運動前の梨は冷やすと甘さも変わるか、追熟の温度と食べる時の印象を読み分ける

運動前に冷蔵庫の梨を食べるとき、冷たさや甘さを糖の量の目安にしてよいのか。西洋梨の追熟処理と飲料の官能評価を手がかりに、保存中の温度、食べる場所の温度、甘さの印象を分けて考える。日本梨への当てはめや、お腹の負担を味で判断しないための見方も整理する。

梨を切ると、包丁に硬さが伝わり、皿に果汁が残る。冷蔵庫から出したばかりのひと切れは、舌に冷たい。「今日はあまり甘くないから、運動前でも軽そうだ」と思う。そのとき、舌が受け取った印象だけで、食べる量まで決めていないだろうか。

答えの芯は、梨を冷やす話には別々の温度が混ざっている、ということだ。西洋梨の研究では、収穫後の温度処理によって香りや食感が異なった一方、十分に軟らかくなった果実では、処理間の甘味・酸味の感じ方に有意差がなかった。冷やしたという事実から、甘さの変化を一方向には決められない。[15]

さらに、甘いと感じた強さは糖の量をそのまま表示する計器でもない。同じ西洋梨の試験では、感覚としての甘さと可溶性固形分の間に有意な相関がなかった。運動前の梨を選ぶ際は、味の好みと、どれだけ食べるかを別の問いとして持っておきたい。[15]

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冷蔵庫の温度と、追熟に使う温度は別の問いだ

梨を冷やす、と聞くと、夕食の支度の間に皿を冷蔵庫へ入れる場面を思い浮かべる。ところが果実研究で扱われる温度には、収穫後に食べ頃へ進めるための処理温度もある。ここを読み違えると、保存技術の結果が、そのまま今朝のひと口の話になってしまう。

西洋梨「コミス」を用いた食品科学の実験では、収穫後の追熟能力を引き出す方法を比べた。エチレンという追熟に関わる物質への曝露、0°Cでの保存、10°Cでの処理を使い、果実の硬さが異なる段階で官能評価を行っている。官能評価とは、人が感じた香りや味、食感を評価する方法である。研究の中心は果実の性質であり、18〜39歳の女性が運動前に食べた際の体調へ、そのまま当てはめることはできない。[15]

エチレンへの曝露は1日または3日、0°Cでの保存は15日または25日、10°Cでの処理は10日という条件だった。冷たい皿を短時間置く比較ではなく、日数をかけて果実を食べ頃へ向かわせる比較である。この実験条件を押さえるだけで、「食べる直前に冷やせば同じ結果になる」という読み方を避けられる。[15]

論点は、温度という単語の一致ではなく、何に、いつ、どれほどの期間、温度を作用させたかにある。果実が変化する過程を比べることと、食べた瞬間の印象を比べることでは、確かめる対象が違う。研究を買い物や運動前の支度に使うなら、まず自分が知りたいのはどちらかを決める。

食感の結果もその違いをよく示す。0°Cで処理したコミスは、硬さ27 Nと18 Nの段階で歯応えがあり、9 Nまで軟らかくなると多汁性が目立った。Nはここでは果実の硬さを表す力の単位だ。同じ処理を受けた果実でも、評価する硬さの段階によって、口の中での姿は異なっていた。[15]

したがって、「冷たい梨は硬い」「冷やした梨は甘くなる」という短い言葉だけでは、研究の条件を運びきれない。自宅の梨を比べるときにも、冷たさ以外に、もとの熟し具合や食感が違っていないかを見ておく。温度だけを比べたつもりで、実際には別の食べ頃を比べていることがある。

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香りが豊かな梨と、糖が多い梨は同じ意味ではない

コミスの実験では、温度などの処理によって香りにも違いがあった。10°Cで処理した果実は果実香や梨らしい香りが優勢で、香りに関わるエステル類の濃度が最も高かった。0°Cで処理した果実の果実香や梨らしい香りは、エチレン処理より高く、10°C処理より低かった。[15]

エチレンで処理した果実は、繊維質の食感が目立ち、果実香や梨らしい香りが低いという特徴を示した。ここで比較されたのは、香り、食感、化学組成を組み合わせた果実の性質である。「食べやすそう」「よく熟していそう」という全体の印象を、糖の量だけの説明へ縮めないことが大切だ。[15]

とくに注目したいのが、十分に軟らかくなった果実では、処理間に甘味・酸味の知覚の有意差がなかった点である。香りには処理ごとの差があり、甘さでは処理間の差が確認されなかった。香りが豊かな処理を見つけたことは、最も甘い処理を見つけたことと同義ではない。[15]

また、この研究では、果実の可溶性固形分と感覚的な甘さの間に有意な相関はなかった。可溶性固形分は、果実中の水に溶ける成分を捉える指標であり、研究では味との関係が調べられている。数値の高低だけで、人が感じる甘さをそのまま並べられる結果ではなかった。[15]

酸味については、滴定酸度と、可溶性固形分を滴定酸度で割った比が、感覚的な酸っぱさと有意に関連した。味を読むとき、甘さに注目していても、酸味側の情報を無視できないことがうかがえる。ただし、この関連から、家庭のひと口を糖のグラムへ換算する式を作ることはできない。[15]

コミスの試験は、食感と成分の対応も調べている。水に溶けるポリウロニドという成分は、多汁性、バターのような口当たり、甘さと強い正の相関を示した。逆に、硬さや歯応えとは強い負の相関があった。熟したときに目立つ特徴と、未熟なときに目立つ特徴が、成分との関係でも分かれていた。[15]

ただし、その成分自体には処理間で有意差がなかった。ある成分と食べ心地が一緒に変わることと、温度処理を変えることでその成分が変わることは、別々の比較である。「甘さと関連する成分が見つかった」という結果を、「この温度なら甘くできる」という操作の約束へ変えないようにしたい。[15]

既存記事「運動前のりんごは香りで甘さを選べるか、熟す変化と糖の量を分けて考える」には、りんごの香りと熟度の論点を譲る。隣の記事「運動前のいちごは熟し具合も確認、赤さだけで糖の補給量を決めない選び方」では、いちごの色と熟度を扱う。ここで確かめたいのは、梨の追熟処理を食べる直前の冷却と取り違えないこと、そして温度の研究をどこまで日常へ持ち込めるかである。

食べる部屋の温度でも、目立つ味は変わりうる

果実が置かれていた温度とは別に、食べる人がいる部屋の温度も研究の対象になる。飲料を使った官能評価の実験では、60人の消費者が、20°C、24°C、26°Cに管理された室内で、3日間の評価に参加した。異なる甘味料を用いた7種類の機能性飲料が比較された。対象は消費者であり、18〜39歳の女性に絞った結果として、そのまま当てはめることはできない。[20]

評価方法は、口に入れてから時間が進むなかで、どの感覚が主に感じられるかを追うものだった。単に「甘さを何点とするか」だけを聞く方法とは違う。最も目立つ味が、甘味から苦味へ、あるいは果実風味へ移るような、時間に沿った感覚の推移を捉えている。[20]

室温によって、その推移の曲線に影響が認められたのは4種類の飲料だった。寒い環境では、一部の甘味料を使った試料で苦味が強調された。暖かい環境では、ショ糖を使った試料で果実風味のピークが現れ、別の甘味料を使った試料では甘味の優勢率が低くなった。[20]

結果の読みどころは、「暖かいほど全部甘い」でも「寒いほど全部甘くない」でもないことだ。飲料の組成によって、目立つ感覚の変化は異なった。部屋の温度を動かした結果を、あらゆる食品に共通する甘さの矢印に変えると、肝心の試料間の違いを落としてしまう。[20]

ここで比べられたのは飲料であり、室温である。冷蔵庫から出した日本梨の温度を直接比べた実験として読むのは適切ではない。また、部屋の温度を調べた研究から、暑い運動環境なら梨がどう感じられるかを、そのまま予測することもできない。[20]

また、味の優勢率は、その味の成分の割合ではない。飲料試験の時間に沿った評価では、口にある感覚のうち何が目立つかを追っている。甘味が目立つ時間が減ったとしても、それを飲料中の糖が減った割合として読むことはできない。感覚の時間変化と食品の化学組成を分けることで、室温という条件の意味も見えやすくなる。[20]

立川駅北口の夕方、外を歩いて帰宅し、台所で梨を食べる。休日には同じ梨を食卓でゆっくり食べる。こうした場面を比べるとき、「梨の中身が違う」と考える前に、置かれた場所や食べる条件もメモの候補にする。これは糖を測る代わりではなく、感想を整理するための工夫だ。

数字で読む梨と温度の研究

0°Cで15日または25日。コミスの追熟能力を引き出すための保存条件であり、食卓での冷やし時間ではない。[15]

10°Cで10日。別の追熟処理で、果実香や梨らしい香りが優勢だった条件である。[15]

27、18、9 N。コミスの官能評価に使われた硬さの段階で、冷たさの強さを表す数字ではない。[15]

60人、室温20・24・26°C。飲料の感覚の推移を比べた試験の対象と環境である。[20]

7種類中4種類。室温による感覚の推移への影響が認められた飲料数で、梨の糖の変化率ではない。[20]

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宮川涼 Founder

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