背筋の筋トレは握る練習の後でもよい?手の疲労で重量を決める前に読む話

背筋の筋トレで鉄アレイを引く前に、握る練習をすると何が変わるのか。手が疲れた日の回数から、背中の筋力や適切な重さを即断しないために、ローイングの研究を読み分ける。競技の成績、筋電図、筋肉の大きさの違いと、運動の順番や持ちにくさを残す記録の工夫を紹介する。

鉄アレイを持つ前に、握る道具を片づけた。指には、まだ握り続けた感覚が残っている。背中の練習を始めたいのに、先に気になるのは指の疲れだ。「今日は引ける回数が少ない。背筋が弱くなったのだろうか」。自宅の短い練習でも、この疑問は次に使う重さを選ぶ時まで残る。

握る練習の後に背筋の筋トレをすることを、一律によいとも悪いとも決める必要はない。ただし、手が疲れた日の反復回数だけを使って、背中の力や適切な重量を決めるのは避けたい。ここでは「先に握る練習をした」という条件を残し、何が理由で終わったのかを分けることを提案する。

研究を読むうえでも、引く運動の成績、測定した筋力、筋肉の電気的な活動は区別が要る。ローイング後の回復を調べた試験でも、筋力の回復と筋電図の変化は同じ結果にはならなかった。[17] 手の感覚から背中の成長へ、一足飛びに話を進めないことが出発点である。

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握る練習の後に何を確かめたいのか

鉄アレイを身体へ引く練習をロウと呼ぶ。似た言葉に、船をこぐ競技や、それを模した器械で行うローイングがある。この記事で扱う研究の多くは後者である。引く動作が含まれていても、器械で一定距離をこぐ成績と、自宅で重りを繰り返し引く回数は測っているものが違う。競技の研究結果を、自宅の鉄アレイの重量表へそのまま移すことはしない。[1][12]

まず決めたいのは、その日の目的である。「握る練習を含めて予定をこなしたい」のか、「疲れていない時にどれだけ引けるかを比べたい」のか。前者なら練習の並びも記録の一部になる。後者なら、先に握る練習をした日と、しなかった日を同じ条件の記録として扱わない。この区別は、特定の順番に効果があるという主張ではなく、比較の問いをそろえるための工夫である。

たとえば記録に「背中の練習、きつかった」とだけ書くと、翌週は何を再現すればよいか分からない。「握る練習の後。持ち手を保ちにくくなって終了」と書けば、少なくとも終了した場面が残る。この書き方なら、手の感覚と実際に終えた動作を後から読み分けられる。

既存の「背中の筋トレは二頭筋が疲れてもよい?腕の活動と広背筋の刺激を分けて読む」には、腕の活動をどう読むかという問いを譲る。この記事の焦点は、ロウを始める前に握る練習を挟んだ日の比較である。握力を補助する道具の利用は、隣接記事「背筋の筋トレにストラップは必要?握力の補助と背中の筋活動を比べる条件」に譲る。ストラップの有無を比べる問いと、事前に握る運動をした影響を比べる問いは異なる。本記事では後者に絞り、引く前に何をしたかと、どこで反復を終えたかを扱う。

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強く引ける人の成績と、手が疲れた日の回数は別である

神経と筋肉が力を出す能力を扱った系統的レビューとメタ分析では、採用された研究は11件で、ローイング器械の成績と筋力の関係を扱っている。競技の成績に関する結果を、18〜39歳の女性が自宅で行うロウへそのまま当てはめるには、運動内容と経験の違いを考える必要がある。[1]複数研究を統合した解析では、ベンチに身体を支えて引くベンチプルの最大筋力と、ローイング器械の成績との間に、相関係数−0.71という強い関連が報告された。脚を使う筋力種目の最大筋力にも−0.72の関連があった。[1]

相関係数は、測った値がどれほど一緒に動くかを表す数字である。ここで負の値が示されるのは、筋力が高い側ほど、完了時間が短い側に対応する関係として読む。強い人ほど時間を要する、という意味ではない。ただし、これは筋力と成績の関連であり、握る練習を先に行わせた効果の数字ではない。[1]

この研究から持ち帰れるのは、ローイングの成績を考える時に最大筋力が関係するという点までである。「だから手を先に疲れさせると背中の筋力が落ちる」「回数の減少分だけ筋肉への刺激も減った」とは続けられない。人と人の違いを比べた関連と、同じ人が運動の順番を変えた時の変化は、別の問いだからだ。[1]

レビューでは爆発的に力を出す能力や、力を繰り返し発揮する能力についても成績との関連が報告されている。こぐ運動には、最大筋力に加えて爆発的な力や反復する力も関わる。[1] 自宅の記録でも、重量の数字を唯一の採点欄にしないほうが、振り返りの目的は明確になる。持ち手を保てたか、予定した動きで終えたかは、重量とは別の欄に書ける。

鉄アレイに刻まれた重さは、その日の事情を知らない。帰宅前に荷物を持ったか、先に握る道具を使ったかも表示してくれない。こうした生活の出来事は「必ず回数を落とす原因」としてではなく、その日の背景として添える。重さが同じというだけで、実施条件まで同じだったことにしないためである。

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ローイングのタイムを握力の成績表にしない

乳酸を使った運動テストとローイングの成績の関係を調べた系統的レビューは、24研究、797人の競技者を含んでいた。対象には男性513人、女性257人、性別不明の27人が含まれる。競技者を対象とした関連の強さを、18〜39歳の女性の日常的な筋トレにそのまま当てはめることはできない。[12]研究ごとにテスト方法や運動強度の表し方が異なり、メタ分析による統合は行われていない。[12]

よく使われた指標は、血液中の乳酸濃度が4 mmol/Lとなる時の出力や速度であり、成績との相関係数は0.53〜0.96の範囲であった。乳酸はここでは運動テストの指標として測定されているのであって、手がだるい感覚の別名ではない。研究間で強い関連が報告されても、値の幅と測り方の違いを併せて読む必要がある。[12]

このレビューは握る練習の順番を決める処方箋ではない。むしろ、ローイングの完了時間には、握る力だけを眺めていては扱えない情報が含まれることを考える材料になる。最大筋力との関連を調べた研究と、乳酸に基づく指標との関連を調べた研究が、それぞれ異なる角度から同じ競技成績を見ているのである。[1][12]

夕方に器械をこいで「前より遅かった」と感じても、その結果を握力低下と読み替えることはできない。同様に、鉄アレイを引いた回数の減少を、背中の弱さだけで説明することも急がない。「どの運動で、何を測ったか」が抜けた数字は、似た話を結びつけすぎる入り口になる。

自分の記録に研究の数字を写す必要はない。乳酸を測定していない日常の練習なら、その値を想像して補うこともしない。研究では競技成績との関連を測った、自宅では重りと反復回数を記録した、と測定の範囲を分ければよい。読み物の数字と、今日の手の感覚は、同じ欄へ押し込まなくて済む。

力が戻ることと、筋電図が変わることを分ける

疲労からの回復を扱う無作為化比較試験では、レクリエーションとしてローイングを行う28人が対象となった。2000 mのローイング後に、皮膚から電気刺激を与える処置を受ける群と、見せかけの処置を受ける群を比較している。処置時間は20分で、測った筋肉は太もも前側である。レクリエーションのローイング実施者で得た結果であり、18〜39歳の女性の握力疲労にも同じ回復が起こるかは別に検証する必要がある。[17]

電気刺激群では、膝を伸ばす筋力の回復が20.76%、比較群では9.44%と報告された。一方、表面筋電図の反応では、時間経過による変化の仕方が群間で異なるという結果は得られなかった。筋電図とは、皮膚上の電極を使って筋肉の電気的な活動を捉えた記録である。[17]

ここで大切なのは、電気刺激を自宅の手の疲れに勧めることではない。測定部位は太ももであり、握る練習の後の手とは異なる。力の回復と電気的な信号の変化に、異なる結果が出た点が読みどころである。回復を評価する物差しを替えると、答えの表れ方も違う。[17]

「筋電図が大きいなら回数も多い」「回数が少ないから筋活動も低い」と、異なる数字を自動的に換算しない。同じ試験の中でも、筋力と筋電図の結果には違いがあった。[17] 手の疲れを感じた時も、感覚の強さ、重りを持ち続けた様子、引いた回数を、ひとまとめの「効いた」にしない記録が役立つ。

回復試験では、運動前、運動直後、処置後という測定の並びを設け、膝を伸ばす力のほか、血液中の乳酸や自覚的なきつさも評価している。[17] このように、いつ測った値かまで定めて初めて、回復という変化を比べられる。家で「手が戻った気がする」と感じた時も、それが運動直後の話なのか、片づけを終えた後なのかを言葉にすると、記録の意味がはっきりする。

数字で読む引く運動の測り方

11研究:最大筋力などとローイング成績との関連を調べたレビューの採用数である。[1]

−0.71:ベンチプルの最大筋力とローイング成績の統合された相関であり、握る練習による回数減少率ではない。[1]

797人:乳酸に基づく指標と成績の関係を調べたレビューの対象者数である。[12]

28人:ローイング後の太ももの疲労回復を電気刺激で比較した試験の人数である。[17]

20.76%と9.44%:その試験で報告された筋力の回復であり、手の握力の回復値ではない。[17]

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宮川涼 Founder

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