体幹のテニス練習は構えをそろえる?開いた足と横向きで違う回旋の使い方を読む

テニスで足を開いて打つ時と横向きで打つ時、体幹は同じように働くのか。大学選手の筋活動、上級者のラケット速度、女性選手の足裏の力を調べた研究から、回旋と力みを分けて読む。構えだけで優劣を決めず、前へ入る球と横へ追う球、膝や股関節の負担を区別して練習を比べる視点を示す。

フォアハンドの打ち分け練習で、足を開いて返した球だけ「もっと体幹を使って」と言われる。横向きに踏み込んだ球は何も言われない。同じフォアハンドなのに、構えが変わるたびにお腹の力も増やすべきなのだろうか。

答えの芯は、回り方の違いと筋活動の大きさを分けることにある。上級者の実験では、開いた構えは横向きの構えと異なる方向の力でラケットを加速した。一方、大学選手の筋電図では、開いた構えのほうが体幹の筋活動が大きいという考えは支持されなかった。見た目の回旋が増えることと、お腹に強く力を入れることは同じ話ではない。これらは競技者の実験であり、18〜39歳の女性の趣味のテニスへそのまま当てはめるには、技能や打球条件の違いを考える必要がある。[10][14]

既存記事「体幹の助言は回数と割合のどちらを数える?練習量をそろえて比べる学びの差」には助言の数え方を譲る。ここで扱うのは、構えと球への入り方をそろえた時に、胴体・腕・脚の分担をどう読み分けるかである。

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開く構えと横向きの構えを、名前だけで比べない

足が打球方向に対しておおむね直角に並ぶオープンスタンスと、打球方向に沿って並ぶ構えでは、身体の向きと移動の条件が異なる。膝を調べた研究は、前へ走って横向きに打つ攻撃的なニュートラル、前へ走って足を開く攻撃的なオープン、横へ走って足を開く守備的なオープンを区別した。つまり、同じ開いた構えにも前進と横移動が含まれる。[1]

この区別を練習にも持ち込むと、比較の問いがはっきりする。たとえば、余裕を持って前へ入れた球と、外へ追い出されて返した球を並べて「開いたほうが難しい」と決めない。足の並びを比べるはずが、いつの間にか走る方向まで入れ替わってしまう。研究でも、この移動条件を分けて関節の動きや負荷を測っている。[1][2]

また、研究名に出てくるスクエア、ニュートラル、クローズドという呼び方を、すべて同じ実験条件として扱うことも避けたい。腕の力を調べた実験はオープンとスクエアを比較し、膝の位置を調べた実験はクローズドのフォアハンドを扱っている。それぞれの結果は、その構えと課題の中で読む必要がある。[4][11]

ここでは「横向き」を、開いた構えと比較するための日常語として用いる。ただし、論文の結果を紹介する時には元の構えの名前を残す。コーチに動画を見せるなら、名前を先に当てるより、足の並び、前へ入ったのか横へ追ったのか、フォアハンドなのかを伝えるほうが、確かめたい条件を共有しやすい。足形だけを切り抜いた写真より、その前の移動が分かる映像を材料にしたい。[1][4]

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体幹が回ることと、筋活動が増えることは別である

体幹の筋活動を直接比べたのは、大学テニス選手14人の実験である。腹直筋、外腹斜筋、脊柱起立筋の左右に表面筋電図を用い、フォアハンドを前へ振る局面と、打った後に振り抜く局面を分析した。表面筋電図は、皮膚の上から筋肉の電気的な活動を捉える測定であり、この実験では最大の等尺性収縮に対する値にそろえて比較している。対象は大学の競技者なので、18〜39歳の女性全般へそのまま当てはめず、まず同じ筋肉と動作局面を比べた結果として読む。[14]

結果は、オープンとスクエアの間で筋活動に有意な差がなかった。開いた構えにはより大きな体幹の活動が必要だという考えを、この実験は支持しなかった。背中を支える脊柱起立筋の平均の活動は、腹直筋や外腹斜筋より大きかった。体幹と聞いて腹筋だけに注目すると、実際に測られた背中の働きを見落とす。[14]

ただし、有意な差がなかったことは、どちらの構えでも各選手の動きが完全に一致したという意味ではない。この研究が測ったのは、指定した筋肉と局面の平均の活動である。「どちらも同じ体幹トレーニングになる」「開けば腹筋が育つ」といった長期の成果まで、この実験の結論として広げることはできない。[14]

練習への読み替えも、強く固める合図を足すことから始めなくてよい。まず比べたいのは、どんな構えで、どの方向から球へ入り、どの局面で助言を受けたかである。筋電図の研究は、構えの名称だけで腹筋の仕事量を決めることに待ったをかける。お腹の力みが増えた感覚を、そのままフォーム改善の点数にしないための材料になる。[14]

立川駅から帰る電車で動画を見直す時も、胸が大きく回った場面だけを成功例にしない。回旋の映像は動きを、筋電図は筋活動を、ラケットの測定は打つ道具の速度を捉えている。別の物差しを同じ目盛りとして読むと、「よく回ったからよく鍛えられた」という飛躍が生まれる。筋活動を扱った研究と、次に見る加速の研究は、分けてからつなげるのがよい。[10][14]

ラケットが同じ速さでも、加速への道筋は違う

上級テニス選手13人が最大努力でフォアハンドを打った実験では、オープンとスクエアでラケットヘッドの速度は同程度だった。研究者は身体の動きから関節の力を計算し、ラケットを持つ腕へどの方向から仕事が加わったかを調べた。ここでの仕事とは、力が動きに沿って働き、腕のエネルギーを変える力学的な量である。上級選手の最大努力を測った結果を18〜39歳の女性へそのまま当てはめるには、競技経験と打つ強さの違いを考慮する必要がある。[10]

打球方向へ向かう肩関節の力の仕事は、オープンで0.30±0.11 J/kg、スクエアで0.38±0.16 J/kgだった。開いた構えでは打球方向への体重移動が乏しく、同方向へ肩が移動する速度も低かった。その代わり、胴体が打球方向へより回旋し、上向きの加速度も大きかった。[10]

横方向の肩の力による仕事は、オープンで0.07±0.09 J/kg、スクエアで0.05±0.09 J/kg、上方向ではそれぞれ0.08±0.09 J/kgと0.04±0.07 J/kgである。オープンでは横と上の方向の仕事が、打球方向の仕事の少なさを補っていた。前へ進む見た目が小さくても、ラケットの加速への寄与が消えたわけではない。[10]

ここで大事なのは、これらが肩関節の力による方向別の仕事であって、腹筋の強さの数値ではない点だ。体幹の回旋が腕の動きに関係していても、この数値を使って「腹筋をこの割合で強くする」とは決められない。開いた構えで足りない前進を、もっとお腹を固めることで埋めるという指示も、この結果から直接は導けない。[10]

一方、別の実験では速度に違いがあった。右利きの指導プロ7人と中級者8人を撮影した研究では、インパクト時のラケット速度は、プロでオープン21.2 m/s、スクエア22.3 m/s、中級者でそれぞれ15.8 m/sと16.4 m/sだった。同程度だった実験と、スクエアの値が高かった実験を併せて読むと、構えによる速度差は実験の条件によって異なる。対象は指導プロと中級者であり、18〜39歳の女性の練習にそのまま当てはめるには、技能と打球条件をそろえる必要がある。[4][10]

この違いを「どちらの論文が正しいか」という対決にする必要はない。前者は上級者の最大努力時の仕事の方向を調べ、後者は技能の異なる選手の腕の力学を調べた実験である。自分の動画を見る時も、構えだけを変えたつもりで球への入り方や打ち方まで変えていないかを確かめたい。速さという結果が似ていても、そこまでの身体の分担には違いがある。[4][10]

この仕事の違いを知ると、「前へ乗れていない」という助言の聞き方も変わる。スクエアで前進を確かめたいのか、オープンのままで打つ課題なのかを先に共有できる。前へ進む量だけを見て開いた構えを採点すると、横や上への仕事が加速を補ったという研究の観測が抜け落ちる。逆に、回旋を生かせるからといって、どんな球でも開いた構えに直す根拠にもならない。[10]

また、速度に差があった研究では、プロと中級者の両方を調べている。自分が中級者ならプロの数値だけを目標として読むのではなく、中級者でも測定されていたことに注目したい。身体の使い方を学ぶ段階が違う選手を同じ物差しで並べず、指導者と比べる際にも、構えと技能の両方を確認する。速く見えるフォームを借りる前に、その映像がどんな条件の打球なのかを聞く余地がある。[4]

数字で読むテニスの構え

14人:体幹の筋電図を比較した大学選手。構えによる筋活動の有意差はなかった。[14]

13人:最大努力のフォアハンドで方向別の仕事を調べた上級者。ラケットヘッド速度は同程度だった。[10]

0.30対0.38 J/kg:打球方向の肩の力による仕事の平均。オープンとスクエアの順である。[10]

15人:足裏の力を調べた健康な女性テニス選手。平均年齢は22.7歳だった。[7]

16人:クローズドの構えで膝の位置と動きを分析した大学水準の女性選手である。[11]

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宮川涼 Founder

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