ソイプロテインのケーキは焼き色が濃いほどよい?糖とリシンの反応を読む

大豆たんぱくと糖の結合は、泡立ちを改善する一方でリシンの状態も変える。豚の大豆粕試験では95℃・30分の追加加熱で総リシンと反応性リシンが減り、たんぱく質消化率は83.9%から71.6%に低下した。[16] 食品加工と人の試験を区別し、ソイプロテインケーキの色と栄養を読み解く。

オーブンから取り出したソイプロテイン入りのケーキを切る。昨日と同じ配合なのに、表面が茶色い。「よく焼けた」と思った次に、たんぱく質まで上手に使える形になったのか、少し気になる。焼き色は目に入るが、アミノ酸の状態までは見えない。

答えの芯は、濃い焼き色を栄養価の高さの印にしないことである。大豆たんぱくと糖の反応では、リシンやアルギニンというアミノ酸が糖と結びつく。一方、その反応で泡立ちや乳化の性質が改善した実験もある。料理に使いやすくなる変化と、栄養として利用しやすくなる変化は、同じものではない。[8]

既存記事「ソイプロテインのケーキは混ぜたらすぐ焼く?待つ間の泡と生地の見方を読む」が扱う生地の待ち時間はそちらに譲る。ここでは焼いた後の色を入口に、糖との反応、アミノ酸、消化を順に見ていく。膨らみを採点する記事ではなく、茶色を栄養の点数に置き換えないための記事である。また、「運動後の牛乳は温め直しても同じ?プロテインの糖とリシンの反応を研究で読む」の乳飲料の加工とは対象を分け、こちらは大豆由来の材料と焼き菓子の分析を中心に扱う。

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焼き色とリシンは、同じ変化の別の面である

メイラード反応は、ここで扱う大豆たんぱくの実験では、たんぱく質のアミノ酸と糖が結びつく反応である。分離大豆たんぱくとアラビノース、またはガラクトースを反応させた研究では、リシンとアルギニンが糖のカルボニル基という部分に結合した。たんぱく質の構造も、整った形からほどけて広がる方向に変化した。[8]

この実験で重要なのは、単に「温めたら壊れた」という話ではない点だ。反応後の試料では溶けやすさ、油と水を混ぜ合わせる乳化性、泡立ちやすさが向上した。ガラクトースを使った試料は、アラビノースを使った試料より、これらの性質が良好だった。糖の種類が違えば、同じ大豆たんぱくでも出来上がりの性質は変わる。[8]

ケーキ作りでは、泡や混ざりやすさは魅力のある性質だろう。ただし、この食品加工実験が測った機能を、そのまま食べた人の栄養上の利益と呼ぶことはできない。よく混ざる生地と、体が利用するアミノ酸の量とは測る対象が違う。泡立ちが改善したという結果だけで、リシンの利用まで改善したと判断しない。[8][18]

リシンの変化を考えるときも、「なくなる」という言葉だけでは粗すぎる。大豆粕を追加加熱した動物実験では、総リシン量と、試薬に反応するリシン量を区別して測っていた。反応する部分の状態と、全体として測定される量の両方を調べる必要があるためだ。茶色い表面を眺めるだけでは、この区別はつかない。[16]

焼き色が付いたケーキを食べるたびに、リシンが全部失われたと考える必要はない。研究が示すのは、加工によって量や消化のされ方が変わり得ることだ。家庭のケーキの損失率を知りたいなら、そのケーキに対応する測定が必要になる。粉を入れた時点の量と、焼いた後の利用しやすさを、別の問いとして持つことが出発点である。[16][18]

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大豆入りクッキーでは、色と成分を両方測っている

焼き菓子に近い例として、おからを入れたクッキーの成分分析がある。小麦粉の15%をおからに置き換えたクッキーでは、対照より見た目の褐変が強くなり、メイラード反応に関わる生成物も増えた。HMFは100%、アクリルアミドは60%、CMLは400%高かった。いずれも対照と比較した増加率であり、食品全体に占める割合ではない。[19]

HMFはこの実験で反応の進み方を見るために測った成分のひとつだ。CMLはカルボキシメチルリシンという、リシンに関わる糖化生成物である。研究者は色だけで判断せず、こうした化学成分を分析していた。家庭のオーブンの窓から見える茶色より、研究の判断材料はずっと多い。[19]

おからは、水に溶ける成分を取り除いた大豆由来の材料である。この研究では、おからに含まれる不溶性食物繊維が調理中の水分の状態を変え、反応を促した可能性が検討された。小麦粉の7%を別の食物繊維に置き換えた実験でも、反応生成物の濃度は対照より高くなり、HMFとCMLの値は繊維の保水性と関連した。[19]

ここから「大豆だから茶色くなる」とだけ覚えると、肝心な条件を落とす。実験では大豆由来という名称に加え、材料の繊維や水分に関わる性質も問題になっている。おからを分離大豆たんぱくと同じ材料として扱い、その増加率をプロテインケーキへ写すことはできない。原料の名前が似ていても、比較した生地は別物である。[8][19]

市販の大豆入り焼き菓子と、大豆を含まない類似品を比べた分析でも、大豆入りの試料でアクリルアミドとCMLが高かった。ただし、これはその試料の成分濃度の比較だ。食べた人の病気や、日々の体調を追跡した結果ではない。成分が増えたという段階と、人の健康への影響を確かめる段階はつなぎ合わせずに読む。[19]

自宅で配合を変えるときも、色だけを比較対象にしないほうが問いは明確になる。おからを加えた日とプロテイン粉だけの日では、材料の構成が違う。違う生地が同じ色になったとしても、同じ反応の量になったとは判定できない。これはおからを避ける提案ではなく、研究で比べた材料の違いを台所でも忘れないための見方である。[8][19]

糖の違いで、茶色と使いやすさの関係も変わる

分離大豆たんぱくにグルコースを組み合わせた試料と、キトサンオリゴ糖を組み合わせた試料を比べた実験がある。後者では色の変化が穏やかで、フロシンやヒドロキシメチルフルフラールの生成が少なく、リシンとアルギニンの消費も少なかった。糖を変えたことで、色と化学的な変化が一緒に変わった例である。[14]

同じ実験では、グルコースとの反応で生じる中間生成物のほうが、茶色い色素へ進みやすいことも示された。一方、キトサンオリゴ糖との結合でも、たんぱく質はほどけ、乳化の働きは改善した。色を濃くしなければ加工上の利点が得られない、という単純な関係ではなかった。[14]

この結果を読んで、家庭のケーキに実験用の糖を加える必要はない。役立つのは、「糖の量」だけでなく「どの糖と反応したか」も結果に関わるという理解だ。レシピの甘味材料を替えた場合、色の濃さだけで前の配合と同じ状態になったとみなさない。試料の組み合わせが変われば、比較の前提も変わる。[8][14]

さらに、アラビノースとの反応はガラクトースとの反応より糖との結合の程度が高かったが、溶けやすさや泡立ちなどはガラクトースの試料が良好だった。反応が多く進んだことと、欲しい性質が強くなったことすら、別々に評価する必要がある。濃い色、反応の進行、生地の機能を、ひとつの物差しに並べるのは難しい。[8]

人気のレシピを探す場面では、断面写真も焼き色も大事な手掛かりになる。ただ、その写真は食感の好みを選ぶ材料であり、アミノ酸の測定表ではない。栄養を考えるために、見た目の好みを捨てる必要はない。見た目から答えられる問いと、成分分析で答える問いを分ければよい。[8][14][19]

比較の基準にも目を向けたい。おから入りクッキーでCMLが400%増えたというとき、比較相手はその実験の対照クッキーである。前日に自分が焼いたケーキでも、加熱前の粉でもない。増加率には基準になる試料がある。元の濃度を伴わない倍率だけから、一切れに含まれる量や、食べた人への影響を計算することはできない。[19]

同じ実験でも、HMF、アクリルアミド、CMLの増加幅は異なった。反応生成物という共通の呼び方があっても、成分ごとに変化の割合が違った。ある成分の倍率を「焼くと栄養がこれだけ変わる」という総合点にしないことだ。ケーキの色にひとつの点数を付けたくなる場面ほど、研究が複数の成分を別々に調べた理由を思い出したい。[19]

さらに、乳化性が良くなったという結果にも比較相手がある。糖と反応させる前の大豆たんぱくより改善したことと、異なる糖の試料のどちらが良好だったかは別の比較だ。どちらも「良くなった」と短く書けるが、同じ意味ではない。自宅のレシピに役立てる際も、何を変えた前後の話かを明らかにすると、見た目と機能の話が混線しにくい。[8]

数字で読む焼き色と大豆たんぱく

小麦粉の15%をおからに置換したクッキーでは、対照より褐変と反応生成物が増えた。[19]

同じクッキーのCMLは対照比400%増であり、ケーキ全般の損失率を示す値ではない。[19]

追加加工した大豆粕では、豚の標準化回腸たんぱく質消化率が83.9%から71.6%へ下がった。[16]

酵素処理大豆粕の乾燥温度を比べた豚の試験では、80℃と130℃で消化率が異なった。[5]

人の試験は55人を16週間追跡したもので、ケーキの焼き色を比べる試験ではない。[1]

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宮川涼 Founder

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