HIITで血液の量も増える?採血値の濃さと酸素を運ぶ総量を分けて読む

HIITで体力がついたら、血液やヘモグロビンも増えたのだろうか。採血で見る濃度と体内の総量、運動直後と継続後の変化を分け、血漿量が増えた試験と増えなかった試験を比べる。血液量だけでは説明できない心臓の働きや、初心者と競技者の違いから、スタミナの成果の読み方を考える。

同じ負荷の自転車を、前より長くこげるようになった。HIITを続けて感じたこの変化は、酸素を運ぶ血液が増えた証拠になるのだろうか。答えは「増える場合はあるが、体力の伸びと必ずセットではない」である。インターバル運動の研究を横断すると、体力や心臓の働きの変化に比べ、血液量の変化は小さいとの結果がある。[5]

また、採血で見たヘモグロビンの濃度と、体内にあるヘモグロビンの総量は別の指標だ。運動直後には血漿量が減る一方、継続したトレーニングでは増える場合があるため、いつ測った数字かを外すと、同じ「血液の変化」でも意味が逆になりうる。[7][13][19]

既存記事「HIITで毛細血管が増えると酸素も届く?血管の数と流れる量を分けて読む」には血管側の問いを譲る。ここで確かめるのは、血液の濃さや総量を、スタミナが伸びた理由としてどこまで読めるかである。

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採血の濃さと体内の総量は別の問いである

HIITは強い運動と回復を挟む高強度インターバルトレーニングである。研究では血液量、血漿量、総ヘモグロビン量を別々に測り、最大酸素摂取量との関係を調べている。最大酸素摂取量は、全身が最大限に取り込んで利用できる酸素の量を表す体力の指標である。[4][7]

血液全体の量を見るのが血液量、液体部分の量を見るのが血漿量、酸素を運ぶヘモグロビンが体内にどれだけあるかを見るのが総ヘモグロビン量だ。これに対し、採血のヘモグロビン濃度は一定の血液量の中にどれほど含まれるかを示す。実際、濃度とヘマトクリット、すなわち血液中で赤血球が占める割合から血漿量の変化を計算する研究と、総量を測定する研究は区別されている。[7][19]

コップの中身が濃く見えることと、台所にある材料の総量が増えたことは同じではない。これは指標を区別するためのたとえである。採血値が高くなったという話を聞いたら、まず濃度の話か、総量の話かを確認したい。運動後の血漿量の変動を扱った研究が濃度を測定しているのも、この区別に関わる。[19]

反対に、濃度の数字だけを追って、トレーニングが成功したかを決めるのも適切ではない。総ヘモグロビン量、血液量、血漿量がいずれも変わらなかった試験がある一方、別の試験では血漿量や総ヘモグロビン量が増えている。体力を評価する項目と、血液の何を測る項目なのかを並べて読む必要がある。[6][7]

健康診断の用紙を、運動の成績表に書き換える必要はない。検査値の医学的な意味は医師に確認する対象である。この記事で扱うのは検査値の良し悪しではなく、研究で「増えた」と呼ばれたものの違いだ。

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運動直後の減少と継続後の増加を混ぜない

運動と血漿量の系統的レビューは、急性の反応と長期の反応を分けて整理している。急性の研究では、運動習慣や運動の長さ、強度にかかわらず、血漿量の有意な減少が報告され、その範囲は7〜19.9%だった。これは運動を終えた直後などの反応を扱った結果であり、続けた先の血液量を表す数字ではない。[13]

一方、運動習慣のない健康な人では、持久性運動やHIITなどを継続した研究の多くで血漿量が増加し、その範囲は6.6〜16%だった。同じレビューでも、すでにトレーニングしている人では結果が一致していない。初心者が運動を始める場面と、競技者が練習を追加する場面を一緒にしないことが大切である。[13]

ただし、この範囲を「HIITなら自分もこれだけ増える」という予測には使えない。レビューには異なる種類の運動が含まれ、効果の大きさも小さいものから非常に大きいものまで幅があった。研究全体の散らばりを示した数字であり、個人の目標値ではない。[13]

測る時刻の違いは、単回のHIITでも確認されている。健康でレクリエーション程度の運動をしている男女16人が、4分の運動を4本行う日と8本行う日を経験した研究では、どちらの条件でも直後の血漿量は減少した。運動前、直後、翌日を区別して追った研究である。[19]

この研究は、運動時間によって運動後の血漿量増加の反応が変わる一方、赤血球をつくる働きに関わるエリスロポエチンの反応には、時間を倍にしたことによる差がないと報告した。血漿量の増加と、酸素運搬に関わる別の反応までが同じ比率で増えるわけではない。[19]

レッスン直後の検査と、しばらく継続してからの検査を比較するときには、時間軸がずれる可能性を意識したい。研究結果を読む場面なら、測定が直後なのか、翌日なのか、介入終了後なのかを先に探す。増減の矢印を眺めるより、その矢印がいつからいつまでを結んでいるかを見るほうが、誤読を避けやすい。[7][13][19]

血液量が増えた試験では何をしていたのか

若い健康な参加者84人を運動強度の異なる群などに無作為に分けた試験では、週3回、6週間の自転車トレーニングを行った。HIIT群の最大酸素摂取量の変化は毎分0.43±0.20Lで、対照群や複数の運動群より大きかった。同じHIIT群では、血液量が302±38mL、血漿量が158±51mL増加した。[3]

ここでの「±」は報告されたばらつきを含む表記であり、全員が同じ量だけ増えたという意味ではない。また、上位の高強度の持続運動群でも血液量と血漿量は増えている。HIITだけに起こる特別な現象として扱うのは、この比較の読み方から外れる。[3]

この試験では、HIIT群の最大心拍出量も毎分2.9±1.2L増えていた。心拍出量とは心臓が一定時間に送り出す血液の量である。研究者は最大酸素摂取量の改善を主として中枢の適応、すなわち心臓や循環側の変化が支えたと解釈している。血液量だけを切り出すより、送り出す働きと一緒に変わった結果として読むほうが近い。[3]

若い人の研究だけでもない。健康な55〜70歳の男女41人を対象とした無作為化試験では、12週間の筋力トレーニングに週1回のHIITを組み合わせ、最大酸素摂取量、総血液量、ヘモグロビン総量が増加した。ただし、これは複合したプログラムであり、血液の変化をHIIT単独の効果に割り振ることはできない。55〜70歳の男女の結果であり、18〜39歳の女性に同じ変化が起きるかは、この試験だけでは判断できない。[2]

朝に階段を使う人も、休日に自転車に乗る人も、研究を自分に当てはめる前に運動の中身を見たい。同じHIITという名前でも、組み合わせた筋トレの有無、参加者の年齢、介入期間は異なる。血液が増えたという一文に、運動の条件まで折り畳んでしまわないことだ。[2][3]

この若年者の試験では、短い全力運動の群を除いて運動の仕事量をそろえていた。単にたくさん動いた群と少なく動いた群の比較ではなく、強度の領域による違いを調べた設計である。それでもHIITと他のすべての群との間に同じ差があったと広げず、比較で差が認められた相手を確認する必要がある。[3]

血液量の増加を確認した若年者の試験では、自転車の運動強度を分けて比較していた。研究の条件を日課へ移すには、まず種目と強度を確認する必要がある。息が弾んだという感覚だけで、その日課が試験のHIITと同じ負荷だったかを判断するのは難しい。運動名が一致することと、比較された条件が一致することを分けて考えたい。[3]

さらに、若い人の試験では毎分の酸素量、血液の増加ではmL、年長者の試験では増加の有意性が報告されている。表し方が異なる結果を、どちらが大きく効いたかという順位へ無理に直す必要はない。同じ研究の中で、何をした人の、どの指標が、比較相手に対して変わったかを順に追う。その読み方なら、増加という言葉だけが独り歩きしにくい。[2][3]

数字で読むHIITと血液量

84人の無作為化試験:若い健康な参加者を複数の強度群などに分け、6週間比較した。[3]

302±38mL:同試験のHIIT群で報告された血液量の増加である。[3]

158±51mL:同じHIIT群の血漿量の増加であり、血液量そのものの増加とは別項目だ。[3]

35人・3週間:鍛えた男女を対象にHIITを追加した試験では、血液の各総量に有意な変化はなかった。[7]

効果量0.06〜0.14:別のメタ分析で血漿量、血液量、ヘマトクリットに見られた、小さい変化の範囲である。[5]

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宮川涼 Founder

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