運動習慣の調査は匿名なら正直に答えられる?記名と申告のずれを分けて読む

運動習慣の調査で匿名なら正確に答えられるのか。よく見られたい気持ちによる申告のずれと、測られて行動が変わる現象を分け、レビューや比較試験から考える。記名の有無だけで数字を信用せず、回答を誰が読むか、質問の対象と測定方法を確認し、実際の生活を答えるための視点を示す。

職場で届いた運動習慣のアンケート。名前を書く欄を見て、行く予定だったヨガまで「通っている」に入れたくなる。匿名と書いてあれば、その迷いは消えるのだろうか。

答えの芯は、匿名という条件だけでは申告の正確さは保証できない、ということだ。身体活動の測定には、社会的望ましさ、つまり周囲から好ましく見られる方向へ回答が寄る問題がある。身体活動の疫学を扱うレビューも、測定誤差とこの偏りを測定上の課題に挙げている。ただし、そこから匿名と記名の差の大きさまでは決められない。[2]

既存記事「運動習慣のアンケートは正確に答えられる?一週間の記憶と活動量計のずれを読む」には、思い出し方と機器との比較を譲る。ここで考えるのは、答えを見る相手を意識する場面だ。スポーツ庁の運動習慣調査を検索して来た人にも、特定の調査の匿名性を推測するのでなく、回答前の説明と公表数字をどう読むかという視点を届けたい。

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匿名という表示と、答えの正確さは分けて考える

最初に、名前を書くかどうかと、活動を正しく測れているかを別の問いにしよう。調査票に氏名欄があるかは、その紙や画面で確認できる。一方、どの程度の活動をしていたかは、質問が何を尋ね、回答者が何を数えたかに関わる。子どもと青年の身体活動測定を扱うレビューは、頻度、時間、相対的な強度を、活動の種類ごとに把握する重要性を示している。子どもと青年の測定を扱った整理なので、18〜39歳の女性での精度をそのまま保証するものではなく、質問の内容を確認する視点として使いたい。[12]

たとえば「運動しているか」と聞かれたとき、レッスンの予約を思い浮かべる人と、実際に参加した場面を思い浮かべる人では、答えの材料が違う。これは説明のための例だ。名前を消す前に、予約と参加を区別する必要がある。回答が匿名でも、問いを自分に都合よく広げてしまえば、書かれた数値をそのまま生活の記録とは扱えない。自己申告には不正確な評価、想起の偏り、社会的望ましさが関わるという整理とつながる。[12]

また、氏名を書かないことと、誰にも回答を結び付けられないことを、読み手が同じ意味だと決めない方がよい。ここでは制度上の定義を暗記するより、調査の説明で確かめたい。「誰が回答を見るか」「個人ごとの回答がどこまで共有されるか」「集計結果がどんな形で出るか」を読むのである。記名欄だけを見て安心や不安を決めるより、実際の取扱いを確認するための読み方だ。

この確認を、匿名なら何割正直になるという効果の説明に置き換えてはいけない。身体活動のレビューが指摘する偏りは、測定方法の検討課題である。[2][12] 匿名表示は調査票の条件の一つとして読み、その条件が正確さをどれほど変えたかは別の比較で判断する。安心できる説明と、検証された精度は、それぞれ確かめる対象が異なる。

質問票には、費用と回答負担を抑えて活動を把握できるという利点もある。子どもと青年の食事調査における測定を扱ったレビューは、限界がありながら質問票が広く用いられる理由として、この実施上の利点を挙げている。[12] 自己申告というだけで調査を捨ててしまうと、多くの人から生活の情報を集める方法の役割まで見失う。

たとえば、仕事帰りの活動を尋ねる場面を考えよう。「何となく動いた」ではなく、何をしたか、どれくらい続けたか、どの程度きつく感じたかという別々の情報にする。これは特定の調査の回答区分を変更する提案ではなく、頻度、時間、相対的強度を捉えるというレビューの視点を理解するための例だ。[12] 実際に回答するときは、その調査の説明に従って当てはめる。

調査を作る側の視点でも、活動の中身を尋ねることと、回答の取扱いを説明することは、どちらかを済ませればよい関係ではない。活動を細かく尋ねても、何のための回答かが読み取れなければ、答える人は説明文を読み直す必要がある。逆に取扱いの説明が明確でも、活動の時間や種類を捉える課題は残る。[12] 回答欄に向かう前に、測りたいことと答える条件を別々に確かめよう。

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よく見られたい回答と、実際の行動を測り分ける

社会的望ましさという言葉は、回答者を責めるためのものではない。「運動する人でありたい」という願いと、「実際に何をしたか」の報告を区別するために使う。研究では、身体活動への自己効力感、つまり自分なら実行できるという見込みと、行動との関係にも、この回答傾向がどう影響するかが検討されている。[11]

ヒューストン地域の男子青年473人、年齢10〜14歳を対象にした分析では、社会的望ましさ、身体活動の自己効力感、果物・野菜の摂取に関する自己効力感を質問票で測った。身体活動には加速度計も用いた。実際の参加者では、自己効力感と行動の相関は、社会的望ましさを調整してもしなくても小さかった。10〜14歳の男子の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめて、偏りの大きさを判断することはできない。[11] 「できると思う」と「動いている」は、同じ答えではなかったのである。

同じ研究には、分析方法の働きを確認するためのシミュレーションもある。関係が存在するように作ったデータでは、社会的望ましさを調整すると見かけの関係が大幅に弱まった。ただし、それを実際の参加者で同じ大きさの偏りが見つかったと読み替えてはいけない。観測した集団の結果と、モデルの性質を示す仮想データの結果は別だ。[11]

これを大人の生活に下ろすなら、「これから通えると思うか」と「対象期間に参加したか」を別々に答える、という工夫になる。中央線の車内で来月の予約を入れた自分は、確かに前向きだ。しかし予約画面は出席簿ではない。意欲を否定する必要はなく、意欲の欄と実績の欄を混ぜないようにする。これは研究で測り分けた自己効力感と行動を参考にした、回答時の整理である。[11]

なお、この男子青年の分析から、成人女性が記名式で活動をどれほど多く申告するかは決められない。[11] 性別や年齢の違う集団にそのまま数字を移すより、何を別々に測ったのかを持ち帰りたい。名前を書くことが気になったときほど、「評価してほしい自分」ではなく「質問された期間の行動」を材料にするのである。

問い方を変えても、申告が変わらない試験もある

社会的望ましさを知ると、今度は「質問に評価の雰囲気があれば、必ず答えが変わる」と考えたくなる。だが、そう単純でもない。オーストラリアの大学生を対象とした無作為化試験は、質問の前置きが飲酒の申告を変えるかを調べ、予想された偏りを確認できなかった。対象は大学生であり、18〜39歳の女性の運動申告にも同じ結果が出るかは、この試験では判断できない。[9]

参加者は3,594人で、平均年齢は27歳だった。飲酒量の質問に直接進む群と、その前に依存や問題に関する質問に答える群へ、無作為に割り付けられた。先に問題を意識させれば、後の飲酒量を控えめに答えるのではないか、という検証である。両群に示した飲酒量の質問自体は同じだった。[9]

直前の4週間に飲酒した参加者を主な分析対象としたところ、飲酒日数の平均は5.89日対6.06日、飲酒日の通常の杯数は4.02杯対3.82杯だった。いずれも統計的に有意な群間差は認められなかった。[9] 少し違う平均が並んでいるだけでは、質問の前置きによる影響があったとは判断できない。

これは飲酒を対象にしたウェブ調査であり、運動調査の匿名対記名の比較ではない。[9] だから「運動でも影響はない」と結論するのは行き過ぎだ。一方で、「健康に関する質問は評価を意識させれば必ず歪む」と言い切る根拠にもならない。偏りの可能性を挙げることと、その場で偏りが起きたことを示すことの間には、比較が必要なのである。

この区別は公表結果を読むときにも役立つ。回答方法が違う調査の割合を見て、差の理由を名前の有無だけで説明したくなったら立ち止まろう。対象者や問い、回答条件をそろえた比較なのかを先に見る。匿名性を検討する問いに、質問の順序を変えた試験の結果を代用しない。似た言葉で語れる問題でも、実際に動かした条件は違う。[9]

数字で読む申告と測定の研究

男子青年473人の分析:実際の集団では、自己効力感と行動の相関は調整の有無によらず小さかった。[11]

大学生3,594人の無作為化試験:飲酒に関する前置き質問による申告の偏りは確認されなかった。[9]

31研究の質的統合:デジタルでその時々に測ること自体の影響を調べたレビューの規模である。[3]

統合効果量0.27〜0.30:測定への反応は小さいながら意味のある大きさで、運動時間や匿名性の改善率を表す数字ではない。[3]

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宮川涼 Founder

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