朝のさつまいもは冷やして温め直す?繰り返す加熱とでんぷんの増加率を読む

朝ごはんのさつまいもを冷やし、温め直すと何が変わるのか。加熱と冷却を繰り返した食品実験を手掛かりに、難消化性でんぷんの増加率と実際の含有率を読み分ける。抽出でんぷんの加工実験との違いも確かめ、家庭の温め直しやダイエット効果へ話を広げすぎない朝食の選び方を考える。

冷蔵庫から出した昨夜のさつまいもに、まだ湯気はない。朝はこのまま食べるか、電子レンジで温め直すか。「冷やすと難消化性でんぷんが増える」と聞いていると、温めるボタンを押す前に迷う。朝食のおいしさと、成分の変化を一緒に決めようとしている場面だ。

加熱と冷却を繰り返すと、さつまいもの難消化性でんぷんが増えることは食品実験で確かめられている。ただし、そこで測ったのは加工後の食品成分であり、家庭で温め直した朝食による減量効果ではない。再加熱を挟む処理でも増加した結果を、「温めたらすべて元どおり」と読むのも早い。[4]

知りたいのは、冷たい芋と温かい芋の勝敗より、実験のどの部分が食卓の判断に使えるかである。既存記事「朝の焼き芋は包んで温め直す?蒸気の逃げ方とでんぷんの変化を分けて読む」には包装の問いを譲り、ここでは加熱・冷却を繰り返す処理と、増加率の読み方に焦点を絞る。

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冷やす話の主役は、消化酵素に抵抗するでんぷんである

難消化性でんぷんは、でんぷんを分解する酵素の作用に抵抗するでんぷんと、その分解産物を指す。レジスタントスターチとも呼ばれる。食品の加工前後を調べる研究では、この成分の割合を比較している。「冷たい食べ物だから」という感覚の話と、成分を測る話はここで分かれる。[4]

加熱・冷却の比較実験では、豆類、穀類、いも類を対象に、調理直後と処理を繰り返した後の難消化性でんぷん含有率が調べられた。対象は人ではなく、食品そのものを分析した実験である。18〜39歳の女性が食べた後の血糖や体重への効果には、そのまま当てはめられない。ここでは食品成分の変化として読む。[4]

冷却に関連して出てくる「老化」は、でんぷんの構造が再びまとまりを作る変化を指す言葉として読むとよい。さつまいもなどの抽出でんぷんを加工した研究では、老化した構造や結晶の組織が分析されている。日常語の老化から連想して、栄養が古くなる、食べる価値がなくなる、と受け取る必要はない。[1]

この抽出でんぷんの実験でも、測定対象は加工した素材の性質である。食品実験と素材の加工実験を分けて読むと、「温め直す意味はあるのか」という問いにも、まず成分の変化として答える道筋ができる。[1][4]

たとえば、翌朝に食べる芋を見て、難消化性でんぷんを目で数えることはできない。研究で扱う含有率と、自分が確認できる温度や食感は別の情報である。冷たさだけで成分量を言い当てようとするより、どんな処理を比べた研究なのかに目を向けたい。冷蔵庫の扉は、分析装置のふたではない。

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繰り返すと増えたが、いも類の平均とさつまいもは分ける

加熱・冷却を繰り返した比較研究では、調理直後のいも類の難消化性でんぷんは、乾物を基準に平均1.51%だった。加熱と冷却を3回繰り返した後には、平均2.51%となった。乾物基準とは、水分を除いた重さを分母にする見方である。朝の皿に載った芋全体の重さを、そのまま分母にした値ではない。[4]

この研究では、さつまいもの難消化性でんぷんの増加率は62.1%だった。ただし、先ほどの1.51%と2.51%はいも類の平均であり、さつまいもだけの前後の含有率ではない。さつまいもの増加率を紹介する際に、別の集計単位の数値を組み合わせて、さつまいもの測定値のように見せてはいけない。[4]

「62.1%増えた」という表現は目を引く。しかしそれは、測定した難消化性でんぷんを元の量と比べた相対的な増加である。芋の62.1%が新たに難消化性でんぷんへ変わった、という意味ではない。まして糖質が62.1%減ったという意味でもない。数字の大きさを受け取る前に、何が増えたのかを確かめる必要がある。[4]

同じ比較実験では、豆類の平均は乾物基準で4.18%から8.16%へ、穀類は1.86%から3.25%へ増えている。増加の幅は食品群によって同じではなかった。加熱して冷やすという共通の言葉を使えても、豆、穀類、いもに同じ倍率を当てはめることはできない。[4]

さらに研究で報告された増加率の最大はエンドウの114.8%、最小はさつまいもの62.1%であった。ここで最大というのは、この実験で比べた食品の範囲での話である。朝食向けの食品を順位づけた結果ではなく、食品ごとに処理への反応が異なることを示す比較として受け取りたい。[4]

朝の支度で使う言葉に戻すと、「繰り返したら増えた」という観察と、「何回も温めれば自分にも有利だ」という推奨の間には距離がある。この実験の結果から、家庭で加熱・冷却を増やすほどよいという上限のない規則は作れない。加工条件の比較は、生活の手間を増やす競争ではない。[4]

抽出でんぷんの高い含有率は、焼き芋の数字ではない

別の食品加工研究では、さつまいもなどの根から取り出したでんぷんに、酵素で枝分かれを切る処理を加え、その後に高温高圧の加熱と冷却を行っている。丸ごとの芋を調理するだけの実験とは、出発する材料も工程も異なる。研究名にさつまいもが含まれているだけで、家庭の焼き芋と同じ条件とはいえない。[1]

この実験のさつまいもでんぷんでは、121℃で90分または120分の加熱を含む、2回または3回の加熱・冷却処理で高い難消化性でんぷん含有率が得られ、46.23%という値が報告された。酵素処理と高温高圧の工程を組み合わせて得た加工物の数値である。電子レンジで温め直した芋の半分近くが、同じ成分になるという予測には使えない。[1]

この研究では、元のでんぷんよりも加工後の難消化性でんぷんで熱に対する安定性が高まり、構造分析でも結晶の組織の違いが確認された。難消化性でんぷんという成分を、食品素材として作り、性質を確かめる方向の研究である。研究としての価値は、家庭の朝食を再現していることとは別の場所にある。[1]

このような加工物と、加熱・冷却した食品の比較研究を横に置くと、数値が大きく違うことに気づく。その差をそのまま研究同士の矛盾とみなすのは適切ではない。抽出物に酵素処理を施した試料と、調理した食品を比べた試料では、測っているものの条件がそろっていないからである。[1][4]

朝食の記事で46.23%だけが独り歩きすると、家庭で手軽に同じ加工物を作れるように見えてしまう。大事なのは小数点の細かさより、数字に付いた主語である。「処理した抽出でんぷんの含有率」までをひとかたまりとして読む。それだけで、研究の数字を皿の上へ運ぶ途中の取り違えを減らせる。[1]

比較研究では、難消化性でんぷんの含有率とアミロース含有率の間に正の相関も報告されている。アミロースはでんぷんを構成する成分のひとつであり、難消化性でんぷんの増加率と不溶性食物繊維の含有率の間にも正の相関があった。ただし、食品間の関連が認められたことと、ある成分だけを増やせば必ず同じ変化が起きることは違う。[4]

この関連を見ると、処理への反応を考える際には、工程だけでなく元の食品の成分も視野に入る。さつまいもの増加率を、別のいもや穀類へ移し替えない理由でもある。加熱・冷却という動作を共通にしても、材料を同じものとして扱うことはできない。[4]

また、繰り返し処理した試料は、熱の変化を測る分析や電子顕微鏡による観察でも調べられ、粒の構造が失われる変化が報告されている。含有率だけを測って終えた研究ではなく、構造の変化も確かめた実験である。それでも、構造の観察から人の減量幅へ直接進むことはできない。測定を重ねたことは、測定対象そのものが人へ変わったことを意味しない。[4]

数字で読む加熱・冷却の比較

3回:食品比較研究で、難消化性でんぷんの増加が調べられた加熱・冷却の回数である。[4]

1.51%から2.51%:いも類の平均含有率の変化。水分を除いた乾物基準であり、さつまいも単独の値ではない。[4]

62.1%:同じ比較研究におけるさつまいもの難消化性でんぷんの増加率。糖質の減少率ではない。[4]

46.23%:酵素処理と高温高圧の加熱・冷却を組み合わせた、さつまいも由来の加工でんぷんの含有率である。[1]

0.5%:ザクロ果皮由来の繊維を加えたでんぷん実験で、特に難消化性でんぷんの増加が示された酵素抽出繊維の添加濃度である。[3]

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宮川涼 Founder

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