寝る前のコーラを砂糖抜きに替えれば眠れるのか。糖分とカフェインを別々に確かめ、飲料の摂取と睡眠時間を調べた研究を読む。大人と子どもの結果、関連と因果の違い、夜型の生活との重なりを整理し、カフェインが残る時間を一律に決めず、今夜の表示確認と記録につなげる。
寝る支度を終え、冷蔵庫のコーラに手を伸ばす。砂糖抜きなら、眠りのことも気にせず飲めるだろうか。容器の甘さに関する表示だけでは、今夜の睡眠への答えは出ない。
寝る前のコーラは、砂糖抜きという情報だけで「眠れる」とは判断できない。カフェインの睡眠への反応には年齢や飲み慣れによる違いがあり、飲料と睡眠の研究でも、糖分だけを取り出して結論を出すことには慎重さが必要だ。[4][2] ここでは甘さの選択とは別に、カフェインの表示、飲む場面、実際の睡眠を確かめる。
既存記事「睡眠前のほうじ茶は焙煎でカフェインが減る?香ばしさと抽出条件を分ける」ではお茶の条件を扱っている。こちらの問いは、コーラの糖分を変えたことを、睡眠への安心材料にしてよいかである。香ばしさの代わりに、今夜は容器の文字を読む。

砂糖抜きの表示に、睡眠まで任せない
砂糖についての表示は、まず糖分を選ぶための情報として受け取る。そこからカフェインの有無まで推測しない。この読み分けが出発点だ。カフェインを含む飲料としては、コーヒーやお茶に加えてコーラもレビューで取り上げられている。カフェインは中枢神経系などに作用し、その心理面や睡眠への反応には個人の条件が関わる。[4]
カフェインを扱うこのレビューは、臨床の患者や入院患者による摂取にも目を向けたものだ。18〜39歳の女性の日常的な就寝前の飲み方に、そのまま当てはめるには対象と場面が異なる。[4] 製品ごとの含有量は容器や製品情報で確認し、砂糖の表示から推測しない。
そもそも「眠れる」の中身も分けておきたい。布団に入ってから眠るまでの感覚と、夜全体に眠った長さは同じ記録ではない。飲料と睡眠を調べた国際研究でも、睡眠時間、就寝時刻、睡眠効率は別々の指標として評価され、同じ結果にはならなかった。[10] 飲んだ夜にすぐ寝つけたという経験だけで、夜全体の睡眠にも変化がなかったと決めない方がよい。
飲料の研究には、糖分をまとめて評価するものと、炭酸飲料などの食品群で評価するものがある。前者では飲み物以外の摂取も含まれ、後者では飲料を選ぶ習慣が結果に関わる。総糖分と糖分入り飲料を別々に分析したメタ分析は、この違いを考える手がかりになる。[2] 砂糖抜きのコーラへ替える問いには、糖分入り飲料の集団比較だけでなく、カフェインと飲む時刻の検討も必要になる。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
研究を集めると、大人と子どもの答えは違う
糖分と睡眠の関係を考える手がかりとして、観察研究を集めた系統的レビューとメタ分析がある。系統的レビューとは研究を一定の手順で集めて検討する方法、メタ分析とは比較できる結果を統計的にまとめる方法である。この研究では子どもの研究22件、大人の研究12件を検討し、数値を統合できたのは子ども10件、大人3件だった。[2] 対象は子どもと大人であり、18〜39歳の女性だけをまとめた結果としては扱えない。[2]
大人では、睡眠時間が十分な人に比べて短い人の炭酸飲料摂取のオッズは1.20倍、95%信頼区間は1.12〜1.28だった。[2] オッズは、ある行動がある場合とない場合の比であり、飲んだ量そのものではない。この値を「コーラで睡眠が20%短くなる」と訳すのは誤りだ。何を比べた数字なのかを外すと、研究はすぐに別の話になる。
大人の総糖分摂取と短い睡眠時間との関連は、統計的に有意ではなかった。一方、糖分入り飲料の摂取と短い睡眠との関連は認められた。[2] 砂糖を含む食べ物をすべてひとまとめにした結果と、飲料を取り出した結果は一致していない。したがって、寝る前のコーラの問いを「砂糖は睡眠に悪いか」という大きな問いだけで片づけることはできない。
子どもでは、短い睡眠の群で砂糖摂取のオッズが1.16倍、炭酸飲料摂取が1.21倍だった。ただし、別の飲料分類であるソフトドリンク全体では1.17倍、95%信頼区間0.93〜1.48で、有意な関連ではなかった。[2] 飲料をどの範囲でまとめたかによっても、見える関係は変わる。炭酸飲料の結果を、あらゆる冷たい飲み物の結果へ広げないことが大切だ。
このメタ分析に含まれた研究は横断研究、つまりある時点の生活と睡眠を一緒に調べる研究だった。[2] 研究を集めたからといって、時間の前後関係は分からない。また、大人の主要な結果が限られた研究に基づくという注意もある。[2] 大勢の結果を読むほど、数字の勢いより、その数字が何を答えているかに目を向けたい。
信頼区間も、個人が経験する変化の幅ではない。たとえば大人の炭酸飲料摂取で示された1.12〜1.28という幅は、集団で推定したオッズ比に伴う不確かさを表す。[2] 「自分ならこの範囲で眠りが悪くなる」と読める数字ではない。結果に幅が添えられていることを確認しつつ、その幅の対象が人の睡眠時間ではなく、統計的な推定値である点を保ちたい。

「短く眠る人がよく飲む」と「飲むから眠れない」は違う
観察研究で飲料と短い睡眠が重なっていても、飲料が先か、睡眠不足が先かは同じ問いではない。先のメタ分析も、睡眠時間を説明する側の条件、糖分や飲料摂取を結果として扱う研究を集めている。[2] 「寝る前に飲むと何が起こるか」を試した実験として読むことはできない。
睡眠不足を補うために飲み物を使う、という方向も考える必要がある。米国の13〜17歳、1,032人を対象とした横断調査では、カフェイン入りエネルギー飲料を飲む場面として、睡眠不足の埋め合わせやスポーツが挙がっていた。[12] これはコーラそのものの睡眠試験ではないが、眠りと飲み物の関係を一方向だけで語れない理由になる。 対象が未成年で飲料も異なるため、18〜39歳の女性のコーラ摂取へそのまま当てはめることはできない。
たとえば、帰宅後の作業が終わらず、飲み物を片手に机へ戻った夜を考える。飲料を飲んだ事実だけを残すと、作業で就寝が遅れた事情が見えなくなる。逆に、作業のせいだと決めつければ、何を飲んだかの確認が抜ける。生活の記録では、飲む行為とその前後の予定を同じ欄に押し込まない方が振り返りやすい。
この区別は、コーラを擁護するためでも責めるためでもない。変える対象を選ぶためだ。飲料の選択を変えたいのか、机を離れる時刻を決めたいのか。それぞれ試す内容が違う。横断研究の関連をそのまま「これをやめれば眠れる」という約束に替えないことが、今夜の選択をかえって具体的にする。[2][12]
また、糖分を抜いた後に眠りが変わったとしても、同じ夜に仕事が早く終わり、就寝時刻まで変わっていれば、糖分だけの結果とは呼べない。家庭での振り返りは研究室の比較ではない。記録をつける意味は、自分の生活のどこを次に確かめるかを決めることに置く。自分の経験を大切にすることと、原因を断定することは別である。
カフェインの量と「何時までならよい」を混ぜない
ポルトガルの13歳の生徒1,522人を分析した観察研究では、カフェイン摂取の中央値は1日23.1 mgで、主な供給源は清涼飲料だった。コーラがカフェイン摂取に占める割合の中央値は21.1%である。[14] コーヒーを飲んでいなくても、飲み物全体を見ればカフェイン摂取がある、という具体例だ。 18〜39歳の女性へそのまま当てはめられる量ではなく、成長期の集団で得られた摂取状況である。
この研究では、睡眠時間が9.5時間を超える群を基準にすると、カフェインが1日10 mg増えるごとに、8.5時間以下の睡眠のオッズは1.12倍だった。95%信頼区間は1.06〜1.19である。[14] ここでも扱っているのは、日々の摂取量と睡眠時間との関連だ。大人の女性が今夜飲む量の上限や、就寝直前の効果量として使う数字ではない。
「体に残るなら、何時間前にやめればよいのか」と知りたくなる。ただ、ここで扱う摂取量の関連から、誰にでも共通する時計の線は引けない。年齢や飲み慣れによって睡眠への反応が異なるというレビューの指摘も踏まえ、飲んだ時刻と量の情報を別々に残すのが実用的だ。[4][14] 時刻を記録することと、その時刻なら安全だと保証することは違う。
ポルトガルの調査で食事を評価したのは食品摂取頻度の質問票である。食事の情報が有効だった1,522人を、対象候補2,160人から選んで分析している。[14] これは飲料を実際に配って摂取させる試験ではなく、回答された普段の食事を基にカフェイン量を見積もる方法だ。供給源の寄与の中央値は、アイスティーが33.1%でコーラを上回っていた。[14] コーラだけを外しても、ほかの飲料から摂る分は残るため、普段飲むものを全体で振り返る理由になる。コーラの寄与21.1%という中央値も、容器内の成分比率ではなく、食事全体からのカフェインに占める供給源の割合である。[14]
数字で読むコーラと睡眠
大人の炭酸飲料摂取のオッズ1.20倍:短い睡眠群と十分な睡眠群の比較であり、睡眠の減少率ではない。[2]
95%信頼区間1.12〜1.28:大人の上記の関連に伴う推定の幅である。[2]
13歳の1,522人:カフェイン量と睡眠時間の関係を調べたポルトガルの対象集団である。[14]
1日10 mg増えるごとにオッズ1.12倍:短い睡眠との関連であり、成人の許容量ではない。[14]
睡眠時間12分の差:国際研究で、通常の清涼飲料を毎日飲む子どもと、ほとんど飲まない子どもとの比較である。[10]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






