筋トレの胸は腹筋を疲れさせてから押す?休憩と押す速度で切り分ける考え方

腹筋の後に胸のプレスをすると重く感じる。その原因を体幹の疲労だけで決めてよいのか。ベンチプレスの研究から、休憩の長さと過ごし方、反復の速さ、回数の違いを読み分ける。腹筋を先に行う順番の優劣は断定せず、同じ日の記録を比べる条件と、次の練習で確かめる点を整理する。

腹筋を終えた直後、いつもの重りが急に重く感じたことはないか。ベンチに横になり、胸のプレスを始める。重りは前回と同じなのに、押し始めが重い。お腹を先に使ったから胸の力が出ないのか、それとも休みが短かったのか。仕事帰りの短い運動時間では、この違いが気になる。

腹筋を先に疲れさせるほど胸の練習によい、と決めて順番を組む根拠はここでは示せない。胸のプレスそのものでも、休憩の取り方や動かす条件で反復成績は変わるため、押す速度が落ちたことだけを腹筋の疲労の証拠にしない、というのが答えの芯である。[1][9][17]

既存記事「大胸筋と腹筋の筋トレは兼ねられる?脚を浮かせるベンチで確かめたい目的の違い」には、姿勢を変えて同時に鍛える問いを譲る。ここで考えたいのは腹筋の後に胸を押す場面で、何をそろえれば順番の影響を見誤りにくいかである。

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腹筋の疲れと、胸の成績を別々に書く

まず、体幹という言葉は胴体を指すものとして使う。「腹筋が疲れた」は本人の感覚であり、「胸が押せなくなった」は動作の結果である。どちらも大切な記録だが、同じ欄に一緒に書くと原因まで分かった気になりやすい。お腹のきつさを感じたことと、そのきつさがプレスの低下を起こしたことは、区別して考えたい。

この区別の手掛かりになるのが、ベンチプレスの休憩条件を変えた無作為化クロスオーバー試験である。クロスオーバーとは、同じ参加者が異なる条件を経験して比べる研究の型だ。筋トレ経験のある男女22人を対象に、最大挙上重量の75%で、8回を4セット行う課題を、セット間の休憩が1分の場合と2分の場合で比較した。[9]

最大挙上重量は、1回挙げられる最大の重さを指す。この試験では、どちらの休憩条件でもセットが進むと男女とも平均パワーが有意に低下した。パワーは力と動かす速さを合わせて見る指標で、重りを持ち上げられたかどうかだけとは異なる。女性は男性よりもパワーを保ちやすかったという結果もある。[9]

ここから読み取れるのは、胸の運動を繰り返すこと自体が、その日の成績を変える条件だという点である。腹筋の後のセットだけを、前回の元気な開始直後と比べていないか。順番を振り返るなら、胸の何セット目だったかも一緒に見る必要がある。[9]

たとえばノートには「お腹がきつい」と「胸の終盤が遅い」を分けて書く。これは腹筋の疲れを否定するためではない。原因の候補を消さずに残すための記録である。体感だけを長く書くより、どの動作のどの場面だったかが分かる方が、次の相談の材料になる。

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休憩の長さと、休憩中の運動は違う条件だ

腹筋を先に行う場合と、胸のセット間に腹筋を挟む場合も、同じ順番の話ではない。前者は胸を始める前の状態が違い、後者は休憩中に行うことが違う。空いた時間を使うという予定表上の共通点だけで、体の条件まで同じとは考えない方がよい。

筋トレ経験のある男性14人による無作為化クロスオーバー試験では、2分の休憩を静かに過ごす場合と、軽いチェストプレスを行う場合を比較した。本番のベンチプレスは、最大パワーを出すために個別に選んだ重さで、最大速度を意図して8回ずつ5セット行う設定だった。男性のみの試験なので、18〜39歳の女性に同じ結果が当てはまるかは別に確かめる必要がある。[17]

動く休憩で使った重さは、最大挙上重量の5〜10%であった。休憩中にも胸を押す動作を続けた条件で、セット内の速度低下は小さい方向だったが、統計学的な有意差はなかった。血中乳酸の増え方も小さい方向だったものの、有意差は認められなかった。[17]

したがって、「休憩中に動けば回復が速くなる」と言い切る読み方はできない。反対に、「休憩中の運動は必ず次のセットを悪くする」とも、この比較からは決められない。対象と軽い運動の内容を添えて、差を明確に確認できなかった結果として受け止めるのが適切である。[17]

ここで行われたのは軽い胸の運動であり、腹筋を限界まで続ける休憩ではない。この結果を腹筋の挟み込みに置き換えて、胸の速度が保てると約束するのは飛躍になる。休憩時間が同じでも、その間の課題まで同じにしなければ比較にならない、という視点に使いたい。[17]

立川駅に着く時刻が遅くなり、腹筋を胸の休み時間へ移す。その選択をするなら、記録には「休憩を短縮した」ではなく「休憩中の内容を変えた」と残しておく。時計には空白でも、本人は働いている。その日の工夫を、疲労の原因を断定する文章に変えないことが大切だ。

回数の増加と、体への負担を分けて見る

休む場所も成績に関わる。セットの間にまとめて休むのか、セットの途中に短い休みを入れるのか。この違いを扱うのがクラスターセットである。連続して反復する代わりに、反復のまとまりの間へ休憩を挟む方法であり、腹筋を先に行う方法とは別の操作だ。[1]

運動経験のある男性12人の無作為化された比較試験では、最大挙上重量のおよそ85%を使い、その時点で反復できなくなるまで行う条件を調べた。連続して行う条件と、3回ごとに10秒または20秒休む条件を、ベンチプレスとハーフスクワットで比較している。男性12人の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめて、回数や負担の増え方を予測することはできない。[1]

ベンチプレスでは、10秒休む条件は連続条件より回数を有意に増やさなかった。一方、20秒休む条件では、回数が6.8±1.6回から11.4±2.9回へ増えた。これは参加者の平均とばらつきを示す値で、自分にも同じ回数が上乗せされるという目安ではない。[1]

この試験の重要な点は、休憩が入ると単純に楽になる、という話で終わらないことだ。20秒休む条件で観察された高い心血管・代謝の負担は、休みの入れ方に固有の作用というより、総仕事量が大幅に増えたことを反映すると研究者は解釈している。多くできた結果、負担も増えたのである。[1]

腹筋の後に胸の回数が少なかった日と、腹筋をしなかった日に休み休み多く挙げた日を比べると、腹筋の有無と休憩の配置が混ざる。回数が増えたことは練習の記録として残せるが、「腹筋を後にしたから疲れなかった」と原因まで書くには、ほかの条件が違いすぎる。[1]

同じ重さを使うことだけでは、比較の準備は終わらない。途中で置いたか、連続して続けたか、そこで何をしていたかまでが条件になる。回数は便利な数字だが、数字の後ろに小さく休憩を書き添えると、前回との違いが読みやすくなる。[1][17]

数字を読むときには、予定された回数と、最後まで実行できた回数も区別したい。休憩時間を比べた試験の「8回を4セット」は課題の設定であり、すべての人がどのセットでも同じように終えたという意味ではない。実際、1分休憩の条件では男女の実行回数に違いがあった。予定表の数字だけを見て、疲れ方まで同じだったと読まないことが必要だ。[9]

自分のノートでも、予定の欄と結果の欄を分けると同じ整理ができる。「胸をいつもの重さで行う予定だった」と「実際には途中で止めた」は両方残してよい。腹筋を先にした日の結果だけに理由を書き足すより、予定から何が変わったかを順に確かめる方が、次の比較を組み立てやすい。

また、研究で用いた重さが最大挙上重量に対する割合で示されている点にも意味がある。同じ重りを使った人同士を比べているのではなく、それぞれの能力に対して負荷を設定している。男女のパワー維持の結果を読む際にも、自分と隣の人の重りの数字だけを比べる話へ置き換えないようにしたい。[9]

研究の休憩秒数は、そのまま自分への処方箋にはならない。高い負荷で反復できなくなるまで行った男性の試験と、男女のセット反復を調べた試験では、参加者も課題も異なる。どちらにも休みの数字は出てくるが、全員に共通する最適な休憩時間を決めるために足し合わせることはできない。[1][9]

胸の成績を確認したい日には、前回の条件を書いたノートを開いてから始める、という使い方が考えられる。腹筋の位置を変えたことだけが目立つと、休み方の変更は忘れやすい。記憶の中の「いつも通り」を、その日の短いメモで確かめ直すのである。

数字で読む胸のプレスと休憩

22人:男女を含む休憩時間の比較試験。最大挙上重量の75%で反復課題を行った。[9]

1分と2分:比較したセット間休憩。どちらでもセットの進行に伴い平均パワーが低下した。[9]

14人:動く休憩と静かな休憩を比べた男性の試験。速度低下の差は有意ではなかった。[17]

5〜10%:動く休憩に用いた胸の運動の負荷。腹筋を追い込む設定ではない。[17]

6.8回と11.4回:連続条件と、3回ごとに20秒休む条件の平均反復回数。[1]

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宮川涼 Founder

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