筋トレの胸はバーの線に手を合わせる?目印と実際の手幅を分けて確かめる方法

胸の筋トレでバーの線を頼りに握っても、前回と同じ手幅かは別に確かめたい。肩幅に対する比率を使ったベンチプレス研究から、目印と指の位置、実際の距離を分けて記録する考え方を整理する。扱える重さ、押す速度、反復回数の違いも読み分け、器具を替えた日の比較につなげる。

バーの線に置いたのは、人差し指だったか、薬指だったか。いつもと違うベンチで前回の重さを用意すると、握り位置の記憶が急に曖昧になる。その前に立ち止まりたいのが、「同じ線を使った」と「同じ手幅で握った」は同じ記録か、という問いである。線の見た目だけでなく、自分のどの指をどこに置いたかまで言葉にしてみたい。

答えの芯は、目印を手幅そのものとして扱わず、手の位置を再現するための手掛かりとして使うことだ。ベンチプレス研究では、握る幅を肩幅に対する比率で設定する例がある。身体の寸法を基準にした幅と、器具に付いた印は、分けて考える必要がある。[1][3]

「女性の胸筋トレは手幅で何が変わる?押す動きの胸と腕の負担を読み解く」が扱う筋肉の負担の比較はそちらに譲る。ここでは、胸の筋トレの鍛え方を変える前段階として、目印、指の位置、実際の手幅をどう確かめ、前回の記録とつなぐかを考える。

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バーの線は住所、手幅は距離として記録する

「線に合わせた」というメモを、次の自分が読んだら再現できるだろうか。線の上に人差し指を置いたのか、薬指を置いたのか。線の内側に手を収めたのか、線を手のひらで覆ったのか。同じ言葉に違う置き方が入るなら、記録の入口で条件が曖昧になる。線だけ覚えて帰ると、肝心の指が留守になる。

ここで提案する確認は、研究で効果を検証した独立のトレーニング法ではない。研究の条件を日々のメモに落とすための整理である。器具を特定する言葉、目印に対する指の位置、左右の手の間の距離を分けて残す。距離を測るなら、左右とも同じ指の同じ部分を測定点とするなど、測り方の約束も添えると読み返しやすい。

この区別の出発点になるのが、健康で身体活動のある男性54人による比較・信頼性研究である。スミスマシンを使い、肩峰間距離、つまり左右の肩の骨の目印の間隔に対する120%、160%、200%の幅を比べた。参加者は各幅で最大挙上重量までの試験を繰り返している。男性を対象とした結果であり、18〜39歳の女性に同じ重量や速度の傾向が当てはまるかは、この比較だけでは判断できない。[3]

ここでいう肩幅は、服の肩の縫い目の幅という意味ではない。研究は肩峰間の距離を身体寸法の基準としている。[3] 日常のメモでも、身体のどこを基準にしたかを省略しないほうがよい。自分で測った値と研究で管理した値を、言葉が似ているだけで同一視しない姿勢も必要になる。

印を使うこと自体をやめる話ではない。距離だけを毎回測り直すより、同じ器具で同じ指を置く目印があれば準備の説明は短くなる。ただし、人に伝えるときは「この印」だけで済ませず、何を基準に握ったかを補う。自分には通じる合図と、他人にも読める記録をつなぐ作業である。

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肩幅に対する比率にも、研究ごとの設定がある

別の研究では、筋力トレーニング経験者10人が、肩幅に対する1倍、1.5倍、2倍の握り幅を含む技術条件を実施した。肩の開き方や肩甲骨の姿勢も変え、合計21種類の動きを測定したうえで、筋骨格モデルによって肩の関節にかかる力を推定している。筋力競技の経験者の測定と推定であり、18〜39歳の女性、とくに未経験者に同じ負荷の関係が当てはまるかは別に確かめる必要がある。[1]

同じ「狭い・中間・広い」という名前でも、この研究の設定と先ほどの速度を調べた研究の設定は一致しない。[1][3] 名前をそろえただけでは、同じ幅を比較したことにならないのである。動画の説明や練習ノートに「中間」と書くときも、誰の何を基準にした中間なのかを考える余地がある。

肩幅に対する比率は、他人の手の位置をそのまま借りる代わりに、身体寸法と握る幅の関係を見る方法になる。ただし、比率で表したから推奨値に変わるわけではない。研究の120%や200%は比較のために設けた条件であり、すべての初心者へその幅を処方した数字ではない。[3]

友人と並んで練習すると、同じ線に同じ指を置くことが、そろったフォームのように見える。だが、比率を使う研究を読むときの問いは「印がそろったか」ではなく「身体寸法に対してどの幅だったか」である。[1][3] 友人との見た目を合わせることと、自分の条件を確かめることを別の作業にしたい。

また、研究の比率を家庭のメジャーで細かく再現しようとして、数字の桁ばかり増やす必要もない。まずは自分がどう測ったかを説明できることが先だ。測定点が曖昧なまま数値だけ詳しく書くより、測定点と握り方をセットで残すほうが、後から確認する場所を見つけやすい。

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同じ重さが上がっても、動きまで同じとは限らない

男性54人のスミスマシン研究では、握る幅の間で最大挙上重量に有意差はなかった。一方、各相対負荷でのバーの移動距離や平均速度などは、広い幅より狭い幅と中間の幅で大きかった。[3] 重さの欄だけを見れば似た結果でも、バーの移動の仕方には違いがある。男性の比較なので、18〜39歳の女性でも同じ差が出るかは未確定である。[3]

相対負荷とは、その条件での最大挙上重量に対して、用いた重さがどれくらいに当たるかという見方である。この研究は、握り幅ごとに最大挙上重量を調べ、その割合と速度の関係を評価した。[3] したがって、単に同じプレートを載せた練習の印象と、研究の比較条件をそのまま重ねないようにしたい。

さらに、別の実験では違う結果もある。初心者と筋力トレーニング経験者を含む男性28人が、狭い幅、中間の幅、広い幅で、6回反復できる最大の重さを比較した。狭い幅では、他の幅より扱える重量が低かった。[2] 最大の重さを一度押す試験と、反復できる重さを調べる試験では、確かめていることが違う。この男性の反復課題で得られた重量差を、18〜39歳の女性の手幅選びにそのまま使うことはできない。[2]

これらを「手幅を変えても重量は変わらない」「狭めると必ず弱くなる」のどちらかに丸めるのは早い。研究の対象や器具、重量を評価する課題を添えて読む必要がある。[2][3] 器具を替えた日に押しやすさが変わっても、目印の位置だけを理由として決めつけず、ほかに変えた条件も記録しておこう。

たとえば、以前のメモが重量と回数だけなら、当日は指の位置を追加するところから始められる。押した感覚に違いがあれば、良い悪いを急いで判定せず、何を変えたかを書き足す。その記録があれば、次に指導者へ見てもらうときも、前回との違いを具体的に説明できる。

手幅の記録は、肩と肘の条件を読む入口になる

筋力トレーニング経験のある成人35人が、6〜8回反復できる最大負荷で各種のベンチプレスを行った研究では、握る幅を狭くすると、肘の関節モーメントが大きくなった。関節モーメントとは、関節を回そうとする力の働きである。幅を広げると、肩の関節モーメントなどが大きくなった。対象は筋力トレーニング経験のある成人であり、18〜39歳の女性一般にも同じ負担の差が出るかは、この比較だけでは判断できない。[7]

この研究は筋電図、つまり筋肉の電気的な活動だけでなく、関節で必要になる力の働きも評価した。[7] だから「胸が熱く感じたか」という感覚だけで手幅を説明するより、動作条件として位置を残す意味が見えてくる。ただし、その場の力学的な測定と、長期間続けた後の筋肉の成長は同じ結果ではない。

肩の力を推定した研究も、握り幅のほかに肩甲骨の姿勢や、バーを左右方向に押す力が肩の負荷に関係するとしている。[1] 手の位置の写真だけでは、動作の条件すべてを表せない。写真を残すなら、それは握り位置の説明を助けるものとして使い、肩への負荷を判定する測定器にはしないことだ。

記録の見本として、「使用したバーの目印に人差し指を置いた」「距離は同じ指の中心を基準に確認した」と書く形を考えられる。これは握り方を指定する指示ではなく、実際に行った置き方を後から読めるようにする例だ。左右の位置を別々に確認したか、誰と測定点をそろえたかも、必要なら添えておく。

反対に、「いつもの幅」「普通の握り」というメモでは、いつもの器具が使えない日に判断が止まりやすい。慣れた日の短縮表現を使うなら、元になる詳しい記録を別に残しておく方法がある。日々の欄は簡潔でも、何を省略したのか分かる状態にする。長い記録を毎回書くことが目的ではない。

研究では身体寸法や握る幅を設定してから、重量や速度、関節の力を比べている。[1][3][7] 生活の中でも、この順番を参考にできる。重かった、軽かったという感想を書く前に、どんな配置で押したかを確かめる。感覚を否定するための測定ではなく、感覚を説明する言葉を増やすための記録と考えたい。

数字で読む手幅の比較

54人:肩幅に対する120%、160%、200%の手幅をスミスマシンで比べた男性の人数を示す。[3]

28人:狭い幅で6回反復できる最大重量が低かった、初心者と経験者を含む男性を対象にした比較だ。[2]

35人:手幅を変えたときの肘と肩の力の働きを、筋電図と併せて評価した成人が参加した。[7]

10人:肩幅に対する握り幅や肩甲骨の姿勢など、21種類の技術条件を実施した経験者を対象にした実験だ。[1]

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宮川涼 Founder

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