苦味を、途中の消化過程すべてを代表する数字として扱うと、試験で測った結果との対応が失われてしまう。[6]

加工実験とヒト試験をつなぐときにも、この順序が役立つ。大豆の実験で電子舌の苦味が下がったことは、その素材の加工上の特徴を表す。男性の試験で胃排出が遅れたことは、人がその条件で飲んだ後の反応を表す。前者の消化性の改善と後者の胃排出の遅延は、同じ速さを逆向きに測った結果ではない。測定の対象を残しておけば、どちらかを消して説明を単純にする必要もない。[4][6]

たとえば飲んだ直後に「今日は苦かった」と記録しても、その日の胃排出時間を測ったことにはならない。反対に、飲みやすかったという感想も、分解不足の証拠にはならない。苦味が小さくても加水分解度が高い試料は実際に作られている。自宅で得た感想を大切にしながら、その感想に担当させる範囲を広げすぎない読み方ができる。[5][6]

数字で読む苦味と分解のずれ

19人:えんどう豆の加水分解物を比べた短期試験に参加した男性の人数を示す。[6]

15g:ブドウ糖75gと組み合わせた、試験での加水分解物の量である。[6]

35%と23%:前者は苦味が弱い試料、後者は苦味が強い試料の加水分解度である。[6]

4分の1:大豆の加工方法を変えた実験では、電子舌による苦味がここまで低下した。[4]

40〜42%:追加の酵素処理後のカゼインの加水分解度で、苦味はごく小さかった。[5]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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