ダイエットのプロテインはカルシウム総量で固まる?遊離した分と加熱条件を読む

温かいスープにプロテインを入れるとき、カルシウムの表示量だけで固まりやすさは分かるのか。乳たんぱくの加工実験から、総量とイオンとして存在する分、加熱前後の変化を読み分ける。粉の製造履歴や溶かす液、酸性度も含め、栄養表示と台所での仕上がりをつなぐ際の注意点を考える。

夕食のスープに粉を足したら、昨日は滑らかだったのに今日は底に粒が残った。粉は同じでも、溶かした料理や温め方はどうだったか。そこで気になるのが、表示された量と、鍋の中で固まり方に関わるカルシウムは同じものなのか、という問いである。

答えの芯は、総量だけでは加熱時の安定性を決められない、である。乳たんぱくを扱う実験では、カルシウムの分布やイオンとして存在する分に加え、酸性度、粉になる前の加熱、溶かす液の組成によって仕上がりが変わっている。[1][3] 栄養表示は成分の量を読む入口になるが、そのまま凝固の予報にはならない。

既存記事「プロテインは塩入りスープで固まる?濃度と加熱で変わる仕上がりを研究で読む」には、塩や濃度による仕上がりの問いを譲る。ここでは乳由来のたんぱく質を中心に、カルシウムを全部まとめて数えた数字と、液中の状態を測った数字の違いに絞る。扱う根拠は乳や乳たんぱくを対象とする食品実験であり、18〜39歳の女性が飲んだときの吸収や減量の効果へ、そのまま当てはめることはできない。[1][3][4][5][7][10]

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カルシウムの総量と遊離した分は何が違うか

総量は、試料にあるカルシウム全体を対象にする見方である。一方、乳たんぱくの研究では、液中でイオンとして存在するカルシウムを別に測っている。総カルシウム、可溶性カルシウム、イオン性カルシウムを分けた実験があり、これらは同じ測定項目の別名ではない。[3] 「カルシウム入り」という言葉の内側にも、区別して見るべき状態がある。

遊離という言葉から、何にも関わらず水の中を漂っている図を想像するかもしれない。この記事では、研究で測定されたイオン性カルシウムを指す言葉として使う。液に溶けている部分のすべてを、イオン性の部分と読み替えないことが大切だ。実験では、液側のカルシウムとイオン性カルシウムが別々に報告されている。[1][3]

また、乳たんぱくにはカゼインミセルという粒子状の集合体がある。カルシウムを捕まえる物質で処理した加工実験では、カルシウムの分布の変化とともに、この粒子の大きさや粉の溶けやすさ、熱への安定性が変わった。[3] カルシウムは、単に栄養成分表の端にいるだけではなく、食品中の構造と合わせて調べる対象なのである。

ここから導けるのは、「総量が多いほど必ず固い」という一直線の順位ではない。どんなたんぱく質の中に、どのような状態であり、どんな条件で加熱するのかを合わせて読む必要がある。[1][3] 表示量が近い粉を比べて見た目が違っても、直ちに表示がおかしいと考える理由にはならない。

台所でできるのは、袋に書かれた成分量の確認である。研究室で測る液中の状態まで、表示欄から逆算しようとすると話が飛ぶ。買うときの情報と、調理中の情報は役目が違う。カルシウム量を栄養の情報として読んだあと、温かい料理への使い方は製品の案内で確認する、と目的を分けると迷いにくい。

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加熱するほど低い添加量でも固まった実験

塩化カルシウムを加えた乳の加熱実験は、この問いに近い。脱脂粉乳を総固形分濃度9%に戻し、塩化カルシウムを0〜25 mMの範囲で加え、60〜120℃で熱への安定性を評価した研究である。[5] mMは、この実験で液中の物質の濃さを示す単位だ。家庭での添加量を示すレシピではない。

評価したのは、目で見て固まったかどうかだけではなかった。沈殿の量や、遠心分離した後に上澄みに残るたんぱく質も調べている。その結果、温度が高くなるほど、より低い塩化カルシウムの添加量で凝固が起こった。[5] 同じ添加量でも、加熱条件を外して比較することはできない。

注目したいのは、しっかりした塊ができる前に沈殿が増えていた点だ。高い温度では安定と不安定の境目が比較的はっきりし、低い温度では境目が明瞭ではなかった。[5] スプーンですくえる塊がないから何も変わっていない、と判定するより、底に残るものも観察対象になるという読み方ができる。

さらに、加熱中に得た液側の試料では、温度上昇に伴って酸性度を表すpHとイオン性カルシウムの両方が低下した。[5] ここは直感とずれやすい。カルシウムを加えて固まりやすくなった実験なのに、測定されたイオン性カルシウムは加熱に伴って低下していた。加熱前に加えた量と、加熱中に液側で測った値を混ぜると、説明が逆向きに見えてしまう。

この実験から「表示のカルシウムが一定量を超えたら固まる」という家庭用の線は引けない。実験の対象は条件を決めて調製した乳であり、市販の粉と具材入りスープの組合せを横断した試験ではない。[5] 読み取れるのは、添加量と温度をセットで扱い、変化の途中を含めて評価する必要性である。

粉になる前の加熱と溶かす液も関わる

袋から出した時点で粉は乾いている。しかし、その粉の性質には製造工程も関わる。乳たんぱく濃縮粉末を作った実験では、原料の脱脂乳を72℃で15秒、または85℃で30秒加熱し、その後に濃縮や乾燥を行った。粉のたんぱく質含有率は約81%であった。[1] 消費者がマグカップを温めるより前から、比較条件が違っていたのである。

この違いにより、乳清たんぱく質の変性割合は約5%から47%へ増え、液側のたんぱく質やカルシウム、イオン性カルシウムは減少した。[1] 変性とは、この研究では加熱に伴うたんぱく質の状態の変化を扱う言葉である。数字が示しているのは食品の加工特性であり、飲んだ人の筋肉の増加率ではない。

粉を戻す液も比較された。真のたんぱく質濃度を4.02%にそろえ、蒸留水で戻す条件と、乳の膜分離で得られる透過液で戻す条件を設けたのである。透過液を使うと、熱で固まるまでの時間とpHの関係を描く曲線の型が変わった。[1] 「水分を同じだけ足した」という説明だけでは、液の組成の違いが抜け落ちる。

一方、この研究ではエタノールに対する安定性や、酵素によるゲル化も調べられており、透過液への変更によって各特性は同じ向きには動かなかった。[1] 溶けやすい、固まりにくい、ゲルを作りやすいという言葉は、全部をひとまとめにできない。どの条件で、何を測った結果なのかが必要になる。

同じ粉でも、朝に水で溶かすときと夕食の料理に加えるときでは、溶かす液の組成を分けて考えたい。実験の蒸留水と透過液を、そのまま家庭のスープに置き換えることはできないが、溶かす相手を独立した条件として扱う発想は持ち帰れる。[1] 「今日は粉の量しか見ていなかった」と気づくだけでも、比較の出発点は変わる。

加熱の結果を読むときは、沈殿と上澄みを分けた測定にも意味がある。塩化カルシウムを添加した研究では、沈殿から主要な乳清たんぱく質とカゼインの各成分が見つかった。一方、低い温度で凝固した条件の上澄みには、変性していない乳清たんぱく質や、可溶性のカゼイン成分も残っていた。[5] 固まった部分だけを眺めていると、同じ容器の中で液側に残っているものを見落とす。

これは、塊を見たらすべて失敗とする判断とは違う。研究者が追っているのは、加えた成分がどの相に移り、どんな状態で残るかである。[5] 家庭では同じ分析はできないが、「粒がある」と「全部が同じ状態に変わった」は別の文章だと理解できる。見た目の記録は役に立つ。ただし、それが答えられる範囲を大きくしすぎないことが肝心だ。

さらに、熱安定性という言葉には、条件を決めて比較した結果という前提がある。凝固の有無、沈殿量、上澄みに残るたんぱく質という異なる指標を使った研究では、明瞭な塊になる以前の変化まで捉えていた。[5] 逆に、飲むときの舌触りだけを好みの基準にするなら、それは別の評価である。加工実験の順位と、自分の夕食で使いやすいかどうかを無理に一致させる必要はない。

粉を製造した実験にも、評価を分ける手掛かりがある。原料の加熱を強めたり、戻す液を透過液に替えたりすると、その分散液を酸性化して作った撹拌ヨーグルトの粘度は低くなった。[1] この結果を、温かい飲み物の粘度の予報として使うことはできない。酸性化してヨーグルトを作る条件での結果だからだ。同じ粉でも、使う工程によって測りたい性質が変わることを示す例として読める。

朝は飲料、夜はスープ、と使い道を替えるなら、同じ栄養表示から同じ仕上がりを期待しすぎない方がよい。粉の原料処理と液の組成を組み合わせて比べた研究は、製品名やカルシウム量だけでは拾えない加工上の違いを示している。[1] 袋の表を見る作業の次に、料理の条件を見る作業が続くのである。

数字で読むカルシウムと加熱の条件

総固形分9%:塩化カルシウム添加試験で用いた、戻した脱脂粉乳の濃度である。[5]

0〜25 mM:同じ試験の塩化カルシウム添加範囲であり、推奨摂取量ではない。[5]

60〜120℃:同じ試験で安定性を評価した加熱温度の範囲である。[5]

約5%から47%:原料乳の加熱条件を変えたときの乳清たんぱく質の変性割合である。[1]

4.02%:水と乳の透過液を比較した分散液の真のたんぱく質濃度である。[1]

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宮川涼 Founder

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