未来の食卓や外出の場面を具体的に想像する練習は、目先の食べ物の選び方を変えるのか。エピソード的未来思考のメタ分析と、間食・フードコート・ネットの食品購入の実験をたどる。将来の報酬を低く評価する傾向の改善と実際の食事の差、体重への期待を分け、自分で試す場面の選び方まで考える。
ネットスーパーの画面を開いたまま、来週、家族と食卓を囲む場面を思い浮かべる。並んだ料理の湯気、向かい側に座る人、食後に片づける自分。買い物かごの横に、まだ来ていない食卓を置いてみる。
過体重または肥満で家庭の主な食品購入を担う母親を対象に、未来の出来事を想像してからネットで食品を買う課題を行った実験がある。想像の練習をした群では、比較した群より家族1人当たりの購入エネルギーが少なかった。[9] 画面の商品を変えずに、選ぶ人の頭の中にある時間を変える試みである。
ただし、買った食品、実際に食べた量、数か月後の体重は別々の結果だ。未来を思い描く研究では、その距離を見失わないことが大切になる。[5][10] イメージの活用全般は「イメージトレーニングで間食は減るのか」の記事に譲る。ここでは未来の具体的な出来事と、目先の報酬の選び方に焦点を絞る。

未来の場面をつくる練習は、目標の宣言とどう違うか
エピソード的未来思考とは、これから起こりうる出来事を、生き生きと想像する心の働きである。フードコートで食事量を調べた試験も、この定義に沿った介入を使っている。[12] 「健康になりたい」という目標だけを掲げるより、未来のある出来事に自分が参加している形にする。どこにいて、何をし、どんな気持ちで過ごすかという場面が中心になる。[13]
たとえば「いつか体を軽くしたい」は願いの言葉だ。「次の休日、友人と出かけ、昼食を選んでいる自分」は場面の言葉になる。未来の自分への標語を増やすより、そこで起きる出来事に輪郭を与える発想である。[13]
金銭や健康に関わる、現在と将来の利益を選ぶ研究をまとめたメタ分析では、48論文から174の効果量が統合され、全体の効果量はg=0.44、95%信頼区間は0.33〜0.55だった。著者らは中程度の効果と評価している。未公表の実験も含め、残る出版バイアス、つまり結果の出方で公表されやすさが違う影響を調整しても、効果は有意だった。[13]
興味深いのは、どんな未来でも同じように働くわけではないことだ。想像した出来事が肯定的で、鮮明で、後で受け取る利益に関わる選択と結びつくほど、効果は大きかった。出来事としての具体性と、未来に向いていることにも、それぞれ寄与を示す証拠があった。[13] 「将来は大切だ」と一般論を考えるだけでは、この練習の特徴を十分に捉えられない。
ここから日常への応用を考えるなら、未来の自分を立派に描くことに力を使い過ぎなくてよい。思い浮かべる対象を、実際に自分が参加しそうな出来事にする。そのうえで食事の選択を扱いたいのか、ほかの選択を扱いたいのかを区別する。場面の内容を吟味する理由は、食べ物を含む想像と含まない想像で、間食への結果が分かれた実験にある。[18]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
将来の報酬を低く評価する傾向は、食べ方をすべて説明する点数か
この研究でよく登場する将来の報酬を低く評価する傾向とは、将来に受け取る報酬の価値を、今すぐ受け取る報酬に比べて低く評価する傾向を指す。[1][3] 待つ時間によって価値が小さく感じられることを扱う研究用語である。目の前の小さな利益と、待った先の大きな利益のどちらを取るかを調べる。[3]
食べ物の選択には、そもそもその食べ物をどれほど欲しいかという側面もある。食べ物を得るために行動する動機の強さと、報酬を待つことの難しさを合わせて考える総説では、両者の相互作用がエネルギー摂取を予測すると論じている。[1] 未来の価値だけで食事を説明しようとすると、現在の食べ物そのものの魅力が抜け落ちる。
肥満との関連を調べた結果には、研究方法による違いがある。金銭報酬を使った将来の報酬を低く評価する傾向と肥満の関係を調べた系統的レビューは59研究を集めたが、有意な正の関連を認めた研究と、関連を認めなかった研究は、それぞれ29本ずつだった。[3] 適切な推定方法と、実際の報酬に結びつく実験の両方を用いた5研究では、すべて有意な正の関連が報告された。[3] また、健康な若い男性を調べた交差試験では、肥満の男性はやせた男性より、実験を通して将来の報酬を低く評価する傾向が高かった。[20]
このレビューでは、測定や推定の方法、実際の報酬と結びついた実験かどうかによって、結果の現れ方が違った。著者らは、研究方法のばらつきが、それまでの証拠の混在につながると考察している。[3] 研究を比べるには「将来の報酬を低く評価する傾向を測った」という共通点だけでなく、何を報酬にし、どう選んでもらったかまで見ることになる。
さらに、女子大学生94人の実験では、未来思考は将来の報酬を低く評価する傾向を小さくしたが、その値と摂取エネルギーには関連が見られなかった。[18] 目先に偏る選択の指標を変えられたことと、その変化を通じて食事量が減ったことは、証明の段階が違う。研究の点数は食べ方の一面を照らすが、食卓全体の採点表にはならない。
この区別は、自分を責めないためにも役に立つ。食品を選ぶたびに「未来を大事にできたか」という人格の審査をする必要はない。試す対象は、ある場面で使う思考の練習である。将来の報酬を低く評価する傾向と肥満の関連に関する研究にも混在があり、実際の摂取との関係が見られない実験もある以上、体形から本人の意志の強さを逆算する読み方は避けたい。[3][18]
メタ分析では、選び方と食べ物の結果に大きさの差があった
過体重または肥満の成人951人を含む12研究を統合したメタ分析では、未来思考によって、将来の報酬を低く評価する傾向と、その後の実際の食品選択に有意な改善が見られた。効果量は、将来の報酬を低く評価する傾向がg=0.55の中程度、食品選択がg=0.31の小さい効果だった。[10] 同じ練習でも、心理課題の結果と食べ物の結果で、変化の大きさはそろっていなかった。
このgという数字は、研究ごとに異なる測定をそろえて比較するための効果量である。体重が何kg減るかや、食べる量が何割減るかをそのまま表す値としては読めない。[10][13] 食品選択のg=0.31と選択課題のg=0.55を分けて示した点が、この分析の特徴だ。[10]
同じメタ分析では、想像する出来事までの時間と、将来の報酬を低く評価する傾向の課題で扱う時間が合っている場合に、改善が大きかった。また、より遠い未来を扱うことが、その後の食事に関わる選択への波及を予測した。[10] 未来をどこまで先に置くかも、単なる飾りではなく、研究結果の違いを考える手掛かりだった。
一方で、この分析に過食性障害の参加者を扱った研究は含まれていなかった。[10] 食べ方を整えたい人への知見を、食行動の病気の治療にそのまま広げることはできない。食べ方の苦痛やコントロールできない感覚で困っているなら、自己流の想像練習だけで抱え込まず、医師に相談する対象である。
統合結果の見方にも段階がある。選択課題は、その場でどちらを選ぶかを細かく捉えられる。一方、食品選択には、購入した食品や食べる場面の違いが入り込む。このメタ分析が両者を分けて示したことには意味がある。[10] 読者が見たいのが食事の変化なら、心理課題の有意差だけで読み終えず、その後に実際の食品を扱った結果があるかまで確かめる。食べ物の結果のほうが小さいという報告を省くと、実生活への期待だけが膨らんでしまう。
研究の対象にも目を向けたい。この分析は過体重または肥満の成人に絞っている。[10] 先に紹介した、金銭や健康の選択を広く扱う分析とは、集めた人と問いの範囲が違う。[13] 食品選択を考える読者には、食べ物の結果を直接まとめた分析のほうが、知りたい問いに近い。
数字で読む未来思考と食べ方
951人:過体重または肥満の成人を対象にしたメタ分析の参加者数。[10]
g=0.31:同分析での、その後の食品選択に対する小さい効果。[10]
29人:公共のフードコートで夕食を調べた、食習慣を改善したい女性の人数。[12]
94人:想像の時間方向と食べ物の内容を分けて間食を調べた女子大学生の人数。[18]
2研究:別のメタ分析で、体格指数の統合結果を支えた研究数。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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