ダイエット中のプロテインに、成長ホルモンを増やす目的でアルギニンのサプリも足すべきか。運動前の単独摂取、別のアミノ酸との併用、手術患者の試験を比較する。血液中の値が変わることと筋力が伸びることを分け、研究の対象や期間から、追加する理由をどう判断するかを考える。
運動用のシェーカーの隣に、アルギニンのサプリをもう一つ並べる必要はあるだろうか。「成長ホルモンが増えるなら、運動の成果も増えるのでは」。その連想は自然だが、運動前のアミノ酸補給によるホルモンの刺激が、筋量や筋力の上積みになるという説明は、レビューでは支持されていない。[8]
アルギニンを飲めば運動中の成長ホルモンが必ず増える、という前提も崩れる。筋力トレーニング経験のある男性の無作為化試験では、血液中のアルギニンは増えた一方、成長ホルモンの時間全体を通した反応は抑えられた。別のアミノ酸と併用した試験では増加も報告されている。男性や筋トレ経験者の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、対象と運動条件の違いを確かめる必要がある。[2][3]
したがって「ダイエット中だからプロテインにアルギニンも追加する」という判断を、ホルモンの宣伝だけで決める理由は乏しい。[8] ここではプロテイン全般の必要量ではなく、追加成分としてのアルギニンに何を期待できるかを読む。既存記事「筋トレと有酸素運動の成長ホルモン、分泌の増加率で局所の筋肥大を予測できるか」に運動の組み合わせの論点を譲り、口から摂るサプリの比較に焦点を当てる。

足す前に、何の成果を買おうとしているか
成長ホルモンは、研究では略してGHと表記されるホルモンである。アミノ酸を使ってこのホルモンの放出を促し、筋量や筋力を増やそうとする考え方を検討したレビューがある。競技者による使用を検討したレビューであり、18〜39歳の女性の日常的な運動への適用は別に検証する必要がある。アルギニン、リシン、オルニチンなどによる反応は、個人差が大きく、運動経験、性別、年齢、食事によっても変わりうると整理されている。[8]
この説明で区別したいのは、「血液検査の値を変えること」と「運動で使える力を伸ばすこと」だ。レビューは、筋トレ前に成長ホルモンを刺激するアミノ酸を口から摂り、筋トレだけの場合より筋量や筋力が増すことを、適切に行われた研究が示していないとした。ホルモンの増加を狙う競技者の使用も推奨していない。[8] サプリを足すかという問いに必要なのは、成分が体に入るかだけでなく、期待した成果まで比較できているかである。
たとえば仕事帰りに運動を始めた人なら、同じ動作を安定して行えるようになりたいのか、筋力そのものを伸ばしたいのか、食事を整えたいのかで、買う前の質問が変わる。これは研究が定めた目標ではなく、自分の目的を言葉にする作業だ。「なんとなく運動によさそう」から少し離れると、商品の説明にあるホルモンの名前を、自分の目的そのものと取り違えずに済む。
また、プロテインを使う判断と、特定のアミノ酸を追加する判断は別々に置きたい。ここで扱う筋トレ経験者の試験は、アルギニンと比較用の摂取物を入れ替えたものであり、普段のプロテインの有無を比べた試験ではない。[2] アルギニンの結果を読んで「プロテインは全員に必要」「プロテインは意味がない」のどちらかへ飛ぶと、研究が答えた問いから外れる。
レビューが公表された時点も大切である。アミノ酸補給のレビューは2002年のもので、その後の2010年には併用によるホルモン増加、2014年には単独摂取による反応の抑制が報告された。[8][3][2] 古いレビューだけで後の研究を消すことも、後の小さな試験だけでレビューの問いに決着をつけることも避けたい。後発の研究が測ったものが、筋力なのかホルモンなのかを確かめる必要がある。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
血中アルギニンが増えても、ホルモンは上乗せされなかった
2014年の試験には、筋トレ経験のある男性14人が参加した。平均年齢は25歳、トレーニング歴は平均6.3年である。参加者がアルギニンとプラセボ、つまり比較用の摂取物の両条件を経験する、無作為化二重盲検クロスオーバー試験だった。誰がどちらを摂っているかを分からなくして比較する設計で、条件の間はおよそ7日空けている。対象は経験のある男性であり、18〜39歳の女性に同じ反応が起きるかは、この比較だけでは判断できない。[2]
朝の空腹時に、体重当たり0.075 g/kgのアルギニン、またはプラセボを摂ってから筋トレを実施した。運動は8種目を各3セット、最大で1回持ち上げられる重さのおよそ75%を用いて10回ずつ行う内容である。[2] このように、ふだんの夕食後の軽い運動やヨガと同じ場面ではない。対象と運動が具体的だからこそ、何をそのまま自分に当てはめられないかが分かる。
血液中のアルギニン濃度は、アルギニンを摂った条件でおよそ120%増えた。一方、プラセボでは変化が検出されなかった。[2] 成分が血液中で増えたという段階までは確認できている。しかし、それをもって期待するホルモンも増えた、と読み進めることはできない。入口を通った証拠と、目的地に着いた証拠は別である。
各採血時点のGH、成長ホルモン放出ホルモン、グレリン、IGF-1には、条件間の差が認められなかった。IGF-1はこの試験でGHとともに調べられた成長に関係する因子である。さらにGHの曲線下面積、すなわち時間を通した濃度の反応を表す値は、アルギニン条件で小さかった。[2] 「各時点では差なし」と「時間全体では抑制」を同じ文章の中で扱う必要がある。
GHの時間全体の反応には統計的に有意な差があったが、これは筋力の増減率ではなく、採血で測ったホルモンの反応の違いである。[2] 有意な差という言葉があっても、答えているのは血液中の反応だ。購入時に期待していた「重いものを持てるようになる」とは測定の対象が違う。
なお、この結果を「アルギニンを飲むと筋肉が減る」と読むのも行き過ぎである。試験が示したのは、経験のある男性の特定の運動条件で、運動前の摂取が血中アルギニンを増やし、GH反応を抑えたことである。[2] 宣伝への反論も、筋量の悪化という別の断定を作ってよいわけではない。
増えた試験と増えなかった試験は、どこが違うか
2010年の無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、筋トレ経験者を、プラセボの8人とアルギニン・オルニチン併用の9人に分けた。期間は3週間で、強度の高い筋力トレーニングを行っている。前後の運動テストでは同じ絶対負荷を使い、安静時、運動終了後2分、回復後1時間に採血した。対象は筋トレ経験のある競技者であり、18〜39歳の女性の日常的な運動に同じ結果が当てはまるかは別に確かめる必要がある。[3]
安静時のホルモン濃度などには群間の有意差がなかったが、併用後の運動に対するGHとIGF-1の値には有意な増加が報告された。[3] 「増えた」という結果は消さずに読むべきである。ただし、これはアルギニン単独の結果ではない。組み合わせたものの結果を、追加成分を単独で買う根拠として扱うと、比較しているものが途中で変わってしまう。
2014年の単独摂取の試験とは、併用成分、期間、参加者の分け方、採血のタイミングが異なる。[2][3] どれが違いを生んだかを、この並列比較だけで決めることはできない。また、ホルモンの増加という結果を、筋力がどれだけ伸びたかに置き換えることもできない。肯定的な結果でも、読める範囲を広げないという姿勢は同じだ。
男女の若年者20人と高齢者8人を調べた1999年の研究もある。運動のみ、アルギニン5.0 gのみ、アルギニンと運動の組み合わせを比較し、口から摂るアルギニン単独では安静時のGH増加が見られなかった。運動への追加でもGH放出は増えず、若年者では運動のみより抑えられる様子があった。男女の若年者と高齢者を含む比較であり、18〜39歳の女性だけの反応としてそのまま読むことはできない。[18]
女性も含む研究だが、これを「ダイエット中の若い女性なら全員同じ反応」とは読まない。若年群の平均年齢は22.1歳、高齢群は68.5歳で、筋トレの負荷も最大挙上重量の85%という条件だった。[18] 年齢が近いことだけで、生活や食事、運動まで同じにはならない。自分に似た参加者を探すときは、性別の文字だけで照合を終えないことだ。
数字で読むアルギニンとホルモン
14人:筋トレ経験のある男性が、単独摂取とプラセボの両条件を経験した試験の人数である。[2]
約120%:アルギニン条件で増えた血中アルギニン濃度であり、筋力の伸び率ではない。[2]
3週間:GHとIGF-1の増加を報告した、アルギニンとオルニチン併用試験の期間である。[3]
5.0 g:若年者と高齢者の比較で使った経口アルギニンの量であり、推奨量ではない。[18]
60人:腹部の悪性疾患の手術に伴う混合補給の試験で、解析された患者数である。[1]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







