ホエイプロテインとEAAを飲み比べたとき、苦い方が成分も多いとは限らない。アミノ酸の種類、感じ方の個人差、苦味を抑える配合の研究から、味と含有量を分ける理由を読む。初めて選ぶ日の表示の確認、飲みやすさの記録、研究の数字を市販の飲料に当てはめる際の注意点も整理する。
シェーカーを洗う前に、口に残った苦味が気になる。ホエイプロテインは飲めたのに、EAAは苦く感じた。そこで「こちらの方が濃いのか」「苦い方が体によいのか」と考えたくなる。しかし舌は、袋の裏に印刷された成分表の代わりにはならない。遊離アミノ酸を調べた感覚評価研究では、種類による苦味の違いと、感じ方の個人差が認められている。[2]
EAAは必須アミノ酸を指す呼び名である。研究では、普段たんぱく質やペプチドの形で食べるアミノ酸と、ばらばらの遊離アミノ酸として口にする場合を区別している。後者の中には苦味が強いものがあり、とくに必須アミノ酸が強い苦味を示す群に含まれた。したがって、ホエイと遊離アミノ酸の飲料を比べるとき、味の差をそのまま栄養の量の差に置き換えるのは早い。[2]
既存記事「ダイエットのプロテインとEAAは同じ濃さ?分解の形と胃の反応を読み分ける」には胃の側の問いを譲り、ここでは口に入れたときの苦味に絞る。初日の選び方で分けたいのは、何がどれだけ入っているかという表示と、自分がどう感じたかという記録である。苦味を抑える加工でも感じ方は変わるため、飲みやすさだけで成分の有無を判定できない。[3][7]
既存の「ホエイプロテインの酵素は量だけで選べる?加熱で変わる働きと成分を読み解く」は酵素の働き、「ホエイプロテインとミルクプロテインの違い、冷やした濁りで成分量は読めるか」は外観を扱う。それぞれの問いは両記事に譲り、ここでは味の感覚を成分量へ換算できるかを考える。

ホエイとEAAは、苦味の物差しを共通にできない
ホエイプロテインとEAAの違いを味から考える前に、材料の形に目を向けたい。アミノ酸の苦味を扱った研究は、たんぱく質やペプチドとして食べる場合には味が乏しい一方、遊離アミノ酸のいくつかは不快な苦味を生じる、と出発点を置いている。ここでの違いは、粉末の見た目や袋の大きさではなく、口に届く成分の形である。[2]
ただし「たんぱく質なら苦くない」と線を引くのも正しくない。えんどう豆とジャガイモのたんぱく質を対象にした食品加工の評価研究では、苦味を抑えるためにペクチンという素材を組み合わせている。比較にはホエイたんぱく質の加水分解物も用いられた。加水分解物とは、たんぱく質を分解したものである。材料の名前だけで、加工後の味まで同じと考えることはできない。[10]
この違いは、売り場で隣り合う袋を比較する場面に関わる。片方はホエイ、片方はEAAと大きく書かれていても、その文字だけを見て「苦い方ほどアミノ酸が多い」と順位を付けないことだ。遊離アミノ酸そのものの種類で苦味が異なるうえ、食品の中で苦味を弱める仕組みも研究されている。[2][7]
たとえば、飲みやすいものを選んだあとで「効きそうな苦さがなかった」と不安になる必要はない。逆に、苦くて飲みづらい経験を、よい製品を選べた証拠にしなくてよい。味は選択の条件にはなるが、栄養の含有量を測定した結果ではない。苦味と量を切り離す考え方は、感覚評価と食品加工の両方の研究から導かれる。[2][3]
ここで成分表示に求める役割と、飲んだ感想に求める役割を分けよう。表示では材料名と記載された量を確認し、感想では飲み切れそうか、後味が気になるかを言葉にする。同じ欄に「苦い、だから高濃度」と書かない。この書き分けは、遊離アミノ酸の苦味に種類差と個人差があるという結果を、日常の比較に移したものである。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
同じアミノ酸でも、人の舌は同じ点数を付けない
アミノ酸の苦味を特徴づけた研究では、濃度と感じる強さの関係に加えて、人による違いを調べている。最も苦味の強い刺激には必須アミノ酸が含まれ、そのうち6種類が特に強い苦味を示した。重要なのは「必須」という栄養上の位置づけと、「苦い」という感覚上の特徴が、この実験で重なったことである。必須の程度を舌で採点できるという意味ではない。これは遊離アミノ酸を刺激として用いた感覚評価であり、18〜39歳の女性が市販の混合飲料で同じ強さの苦味を感じるかは、この結果だけでは判断できない。[2]
研究者は、各人の苦味の感じ方の相関やまとまりから、アミノ酸をおよそ4群に分けている。同じ群では、苦味を受け取る受容体が同じか重なっている可能性を示した。受容体とは、刺激を受け取る側の仕組みである。ただし、群分けから受容体の重なりを示唆したのであり、すべてのアミノ酸の働きを確定したという読み方は避けたい。[2]
この結果を家族や友人との会話に置き換えると分かりやすい。相手が「これは全然苦くない」と言っても、自分が苦く感じたことを撤回する必要はない。評価の食い違いは、袋の中身の食い違いを直ちに意味しない。人による苦味の感じ方そのものが研究対象になっているからだ。口コミを読む際も、他人の点数と自分の感覚を同じ尺度と決めない方がよい。[2]
同時に、この研究を使って「自分はこのアミノ酸の受容体が敏感だ」と個別に判定することもできない。飲料の感想と、実験で調べたアミノ酸ごとの反応は別の情報である。混ざった飲料を飲んだだけで、どの成分がどれほど苦味に寄与したかを割り振るのは難しい。研究が示す種類差と個人差は、断定を増やす材料より、比較の条件を整える理由として使いたい。[2]
そこで記録には「家族は平気、自分は後味が気になる」と書けば足りる。自分の感覚を残すために、他人の感想を間違いと扱う必要はない。運動の帰りに飲めるかを考えている人に必要なのは、味覚の勝敗ではなく、選んだ候補を自分の生活で扱えるかという判断である。感覚の個人差がある以上、他人が飲めたことだけを自分の基準にはできない。[2]
苦味を抑える工夫は、成分を減らすことと同じではない
苦味を弱める方法のうち、アミノ酸の研究ではナトリウム塩の作用を調べている。特に苦い6種類のうち5種類では、苦味が大きく抑えられた。対象によって抑制のされ方が同じではない点が大切だ。苦味が弱まったことをもって、アミノ酸が少なくなったと読む結果ではなく、味の感じ方を抑える方法を検討した実験である。[2]
この数字は、家庭で塩を足す手順ではない。研究の比較を読むための数字であり、飲み物の説明にない材料を追加する根拠に使わない。初めての飲料で味が気になったら、まず記載された作り方と原材料を確認する方が、試した条件を説明しやすい。ナトリウム塩で苦味が変わる事実は、味から含有量を逆算する難しさを示すために使える。[2]
別の食品加工研究では、ルテオリンという苦味のある物質を、ホエイたんぱく質で表面を覆ったリポソームに入れている。リポソームは脂質の膜を利用した小さな入れ物である。電子的な味の測定と人の感覚評価を用い、5%のホエイたんぱく質で覆った条件で苦味が75%低下したと報告している。対象はルテオリンを包んだ加工物であり、18〜39歳の女性のEAA飲料でも同じ低下率になるかは別に確かめる必要がある。[3]
ただし、この75%はルテオリンを対象にした特定の加工条件の結果だ。EAAの粉末を普段のシェーカーでホエイに混ぜれば同じ割合だけ苦味が減る、という話にはならない。研究では膜の物理的な性質や安定性も調べており、単に同じ器へ材料を入れた比較ではない。成分名が似ていても、完成した構造も確かめて比較する必要がある。[3]
同じ視点は、インゲン豆のたんぱく質加水分解物をヨーグルトへ加えた加工研究でも見える。ホエイたんぱく質とアラビアガムを使ったゲルで包むと、包まないものを加えた対照に比べ、苦味は44%、渋味は52%低下した。対象は加工したヨーグルトであり、18〜39歳の女性が飲むホエイやEAAに、この低下率をそのまま当てはめることはできない。苦さと渋さは別々に測られており、飲みづらさをただ「濃い味」の一言に押し込めない見方にもつながる。[7]
包む加工の研究では、苦味の低下と一緒に、食品としての性質も確認している。インゲン豆の加水分解物を入れたヨーグルトは、対照と酸性度や粘弾性などが似た特徴を保っていた。粘弾性は、流れる性質と弾む性質の組み合わせである。苦味だけを測って終えるのではなく、入れ先の食品として扱えるかも調べた点に、この研究の狙いがある。[7]
この結果で対象になったのは、ゲルで包んだ加水分解物を加えたヨーグルトだ。ホエイそのものの飲みやすさを比較した試験とは区別したい。ホエイという語が出ていても、包む材料として使う場合と、飲む主成分として選ぶ場合では役割が違う。論文の材料名を拾うだけでなく、その材料が何をしているかまで読むと、製品への早合点を防げる。[7]
数字で読むアミノ酸と苦味
6種類:遊離アミノ酸の研究で、特に強い苦味を示した必須アミノ酸の数である。[2]
およそ4群:個人差の相関などから分けられたアミノ酸のまとまりであり、製品の等級ではない。[2]
6種類中5種類:特に苦いアミノ酸のうち、ナトリウム塩で苦味が大きく抑えられた対象である。[2]
75%低下:ルテオリンを5%のホエイたんぱく質で覆ったリポソームの、特定条件での苦味の変化である。[3]
44%低下:包んだインゲン豆の加水分解物をヨーグルトに加えた場合の、包まない対照に対する苦味の変化である。[7]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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