HIITのタイマーで急に音が鳴ると力む?開始の速さと次の動作を分けて読む

HIITや筋トレのタイマーが鳴った瞬間、体がびくっとするのは運動の準備と同じなのか。驚きの反応と開始が早まる現象を分け、ベンチプレスや連続する反応課題の研究から考える。最初の動きが速くても次が遅れる結果を手がかりに、音の強さだけで合図の良さを決めない見方を示す。

スクワットの開始を待ち、マットの上で足の位置を決める。次はスクワット、と構えたところで開始音が鳴る。脚より先に肩が動いた気がして、「今の力みもトレーニングのうちだろうか」と迷う。タイマーは時間を区切る道具なのに、急に号砲の役まで引き受ける。

答えの芯は、驚いた反応と、準備していた運動が早く始まる現象を同じものとして扱わないことだ。健康な成人の実験では、驚きの反応を抑えても反応時間の短縮は残った。強い音で早く動き出せたからといって、体のびくつきと動作開始の速さは分けて評価する。[1]

さらに、先の反応は早くなっても、続く別の反応が遅れた実験がある。ここでは開始音が鳴った瞬間と、その後の動作を分けて読む。[4] 画面の選び方は既存記事「HIITのタイマーは数字か円か?見たい情報から選ぶ画面と研究の比べ方」に譲り、こちらは音が運動の出だしに与える影響に絞る。文字を読むための姿勢の変化は「HIITのタイマーは数字の大きさも確認、読むために動きを変えていないか」に譲る。

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びくっとする反応と、動き出す速さは別に測る

スタートリアクト効果とは、驚きを生む強い音によって、準備していた動作の開始までの時間が短くなる現象である。一方、驚きの反応は、目の周囲や首の筋肉などの活動として調べられる。どちらも音の直後に起こり得るが、研究では別の指標を使って測っている。[1] 日常語の「力んだ」は、この区別をせずに体の感じを一言にした表現だ。

健康な志願者12人を対象にした実験では、手首を伸ばす動作の準備中に強い音を提示した。研究者は目の周囲と首の筋活動で驚きの反応を、手首を伸ばす筋肉の活動で反応時間を評価した。条件は無作為な順序で提示され、安静時と動作の準備中を含めて比較された。健康な志願者の手首課題であり、18〜39歳の女性のHIITへ適用する際も、全身運動とは課題が異なる点を踏まえて読む。[1]

重要なのは、強い音の100ミリ秒前に指への弱い電気刺激を加える条件である。先行する刺激によって驚きの反応は大きく減った。それでも強い音に伴う反応時間の短縮率は変わらなかった。著者らは、この結果を両者に別々の生理的仕組みがあることを示す所見と捉えている。[1]

ここで測ったのは「肩が楽だったか」という感想ではない。驚きに関係する筋肉の活動と、動作を始める筋肉の活動を分けたからこそ、体の反応を一括りにしない結果になった。[1] スマホが鳴って肩が動いたという経験だけから、手首の実験と同じ現象だったと判定するのは避けたい。

別の反応時間実験では、音の強さと、視覚の開始合図に対する提示時刻を変えている。音が強く、開始合図に近い時刻で提示されるほど、準備した反応が引き起こされる割合と、首の筋肉で驚きの指標が出る割合が増えた。首の筋活動が出た試行では、音に反応する割合も高かった。[17]

この結果は先ほどの実験と矛盾するように見える。しかし、関連して起こりやすいことと、片方を抑えればもう片方も消えることは違う。先行刺激で反応を抑えた実験と、音の強さや時刻を変えた実験は、別の問いを調べている。[1][17] 「関係する」と「同一である」の間には距離がある。

タイマーの相談では、まず「音に驚いた」「予定した動作を始めた」「始めた後に動作を続けた」を言葉として分けると、困りごとを伝えやすい。肩の感覚だけを訴える場合と、足を踏み出す時刻が予定より早かった場合では、確かめたい場面が違う。これは診断ではなく、運動の様子を記録するための整理である。

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ベンチプレスでは速くなったが、何が速くなったのか

運動に近い課題として、トレーニング経験者13人がベンチプレスを行った実験がある。比較したのは、視覚の合図だけ、視覚と驚きを生まない音の合図、視覚と驚きを生む音の合図である。測ったのは動き出し、動作時間、最大速度、力の立ち上がり、胸と腕の筋活動だった。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、トレーニング経験と課題の違いを考慮する必要がある。[5]

驚きを生む音を加えた条件では、ほかの条件より動き出しまでの時間と動作時間が短く、最大速度と力の立ち上がりのピークが大きかった。胸と腕の筋肉が活動を始めるまでの時間も短くなった。[5] 音に伴う変化は、単に「早く気づいた」という感想の違いだけでなく、動作中の測定値にも表れている。

力の立ち上がりとは、動作の出だしで力がどれほど速く増えるかを見る指標だ。この研究が扱うのは、重りを押し上げる短い局面の出力である。[5] 「動きが速い」という日常語の中でも、開始の遅れが小さいのか、動作中の最高速度が高いのかでは意味が変わる。論文が別々に測っている数字を、読み手が一つにまとめないことが大切だ。

この実験の評価範囲は、その場のベンチプレスで起きた変化である。長期的な筋肉の成長は別の評価項目だ。[5] HIITのタイマーは運動と休息を繰り返すために使うが、開始直後の成績をそのまま運動全体の価値へ置き換えると、何を比べていたかが変わってしまう。

対象がトレーニング経験者だった点も外せない。次の動きを知った状態で押し上げる課題と、初めて画面を見ながら動きを選ぶ場面は、同じ条件ではない。[5] 自宅で種目を覚えている途中の人が、音に合わせて勢いを増す方法として受け取るのは飛躍である。研究の再現を目標にする必要はない。

たとえば仕事帰り、動画を止めて足の位置を直しているところへ音が鳴る。そこで知りたいのは最大速度の更新ではなく、予定した姿勢から始められたかどうかだ。研究が速さを評価しているからといって、日常の練習まで同じ採点表を使う必要はない。音の評価を自分の困りごとへ戻すためにも、研究が測った範囲を保ちたい。

最初が早くても、続く反応が遅れることがある

開始音の価値を考えるうえで、連続する反応の実験が手がかりになる。参加者は、先の音に声で応答し、続いて出る視覚刺激にキーを離す動作で応答した。音と視覚刺激の間隔を変え、先の音を驚きを生む強い音に置き換えて、両方の反応時間を比べている。対象はこの連続反応課題を行う参加者であり、18〜39歳の女性のHIITで同じ変化が起きるかは、この課題の結果だけでは判断できない。[4]

強い音の条件では、声による最初の反応は40〜50ミリ秒早くなった。ところが、刺激間隔が短い条件では、その後のキーを離す反応は逆に遅くなった。刺激間隔が100ミリ秒の条件では、後の反応の筋活動のピークも小さくなった。[4] 入口が早くなったぶん、その先も前倒しになるという予想は成り立たなかった。

著者らは、強い音が一時的に認知処理を妨げ、後の反応の実行を遅らせたり変えたりしたと説明している。また、驚く音があった試行の直後の試行でも、最初の反応時間が長くなった。[4] 音が鳴った瞬間だけ切り抜いて評価すると、その後に起きた変化を取り落とすことになる。

これはHIITのスクワットやジャンプを直接比べた実験ではない。声とキー操作の連続課題である。[4] したがって「タイマーが鳴ると次のスクワットが必ず遅れる」と読むのも誤りだ。ここから持ち帰れるのは、最初の反応だけで一連の動作を代表させないという、比較の視点である。

動画に合わせた練習では、開始直後に手をつき、その後に脚を引くなど、順番のある動作に出会う。最初の手が早く動いたという記録だけでは、その後の流れまで分からない。音で困った場面をメモするときは、始まった瞬間で文を終えず、その後どの動作で迷ったかまで書く。その記録をインストラクターに見せる方が、「音が苦手」だけより相談の焦点を合わせやすい。

反応時間の数値には、どこを開始と数えたかという条件も付いている。手首の実験は筋活動から反応を調べ、ベンチプレスの実験は筋活動に加えて実際の動き出しや動作時間も記録した。[1][5] 目で見て「早かった」と感じたことと、筋肉が活動を始めた時刻は、同じ測定ではない。動画を見返して印象が変わっても、すぐに自分の感覚を間違いと決めなくてよい。

また、40〜50ミリ秒という短縮幅は、声で応答する課題で得られた差である。[4] その数値をスクワットの開始時刻の目標にすると、比較した課題も評価の目的も入れ替わる。中央線を降りて帰宅した夜、運動の予定をこなしたい人に必要なのは、研究参加者との反応速度の競争ではない。タイマーの音と自分の動作がどうつながったかを、落ち着いて言葉にできることだ。

数字で読む開始音と反応

12人:驚きの反応と手首の反応時間を別々に調べた健康な志願者の人数。[1]

100ミリ秒:強い音に先立つ刺激で、驚きの反応を抑えた時間間隔。[1]

13人:開始の合図を変えてベンチプレスを比較したトレーニング経験者の人数。[5]

40〜50ミリ秒:連続課題で、強い音により最初の声の応答が早まった幅。後の応答は短い間隔で遅れた。[4]

11人:移動する台の上で姿勢を乱し、強い音の有無による反応を調べた健康な参加者の人数。[9]

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宮川涼 Founder

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