目先の報酬を選ぶ傾向と体重の関係 59研究で半数ずつに分かれた関連の有無

目先の小さな報酬を選ぶ傾向と体重の関連は、研究によって異なる。関連を支持する研究と、小さいとする分析を照らし合わせる。お金の選択課題、実際の食事量、減量の成績は別の指標である。運動や未来を思い描く介入の結果も確かめ、意志の強さで体重を説明する見方から距離を置く。

同じ「先のことより、いま欲しいものを選ぶ」という傾向を調べても、体重との結びつきを認める研究と、ほとんど認めない研究がある。肥満に関わる行動の指標として期待するレビューの隣に、その関連を慎重に扱うべきだとする分析が並ぶ。自制心という言葉で片づけるには、論文同士の足並みがそろっていない。[2][3]

この食い違いは、自分を責める材料を増やすより、何を測ると何が分かるのかを考える入口になる。目先のお金を取る選択、食べ物への欲求、食事で口にした量、体重の変化。これらを同じものとして読むと、研究が実際に答えた範囲を越えてしまう。[2][15][17]

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待ち時間が延びると、報酬の魅力はどう変わるか

研究の中心にあるのは、報酬を受け取るまでの時間が長くなるにつれて、その報酬の価値を低く評価する傾向である。たとえば、いま受け取る少額と、後で受け取る多額との選択を比べる。先の大きな報酬より、目の前の小さな報酬を選びやすいほど、待ち時間による価値の低下が急だと捉える。この説明は、肥満の行動指標を検討したレビューに基づく。[3]

日常の言葉では「待てるかどうか」に近い。しかし研究が扱うのは、ただ長く待った時間ではなく、時間と報酬の大きさを組み合わせた選択である。お金を使った課題を食事の話に読み替えるときには、報酬の種類が変わっていることも意識したい。金銭を用いた研究の結果が混在する背景を調べた系統的レビューは、測り方の違いに着目している。[4]

食べ物の場合には、もう一つ別の軸がある。その食べ物を得るためにどれほど行動したくなるかという、食物の報酬としての強さである。食べ物の魅力の強さと、先の報酬を待ちにくい傾向を組み合わせて考えるレビューでは、両者の相互作用が摂取エネルギーの予測に関わると論じられている。食べたい強さと待ちにくさは、区別しながら関係を見る指標なのである。[5]

ここで使うBMIは、身長に対する体重の指標である。多くの研究がBMIや肥満の有無を調べている一方で、身体の変化を追っているか、その時点の違いを比べているかは研究ごとに異なる。レビューは、どの用途でこの指標を使えるかを分けて検討している。[2][3]

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関連を認めた研究と認めない研究が、ほぼ並んだ

金銭の報酬を使った研究を検討した系統的レビューとメタ回帰では、59研究が対象となった。そのうち29研究は、先の報酬の価値を大きく下げる傾向と肥満に有意な正の関連を認め、別の29研究は関連を認めなかった。両方とも49.2%である。「研究で関連があった」という一言だけでは、この並び方が見えなくなる。[4]

研究者はそこで、課題の設計や値の推定方法に注目した。適切とされた測定モデルを用いた研究では、関連を認める割合が高かった。また、仮の選択だけを尋ねる課題より、選択が実際の報酬に結びつく設計のほうが、正の関連を報告する割合が高かった。両方の条件を満たした研究はすべて正の関連を認めたが、該当する研究は5件である。[4]

実際の報酬に結びつく課題では16研究中10研究、仮の選択を尋ねる課題では43研究中19研究が正の関連を報告した。割合はそれぞれ62.5%と44.2%だった。選んだ答えに現実の結果が伴うかどうかが、研究の結論を比べる際の着眼点となる。[4]

これに対し、381人の新しいデータとベイズ分析を示した研究では、お金を報酬にした課題でも、減量を報酬にした課題でも、BMIとの関連を支持しなかった。BMIが時間とともに増える速さに、この選択傾向が関わるという提案についても支持は得られなかった。食事の代わりにお金を聞いたから関連しなかった、とだけ説明することも難しい結果である。[2]

同じ論文のメタ分析では全体として小さい相関が示されたが、共有されるばらつきは2.25%だった。著者らは研究間の違いも大きいとして、相関の解釈に強い注意を求めている。共有分散とは、2つの指標が共通して動く部分を表す分析上の値である。[2]

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大きなレビューも、体重の予測には慎重である

肥満の行動指標としての可能性を検討したレビューは、153本の論文を扱った。肥満の人とそうでない人を区別するなど、複数の領域では指標としての有用性を支持する証拠がある一方、体重変化の予測では証拠が限られるか、結果が混在すると整理した。リスクの把握、診断、進行の追跡、治療成績の予測、治療効果の測定という用途ごとに証拠を評価している。[3]

この区別は、減量を始める人にとって大切である。ある時点で体重の重い集団に特定の選択傾向が多くても、同じ傾向のある人が今後必ず増量するとは限らない。まして、選択課題の成績からその人の努力や暮らしを採点することは、レビューが検討した有用性とは別の話になる。研究上も、進行の追跡、治療結果の予測、治療効果の測定は分けて評価されている。[3]

年齢の異なる対象も混ぜずに読みたい。10〜12歳の子どもを対象とした研究では、3,819人のデータで、金銭報酬を待ちにくい傾向とBMIおよび腹囲身長比の標準化した値との関連が認められた。腹囲身長比は腹囲を身長に対して見る指標である。金銭報酬の課題と体格の連続的な指標を組み合わせ、初期の思春期に焦点を当てた解析だった。[19]

子どもの研究では、報酬に関わる脳の領域である側坐核と、ほかの領域との機能的なつながりも調べた。そのつながりと体重の指標には関連があったが、報酬を待ちにくい行動とBMIとの関係を、その脳のつながりが媒介するとは認められなかった。脳のつながりとBMIの解析には1,817人が含まれ、行動と脳のつながりは、それぞれ独立して体格と関連すると結論された。[19]

数字で読む報酬の選択と体重

59研究:金銭報酬の課題と肥満との関連を検討した系統的レビューの対象数である。[4]

29研究ずつ:正の関連を認めた研究と、関連を認めなかった研究の数である。[4]

2.25%:別のメタ分析が示した共有分散であり、因果の割合を示す数字ではない。[2]

153本:行動指標としての可能性を検討したレビューの論文数。体重変化の予測には混在した結果が残った。[3]

3,819人:初期の思春期を対象に、報酬の選択と体重の指標との関連を認めた研究の解析人数である。[19]

課題の成績が変わっても、食べる量は別に確かめる

実験で選択傾向を変えられれば、体重との関係をもっと直接に探れる。選択傾向を小さくする方法を集めた系統的レビューとメタ分析は、92本の論文を評価した。多くの方法で選択傾向の変化が認められたものの、効果の大きさには違いがあった。問いの示し方や直前に与える情報を変える方法は、主にその場の選択への介入として整理されている。[14]

同レビューでは、学習を基盤とする方法の効果が最も大きく長続きしたとされる。一方、日常や臨床の場へどれほど広く適用できるかは、さらに検証すべき課題とされた。実験で変えられるという結果は、「性格だから変わらない」という決めつけを弱める。レビューが比較したのは、効果の大きさだけでなく、その場の選択への作用と、持続する意思決定の変化という時間的な違いでもあった。[14]

具体例が、未来の出来事を思い描く「エピソード的未来思考」である。糖尿病のリスクがある過体重・肥満の成人を対象に、将来の出来事を考える条件と、最近の出来事を考える対照条件を比べた研究では、未来を考える条件で、先の報酬の価値を下げる傾向が小さくなった。ところが、同時に測ったファストフードへの需要には、有意な効果を認めなかった。[15]

この研究では2回のセッションにわたり、開始時の評価と、思考や文章の条件を与えた際の評価を行った。糖尿病のリスクは体格だけでなく、血糖の長期的な状態を表すHbA1cが前糖尿病の範囲か、それに近いことでも捉えられている。未来思考だけでなく、経済的な不足を描く文章の効果も同じ実験で検討した設計である。[15]

別の角度から同じ問題を調べたのが、血糖を操作した若い男性の実験である。やせた男性20人と肥満の男性20人が、低血糖の条件と通常の血糖の条件を経験した。同じ参加者が両方の血糖条件を経験する交差試験で、条件の順序を釣り合わせて比較している。採血によるホルモンの評価と、症状に気づいているかを尋ねる質問票も組み合わせた。食事量は、血糖を正常化した後の一定のビュッフェと、その後の間食の試験で評価された。実験を通して肥満の男性のほうが先の報酬を待ちにくかったが、血糖の条件によってその課題の成績が変わるという有意な差はなく、課題の成績と実際の食事量との相関も認められなかった。[17]

しかも、低血糖の後に血糖を正常化してから測った高エネルギーの食事の摂取量は、肥満の男性では通常の血糖条件の後より多かった。食事量が変わった場面でも、報酬の選択課題が同じように変わるとは限らなかったのである。血糖が下がった際のホルモンによる調節反応は両群で認められ、ACTH、ノルエピネフリン、グルカゴンの反応は肥満の男性で強かった。[17]

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宮川涼 Founder

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