睡眠不足の中学生は始業を遅らせれば眠れる?夜更かしと朝の予定を分けて読む

睡眠不足の中学生に、始業を遅らせる工夫は役立つのか。中学生のレビューと高校生の追跡研究から、起床・就寝時刻、寝床にいる時間と実際の睡眠、日中の眠気を読み分ける。始業の後退がそのまま睡眠の延長になるとは限らない理由と、運動や成績まで変わるのかを、家庭で確認する視点につなげる。

朝食を前にして、まだ目が開き切らない。昨夜も「早く寝よう」と話したのに、登校の支度を促す声だけが大きくなる。登校までの残り時間は決まっているのに、眠気だけが食卓に居残っている。そんな中学生の朝を、寝る側の努力だけで変えようとしていないだろうか。

始業を遅らせることは、睡眠を延ばす有望な方法である。中学生を対象としたレビューでは、遅い始業は起床を遅らせて総睡眠時間を増やし、日中の眠気を減らしうると整理されている。対象は中学生であり、18〜39歳の女性自身の睡眠にそのまま当てはめる根拠にはならない。[4]

見るべきなのは、始業の時計だけでなく、その前後の生活である。夜に寝つく時刻、朝に起きる時刻、実際に眠った長さを分けると、何が変わったかが見えてくる。高校生の追跡研究では、始業後退後に平日の入眠が遅くならず、睡眠が延びた例もある。「遅く始まれば必ず夜更かしする」と決めつける根拠にはならない。[17]

既存記事「睡眠不足の影響は朝型と夜型で違う?翌日の気分と反応で入れ替わる弱点を読む」に個人の時間帯による違いは譲り、ここでは学校が決める始業と、家庭がやりくりする朝の予定に焦点を当てる。

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朝を遅らせると、なぜ睡眠が増えるのか

思春期の睡眠には、環境と生物学的な要因の両方が関わる。睡眠と学校成績を扱ったレビューは、この時期に、日々の時刻を調整する概日リズムと、睡眠・覚醒の蓄積に関わる調整の双方が影響を受けると説明している。夜に寝る時刻と、学校に合わせて起きる時刻がかみ合わないことが、研究の出発点である。思春期の生徒を扱うレビューなので、18〜39歳の女性では生活条件や発達段階の違いを考える必要がある。[1]

ここで学校の始業を遅らせる工夫は、「眠る意志を強くする」という介入とは性質が違う。朝の起床を動かせる余地を学校側でつくる方法だ。中学生のレビューでも、総睡眠時間の増加と起床時刻の後退が、日中の眠気の減少につながる経路として挙げられている。[4]

寝る時刻を変える話と、起きなければならない時刻を変える話は、家庭では混ざりやすい。前夜の宿題をどうするかと、登校に間に合う出発をいつにするかは別の相談である。研究を生活に引き寄せるなら、「夜が遅かった」で会話を終えず、朝は何の予定に合わせて起きたのかも尋ねる読み方ができる。[1][4]

複数研究の結果を統合するメタ分析では、28研究、計1,774,509人のデータが扱われ、遅い始業は長い睡眠時間や否定的な気分の少なさと関連した。ただし、これは参加者全員が同じ学校制度で同じ変更を受けた巨大な実験ではない。学校や生徒の特徴による違いも検討した解析である。対象は若年の生徒で、18〜39歳の女性に同じ関連の強さを当てはめることはできない。[5]

実際、このメタ分析では、始業の遅さと眠気の低さの関連は、中学生より高校生で強かった。高校生の結果を見て、中学生にも同じ大きさの変化を約束することはできない。「思春期」でまとめる前に、どの学校段階の結果かを確かめる必要がある。[5]

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中学生の研究は期待を示すが、成績まで一括にはできない

中学生を対象とする2022年のナラティブレビュー、つまり関連研究を文章でまとめた検討では、扱った10研究の半数が横断研究だった。横断研究は、異なる始業時刻の学校と生徒の状態を同じ時点で比べる方法であり、始業を変えた本人の変化を追った研究とは区別される。[4]

そのレビューでは、睡眠を評価したものが8研究、行動や心の健康を評価したものが6研究、学業成績を評価したものが3研究だった。睡眠、気分、成績という言葉が並んでいても、評価した研究数は項目ごとに違う。眠気の話からテストの点数の話へ、そのまま渡ることはできない。[4]

遅刻、物事を計画して進める力、気分、評定平均や標準化テストについては有望な結果が整理されている一方、レビューは方法の堅牢な研究を求めている。「朝の眠気が減るか」と「成績が上がるか」は、学校で話し合うときも分けておきたい問いである。[4]

慎重な評価もある。13〜19歳を対象とする11研究、297,994人を含む系統的レビューは、18〜39歳の女性への効果を直接確かめたものではない。このレビューでは、睡眠の総量を調べた6研究に、遅い始業との有意な正の関係があった。しかし、学業成績を調べた4研究の結果は混在し、欠席や覚醒状態の結果も一致していなかった。[8]

このレビューは、割り付けや脱落、無作為化の欠如などに関する偏りの懸念から、研究全体の確実性を非常に低いと評価した。睡眠が増える方向の結果があることと、健康・教育への効果を確信できることは別である。保護者が期待してよい変化の順番を考えるなら、まず睡眠と朝の様子を確認し、通知表を唯一の判定票にしないという姿勢になる。[8]

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就寝が同じでも、朝の余地から眠りが延びた

始業を遅らせたら、子供は結局その分だけ夜更かしするのではないか。この疑問を具体的に考える材料が、米国の公立高校を追った観察コホート研究である。学校側の時刻変更を利用し、455人を高校生活の中で追跡した。平均年齢は開始時15.2歳で、女子と男子が参加した高校生の研究である。18〜39歳の女性の睡眠延長を予測する数字としては使えない。[17]

参加した5校のうち2校が始業を50分と65分遅らせ、比較対象の3校は早い始業を維持した。睡眠は手首の活動記録を用いる方法で評価され、始業を変えた学校の変化と、変えなかった学校の変化を比較している。単に変更後の生徒が「よく眠れた」と答えた、という設計より、時間の経過による変化を考慮できる。[17]

比較校の変化に対し、始業を遅らせた学校では夜間の睡眠が初回追跡で平均41分、その後の追跡で43分多く増えた。推定の幅を示す95%信頼区間は、それぞれ25〜57分、25〜61分だった。平均値だけでなく、推定に幅がある点も受け止めたい。[17]

平日の入眠時刻が遅くなることとは関連せず、睡眠効率や睡眠の細切れの程度などの変化の群間差も小さかった。眠る長さが増えたことを、「眠りのすべての性質が改善した」と言い換えてはいけない。寝つき、長さ、途切れは、それぞれ別の観察項目だ。[17]

また、これは生徒を無作為に学校へ振り分けた試験ではない。変更校と比較校の経過を比べる工夫はあるが、学校や地域の事情の違いが結果に関わる可能性は残る。それでも、始業を遅らせれば必ず入眠も同じだけ遅くなる、という見方を見直す具体的な材料になる。[17]

寝床の延長と、実際の睡眠の延長は違う

シンガポールの女子中等学校では、375人、平均年齢14.6歳の生徒を対象に、始業を7:30から8:15へ遅らせた前後が調べられた。45分の変更である。研究は変更前と、変更のおよそ1か月後、9か月後に、睡眠や眠気、心の状態を確認した。女子の研究でも発達段階が異なるため、18〜39歳の女性に同じ変化量を当てはめることはできない。[20]

1か月後、平日の就床は9.0分遅くなったが、起床は31.6分遅くなり、寝床にいる時間は23.2分増えた。夜が少し遅くなっても、朝の後退の方が大きければ、寝床の時間は伸びる。始業が遅くなったかどうかだけでなく、夜と朝の両端を見る理由がここにある。[20]

9か月後も寝床の時間の増加は続き、活動記録から評価した総睡眠時間は変更前より10.0分増えた。始業の45分、寝床の23.2分、実際の睡眠の10.0分は、測った内容や時点が異なる。同じ「増えた時間」として並べ替えると、生活に期待する量まで変わってしまう。[20]

本人が感じる眠気は低下し、心の状態も改善していた。平日の睡眠がより増えた生徒ほど、覚醒状態や心の状態の改善も大きいという関連があった。ただし、女子校の前後比較の結果である。この学校の数字を、そのまま日本の中学生全員の見込み時間にはできない。[20]

思春期の生徒の始業変更を扱う系統的レビューは、実験的な6研究をまとめている。18〜39歳の女性の勤務開始時刻を変えた際にも同じ効果が出るかは、別に検討する必要がある。内訳は対照群のない前後比較が3研究、無作為化比較試験が2研究、準実験が1研究だった。始業を25〜60分遅らせ、平日の睡眠は25〜77分増えていたが、この幅は全家庭に当てはめる換算式ではない。異なる設計の研究で得られた結果の幅である。[7]

このレビューでも、日中の眠気、気分、授業への遅刻などの改善は一部の研究で見られたという整理だった。睡眠が増えた方向は共通していても、周辺の変化まで一様ではない。研究の数だけでなく、何を比較し、何を測った結果なのかを見ると、期待を置く先が具体的になる。[7]

数字で読む始業時刻と睡眠

28研究・1,774,509人:遅い始業と睡眠などの関連を統合したメタ分析の規模である。[5]

25〜60分:実験的な研究を集めた系統的レビューでの始業の後退幅で、平日の睡眠増加は25〜77分だった。[7]

41分と43分:米国高校生の追跡で、比較校に対して追加で増えた夜間睡眠の平均値である。[17]

23.2分:女子中等学校で始業変更のおよそ1か月後に増えた、寝床にいる時間である。[20]

10.0分:同じ女子中等学校で、9か月後に増えていた実際の総睡眠時間である。[20]

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宮川涼 Founder

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