下半身太りは母親に似ると決まる?家族の体型と遺伝率の数字を読み解く

母親と脚やお尻の形が似ていると、下半身太りは生まれつきで変わらないと感じやすい。家族・双子研究で調べた脚の脂肪、腹囲とヒップの比、体重の違いをたどり、遺伝率が本人の将来を決める割合ではない理由と、家族との比較から距離を置くための考え方を読む。

母親の若い頃の写真に、自分と似た脚の輪郭を見つけたら、これからの体型まで決まったことになるのだろうか。

実家の写真を見ていたら、母親の若い頃の後ろ姿が自分に似ていた。服の好みより先に、お尻から脚にかけての輪郭が目に入る。「家系だから」と言われた言葉が、今になって重くなることもある。

脚の脂肪分布に遺伝的な寄与があることは、家族研究で示されている。しかし、それは母親の体型がそのまま娘の将来になるという意味ではない。脚の脂肪を調べた研究で得られるのは、集団内の個人差に対する遺伝的な寄与の推定であり、特定の母娘の似方を予言する数字ではない。[17]

「下半身太り」という日常語と、研究で測る脚の脂肪割合や腹囲の比は、まず分けておきたい。既存記事「女性の下半身太りは脂肪の受容体で違う?分解の反応と脚の見た目を分けて読む」には脂肪分解の話を譲り、ここでは家族が似る理由を、何を測り、誰を比べた研究なのかからたどる。

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家族の写真と研究の測定値は何が違うのか

写真を見て「似ている」と感じることと、脚に脂肪がどの程度分布しているかを測ることは、同じ作業ではない。アフリカ系カリブ人の多世代家族を対象にした研究では、二重エネルギーX線吸収測定法という、体の部位別の脂肪を評価する方法を使った。対象は平均年齢43歳の471人で、全身、体幹、腕、脚の脂肪割合を分けて調べている。平均年齢が異なる集団の推定なので、18〜39歳の女性に同じ数値をそのまま当てはめることはできない。[17]

ここで注目したいのは、研究者が「家族の脚が似ているか」を目で採点する方法とは異なる点だ。脚の脂肪割合という測定対象を決め、それが親族間でどのように関連するかを分析したのである。得られた遺伝率を、脚の輪郭全体や服のサイズの遺伝率として読むことはできない。研究の対象が部位別の脂肪であることを、そのまま保って読む必要がある。[17]

別の家族研究でよく用いられるのが、ウエスト・ヒップ比である。腹囲をヒップ周囲で割った値で、脂肪分布を調べる指標として使われる。一方、体格指数であるBMIは、身長と体重に基づく体格の指標だ。家族研究では、BMIとウエスト・ヒップ比で、遺伝子の違いとの関連の有無が異なった。[18]

たとえば家族の中で、体重は似ていないのに腰回りの印象が似ることがあっても、体重と分布を分けて考える手がかりになる。体の大きさと脂肪の分布は、別々の測定対象として扱われているからだ。ただし、身近な例から特定の遺伝子の働きを逆算することもできない。研究の指標を理解することと、自分の家族に遺伝の判定を下すことの間には距離がある。[18]

「体型は変えられるか 第3回|脂肪はどこに付くか——遺伝・性差・ホルモン」は脂肪分布の広い背景を扱う。この記事で確かめるのは、家族が似ているという観察から、どこまでを遺伝の話として受け取れるかという狭い問いだ。

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脚の脂肪の遺伝率は母親から受け継ぐ割合ではない

先ほどの多世代家族研究では、8家族の親族関係を使って分析している。脚の脂肪割合についての残差遺伝率、すなわち解析で調整した後に残る個人差への遺伝的寄与の推定は40%だった。腕の脂肪割合では62%であり、同じ人の体を測っても、部位ごとに推定値は異なった。[17]

脚について女性と男性を分けると、女性の推定値は58%、男性は17%だった。これは女性の脚の脂肪の58%が母親から来たという意味ではない。研究対象となった女性たちの間にある測定値のばらつきを、親族関係に基づくモデルで説明したときの数字である。[17]

ここで分母を取り違えないことが大切だ。本人の脚にある脂肪を「遺伝でできた部分」と「生活でできた部分」に切り分けて量る方法ではない。集団の個人差を扱う推定値を、個人の体の成分表にはできない。同じ理由で、残りの割合をそのまま「努力で減らせる分」と読むこともできない。[17]

この研究は、腕と脚に共通する遺伝的影響も検討している。腕と脚の脂肪割合の遺伝相関は−0.61で、両部位の共変動のうち、共通の遺伝的影響で説明されうる部分は37%と推定された。遺伝相関とは、異なる測定項目に関わる遺伝的影響がどれほど重なるかを調べる値である。[17]

負の関連が示されたことは、腕と脚を一括して「脂肪がつきやすい体質」と呼ぶだけでは情報が足りないことを示す。ただし、腕が細く見える人なら脚の脂肪が必ず多い、という個人の見分け方にはならない。共通の影響があることと、すべてが共通の仕組みで決まることは違う。同じ体の部位どうしでも、別々に測る意味があるのだ。[17]

また、この研究の対象は特定の背景を持つ多世代家族である。女性の推定値が高かったことは重要だが、それを立川に住むすべての女性に同じ精度で当てはめる読み方は避けたい。研究集団における結果と、自分の脚の未来についての確率は、別の情報だからだ。[17]

母親との似方を気にしている読者にとっては、ここがいちばん大きな境目になる。研究は家族関係を使って遺伝の寄与を調べているが、母親の写真から娘の将来の脂肪割合を予測する試験ではない。「家族に似る傾向がある」から「母と同じ形で固定される」へ飛び越えないことが、この数字を読む出発点となる。[17]

双子と養子を比べると家族の環境も見えてくる

家族が似ているとき、遺伝だけを考えれば済むのだろうか。子どもと青年の肥満を扱った系統的レビューは、双子研究9件と養子研究5件を集めている。対象は18歳までで、肥満の指標には相対的な体重が使われた。成長期の研究であり、18〜39歳女性の脚の脂肪分布にそのまま当てはめることはできない。双子研究のメタ分析では、BMIの個人差への遺伝的影響が各年齢で強く示された。[2]

その一方で、家族に共通する環境の影響は児童期の中頃に相当程度見られ、青年期にはその影響が見られなくなった。養子研究では、養子と養親の間にも相関があり、家族環境の関与を支持していた。ただし、生物学的な親子の相関はそれより大きかった。遺伝の寄与と家庭の影響が、同じレビューの中に並んでいる。[2]

この結果は、「家で似た食事をしていたから似たのだ」という説明だけでも、「血縁があるから環境は関係ない」という説明だけでも足りないことを示す。ただし、ここで測られたのは主に体重に関わる指標だ。子どものBMIの結果を、そのまま成人女性の脚の脂肪の話に置き換えることはできない。[2]

対象集団にも注意が要る。このレビューに入った研究は、韓国人を対象とした双子研究2件を除き、白人集団の研究だった。幅広い人に共通する考え方を得ることと、推定された影響の大きさを誰にでも当てはめることは違う。母娘の会話で使うなら、「家族の似方には環境も関わりうる」というところまでにとどめるのが妥当だ。[2]

養子研究の意味も、具体的に考えると分かりやすい。生物学的な親子だけを眺めると、血縁と、同じ家庭で過ごすことが重なる。養親との相関も確認する設計なら、家族の似方を血縁だけで説明してよいのかを検討できる。このレビューで養親との相関が見られたことは、「似ている」という観察に環境の側からも説明が加わるという結果だった。[2]

一方、健康な一卵性双子の男性153組、女性158組の組内差を比べた横断的な食事研究は、遺伝的背景と共有する家庭環境による交絡、つまり食事以外の要因が関連に混じる影響を抑えようとした設計である。家族全員をひとまとめに眺める研究とは、比較の置き方が違う。男性での関連を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできず、男女別の結果を読む必要がある。それでも女性では食事と体脂肪の明確な対応が得られなかったことまで含めて読む必要がある。[15]

家族研究は血縁のある人を調べ、双子研究は双子を調べる。それぞれの設計が答えようとする範囲を意識すると、研究の名前だけで確かさを決めずに済む。系統的レビューの結果も、成人女性の脚を直接測った結果も、同じ一言に押し込まずに受け取れる。[2][17]

実家で同じ料理を食べた記憶は、遺伝の証拠にはならない。逆に、家を離れてから食生活が変わったことも、遺伝の寄与が消えた証拠にはならない。双子と養子を比べる設計は、身近な家族の印象だけではほどけない要素を分けて考えるために使われている。[2]

数字で読む家族と脂肪分布

471人、平均43歳:部位別の脂肪を測った多世代家族研究の対象である。[17]

40%:同研究で推定された脚の脂肪割合の残差遺伝率であり、本人の脚のうち固定された部分の割合ではない。[17]

58%と17%:脚の脂肪割合について、女性と男性で別々に得られた遺伝率の推定値である。[17]

9件と5件:子どもと青年を対象とした系統的レビューに含まれた双子研究と養子研究の件数である。[2]

1,428人:体格とは別に、遺伝子の違いとウエスト・ヒップ比の関連を検討した248家族の参加者数である。[18]

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宮川涼 Founder

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