ダイエット中のチョコは少しの水で固まる?砂糖の粒と油の流れを読み解く

ダイエット中にチョコを溶かして水を足したら、かえって重くなった。そんな場面を入口に、水分、砂糖の粒、乳化剤が流れ方に関わる食品研究を読む。溶けたチョコの粘りと板の硬さを区別し、水分と粘度が逆方向に動く理由と、口当たりだけで成分を判断しない見方を整理する。

湯せんしたチョコをスプーンで持ち上げる。さっきまでは細く落ちていたのに、水を足したあとに重く感じる。薄めたいつもりだった台所では、少し納得しにくい出来事である。

答えの芯は、水分だけを見てチョコの流れを決めないことだ。工業用チョコを調べた実験では、水分、脂肪量、粒の大きさの分布、乳化剤などが流動に関わる要因として挙げられている。チョコは、水を足した量だけで粘りを説明できる食品ではない。[2]

ただし「少量の水なら必ず固まる」と量を決めて覚えるのも早い。配合実験には、水分と硬さが増す一方で、溶けた状態の粘度は下がった例もある。[12] ここでは台所の一場面を入口に、研究で比べた水分、粒、油の条件を読む。甘さの感じ方は既存記事「間食のチョコは粒が細かいほど甘い?砂糖の量と口どけを分けて研究で読む」に譲り、流れにくさの見分け方に絞る。

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水を足した量だけでは、重くなった理由を決められない

チョコの流動を扱う食品実験で大切なのは、何を変えて比較したかである。市販の板を台所で溶かす場面と、原料を調整して製造する実験では、そろえられる条件が違う。水分の多い試料が重く流れたとしても、粒の形や配合まで違えば、水分だけの効果には分けられない。[2][4]

代替甘味料を使ったダーク系のコンパウンドチョコを比較した実験では、マンニトールを含む試料の流動に関する測定値が最も高かった。研究者は、その高い水分量、小さい粒径、細長い結晶形との関連を考えている。水分だけを増減した比較として読むのではなく、粒の条件が重なる例として読むのが適切である。[4]

ここでいうコンパウンドチョコは、その研究が対象にした製品系である。普段使う板チョコと名前が近くても、同じ配合として扱わない。まして、ある甘味料の試料が流れにくかったという結果を、台所で水を足した瞬間の反応と同一視することはできない。実験が示したのは、配合全体と流れ方の関係だ。[4]

「水が入ったから失敗」とだけ書くと、もとの材料の違いが消えてしまう。溶かす前の包装を置いておき、どのチョコを使ったかを確かめることには意味がある。原料、脂肪量、乳化剤まで流動に関わる以上、違う製品で見た変化を水分量だけの比較にしないためである。[2]

ダイエット中という検索語でたどり着いても、ここで扱う結果は食品の物性を測った結果である。粘りが強いチョコを食べた人ほど体重が減る、といった読み替えはしない。水分や粒を調べる実験の測定対象は、流れる食品そのものだ。18〜39歳の女性を対象に食後の体重変化を調べた試験ではなく、その年代の女性の減量効果を判断する根拠には使えない。[2][4] スプーンの重さは、体の変化を測る道具にはならない。

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「固い」を流れ始めと流れている途中に分ける

溶けたチョコを混ぜたときの「重い」には、別の測定項目が含まれる。カカオ分48%の工業製造チョコを使った実験では、塑性粘度と降伏応力を分けて評価している。塑性粘度は流れているときの抵抗、降伏応力は流れを起こすための力の目安として読むと、台所の手応えとつなげやすい。[2]

この実験で大豆レシチンを加えると、塑性粘度は濃度0.6%に達するまで低下し、その先は比較的一定だった。一方、降伏応力は調べた濃度範囲で上がった。同じ試料でも、流れている途中の抵抗が小さくなることと、流れ始めやすくなることが別々の方向に進む。[2]

ボウルを傾けた最初の動きと、へらで混ぜ続けたときの感覚を別々に見ると、この違いを想像しやすい。「動かし始めは重いが、動き出すと広がる」という観察なら、ただ硬いと書くより情報が増える。数値を求めるには実験装置による測定が必要だ。研究で測る項目を、観察の言葉に借りるのである。[2]

同じ研究で調べた別の乳化剤、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルでは、少量の添加で降伏応力が低下した。乳化剤という同じ表示上の仲間でも、流れ方への作用はそろわない。[2] 包装に乳化剤とあれば全部なめらか、あるいは全部同じ反応、とは判断しない。

さらに、この実験はチキソトロピーも評価している。これは混ぜるなどの操作に伴って流れ方が時間的に変わる性質を指す。レシチンやもう一方の乳化剤の濃度に対する変化は、塑性粘度の変化と似ていた。[2] 混ぜ始めと混ぜ終わりを比べるなら、材料だけでなく操作の経過も目に入れる必要がある。

砂糖を替えると、粒の条件まで入れ替わる

甘味料を替える話は、甘さの強弱だけでは終わらない。エリスリトール、マンニトール、タガトースを、イヌリンやポリデキストロースと組み合わせた実験では、吸湿性、粒径、糖の結晶形が流動特性と食感に関わる可能性が示された。砂糖の代わりを入れる操作は、粒が並ぶ条件も変える操作なのだ。[4]

吸湿性とは湿気を取り込みやすい性質である。この実験では、それを粒の大きさや形とともに検討している。「糖を替えた」という記録だけでは、変わった条件を言い尽くせない。粒が小さくなったのか、水分が増えたのか、結晶形が違うのかまで見ることで、流れの違いを読む手がかりが増える。[4]

エリスリトールとポリデキストロースの組み合わせでは、測定したカッソン降伏値が46.184±2.45 Pa、砂糖を使った比較試料が38.348±1.68 Paだった。数字だけなら差がありそうに見えるが、研究では統計的に有意な差ではなかった。比表面積と、粒径分布を表すD90が近かったことも挙げられている。[4]

ここでのPaは力のかかり方を表す単位であり、甘さやエネルギー量の単位ではない。±の幅を添えて示された値を、どの製品にも共通する境界値として使うことも避けたい。特定の配合を比べた結果であり、大きい数値の側をそのまま食べにくい製品と採点するための表ではない。[4]

別の研究では、イソマルト、キシリトール、マルチトールなどを使い、ボールミルで砂糖不使用のミルクチョコを製造した。通常の砂糖入り試料との比較で、砂糖不使用試料には、粒が集まる凝集の程度が高いという結果があった。甘味料の選び方と製造方法を含めて、粒の集まり方を読む必要がある。[5]

この研究は、ボールミル方式には通常の製法より水分を蒸発させる効率の課題があるとも述べている。[5] 包装の砂糖不使用という言葉から、口どけや水分の状態まで決めつけないための材料になる。水を足す前から、製品同士で粒と水分の条件は違い得るのである。[2][5]

比較する数字にも役割の違いがある。カカオ分や乳化剤の濃度は試料を作る側の条件で、粘度や降伏値は測って得た応答だ。条件の数字と結果の数字を隣に書くだけで、濃度を増やせば結果も一定の割合で変わるように見えてしまう。レシチンの塑性粘度が途中から比較的一定になった結果は、その読み方を戒める例になる。[2]

甘味料の研究でも、流動と融解は分けて調べられた。置き換え材料の吸湿性や粒の条件は流動と食感に影響し得た一方、融解特性と脂肪の結晶化には大きな影響がなかった。[4] 流れにくく見えたものを、脂が融けていない状態だと即断するのは避けたい。流れる抵抗が変わったことと、融ける性質が変わったことは同義ではない。

夕方、帰宅して作り始めたとき、へらの跡が残ると加熱が足りないように感じるかもしれない。しかしこの配合実験は、流れの違いが融解特性の大きな違いを伴わない場合を示している。[4] 加熱を追加する判断の前に、使った材料とレシピの工程を読み直す。手応えを見て考え直すことと、手応えだけから原因を決めることには距離がある。

また、砂糖不使用のミルクチョコの研究で最も適合したのはカッソンモデルだった。[5] 測定した流れを数式で扱う枠組みが用いられているのである。家庭で観察する際も、違う日に使った違う板の手応えを、同一条件の測定結果のようには並べない。材料と工程を書き添えれば、何を比べているのかを見失いにくくなる。

数字で読むチョコの流れ

カカオ分48%:乳化剤による流れ方の違いを測った工業製造チョコに用いた条件だ。[2]

レシチン0.6%:塑性粘度が低下したのち、比較的一定になった濃度に当たる。[2]

46.184±2.45 Pa:代替甘味料の組み合わせで測ったカッソン降伏値として示された。[4]

38.348±1.68 Pa:砂糖入り比較試料の値で、上の試料との有意差はなかった。[4]

相対湿度83%・29℃・1週間:白いチョコを耐熱化するために検討した保持条件である。[17]

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宮川涼 Founder

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