ソイプロテインを餅に混ぜると伸びにくい?水を保つ力と配合で変わる網目を読む

ソイプロテインを混ぜた餅が伸びにくいとき、粉の量だけで原因を決めてよいのか。大豆たんぱく質とでんぷんの食品実験から、保水性、ゲルの強さ、配合比を分けて読む。もち米でんぷんや植物性卵の研究を家庭の餅と区別し、食感を比べる記録の取り方と、栄養効果まで飛躍しない考え方を示す。

ソイプロテインを混ぜた餅は、なぜ途中で切れるのか。温めて練り、箸で持ち上げてみる。何も混ぜないときのように長く伸びず、途中でぷつりと切れた。水が足りないのか、それとも粉を入れすぎたのか。台所で欲しいのは、粉の袋に書かれた栄養の話より、いま目の前の餅の説明だ。

答えの芯は、大豆たんぱく質を加えれば必ず弾力が増す、とは考えないことだ。大豆たんぱく質とでんぷんを組み合わせた食品実験では、材料の種類や配合によってゲルの強さが変わり、水を保ちやすくなっても強さが下がる場合がある。[1][2] ただし、それらは家庭の餅を引き伸ばした比較ではない。伸びにくさの理由を考える手掛かりとして読むのが適切である。

既存記事「ソイプロテインを味噌汁に混ぜると塩味は変わる?薄めた量と舌への届き方を読む」には味の届き方を譲る。ここで追うのは、餅に加えた粉が、水を含む構造と変形のしかたにどう関わりうるかという問いだ。たんぱく質を足す目的と、気持ちよく伸びるおやつを作る目的は、ひとまず別の欄に置いておこう。

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伸びる、硬い、水っぽくないを分けて見る

「もちもちしている」は便利な感想だが、実験の結果を読むには少し大きすぎる言葉である。押したときの硬さ、形を保つ強さ、水が離れにくい性質が、いつも同時によくなるわけではない。大豆たんぱく質とトウモロコシでんぷんの実験では、ゲル強度、保水性、粘弾性がそれぞれ評価され、でんぷんの種類によって結果の組み合わせが異なった。[1]

ゲルとは、水を含んで形を保つ構造を指す。大豆たんぱく質のハイドロゲルを扱うレビューでは、分子同士をつなぐ仕組みや、別の材料を組み合わせる設計が整理されている。[9] 家庭で網目を直接観察することはできないが、材料が混ざった後の性質を、足す前の粉の性質だけでは決められないと理解する助けになる。

粘弾性は、変形したときの流れるような性質と、戻ろうとする性質を合わせて見る言葉である。ここで気をつけたいのは、実験装置が調べる粘弾性と、箸の間でどこまで餅が伸びたかという観察を同じ測定だと扱わないことだ。[1] 「弾力がある」という訳語だけを頼りにすると、読者の箸と研究者の装置が別々のものを測ったまま話が進んでしまう。

台所の記録なら、伸ばしたときに切れたか、皿の上で形が崩れたか、押すと水が出たかを別々に書く方法がある。これは研究の測定を再現する手順ではなく、食感の感想を整理する工夫だ。べたつきが気にならなくなったことを「伸びが戻った」と書かなければ、次に作るときに何を直したいのかが見えやすい。

食べる前の期待も分けておきたい。よく伸びることが好きな人も、切り分けやすい仕上がりが好きな人もいる。料理としての成功は、自分が狙った食感と照らして決めることである。論文に出てくる「強いゲル」を、そのまま家庭のおやつの優勝者にする必要はない。

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水を保っても、ゲルは弱くなることがある

食品実験の直接の手掛かりになるのが、分離大豆たんぱく質と、通常のトウモロコシでんぷん、ワキシートウモロコシでんぷんを混ぜた研究である。ワキシーという原料区分のでんぷんも、ここではトウモロコシ由来だ。研究者は、混ぜた材料を酸によって低温でゲル化させ、その性質を調べた。[1] 焼いた餅に粉を練り込む場面とは、原料も固め方も異なる。

通常のでんぷんとの組み合わせでは、ワキシーでんぷんとの組み合わせより大豆たんぱく質との結びつきが強く、より密な複合体ができた。でんぷん濃度を増やすと、ゲル強度、保水性、粘弾性、熱安定性が高まり、この実験では通常のでんぷんが2%の条件で最もよいゲル化特性が得られた。[1]

ところが、ワキシーでんぷんを加えた系では、ゲル強度やレオロジー特性は低下する一方、保水性と熱安定性は改善した。レオロジー特性とは、材料が力を受けてどう流れ、変形するかという性質である。[1] 同じ「でんぷんを混ぜる」という操作でも、すべての指標が同じ方向へ動いたわけではない。

この結果は、ソイ入りの餅を見て「水が出ていないから、よく伸びるはずだ」と考える前提を崩す。水が離れにくいことと、変形に耐える構造が強いことは、この実験では別々に変化した。[1] しっとり感と伸びの両方を望むなら、片方を観察しただけで、もう片方まで改善したと決めない読み方が必要だ。

ただし、この研究の2%を餅の配合に移すのは早い。これは酸で固めた大豆たんぱく質の複合ゲルの結果であり、家庭の餅にソイの粉をどれだけ足すかという答えではない。[1] 数字だけ切り抜くと扱いやすいレシピになるが、研究が比べた材料と料理の主役が入れ替わっている。まず、何に対して何を加えた実験なのかを確認したい。

この研究を読むときは、比べた順序にも注目できる。研究者は、通常のでんぷんとワキシーでんぷんを、大豆たんぱく質と組み合わせて評価した。[1] だから、通常のでんぷんの条件がよかったという結果は、その比較の中での話である。「もち米よりトウモロコシの方が、家庭の餅に向く」という材料選びの順位表にはならない。

また、熱安定性が改善したという結果と、温め直した餅が好きな食感になるという評価も区別したい。ワキシーでんぷんを加えた複合ゲルでは、熱安定性の改善とゲル強度の低下が同時に報告された。[1] 加熱に関係する指標の名前だけを見て、伸びの改善まで期待するのではなく、何が改善したと測られたのかを限定して読む。このひと手間で、台所に持ち帰る説明が変わる。

もち米でんぷんの研究でも、配合の意味は変わる

もち米でんぷんを実際に使った研究もある。分離大豆たんぱく質に、トウモロコシ、もち米、ジャガイモのでんぷんを組み合わせ、植物性卵のゲル化を調べた実験である。たんぱく質とでんぷんの重量比は10:4、8:6、6:8だった。[2] 対象は植物性のオムレツであり、ついた餅そのものではない。

この実験で卵のオムレツの食感や比容積に最も近かったのは、大豆たんぱく質とジャガイモでんぷんが8:6の条件だった。まとまりやすさを表す凝集性は0.75で、比較対象の卵は0.79だった。重さ当たりの体積である比容積は、それぞれ1.28と1.32 cm3/gであった。[2] 「近い」という評価には、近づけたい食品と、比べた指標がある。

その一方で、もち米でんぷんとの8:6の組み合わせは、粒の破裂が多く、弱いゲルを作った条件のひとつだった。トウモロコシでんぷんとの8:6、ジャガイモでんぷんとの10:4や6:8でも、弱いゲルが見られた。[2] もち米という名前だけから、加えれば粘りや強さが一律に増すとは読めない。

ここで興味深いのは、ジャガイモでんぷんでも配合が違えば評価が変わった点だ。材料の名前を知ることと、その材料をどれだけ組み合わせるかを知ることは、別の情報である。[2] ソイプロテインの袋を選んだ段階で餅の食感が決まるのではなく、混ぜる相手との組み合わせを考える必要がある。

また、10:4という表記を「家庭でもこの匙数にする」と読み替えないようにしたい。研究は重量比を示している。[2] 台所で比べるなら、同じ匙でも山盛りとすり切りを混在させず、材料の重さを記録する方が条件を整理しやすい。これは万能の配合を決める提案ではなく、自分が何を変えたのかを後からたどるための提案だ。

粉を追加した場合と、もとの材料の一部を粉に置き換えた場合も、記録上は区別しておこう。「ソイを増やした」とだけ書くと、全体が増えたのか、別の材料が減ったのかが消えてしまう。配合比で食品の構造を比べた研究を読むと、この違いを省かないことの意味がわかる。[2] レシピの名前より、実際にボウルに入ったものを見るのである。

数字で読む大豆たんぱく質とでんぷん

2%:通常のトウモロコシでんぷんを使った酸誘導低温ゲルで、最もよいゲル化特性が得られた条件。餅への推奨添加量ではない。[1]

10:4、8:6、6:8:植物性卵の実験で比べた、分離大豆たんぱく質とでんぷんの重量比。[2]

0.75対0.79:ジャガイモでんぷんとの8:6の植物性オムレツと、卵のオムレツの凝集性。[2]

1%と3%:味付け牛肉パティーの実験で、もち米粉を加えた際の好ましさが高かった条件。[3]

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宮川涼 Founder

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