寝る前のうどんは冷やせば多めに食べられる?再結晶化と補食量を分けて読む

寝る前のうどんを冷やすと、でんぷんの構造と消化されやすさはどう変わるのか。小麦でんぷんや麺を調べた食品実験から、再結晶化、原料や配合の違い、難消化性でんぷんの割合を読み解く。冷たい麺なら多めに食べてよいのか、胃に優しいのかという疑問と、夜の補食量を考える手がかりも整理する。

湯切りしたうどんを、今夜は冷水で締める。夕食の後なのにもう少し食べたくなり、器を選びながら、「冷たい方が消化されにくいなら、少し多めでも同じだろうか」と考える。夜食の器を決める前に、冷たさにどこまで期待できるかを確かめたい。

答えの芯は、冷却に伴うでんぷんの構造変化は消化性を左右しうるが、それを補食の増量券にはできない、ということだ。小麦でんぷんを主原料とする食品のレビューでは、加熱と冷却に伴う構造の変化が食感や消化性に関わると整理されている。ただし、食品の構造を調べる話と、寝る前に食べられる量を決める話は区別して読む必要がある。[1]

既存記事「間食の豆は冷やすと消化が変わる?でんぷんと細胞の壁を分けて研究で読む」には豆の細胞構造の論点を譲る。また、「ホットヨガ後のうどんは水で締めると違う?表面の粘りと麺の弾力を分けて読む」とも問いを分ける。ここで考えるのは、冷やした麺の消化性を理由に、就寝前の補食量まで変えてよいかである。

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冷たいという感覚と、再結晶化は同じではない

でんぷんの「老化」は、人の年齢の話ではない。加熱後のでんぷん分子が再びまとまり、秩序ある構造を作っていく変化を指す。再結晶化は、その構造が結晶として整う側面である。小麦でんぷんのゲル食品である涼皮を扱ったレビューは、加熱時の糊化と、その後の老化の動きが、加工中の振る舞い、食感、消化性、保存安定性を左右すると整理している。[1]

糊化とは、でんぷんが水と加熱によって構造を変えることだ。レビューが扱うのは、加熱したものが冷える過程まで含めた食品づくりである。つまり「今、舌で冷たいと感じる」という温度だけを見れば足りる話ではない。どのように加熱され、どのような構造を作った食品なのかが、消化性を読む入口になる。[1]

冷水でさっと締めた麺と、製造工程で構造を調整したでんぷん食品を、同じ「冷たいもの」の箱に入れると話が飛ぶ。レビューでは、従来の蒸し工程と、熱やせん断を加える押出加工でも構造の整い方が異なるとされている。消化性を左右するのは、食べる瞬間の温度という単独の札ではなく、加工を含んだ構造である。[1]

夜の台所で知りたいのは、研究の工程を再現する方法よりも、研究から何を借りられるかだ。借りられるのは、加熱と冷却の履歴を無視して「うどんは全部同じ」と考えない視点である。涼皮は小麦でんぷんのゲル食品なので、このレビューを、そのまま家庭のうどんの冷却時間表にすることはできない。[1]

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消化されにくいとは、胃に優しいという意味か

麺の研究でいう消化性は、しばしば食品に消化酵素を作用させ、でんぷんが分解される様子を調べたものだ。たとえばリンゴ酸で加工した小麦でんぷんを麺に配合した食品実験では、配合量の増加に伴い、速く消化されるでんぷんが少なくなり、難消化性でんぷんが多くなった。これは食品中のでんぷんの分解の話である。[18]

難消化性でんぷんとは、消化酵素で分解されにくいでんぷんだ。この実験では、原料でんぷんを化学的・物理的に加工してから麺を作っている。評価対象は加工でんぷんを配合した麺の品質と消化性であり、人ではない。食品に酵素を作用させる実験から、生体内で胃から食べ物が送り出されるまでの時間や、胃もたれ、就寝前の快適さは判断できない。18〜39歳の女性にそのまま当てはめて、冷たいうどんの食べやすさや適量を決める根拠にはできない。[18]

日常語の「消化にいい」は広い。軟らかい、食べやすい、胃に残る感じが少ない、といった経験が同じ言葉に入ってくる。一方、研究の「分解されにくい」は、酵素と食品構造の関係を表す。うどんを選ぶときは、自分が求めているのが食べやすさなのか、でんぷんの分解の遅さなのか、まず言葉を分けるとよい。[18]

硬さから消化性を一直線に推測するのも難しい。リンゴ酸加工でんぷんを多く配合すると難消化性でんぷんは増えたが、食感や伸び、調理品質には不利な変化も生じた。研究では小麦粉の10%を置き換えた配合が、品質を保ちながら難消化性でんぷんを確保する点で適すると判断された。食べる側の好ましさと、酵素への抵抗性は別々に確かめる項目なのである。[18]

加工条件を具体的に見ると、家庭の冷却との距離がさらに分かる。リンゴ酸加工でんぷんの実験では、元の小麦でんぷんに濃度4 Mのリンゴ酸を加え、130℃で7時間加熱して原料を作った。その後、小麦粉の5〜30%をこの原料で置き換えて麺を製造している。できあがった麺を冷蔵庫に入れる操作とは、出発点も処理も異なる。[18]

研究の加工でんぷんには、熱に対して安定な難消化性でんぷんが多いという特徴があった。したがって、そこで得られた結果を、家庭で冷やした麺を温め直したときの結果として引用することもできない。再加熱という言葉が気になったら、何を加工した食品なのかに立ち戻る。研究の工程を読むことは、台所でまねをするためではなく、別の操作を同じ効果だと思わないために役立つ。[18]

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元の小麦が違えば、冷やす前から条件が違う

「小麦でんぷん」と一括りにしても、中身は均一ではない。デュラム小麦の異なる系統から取り出したでんぷんを比較した食品実験では、見かけのアミロース含有率が36.6〜65.7%の試料が調べられた。アミロースは、でんぷんを構成する成分の一つである。研究はその割合と、構造、加熱時の性質、消化性との関係を見ている。[19]

アミロースの割合や、もう一つのでんぷん成分であるアミロペクチンの長い枝の割合が増えるにつれて、結晶の型、糊化する温度、老化の速さが変化した。生の状態で測った難消化性でんぷんも増え、高アミロースの試料は調理後にも最も高い酵素抵抗性を保った。原料の違いが、加熱後までつながっていたわけだ。[19]

この結果を読むと、冷やしたかどうかだけで麺を順位づけすることの難しさが見える。同じように冷えた器でも、元の原料のでんぷん構造には違いがある。研究では原料段階で性質が分かれているので、温度だけをそろえて「こちらの方が消化されにくい」と決めるには比較する条件が足りない。[19]

ただし、この試験の対象は分離したデュラム小麦でんぷんである。うどんの袋に研究のアミロース含有率を重ねるのは適切ではない。家庭で役立つ読み方は、特定の割合を探し回ることより、別の原料や加工法で得られた数値を、目の前の麺の値として扱わないことだ。冷蔵庫に入ったという共通点だけでは、原料の差は消えない。[19]

再結晶化が進めば、必ず分解が遅くなるのか

構造がまとまれば酵素が作用しにくくなる、という筋道は重要だが、ほかの成分が関わると結果は単純ではない。小麦でんぷんにタンニン酸を加え、老化させる期間を変えた食品実験は、その点をよく示す。タンニン酸の添加量が5%と10%の場合には消化性が高まり、20%では反対に低下した。[17]

低い添加割合では、タンニン酸がでんぷん分子同士の相互作用を妨げ、老化中の長い範囲にわたる秩序を減らしたことが、分解されやすさにつながった。一方、高い割合では遊離したタンニン酸が増え、消化酵素の働きを抑える作用が主に消化性の低下に関わった。同じ成分を増やす途中で、結果の向きが変わっている。[17]

ここでは、再結晶化に関わる構造と、酵素自体の働きという別の経路が競合している。したがって「結晶が増えたから、この割合だけ消化が遅い」という一本の物差しでは読み切れない。この実験は、食品の構造を知ることと同時に、何が酵素に作用しているかを見る必要を示すものだ。[17]

もちろん、これは家庭のうどんにタンニン酸を加える提案ではない。実験で調整した添加割合を、つゆや飲み物の組み合わせに読み替えることもできない。ここから持ち帰るのは、でんぷんの老化だけを主役にすると、同じ食品の中で進む別の変化を見落とす、という読み方である。夜食の工夫を一つの成分に託しすぎないための例になる。[17]

数字で読む麺とでんぷんの実験

36.6〜65.7%:デュラム小麦でんぷんの比較実験で扱った見かけのアミロース含有率。家庭の麺の表示値ではない。[19]

5%と10%:タンニン酸の添加で、小麦でんぷんの消化性が高まった条件。[17]

20%:同じタンニン酸の実験で、消化性が低下した添加条件。少量の条件とは結果の向きが違う。[17]

32.0%から45.0%:ダッタンソバを含む中空麺で、液体予備発酵を用いた場合の難消化性でんぷんの変化。[5]

10%:リンゴ酸加工でんぷんを配合した麺の研究で、品質との両立に適するとされた置換割合。[18]

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宮川涼 Founder

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