ダイエットの筋トレアプリで、終えた種目を消すか、残りを数えるか。表示の優劣と進捗確認の役割を分け、運動の追跡研究やリハビリの試験から読める範囲を整理する。達成感、実施した運動、次の予定を混同せず、画面を閉じた後にも使える記録の残し方と、アプリを選ぶ際の確認点を考える。
スクワットを終え、息を整えながらアプリの完了を押す。終えた種目に線を引くと、画面はすっきりする。ところが、残りの種目だけになった画面を見て「まだある」と思う日もある。消えた行を喜ぶのか、残った行を数えるのか。記録の画面は小さいが、そこに何を期待するかは案外大きい。
終えた種目を消す表示と、残りを数える表示のどちらが筋トレを続けやすくするか、その勝敗はここで扱う研究からは決められない。一方、進み具合を確認し、予定との差に対応する過程は、運動したい気持ちと実際の行動をつなぐ候補である。運動参加者を追った研究は、その関係を示している。[4]
そこで、表示は好みで選びつつ、終えた内容と次にすることが分かるかを確認したい。過去の自分との比較を論じる隣の記事とは分け、ここでは運動中に見る「完了と残り」の画面を考える。既存記事「ダイエットの筋トレは下ろす時も同じ消費?効率を比べる前にそろえる条件」の運動効率の問いはそちらに譲る。画面を片づけることと、体が変わることは別の話である。

終えた種目を消しても、運動の履歴は残したい
消す、という操作には違う意味がある。今日の予定一覧から完了した行を隠すことと、実施した記録そのものを削除することだ。前者では残りの予定が見え、後者では振り返る材料が失われる。アプリを選ぶなら、完了を押した後に履歴を開き直せるか、という問いから始められる。
たとえば予定の画面では終えた種目を畳み、履歴の画面には種目名と実施内容を残す。これは研究で確立した最適な表示ではなく、予定と記録を混ぜないための使い方の案である。確認したいのは、線の引き方そのものより、翌日に昨日の実施内容を取り出せるかどうかだ。見えなくなった行と、なかったことになった行は同じではない。
進捗のモニタリングとは、目標に対してどこまで進んだかを確かめることだ。運動の追跡研究では、それに加えて、目標との差に対応する過程を含む「自己調整」が検討されている。自己調整は、ただ眺めることより広い概念である。表示を見たかどうかだけで、この研究の結果を説明することはできない。[4]
完了の印には、何を終えた印なのかも必要になる。種目名を読んだ、実際に行った、記録を入力した、では意味が違う。ここを曖昧にしたまま完了数だけを見ると、後で見返す自分にも解釈が難しい。入力済みの意味で付けた印を、運動済みと読まないために、アプリ内の表示の意味を先に確かめておきたい。
予定の変更も、記録から消さずに扱う案がある。実施したものは完了、見送ったものは予定変更として残す。未実施の行を空白にするだけでは、忘れたのか、時間が足りなかったのか、計画を変えたのかが分からない。これは達成率を良く見せる工夫ではない。後から予定を立て直すときに、当日の判断を読めるようにする工夫だ。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
意欲があることと、予定どおり動くことは違う
自己調整を調べた研究の運動部分では、強度の高い運動の参加者を対象に、間隔を空けた質問紙調査が行われた。すべての時点のデータがそろったのは499人で、測定は6週間間隔だった。対象は強度の高い運動の参加者であり、18〜39歳の女性の筋トレ習慣にそのまま当てはめるには、運動内容や生活条件の違いを考える必要がある。運動しようとする意図に加え、進捗の確認とずれへの対応が、実際の運動行動にどう関わるかを分析している。[4]
研究全体で、意図は行動のばらつきの25〜30%を説明した。さらに自己調整の過程を加えると、運動の研究では説明されるばらつきが6%追加された。これは運動量が6%増えたという意味ではない。人によって行動が違う理由を統計モデルでどこまで説明できたか、という数字だ。[4]
分析では、意図と行動の間を自己調整が少なくとも部分的に媒介する可能性が示された。ただし、運動部分はコホート研究、つまり同じ人たちを時間を追って調べた研究である。アプリの表示を無作為に割り当てた実験ではない。完了の印を付ければ行動が増える、と因果関係を言い切る材料にはならない。[4]
それでも、アプリの使い方を考える手掛かりはある。「続けたい」と入力する欄だけでなく、予定に対して何を終え、変更が必要ならどうするかを確認できるか、という視点だ。この研究を日常の記録に置き換えるなら、表示を見た後の判断までを考えることになる。記録の豪華さと、判断に使えることは分けて見たい。[4]
夕食前に運動するつもりだったが、帰宅が遅れた。予定一覧の残りを見て、そのまま翌日の予定へ移すのか、予定そのものを組み直すのか。この場面でほしいのは、残りの行が赤いか青いかという情報だけではない。実施できた内容と変更した内容を見分けられる表示である。これは、進捗と対応を合わせて考えるための具体例だ。
できそうな目標と、できた手応えを分ける
関節リウマチの患者を対象にした追跡研究では、最初に身体活動の目標を設定し、自己効力感や意欲などを質問紙で調べている。自己効力感とは、その行動を自分が実行できそうだという見通しである。最初の調査は271人、半年後まで両方の調査を終えたのは106人だった。関節リウマチの患者を追った結果なので、18〜39歳の女性一般にそのまま当てはめることはできない。[5]
最初の自己効力感は、その後の身体活動と活動目標の達成を予測した。また、目標の達成は、自己申告の痛みが少ないことや生活の質が高いことと関連していた。対象は治療を受ける患者であり、一般の筋トレ利用者に同じ変化が起きるという結果ではない。回答を続けた人数にも目を向ける必要がある。[5]
ここで参考になるのは、活動量そのものと目標の達成を分けて分析している点だ。研究では、自己効力感と痛み・生活の質との間に、目標達成を通じた間接的な関係が示されたが、身体活動を通じた同じ関係は示されなかった。目標に届くことと、運動量が増えることを、同じ指標として扱わない読み方が必要になる。[5]
筋トレの画面でも、「終えた」という手応えと「何をどれだけ行ったか」は別々に残せる。予定を控えめにすれば完了の印は付きやすくなるが、それだけで運動の内容まで良くなったとは読めない。逆に、予定を多く書けば未完了の行が残る。残りの多さだけを本人の意欲の弱さと解釈しないようにしたい。
この追跡研究の著者らは、現実的で達成可能な目標、行動計画、進捗へのフィードバックを実践上の方向として挙げている。ただし、これは「完了表示を増やせ」という提案ではない。アプリの目標が実行できる内容か、その目標に沿って予定を立てているか、という土台から考える手掛かりである。[5]
予定の完了率を見比べるなら、予定の中身を一緒に読む。途中で種目を差し替えた日と、予定をそのまま実施した日を同じ印で終えると、後日の自分は違いを見失う。数字を増やすために計画を細かく分割する必要もない。記録の単位は、次の計画を考えるときに意味が通るかで決めたい。
予定を眺める場面も区別しておく。運動を始める前には、これから行う内容を読みたい。途中なら次に行う種目を知りたい。終えた後なら実施履歴を確かめたい。同じ一覧にすべてを任せる必要はない。完了した行を畳める機能があるなら、途中は残りを見る画面、終了後は全体を読む画面、と使い分ける案もある。これは表示同士の効果の順位ではなく、読もうとしている情報の違いである。
画面に出る割合を見るときには、何を全体として数えているかにも目を向けたい。今日の予定をすべて終えた、今週の予定に届いた、入力欄がすべて埋まった、では完了の範囲が違う。分母の意味が分からないままでは、きれいに埋まった図も判断材料になりにくい。表示の説明を読み、自分が振り返りたい期間と内容が含まれているかを確認するところから始められる。
なお、追跡研究の自己調整は、アプリだけに限定された行為ではない。研究の関係を、スマートフォンを使う人だけの利点として読むことも避けたい。記録の道具を選ぶ問いと、進捗を確認して行動を調整する問いは別である。この記事でアプリを取り上げるのは、完了と残りが日常的に表示される場所だからだ。[4]
数字で読む進捗確認の研究
499人:強度の高い運動の追跡研究で、全時点のデータがそろった人数。表示方法の比較試験ではない。[4]
6%:意図に自己調整の過程を加えた際、運動行動のばらつきについて追加で説明された割合。[4]
106人:関節リウマチの目標設定研究で、最初と半年後の質問紙をともに完了した人数。[5]
15人:肩の拘縮に対するセンサー支援の予備的比較試験に参加した患者数。[16]
74人:ゲーム要素を含む学生向けアプリの試作品を評価した人数。長期の運動継続人数ではない。[18]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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