朝に聴く音楽は長調なら元気になる?明るさとテンポを分けて運動前の気分を読む

朝に聴く音楽は、長調というだけで元気になれるのか。曲を明るいと感じること、気分が快いこと、注意が働くことを分け、テンポや音の密度、文化的な慣れを比べた研究から考える。クラシックを運動前に選ぶとき、速い曲を無理に正解にせず、自分の反応を確かめる視点も示す。

朝向けのクラシックを流したら、軽やかな旋律に細かい音が次々と重なった。明るい曲のはずなのに、今朝は少し忙しく聞こえる。運動へ出かける前に欲しいのは、曲の明るさだろうか、それとも自分が心地よく動き出せる感じだろうか。

長調の音楽で快さや覚醒の評定が高くなった実験はある。ただし、長調なら誰でも元気になるという約束にはならない。文化的な慣れによって長調と幸福の結びつきは変わる。曲の印象を判断することと、聴いた本人の気分が変わることも分けて読む必要がある。[2][3]

朝の選曲では、曲の明るさと速さを別々に眺めたい。そして「元気」を、快い、目が向く、運動に出かける、と分けて考える。長調と速いテンポを組み合わせた音楽で注意の一部が変わった研究は、運動の持久力を測った研究ではない。[8][10] 既存の「有酸素運動は好きな香りで楽になる?快さと実際の持久力を分けて研究で読む」には香りと運動の問いを譲り、ここでは音楽の構造と聴いた直後の反応に絞る。

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長調の明るさと、テンポの速さを別のつまみにする

音楽研究でいう調の違いとテンポの違いは、同じものではない。実験では長調・短調という構造の違いと、演奏の速さを別々に操作できる。単旋律のピアノ曲を使った研究は、調とテンポに加え、音の密度や音の高さも変えている。朝の曲を「明るい」「暗い」だけで仕分けすると、同時に変わっている別の特徴を見落としやすい。[4]

このピアノ研究は、モーツァルトの基本旋律から作った64種類の旋律を使い、曲と合う色を選ぶ課題などを行った。速い長調の音楽は、遅い短調の音楽に比べ、明るく鮮やかで黄色寄りの暖かい色と結びついた。音を聴いて浮かぶ色にも感情が橋をかけている、という解釈である。[4]

ただし、明るい色が浮かぶことと、運動に行きたくなることは測る対象が違う。この研究の結果は、曲の印象をどう表現するかを考える手がかりであり、靴ひもを結ぶ意欲の増加量ではない。[4] プレイリストの表紙が朝日でも、玄関まで代わりに歩いてはくれない。

ここで覚醒とは、研究で評定する気分の高ぶりや活動的な感じの側面である。快いか不快かとは別に評価される。中国人参加者を対象にした実験では、快さ、覚醒、主導感、感情的な緊張、好みを別々に尋ねた。長調で快さが高いという結果と、長調で緊張が低いという結果を、ただ「よい音楽だった」に丸めないのが読み方の入口になる。[2]

朝の場面に置き換えるなら、好みの曲を聴いて落ち着いているのか、気分が弾んでいるのかを言葉にしてみる。これは気分を採点して優劣をつける作業ではない。研究が分けて測ったものを、選曲の際にも混ぜないための工夫である。快さと覚醒を分ける視点なら、静かな曲を好む朝にも居場所ができる。[2]

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長調で快さが高まった実験にも、慣れという背景がある

中国人参加者の知覚を調べた研究では、最初の実験で30人が24の抜粋曲を評価し、次の実験で40人が48の抜粋曲を評価した。長調は短調より快さ、覚醒、好みの評定が高く、短調は感情的な緊張の評定が高かった。一方、自分が主導している感じを表す評定には調の影響がなかった。[2]

つまり、同じ参加者に音楽を聴かせても、心の反応が全部まとめて同じ方向へ動くわけではない。この研究では和声の複雑さは知覚に影響せず、調の好みにはそれまでの西洋音楽への接触が関わっていた。長調で好みの評定が高かったという結果にも、聴き手の経験が重なっている。[2]

この結果は「中国でも長調の感情的な働きが観察された」と読める。しかし、それを「文化や経験と無関係に、長調は必ず幸福を作る」と読むのは飛躍である。英国とパキスタン北西部のKhow、Kalashの参加者を比べた別の文化間研究では、異なる条件が見えている。[2][3]

その研究では、相手の文化の音楽に慣れていない人々を対象に、西洋と非西洋の和声づけの感情的な意味を調べた。テンポ、音の高さ、音の出し方、音色を比較的一定にすると、西洋音楽に接触していない参加者にとって、西洋的な和声の概念は感情の手がかりとして当てはまらなかった。長調は幸福、短調は悲しみ、という区別にも文化が影響した。[3]

両研究は、片方を捨てて正解を決める関係ではない。中国人参加者の実験は、異なる文化でも調による反応の違いが生じる場面を示した。文化間研究は、馴染みのない和声だけを取り出したとき、同じ意味がそのまま通用するとは限らないことを示した。対象者と音楽の条件が違えば、調が担う役割も違って見える。[2][3]

「朝に聴きたいクラシック」と検索して出会った曲が、評判ほどしっくりこなくても不思議ではない。選ぶ基準には自分の音楽経験も入れてよい。文化的な慣れが関わるという研究を、好みを矯正する根拠として使う必要はない。[2][3] 明るい曲を好きになれない朝に、聴き方の試験はない。

音が忙しい曲を、明るい曲と取り違えていないか

音の密度とは、この研究では一定時間に鳴る音符の数である。拍の進み方を表すテンポと、音が次々に詰まっている感じは分けられる。軽度認知障害のある10人、初期のアルツハイマー病のある10人、対照の23人を対象にした臨床の予備研究は、長調・短調と音の密度を変えた和音や短い曲を用いた。認知障害のある患者と対照者を比較する研究であり、結果を18〜39歳の女性の朝の気分にそのまま当てはめることはできない。[13]

結果は、どの群でも調と「幸福」「悲しい」という判断に有意な相関が見られず、音の密度には強い影響があった、というものだった。診断の違いは音楽への感情判断に影響しなかった。ここで測ったのは曲の感情表現の判断であり、一般成人が朝に聴いて元気になる効果ではない。調と音の密度を分けて検討するための手がかりとして読む。[13]

たとえば同じようにゆっくり拍を刻む曲でも、旋律の隙間が多い曲と、細かい音が続く曲は、選曲の際に別の候補として扱える。研究から取り出すべき問いは「長調か」だけでなく、「音の詰まり方も一緒に違っていないか」である。明るい曲の一覧から選んだつもりでも、実際には音が忙しい曲を集めている可能性を考えたい。[4][13]

また、曲を聴いて「幸福そう」と判断する課題と、本人が幸福を感じる程度を測る課題も同一ではない。音の密度の研究は感情の表現をどう判断するかを扱い、中国人参加者の研究は快さや覚醒などを評定している。前者で明るく聞こえた曲が、後者の快さでも必ず最上位になるとは決められない。[2][13]

曲の性格についての感想と、自分の今の状態についての感想を分けて残すと、この差を意識しやすい。「明るい曲だったが、今朝は静かな曲を選びたかった」という書き方でよい。研究結果を日常へ持ち帰る際にも、曲のラベルに自分の感想を従わせないことが大切になる。[2][3][13]

ピアノと色の実験は、比較の作り方にも特徴がある。参加者は用意された37色から曲に最も合う色を選び、そのあと最も合わない色も選んだ。さらに旋律と色を、幸福・悲しさ、興奮・落ち着き、怒りの有無、強さ・弱さという感情の軸で評価した。単に「この曲は黄色だった」という自由な感想を集めただけではない。[4]

旋律の感情評定と、合う色に結びついた感情の評定には高い相関があり、幸福・悲しさの軸では相関係数が0.92だった。ただし、これは明るい色を選ぶと気分がその割合でよくなるという数字ではない。曲と色の感情的な対応がどれくらいそろっていたかを示す値である。曲の印象を説明する数字を、聴き手への効能の数字として受け取らないようにしたい。[4]

文化間研究にも、共通する手がかりと異なる手がかりがあった。音のざらつきは文化を越えて似たように感情表現へ影響する一方、協和する響きを好むかどうかは文化的な慣れに依存するように見えた。音楽の反応はすべて生まれつき、あるいはすべて学習、と二分する必要はない。調だけに注目せず、ほかの音響的な手がかりも同時に聞いている点が重要だ。[3]

数字で読む朝の音楽の研究

30人・24抜粋曲:中国人参加者による最初の実験で、快さや覚醒などを評価した。[2]

40人・48抜粋曲:同研究の次の実験でも、調による知覚の違いを調べた。[2]

64旋律:ピアノ研究では調に加え、テンポ、音の密度、音の高さも操作した。[4]

63人・18〜35歳:長調で速い音楽などを比較した聴取直後の聴覚試験の対象である。[8]

57人・10分:中高年者の研究では、この人数と聴取時間で注意を調べた。[10]

50人・72、114、184拍/分:大学生の時間知覚研究で比較した人数とテンポである。[12]

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宮川涼 Founder

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