ワイドスクワットは振動する台で変わる?筋電図の増加と実際の力を読み分ける

ワイドスクワットを振動する台で行うと、筋電図が大きいほどよく鍛えられるのだろうか。振動中の筋活動、体の揺れ、運動後に出せる力を別々に測った研究から、数字の意味と比較条件を整理する。若い男女や競技者の試験を読み分け、足幅の広い動作へ当てはめる際の注意点も考える。

振動する台の上で膝を曲げると、脚だけでなく服の裾まで揺れる。動画には筋肉の活動を示す大きな棒グラフが並び、「普通のスクワットより働く」という説明が添えられている。ワイドスクワットで鍛えられる筋肉を知りたい人ほど、その差が気になるだろう。

答えの芯は、振動中の筋電図が大きくなる条件はあるが、それをそのまま筋力向上の大きさとは読めない、である。筋電図とは筋肉の電気的な活動を記録する方法で、振動中に測った値と、台を降りてから出せる力は区別する必要がある。実際、振動を足すと活動が増えた実験と、継続後の筋力に上乗せがなかった試験がある。[4][10]

既存記事「ワイドスクワットは足裏が冷たいと変わる?立つ揺れと動作中の反応を読み分ける」には足裏の条件という問いを譲る。ここでは振動する台の数字をどう読むかに絞る。既存記事「ワイドスクワットは速く立つつもりで行う?実際の速さと力の出し方を分けて読む」には、速く動こうとする意図の問いを譲る。広い足幅で内ももを鍛える方法の優劣ではなく、スクワット中の記録と実際の運動成績を照らし合わせる話である。

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大きな筋電図は、何が大きい数字なのか

表面筋電図は皮膚に置いた電極で記録する筋活動である。振動とスクワットの研究では、信号の大きさをまとめる指標として二乗平均平方根が使われる。たとえば男子大学生の実験では、その値を最大努力時に対する割合として表し、同じ人の振動あり・なしを比較した。男子大学生の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、対象の違いを考慮する必要がある。[4]

ここで大切なのは、グラフの縦軸を読むことだ。最大努力を基準にした値なのか、振動なしの値からどれだけ増えた割合なのかで、同じ「増加」の意味は違う。前者の研究で報告された振動による増加と、別の研究の「振動なしから大きく増えた」という数字を、そのまま横に並べて効果の順位にすることはできない。[4][7]

さらに、何を測ったかを確認したい。太ももの前側の外側広筋、裏側の大腿二頭筋、ふくらはぎの腓腹筋は、同じ脚でも別の記録である。健康な若者の低周波振動の実験では、測った筋肉のうち特定の周波数で活動が増えたのは腓腹筋だけだった。脚に振動を加えた、という説明を「脚の筋肉が全部同じだけ働く」に広げると、実験の結果から離れる。[1]

スマートフォンの画面では棒グラフの高さが先に目に入る。しかし、その棒は筋肉の成長を直接示す棒ではない。振動中の活動を調べる実験と、一定期間練習した後の力を調べる試験は、答える問いが異なる。この区別を置いてからなら、活動増加という結果も、上乗せなしという結果も無理なく読める。[4][10]

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揺れる筋肉を測るとき、動きと電気を分けて見る

振動する台では、体の動きそのものも測定の対象になる。参加者の下腿の筋肉について、表面筋電図と軟らかい組織の加速度を同時に記録した実験がある。加速度とは、動く速さがどのように変わるかを表す量である。この実験は、筋肉の電気的な反応だけでなく、体に伝わる機械的な揺れも追った点が重要だ。[18]

参加したのは25人で、ハックスクワット姿勢と前足部で支える姿勢を保持し、15、20、25、30 Hzの振動を受けた。Hzは振動の頻度を表す単位である。刺激開始後の筋肉の揺れは、いったん大きくなり、その後に下がって安定する経過を示した。その形は、周波数や姿勢によって異なっていた。[18]

ヒラメ筋では、揺れの減衰と活動の増加との間に相関があり、その相関係数は0.29と、弱い相関にとどまった。相関は一緒に変わる関係を表す。この値から原因の向きや、筋電図へのノイズ混入の大きさは決められない。著者らは、振動による揺れを抑える神経筋の反応が起きている可能性を示している。単に「体が揺れた分だけ記録が増えた」と片づける読み方も、この結果には合わない。[18]

一方、この相関を使って、別の筋電図に混ざった揺れを差し引くこともできない。アーチファクトとは、測りたい対象以外が記録に入り込むことだ。振動による筋活動の増加と、機械的な揺れによるノイズ混入は、分けて検討する問題になる。この弱い相関は前者を考える手掛かりだが、後者の混入量を測った値ではない。「本当の活動がこの割合、揺れが残り」と配分する根拠には使えない。機械的な揺れと電気的な活動を別々に追った結果として読むのが適切だ。[18]

服の裾が大きく震えたから、筋肉も大きく鍛えられた。そう考えたくなる場面ほど、何を測る装置なのかを確認したい。研究では、見える揺れの経過と筋活動の経過を照合している。家庭の動画に映った揺れの大きさだけでは、その照合を置き換えられない。[18]

周波数と重さをそろえて初めて比較になる

比較条件が具体的な実験を見よう。日頃から運動している男子大学生13人が、重りなし・あり、振動なし・ありの組合せで動的スクワットを行った。外から加えた重さは体重の30%、振動は振幅4 mmで25、35、45 Hzだった。振幅は揺れの幅を表す条件である。運動習慣のある男子大学生の実験なので、18〜39歳の女性にも同じ増加幅が出るかは別に確かめる必要がある。[4]

45 Hzでは、重りなしのとき前脛骨筋を除く筋肉で活動が増えた。重りを加えた条件では、振動によって測ったすべての筋肉の活動がさらに増えた。振動による増加は重りありで約3.5%、なしで約2.5%と報告されている。これはその実験で使った指標上の差であり、筋力や筋肉量が同じ割合増えたという意味ではない。[4]

この結果には、重さを足すこと自体の影響も含まれている。振動を加えない場合でも、重りは多くの筋肉の活動を増やしたが、前脛骨筋では低下した。したがって、重りありの振動スクワットと、重りなしの普通のスクワットを比較して差をすべて台の働きと呼ぶことはできない。比較したい条件以外も変わっていないかが分かれ目になる。[4]

別の健康な若者20人の反復測定実験では、振動なしから30 Hzまでの複数条件でハーフスクワットを行った。腓腹筋では特定の周波数で活動増加があった一方、ほかの測定筋では有意な差がなかった。酸素摂取量と乳酸値にも有意な差はなかった。低い周波数でも全身の活動や運動量が一斉に増える、という結果ではない。[1]

研究同士で結果が異なるとき、どちらかを誤りと決める前に、対象、測った筋肉、動き方、振動条件を並べる必要がある。動的スクワットに重さを足した実験の結果と、低い周波数で行ったハーフスクワットの結果は、同じ運動の再測定ではない。違う条件で違う反応が得られたものとして扱える。[1][4]

比較の読み方を、低周波の実験でもう少し具体的に考えたい。この実験は、同じ健康な若者が条件を変えて行う単一群の反復測定であり、別々の人に異なる方法を長く続けてもらった試験ではない。平均年齢は23.26歳だった。体の動きをその場で調べるには意味があるが、何か月も続けた生活の変化を答えた数字としては使わない。[1]

また、腓腹筋で活動増加が出た周波数は、信号のまとめ方によっても同一ではなかった。二乗平均平方根では4、8、12、16、24、30 Hz、最大振幅では4、8、12、30 Hzで、振動なしより有意に高かった。同じ筋肉でも、活動全体の大きさを見る指標と、最大の値を見る指標で、拾われる差が変わる。[1]

この細部を残しておくと、「低周波は効く」「この周波数が最適」という短い言葉に急がずに済む。調べた条件のうち、どの筋肉の、どの指標に差があったかまでが研究の答えだ。酸素摂取量と乳酸値では有意な差がなかったことも併記すれば、筋電図の差だけを全身の運動負担の増加へ広げずに読める。[1]

揺れを同時に追った実験にも、姿勢を保って測ったという特徴がある。下腿の筋活動は、前足部で支える姿勢や高い周波数で大きくなる条件があった。著者らは筋肉の共振を含む機械的な反応から、振動台での動的運動には慎重な見方を示している。これは、動的スクワットの活動増加を報告した実験と視点が異なる。活動を増やすことと、揺れの伝わり方を評価することは、同じ判定ではない。[4][18]

したがって、動的運動の実験を読んだ直後に、自分の台でも動きを増やしてみるという手順には進まない。まず結果が得られた姿勢と測定対象を区別する。通勤電車の揺れと運動の揺れを、同じ「脚が震えた」で採点しないのと同様、見える現象が似ていても比較の条件を省かないことが、研究を生活に持ち帰る際の整理になる。[4][18]

数字で読む振動スクワットの比較条件

13人:重りと振動の組合せを比較した、運動習慣のある男子大学生の人数である。[4]

体重の30%:同じ実験で外から加えた重さであり、一般向けの推奨負荷ではない。[4]

20人:低周波振動で筋活動、酸素摂取量、乳酸を調べた健康な若者の人数である。[1]

相関係数0.29:ヒラメ筋の揺れの減衰と活動増加との弱い関係を示す。筋電図の混入率を表す値ではない。[18]

9週間:振動と筋力トレーニングの組合せを、筋力などで比較した試験の期間である。[10]

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宮川涼 Founder

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