ケトン体の飲み物と食欲 空腹のホルモンが下がった試験と、体重まで届かない数字

ケトン体の飲み物で空腹感や血糖は変わるのか。標準体重の人の食欲試験、肥満の人の食後血糖、エステルと塩を混ぜた製剤の違い、胃腸症状を確かめる。短い時間の反応を体脂肪の減少へ読み替えず、継続飲用の試験で得られた血糖・認知課題・走力の結果と、サプリを検討する際の注意点も整理する。

一晩の絶食を終えた標準体重の参加者15人が、見た目や味をそろえた飲み物を飲む。片方はケトンエステル、もう片方は同じエネルギー量のブドウ糖だ。研究者は採血を重ね、本人には空腹感などを尺度で答えてもらった。ケトンエステルを飲んだ条件では、飲用から1.5時間後の空腹感と食べたい気持ちが、ブドウ糖の条件より有意に低かった。[5]

ケトン体を飲むという発想を、単なる言葉の響きで片づけることはできない。人を対象に、飲んだあとの食欲や血液の変化を調べた実験がある。ただし、この場面で分かったのは、その後の短い時間にどう感じたかだ。何週間も食べる量が減ったか、体脂肪が落ちたかという答えまで、この食欲試験には含まれていない。[5]

飲み物を買うとき、知りたいことは瓶の中の成分より、生活の中で起こる変化だろう。研究をたどる際も、血中ケトン体が上がること、空腹感が変わること、体重が減ることを順に分けたい。数字が動いた先に、まだ測っていない結果を継ぎ足さないためである。[4][5][7]

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食事を変えずに上げるケトン体という実験

外因性ケトンとは、体の外から補うケトンのことである。試験では、ケトン体の一つであるβヒドロキシ酪酸を、血液中で増やす飲み物が用いられる。ケトンエステルによって、食事を大きく変更せずに血中ケトン体を上げられることが、研究上の特徴となっている。[1][7]

糖質の非常に少ないケトジェニック食や長い絶食では、ケトン体以外にも体の状態が変わる。飲み物を使った試験には、そうした広い変化と切り分けて、ケトン体を上げたときの反応を確かめる意味がある。[8] 食事法を丸ごと試す研究と、飲用後の採血を中心とする研究では、同じ「ケトン」という言葉でも問いが違う。

食事法の長期の話は、「ケトジェニック食の減量効果はいつまで続くか」の記事に譲る。ここで扱うのは、成分の決まった飲み物を使った試験だ。比較相手や食事条件と合わせて、飲用後の変化をたどる。[3][5][8]

製剤の違いも研究上の論点となる。筋肉をめぐるナラティブレビュー、つまり著者が文献を読み合わせた総説でも、異なるエステルの作用や投与の頻度、量を人で確かめる課題が挙げられている。[1] 総説の中心は、筋肉量や筋たんぱく質合成、遺伝子の働きの調節を扱うマウスの研究だった。[1]

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空腹感が下がった試験は、何と比べたのか

冒頭の食欲試験では、ケトンエステルも比較するブドウ糖も、体重あたり1.9kcal/kgのエネルギーを含んでいた。容量、味、色などをそろえ、血中のケトン体、糖、インスリン、食欲に関係するホルモンを測定した。ケトンエステルの条件では、血中βヒドロキシ酪酸が飲用前の0.2mMから、60分後に3.3mMへ上昇した。[5]

飲用から2〜4時間後には、ケトンエステルのほうでグレリンが低かった。グレリンは、この研究で食欲との関係を調べたホルモンである。その抑制と時間的に重なるように、本人が答える空腹感や食べたい気持ちも低くなっていた。著者らは、血中ケトン体の増加が食欲を直接抑える可能性を示している。[5]

この結果には、比較相手を添えて読む価値がある。水を飲んだときとの比較ではなく、同じエネルギーを含むブドウ糖の飲み物との比較だからだ。ケトンエステルを足せば何も飲まない日より食事全体が減る、とまで言うには、別の比べ方が要る。飲み物そのものにもエネルギーがある点は、減量を考える際に置き去りにできない。[5]

対象者の体格も押さえたい。この試験は標準体重の15人を対象にしていた。空腹感、満腹感、食べたい気持ちは、目で見た尺度の位置を選んで答える方法で評価した。ホルモンの採血と本人の回答を組み合わせることで、血液の反応と主観的な食欲を同じ実験で追っている。[5]

採血では比較するブドウ糖の条件で、飲用後30〜60分の血糖上昇が見られた。2〜4時間後のインスリンもケトンエステルの条件で低かった。比べているのは、エネルギー量をそろえながら異なる成分を飲んだ際の反応である。空腹感の差だけでなく、比較する飲み物に対して起きた代謝の差も、この設計に含まれる。[5]

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血糖の試験では、食欲とは別の変化を測った

肥満の人15人を対象とした無作為化クロスオーバー試験では、参加者が順番を変えてケトンエステルと対照の条件を経験した。平均年齢は47歳で、飲み物をとってから30分後に75gのブドウ糖を飲む検査を受けた。日常の定食とは違い、糖を処理する反応を一定の条件で比べる実験である。[3]

ケトンエステルの条件では、血糖の曲線下面積が対照より11%小さかった。曲線下面積は、検査中の血糖値の推移を面積としてまとめた値だ。同時に、血中の非エステル化脂肪酸、つまり血液中を流れる脂肪酸の面積も21%小さくなった。インスリンの面積には差がなかった。[3]

この「脂肪酸が低い」という結果を、「体脂肪が減った」と読むと話が飛ぶ。採血で追ったのは検査中の血中濃度であって、体に蓄えられた脂肪の重量を測った結果ではない。[3] 名前に脂肪が入っていても、腹囲や体脂肪量とは別の測定である。数字の横に、何を測ったかを置くだけで読み違いは減らせる。

健康な若い参加者20人の別の無作為化試験でも、ブドウ糖の検査の前にケトンモノエステルを飲むと、水を飲む条件と比べ、血糖の曲線下面積は17%小さくなった。インスリン分泌の増加による変化とはみられず、インスリン感受性の推定指標は改善した。[8] 肥満の人の試験は味をそろえた対照飲料、こちらは水との比較で、対象の年齢や体格に加え、比較する条件も異なる。[3][8]

通常の食事に近づけた試験もある。健康な若い男女19人が、ケトンモノエステルまたは味をそろえた偽薬の飲み物を飲み、その15分後に複数の栄養素を含む食事の検査を受けた。血糖の曲線下面積は9.4%小さく、インスリンや、胃から内容物が送り出される速さの推定値には差がなかった。[9]

この食事試験の参加者は男性10人、女性9人で、平均年齢は24.7歳だった。ケトンモノエステルの量は体重あたり0.45mL/kg。胃からの送り出しは、一緒に飲んだアセトアミノフェンの血中濃度の推移で推定した。食事の構成と飲用からの間隔を定めたうえで、血糖の変化とその仕組みを検討している。[9]

食前に続けた試験でも、食事の量はそろえていた

短い採血の実験から日をまたぐ試験へ進むと、食事をどう扱ったかがさらに大切になる。肥満の参加者14人を対象とする無作為化クロスオーバー試験では、ケトンモノエステルまたは偽薬を各食事の15分前にとる条件を、それぞれ14日間続けた。食事はすべて提供され、条件間で内容がそろえられていた。[16]

連続して血糖を測る方法で比較すると、ケトンモノエステルの条件では食後血糖が8.0%、24時間平均の血糖が7.8%低かった。血流の変化に応じて上腕の血管が広がる反応も改善した。一方、血液中のサイトカインという炎症に関係する物質群には変化がなかった。[16]

炎症を調べる検査がすべて同じ答えだったわけではない。刺激を加えた単球という免疫細胞では、カスパーゼ1という酵素の活性化が低下していた。著者らは、血糖の調節や血管機能の改善に加え、細胞の炎症反応を低下させる可能性を述べている。[16] 血漿のサイトカインと、刺激した細胞の反応で結果が分かれた点も、この試験の所見である。[16]

血管機能では、上腕の血流依存性拡張反応がケトンモノエステルの条件で6.2%から8.9%へ上昇し、偽薬の条件では変化しなかった。参加者の平均年齢は56歳で、各食事の前に補ったβヒドロキシ酪酸は12g。食事提供と継続的な血糖測定を組み合わせて、食後だけでなく1日全体の血糖も追った設計だった。[16]

数字で読むケトン体の飲み物

15人:ケトンエステルと同じエネルギー量のブドウ糖を比べた食欲試験の参加者数。標準体重の人が対象だった。[5]

1.5時間:食欲試験で、飲用後の空腹感と食べたい気持ちが比較条件より有意に低かった時点。[5]

9.4%減:複数の栄養素を含む食事の検査で得られた血糖の曲線下面積の差。食後の血糖の推移をまとめた指標である。[9]

120分:製剤を比べた予備試験で、血中ケトン体が各条件とも開始時と同程度へ戻っていた測定時点。[7]

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宮川涼 Founder

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