ワイドスクワットはゆっくりほど効く?一回の秒数と扱える重さの交換関係を読む

ワイドスクワットをゆっくり行うと、負荷を受ける時間は延びても、扱える重さや反復回数は変わる。筋肥大のメタ分析、女性の筋力試験、スクワットの比較研究から、その場のきつさと長期の成果を分けて読む。足幅への当てはめの限界と、テンポを変えた日の記録の仕方も考える。

ワイドスクワットで腰を下ろしながら数えていると、立ち上がる前に脚のきつさが増してきた。回数は少ないのに脚が忙しい。これなら軽い重りでも十分なのか、それとも回数を減らしてしまったのか。数える声だけは、妙に落ち着いている。

答えの芯は、ゆっくりすることで負荷を受ける時間は延びるが、扱える重さや同じ重さでできる回数が下がりやすい、という交換関係にある。筋肉の成長を考えるには、秒数に加えて負荷や反復の条件も見る必要がある。筋肥大を扱ったメタ分析では、条件を満たす試験の範囲で、反復時間が0.5〜8秒の成果は同程度だった。[9][15]

ただし、これはワイドの足幅で内ももへの効果を比較した答えではない。ここでは一般の筋力トレーニングとスクワットのテンポ研究から、時間・重さ・回数の関係を読む。既存記事「ワイドスクワットは疲れる前に終える?速度の低下と続けた筋力の伸びを読む」にセットを終える判断を譲り、こちらは最初から決めた速さを変えると何が入れ替わるかに絞る。[5][9][15]

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ゆっくりの中身は、下りる時間と立つ時間で違う

「ゆっくり行った」と記録するだけでは、動きのどこを変えたのか分からない。反復時間は、筋肉が力を出して短くなる局面、力を出しながら伸ばされる局面、動かず保持する局面の時間を合わせたものである。筋肥大のメタ分析も、これらを合わせた反復の長さを比較している。下降だけを延ばす場合と、上昇まで遅くする場合は、別の条件として考える必要がある。[15]

スクワットの比較試験では、下りる動作を遠心性局面、立ち上がる動作を求心性局面として時間を設定している。筋トレ経験のある男女30人を対象にした交差比較では、下降2秒・上昇1秒の通常テンポと、下降4秒・上昇2秒の遅いテンポで、バーベルスクワットを各3セット行った。どちらも、もう反復できないところまで行う条件だった。対象は男性22人と女性8人の筋トレ経験者であり、18〜39歳の女性全体へ同じ結果を直接当てはめるには慎重さが必要だ。[18]

この試験を家での練習に読み替えるなら、「前よりゆっくり」という感想を、下降と上昇のどちらを変えたかという記録へ置き換えるのが出発点である。下りる時間だけを変えたつもりでも、立つ時間まで変わっていれば比較の意味は変わる。研究でテンポを分けている理由を、日常のメモにも持ち込むのである。[9][18]

さらに、足幅を広げることと時間を延ばすことは別の設定である。今回扱うスクワット試験は、ワイドの足幅に限って優劣を決めるものではない。そのため、下降時間の研究から「内ももに最も効く秒数」を作ることはできない。まず読むべきなのは、そのテンポでどの程度の負荷を扱い、何回続け、どんな反応を測ったかである。[5][18]

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同じ重りでも、テンポが変われば運動量は変わる

2020年のミニレビューは、テンポを遅くすると、1回だけ持ち上げられる最大重量、使用可能な負荷、一定の負荷で行える反復回数が下がる一方、負荷を受ける合計時間は延びると整理している。ここでいう最大重量が1RMである。いつもの重りを使っていても、時間の設定を変えれば、その重りの難しさは同じではなくなる。[9]

女性のデータもある。少なくとも1年の筋トレ経験がある女性21人、平均年齢23.4歳を対象にした無作為化交差試験では、ベンチプレスの下降を2秒、4秒、6秒に変え、上昇は最大速度を意図して行った。下降2秒の最大重量は、4秒、6秒の条件より有意に大きかった。下降を長くしたときの筋力テストは、同じ人の別条件でのテストになるのである。[12]

これは上半身の種目であり、ワイドスクワットの重さが同じ割合だけ下がるという意味ではない。それでも、「同じ人だから、同じ重さを扱えて当然」と考える前提には修正が必要だと分かる。テンポを変えた日に重りを軽くしたとしても、それだけで後退とは判定できない。負荷条件そのものが変わっているからだ。[9][12]

反復回数にも同じ問題がある。少なくとも5年の筋トレ経験がある男性16人の交差試験では、ベンチプレスを最大重量の70%で5セット行い、下降6秒・上昇2秒と、下降2秒・上昇2秒を比較した。いずれも反復の限界まで行った結果、遅い条件では回数が少なく、負荷を受ける時間は長くなった。この比較では、回数の減少と時間の延長が同時に起きた。18〜39歳の女性のワイドスクワットに、その変化の大きさまで直接当てはめることはできない。[11]

家のノートに回数だけが並んでいると、この違いが消えてしまう。昨日より回数が減ったという事実と、昨日より短い練習だったという判断は別である。逆に、長く耐えたから扱った負荷の総量まで増えたとも限らない。研究の比較では、重さと反復で見る量と、時間で見る量が別々に動いている。[9][11]

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長く耐えた感覚と、筋肉が育つ結果を分ける

筋肉の成長を知りたいなら、その場の反応だけでなく、続けた後の筋肉の変化を測った研究が必要になる。2015年の系統的レビューとメタ分析は、慢性的な病気やけがのない人を対象とし、少なくとも6週間続けた8研究をまとめた。含まれたのは、適切なフォームを保って次の反復ができなくなるところまで行う試験である。[15]

その範囲では、反復時間0.5〜8秒で筋肥大の結果は同程度だった。意図的に1回を10秒超にする極端に遅い方法は、不利な可能性が示されたが、比較試験が少なく、確定的な線引きではない。「遅いほどよい」という単純な順位は支持されず、「8秒を超えるとすべて無意味」という境界線も作れない。[15]

対象が反復の限界まで行う試験だった点も大切だ。家で余裕を残して行うワイドスクワットが、同じ成果になると保証する数字ではない。また、筋肥大は筋肉の大きさの変化であり、内ももの脂肪が減ることや、服の見え方が変わることとは評価が異なる。ここでの問いは、テンポによって筋肉の成長が増すかどうかにとどまる。[15]

長期の筋力と筋肥大を整理した2021年のレビューも、テンポの違いによる適応を一律に決めることの難しさを扱っている。動きの局面ごとの時間、負荷、量などが関わるため、単独の秒数だけを万能な条件にするのは適切ではない。好みのテンポを選ぶことと、そのテンポが全員に最善だと主張することの間には距離がある。[10]

一方、先ほどの男性16人のベンチプレス試験では、遅い条件で運動直後の乳酸や一部のホルモン反応が大きかった。対象は筋トレ経験の長い男性で、18〜39歳の女性に反応の大きさを直接当てはめる根拠にはならない。短い時間に何が起きたかを知る点では意味があるが、それをそのまま将来の筋肉の増加量に置き換えない。直後の反応を測る研究と、筋肉の形態を継続して測る研究では、答える質問が違う。[11][15]

スクワットでは、同じ終え方でも時間の影響が残る

健康な男性12人の無作為化交差試験では、平行の深さまでのスクワットを、下降が爆発的な速さ、自分で選んだ速さ、4秒という条件で比較した。各条件は5セットで、立ち上がる速度が20%低下するまで続け、セット間の休憩は300秒だった。止める基準をそろえたうえで、下降時間を変えた比較である。対象が男性であるため、18〜39歳の女性にも同じ大きさの反応が生じるかは、この比較だけでは判断できない。[5]

下降4秒では、爆発的な下降に比べ乳酸の増加が大きく、平均値は3.82対2.89 mmol/Lだった。また、負荷を受ける時間や筋肉の酸素状態の反応も大きかった。この結果は、同じ速度低下で終える設定でも、下降の長さによって運動中の代謝反応が変わることを示している。[5]

ただし、測ったのはその日の反応であり、内ももの筋肉がどれだけ増えるかではない。乳酸の数字を、脂肪が使われた量へ読み替えることもできない。検索窓の「効く」は便利だが、研究の中では負荷時間、乳酸、筋肉の大きさといった別々の項目に分かれる。何に効くかを決めると、数字の読み違いが減る。[5][15]

ここでの20%は、開始時から立ち上がる速度がどれだけ落ちたかという終了基準であり、最大重量に対する重さの割合ではない。下降4秒という時間の設定と、速度低下という終了設定が併用されている。数字に単位と役割を添えなければ、同じ研究の中でも別の条件を混同してしまう。家での練習へ使う際も、終了基準まで同じにした比較だという点を残して読みたい。[5]

数字で読むテンポと負荷

8研究:少なくとも6週間の筋肥大試験をまとめたメタ分析の対象となった。[15]

0.5〜8秒:そのメタ分析で筋肥大が同程度だった反復時間の範囲である。[15]

21人:下降時間を変えてベンチプレスの最大重量を比較した、筋トレ経験のある女性の人数に当たる。[12]

3.82対2.89 mmol/L:男性のスクワット試験で、下降4秒と爆発的な下降を比較した乳酸増加の平均値を示す。[5]

30人:通常テンポと遅いテンポのスクワットを反復の限界まで比較した男女の人数である。[18]

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宮川涼 Founder

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