ソイプロテインをパン生地に大量消費する前に、発酵と膨らみを分けて読む

ソイプロテインの使い道にパンを考えたら、粉を増やす前に確かめたいことがある。小麦生地の比較実験では、大豆たんぱく質で生地の抵抗が増しても、焼いたパンの体積は減った。酵母の働きとガスを保つ網目、加工方法による違いを分け、家庭で配合を比べる記録の取り方を考える。

棚に残ったソイプロテインを、休日のパン生地にまとめて入れる。こねている間は手応えがあったのに、焼き上がると背が低い。こんなとき、酵母が働かなかったと決めるのは早い。小麦生地に大豆たんぱく質を加えた実験では、生地の安定性や粘弾性が増しても、パンの比容積は小さくなった。[3]

答えの芯は、発酵する力と、膨らんだ形を支える力を分けることだ。グルテンという小麦たんぱく質の網目は、生地の構造とガスの保持に関わる。大豆たんぱく質を足すと、その網目との相互作用まで変わるため、たんぱく質の増量とパンの膨らみは別々に評価する必要がある。[3][13]

既存の「ソイプロテインの蒸しパンはなぜ硬くなる?粉の配合と水分・気泡の関係を読む」には蒸しパンの配合の話を譲る。ここで考えるのは、小麦を使う発酵パンに粉を入れる場面だ。大量消費を急ぐ前に、こねるときの感触と焼いた後の体積を別々に見る。そのための手掛かりを製パン実験から拾う。[3]

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膨らまないパンを、すぐ酵母のせいにしない

焼いたパンの高さは、原因を直接映す計器ではない。大豆たんぱく質と乳由来のホエイたんぱく質を小麦生地に加えた比較実験は、添加するたんぱく質の種類と量によって、生地の性質と製パン品質が変わることを示した。対象は小麦生地と焼いたパンであり、材料と加工を比べた食品実験である。[3]

この実験の大豆たんぱく質の添加範囲は0〜30%だった。その範囲で、パンの比容積は2.61から1.31 cm³/gへ低下した。比容積とは、パンの重さ当たりの体積である。同じ重さに対して、どれほど大きな空間を占めるかを見る指標だ。袋に残った粉の量を減らすことと、パンを大きく焼くことは、同じ方向の作業ではなかった。[3]

ここから「大豆たんぱく質が酵母を止めた」と進むことはできない。実験で確かめられたのは、生地の性質とパンの体積の変化である。原因を考える際には、グルテンの形成やガス保持に関わる構造にも目を向ける必要がある。背が低いという結果だけを見て発酵時間を延ばすより、まず何を配合したかを戻って確認する、という読み方になる。[3]

家庭での試作なら、こね終わったとき、発酵を終えたとき、焼いて切ったときを分けて記録するとよい。これは成功を保証するレシピではなく、変化が現れた場面を整理する方法だ。焼き上がりの写真だけでは、どこで元の配合と違い始めたかが残らない。研究でも、生地の測定と最終的なパンの測定は分けて扱われている。[3]

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こねた手応えと、ガスを保つ網目は同じではない

粘弾性とは、流れるように変形する性質と、変形から戻ろうとする性質を合わせた呼び方だ。大豆たんぱく質の添加実験では、生地の安定時間や粘弾性を表す測定値が増した。それでも焼いたパンの比容積は低下した。こねていて頼もしい感触があっても、そのまま膨らみのよいパンになるとは限らない。[3]

別の食品実験では、分離大豆たんぱく質、濃縮大豆たんぱく質、組織状大豆たんぱく質を比較している。いずれも生地の形成時間、安定時間、粘弾性の指標を増やした一方、グルテンの網目の一体性を乱した。測定値の上昇と、網目全体の保たれ方が一致しなかった点が重要だ。単独の数字を「パンに向いている点数」に変えると、この違いを落としてしまう。[13]

同研究は、大豆たんぱく質とグルテニンの間に生じる結合が、もともとのグルテン同士の結合と競合する仕組みを示している。グルテニンはグルテンを構成するたんぱく質の一つである。結び付きが増えることと、元の網目が連続して保たれることは別の話だ。つながりがあるという説明だけで、網目が強くなったと判断しないほうがよい。[13]

組織状大豆たんぱく質では、ほかの形態よりグルテンを弱める程度が小さかった。研究者は、たんぱく質同士が結び付く場所や形の違いを説明するモデルを提案している。比較の対象は、この実験で使った形態の異なる大豆たんぱく質である。「大豆由来」という原料名だけでは、生地での振る舞いをひとまとめにできないことを教える実験だ。[13]

手で触れた抵抗が増したときには、元の生地よりしっかりした、とだけ記録してもよい。ただし、その欄と、発酵後の形や焼いた断面の欄は分けておく。抵抗の増加を成功の印として扱わなければ、焼き上がりが低かった場合にも記録が矛盾しない。生地の測定とパンの体積が異なる方向に動いた実験を、台所で生かす方法である。[3][13]

大豆とホエイの数字を入れ替えない

同じ製パン実験のホエイ添加では、比容積は最初に2.61から2.22 cm³/gへ低下した後、高い添加条件で3.08 cm³/gへ増加した。一方、硬さは173から1291 gへ増えた。体積が増えたから軟らかい、という読み方も成立しなかった。パンの大きさと、中身を押したときの硬さは、異なる指標なのである。[3]

大豆添加の場合、硬さは173から152 gへいったん低下してから696 gへ増えた。大豆を少しでも加えたら直ちに硬くなる、という一直線の変化でもなかった。同じ研究の中に、体積が減る変化と、硬さが途中で向きを変える変化がある。完成品の評価には、どの性質を見ているかを添える必要がある。[3]

この硬さの単位であるgは、測定で生じた力を表す数字で、食べる量のgとは役割が違う。173 gという表示から、そのパンの重さや食事の適量を決めることはできない。比容積のcm³/gとも分けて読む。単位の中に同じ文字があっても、測っている対象まで同じにはならない。[3]

飲むときには代わりに使えそうなたんぱく質でも、パン生地の中で同じ働きをするとは限らない。比較実験では、大豆とホエイで安定性、粘着性、温度変化の際の粘弾性などへの影響が異なった。別のたんぱく質でうまくいった配合を、粉の名前だけ置き換えて再現できると考えないことだ。[3]

たとえば「プロテイン入り」という共通点だけで、友人の焼いたパンと自分のパンを比べる場面がある。比較するなら、どちらも同じ原料なのか、追加したのか、小麦粉の一部と入れ替えたのかを先にそろえたい。実験が示したのは材料の種類と量の重要性であり、粉を入れる行為そのものの成功率ではない。[3]

比容積を読むときには、完成したパンの重さを分母にしている点にも注目したい。高さだけを見る比較では、もともと大きな生地を焼いたパンと、小さな生地を焼いたパンが混ざりうる。研究が体積を重さと結び付けて示したのは、単に背の高い見た目を記録するのとは違う評価である。家庭の写真をこの数字と直接照合するのではなく、比較する物差しが何かを確かめる手掛かりにする。[3]

また、0〜30%という幅は、研究で変化を調べるために設けた範囲だ。端の条件でパンの体積が小さかったことから、日常で使える境界線を逆算することはできない。何%を超えたら失敗するという判定と、添加範囲全体でどう変わったかという結果は違う。使いやすい量を決めたい場合も、研究の最大添加量を先に採用する理由にはならない。[3]

数字の大小だけでなく、変化の途中を見る意味もある。大豆添加では、硬さが最初に下がってから上がった。同じ方向に変わり続けるという前提で試作をすると、少量で感じた軟らかさを、そのまま増量した場合にも期待してしまう。研究では、増量に伴って軟らかくなる段階から硬くなる段階へ移った。粉を減らす目的で量を増やす前に、前回の感触が次の配合でも続くかを改めて確かめる発想が必要だ。[3]

比較実験では、生地を測る温度条件によっても、大豆とホエイの影響の表れ方が違った。室温で触った生地の感触だけを、加熱されていく間の性質の代わりにすることもできない。手の感覚は家庭の記録として役立つが、焼成中のすべてを先取りする測定ではない。こねるときの印象と焼いた結果を結び付けるには、両方の記録が要る。[3]

数字で読むソイプロテイン入りパン

0〜30%:小麦生地への大豆・ホエイたんぱく質添加を比較した範囲だ。[3]

2.61→1.31 cm³/g:大豆添加を増やしたときのパンの比容積である。[3]

173→152→696 g:大豆添加での硬さの変化で、単調な増加ではなかった。[3]

2.61→2.22→3.08 cm³/g:ホエイ添加での比容積の推移である。[3]

72時間:選択した微生物と大豆粉を使ったサワードウ実験の発酵時間だ。家庭の推奨時間ではない。[2]

4週間:同実験で冷凍保存後の粘弾性を評価した期間である。[2]

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宮川涼 Founder

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