寝る前の甘酒は麹と酒粕を区別、夜の一杯は香りよりアルコール表示で選ぶ

寝る前の甘酒は、米麹か酒粕かという原料の違いと、手元の飲料のアルコール表示を分けて確認したい。甘酒の製造実験、甘い発酵米の成分分析、人を対象にした発酵米抽出物の試験を読み分け、睡眠や疲労回復への期待を広げすぎず、夜のレッスン後に飲む一杯を選ぶための確認点を考える。

湯のみへ注ぐ前に、その甘酒の原料欄を見たことはあるだろうか。表には米の絵と「発酵」の文字。寝る前に飲むつもりなら、まず裏返して原料とアルコールの表示を確かめたい。甘酒を扱う製造研究では、米麹による伝統的な飲料は甘い非アルコール飲料として説明されている。しかし、甘い発酵米を扱う別の実験ではアルコールも測定されている。米から作る、発酵している、甘いという共通点だけでは、中身を同じに扱えないのである。[6][7]

答えの芯は、米麹と酒粕という原料の区別を入口にしつつ、実際に飲む製品の説明まで読むことだ。甘酒という名前や香りから、自分でアルコールの有無を判定しない。さらに、発酵米由来の成分を調べた研究を、寝る前の甘酒で眠りや翌朝の回復がよくなるという約束に置き換えない。飲料の製造実験と、人の二日酔い症状を調べる試験は、答えている問いが違う。[6][12]

既存記事「疲労回復の甘酒は米麹と酒粕で同じ?糖とアミノ酸を製法から読み分ける」には成分と補給の比較を譲る。ここで扱うのは、夜に手元の一杯を選ぶとき、発酵の種類、アルコール、香り、研究で測った効果をどの順に確かめるかである。

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米麹という入口から、飲む製品まで戻る

甘酒の製造研究では、伝統的な製法に使う微生物として麹菌のアスペルギルス・オリゼが取り上げられている。研究者はこれを別の細菌、バチルス・アミロリケファシエンスに置き換え、発酵の進み方やできあがった飲料を比較した。似た飲み物を作れるかという食品製造の実験であり、夜に飲ませて睡眠を評価する試験ではない。[6]

この実験では、別の細菌を用いた飲料でも糖化が可能だった。糖化とは、でんぷんを糖へと分解する過程である。ただし麹菌の飲料と比べ、より高い温度で糖化できる一方、還元糖と酵素活性の値は低かった。酵素活性は、分解などの反応を進める働きの指標だ。同じ米を出発点にしても、働く微生物が変われば製造条件と生成物が変わる。[6]

ここから生活に持ち帰りたいのは、原料欄を読む姿勢である。米麹なのか、酒粕なのか、ほかの原料も加わっているのか。原料名を確かめてから、アルコールについての説明を探す。分類名を覚えることと、今夜飲む製品の条件を確かめることを一続きにする。実験で作った飲料の特徴を、売り場に並ぶすべての甘酒にそのまま当てはめるのは飛躍になる。[6]

たとえば、家族が買ってきた甘酒を別の容器に移していたら、見た目だけで決めず、元の包装を見せてもらう。外で出された一杯なら、原料やアルコールについて店の説明を確かめる。分からないものを自分の記憶で埋める必要はない。「いつもの甘酒」という呼び名だけで条件を省略しないことが、夜の一杯を選ぶ実用的な出発点になる。

原料の違いを確認する目的もはっきりさせたい。米麹という文字を健康効果の順位表にするためではなく、飲料の説明を正しく読むためである。製造研究が比較したのは微生物、糖、酸、香りなどの特徴だった。そこである飲料に多かった成分を見つけても、寝る前にはそれを多く取るほどよいという順番は付けられない。[6]

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甘さがあっても、アルコールの判定にはならない

甘い発酵米の実験として参考になるのが、タイのカオマックを作った研究である。これは日本の甘酒そのものではなく、もち米と特定の菌を用いた発酵食品だ。白いもち米を使った条件では、可溶性固形分が24.3±0.35度ブリックス、アルコールが2.0±0.14%だった。甘さに関係する測定値とアルコールが、同じ試料で報告されている。[7]

ブリックスは液中の可溶性固形分を表す指標で、この数字をそのまま甘酒の糖の摂取量と読み替えることはできない。研究では発酵で得られた糖がブドウ糖であることも確認された。重要なのは「甘いから酒ではない」とは判断できないという点だ。甘さとアルコールは、別々に確かめる項目になる。[7]

同じ研究で、米の配合を選び、大きな規模で製造した際には、アルコールが1.63±0.23%だった。数字はその製法と試料に付いている。家の甘酒にも同じだけ入っているという意味ではないし、日本の酒粕甘酒の代表値でもない。海外の発酵米食品の数値を、そのまま自分のコップに貼り付けないことが肝心だ。[7]

夜の台所で必要なのは、甘さの強さを競わせることではない。飲もうとしている容器に何と書いてあるかを確かめることである。「甘い」「米の飲み物」「発酵食品」という印象は味や分類の手がかりにはなるが、アルコール濃度の測定値の代わりにはならない。カオマックの実験は、そうした印象と成分の測定を離して考える具体例になる。[7]

また、この研究で調べられた抽出物には、実験条件下で特定の細菌の増殖を抑える結果もあった。しかし、それを理由に夜の甘酒を衛生対策や体調管理の道具として勧めることはできない。食品を製造して測った成分、抽出物を使った試験、人が飲んだ後の変化は、それぞれ確認する対象が違う。甘さの話に別の効果を次々と足さない読み方をしたい。[7]

香りの中の「アルコール」と飲料の濃度を分ける

甘酒の比較実験では、香りを作る揮発性化合物にも違いがあった。揮発性とは、空気中へ移って香りとして感じられる性質を指す。麹菌を使った飲料ではアルデヒド類がより豊富で、別の細菌を使った飲料ではケトン類とアルコール類がより豊富だった。これは化合物の種類を分けて測った結果である。[6]

ここで「アルコール類が多い」という言葉だけを拾い、「だから酒として強い」と読むと話がずれる。香りの分析で扱う成分の分類と、飲料中のエタノール濃度の確認は同じ作業ではない。別の米ぬか発酵の研究でも、酵母がイソアミルアルコールやフェニルエチルアルコールなどの香気成分を作っていた。化学的な分類名には、複数の物質が含まれている。[6][14]

米ぬかを用いたその実験では、酵母の種類によって香気成分の生成量が違い、発酵した穀物やバラが特徴的な香りの表現として挙がった。バラの香りと関連したのは、フェニルエチルアルコールやそのほかの香気成分だった。これは食品素材から香りを作る研究であり、人が眠りやすくなる香りを選んだ実験ではない。[14]

鼻に届く印象から成分を推理するのは楽しいが、夜のアルコール確認には容器の説明が要る。酒のような香りが弱いからアルコールはない、発酵の香りが強いから多い、と自分で決めない。香りのよさは好みとして大切にし、濃度や原料は別に確かめる。鼻はよく働く。それでも、容器の裏面まで読んではくれない。[6][14]

甘酒の比較実験では、成分が違っていても、消費者パネルの受容度は似ていた。受容度とは、飲んだ人にどの程度受け入れられたかという評価である。味として同じくらい好まれることと、化学的な組成が同じことは別だ。この違いを知っておくと、「おいしく飲めたから前の製品と同じ条件だろう」という省略を避けやすい。[6]

香気成分の量を具体的に見ると、米ぬかを用いた実験の読み方もはっきりする。ある酵母では24時間の発酵後、イソアミルアルコールが827.27 µg/kg、フェニルエチルアルコールが169.77 µg/kg、酢酸フェニルエチルが216.08 µg/kgだった。別の酵母では、同じ測定時点のイソアミルアルコールが415.64 µg/kg、酢酸フェニルエチルが135.77 µg/kgである。いずれも発酵した米ぬかで測った特定の香気成分の量だ。[14]

この数値の単位は試料の重さ当たりであり、カオマックで報告されたアルコールの百分率とは違う。成分名と単位を外して数字だけ並べても、夜に飲む一杯の比較にはならない。研究の数字を読むときには、何という物質を、どの食品で、どんな単位で測ったかまで一組にする。小さな文字の単位にも、研究が答えられる範囲が表れている。[7][14]

測定の方法にも役割の違いがある。米ぬかの実験では、成分を分析する機器に加え、においを評価する方法や官能評価を用いていた。機器で物質を見つける作業と、人がどういう香りとして感じるかを確かめる作業を重ねているのである。そこで得られた「バラ」や「発酵した穀物」という表現は香りの特徴だ。飲む時刻の勧めや、飲んだ後の眠気の評価として読まないことが大切になる。[14]

数字で読む発酵米と研究の距離

24.3±0.35度ブリックス:白いもち米から作ったカオマックの可溶性固形分。甘酒の糖量そのものではない。[7]

2.0±0.14%:同じカオマックの条件で測定したアルコール。市販甘酒の代表値ではない。[7]

1.63±0.23%:配合を選び、大きな規模で作ったカオマックのアルコール測定値。[7]

50人:発酵米胚芽抽出物などを含む複合物の試験に参加した健康な韓国人男性の人数。[12]

24時間:米ぬかを酵母で発酵させ、香気成分の生成量を調べた測定時点のひとつ。[14]

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宮川涼 Founder

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