クローズスクワットの効果は、足幅を狭めることとつま先を内へ向けることを分けて考えたい。自重とバーベルの比較研究から、前ももの筋活動、膝の曲がり方、膝関節にかかる力を読み解く。内ももの実感だけで判断せず、研究ごとの条件の違いと、自分の構えを見直す視点を示す。
鏡の前で足を寄せたとき、つま先も内へ向ける必要があるだろうか。「内ももに効く」という説明を聞くと、つま先まで内へ向けた方がよい気がしてくる。だが、足の間隔と足の向きは別の設定である。研究でも足幅とつま先の角度を分けて比較しており、狭い足幅の結果を、そのまま内向きのつま先の根拠にはできない。[7]
答えの芯は、クローズスクワットを「内もも専用」と決めず、膝と股関節の仕事の配分が変わる構えとして読むことである。狭い足幅では膝がより曲がる結果や、前ももの筋肉に大きな力が求められる結果がある。一方、筋活動がどの条件でも一貫して高いという結論にはなっていない。[2][4]
かかとの高さの問いは既存記事「ダイエットのスクワットはかかとを高くする?足首の動きと膝の負担を読む」に譲る。ここでは、足を寄せたときに何が変わるかを扱う。実演者と同じ足形を床に写す前に、比べている動作の条件をそろえたい。

足幅を狭めることと内股にすることを分ける
足幅とは左右の足を置く間隔であり、つま先の角度とは足が向く方向である。自重スクワットを調べた健康な成人の比較実験では、狭い・中間・広い足幅と、前足部を外へ開かない角度・外へ開く角度を組み合わせている。この設計だけでも、「足を寄せる」と「足先を内へねじる」を同じ操作としないことが分かる。健康な成人の比較を18〜39歳の女性へそのまま当てはめるには、対象の違いを考える必要がある。[7]
この研究の対象は12人で、つま先の条件は外向き0°と30°であった。つまり、外へ開かない条件はあっても、内向きにそろえた条件ではない。「内股スクワット」という検索語で見つけた動作が、研究の狭い足幅と同じかどうかは、足の間だけを見ても判断できない。[7]
研究の「狭い」は体の寸法を基準に定める。トレーニング経験のある男性12人による高負荷の比較では、狭い足幅は肩の左右の骨の間隔である肩峰幅の0.7倍、広い足幅は1.7倍と定めている。足同士を密着させることが条件なのではなく、体の寸法に対して幅を決めた実験である。男性の高負荷での結果を18〜39歳の女性へ適用する際は、性別と負荷の違いが制約になる。[4]
別の成人アマチュアラグビー選手14人の研究では、股関節の外側にある骨の出っ張り、すなわち大転子の左右の幅を基準とした。狭い条件がその幅と同じ、広い条件が1.5倍であった。同じナロースタンスという呼び方でも、肩を基準にする研究と股関節を基準にする研究がある。競技者の結果が18〜39歳の女性の日常の運動にも当てはまるかは、競技経験と負荷の違いを考えて読む必要がある。[8]
そのため、動画の「もっと閉じて」という言葉を、研究で検証された共通の寸法と受け取らない方がよい。まず足幅を変えたのか、つま先を回したのかを言葉にする。その区別があれば、どの研究の結果を参考にしているかも見えやすくなる。検索で見つけた呼び名より、床に置いた左右の足の間隔と向きを確認する方が、実験条件との対応を考えやすい。足を閉じる操作に、内向きの角度までセットで付け足す理由は、これらの比較からは導けない。[4][7][8]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
狭い足幅では前ももと膝の動きがどう変わるか
健康な18人を対象としたバーベルスクワットの実験では、男性12人と女性6人が、バーの位置、足幅、重さと反復の条件を変えている。軽い条件は最大重量の50%で10回、重い条件は80%で3回であった。狭い足幅では、広い足幅に比べて膝の最大の曲がりが3.7°大きく、股関節が外へ開く角度は8.2°小さかった。男女混合の結果を18〜39歳の女性へ適用する際は、同じ角度差が出るとは予測できない。[2]
これは動作の違いである。前ももが何倍育つとか、内ももの脂肪が減る割合を示す数字ではない。この実験では、広い足幅で前ももの内側に位置する内側広筋の活動の最大値と累積値が増加した。しかし全体を通じて、筋活動が一貫して有利になる設定の組み合わせはなかった。狭い方がすべての筋肉に強く効く、とは読めない。[2]
「内側広筋」という名前も、内ももという日常語と混同しやすい。ここで測られたのは前ももの筋肉の一部であり、その活動の違いを、脚を内側へ寄せる筋肉全般の効果へ広げるべきではない。研究が測った筋肉名を確かめるだけで、「内側」という言葉から期待を足してしまうのを防げる。[2]
高負荷を使った男性12人の研究は、別の角度から前ももの仕事を示している。最大で3回挙げられる負荷を用い、立ち上がる局面の最後の反復を分析したところ、広い足幅では狭い足幅より、膝を伸ばす正味の関節モーメントと広筋群の推定筋力が小さかった。モーメントとは、ここでは関節を回そうとする力の働きである。[4]
膝を伸ばすモーメントの条件間差は、広い足幅から狭い足幅を引いた比較で、体重当たり−1.56〜−0.61 Nm/kgという95%信頼区間で示されている。効果量は1.45であった。この数字は高負荷の動作での力学的な差を表す。自宅で重りを持たずにしゃがむ人へ、同じ差が出ると約束する数字ではない。[4]
女性を含む別の比較も参考になる。男性9人、女性9人が最大で3回挙げられる負荷で試した実験では、バーを高く載せて足幅を狭くした条件で、全体のモーメントに占める膝の寄与が大きかった。前ももの外側にある外側広筋の電気活動も高く、お尻の大殿筋の活動は低かった。バーを低く載せて広く立つ条件では、股関節の寄与が大きくなった。女性を含むが、18〜39歳の女性全般に当てはめるには、高負荷という条件の違いを考慮したい。[5]
ここで注目したいのは、足幅だけの勝負ではないことだ。バーの位置も組み合わされている。前ももを使いやすい条件の手がかりにはなるが、「足を寄せさえすればお尻を使わなくなる」という説明にはならない。運動の名前より、どんな条件で測ったかを追う方が、動画同士の食い違いを整理しやすい。[2][5]
筋活動、推定筋力、膝への力は同じ点数ではない
研究に出てくる「効く」は、測り方によって中身が違う。筋電図は筋肉の電気活動を記録する。一方、動きを撮影し、床から受ける力を使って計算した筋力や関節の力は、モデルによる推定である。筋電図を用いた研究と、筋骨格モデルを用いた研究の数字を、同じ効果のランキングとして並べることはできない。[2][7]
自重の実験では、狭い足幅ほど大殿筋の推定筋力が大きくなった。一方、高い位置のバーと狭い足幅を組み合わせた高負荷の実験では、大殿筋の電気活動は比較条件より低かった。お尻への効果が正反対に見えても、自重か高負荷か、何を測ったか、何と比べたかが違う。片方を消して、すべてのスクワットに通じる説明にするのは早い。[5][7]
膝についても同様である。自重の成人12人の実験では、狭い足幅は中間・広い足幅より、膝の内側の接触力が大きかった。つま先を外へ30°向ける条件も、0°の条件よりその力が大きかった。研究者は、前ももとお尻の推定筋力を保ちながら内側接触力を抑える候補として、中間の足幅と外へ開かない向きの組み合わせを挙げている。[7]
ただし、これは足先を内へ向ける推奨ではない。比較されたのは0°と外向き30°である。また、膝の内側で接触する力の推定値が大きいことと、その動作で人がけがをしたということは別の結果だ。痛みのある人が、数字を逆算して自分で治療の形を決めるための実験でもない。[7]
膝がより深く曲がること、前ももの力が大きいこと、関節の接触力が大きいことは、同時に起こり得る別々の出来事である。強く鍛えられそうという期待と、負担を抑えたいという目的は、同じ尺度では選べない。クローズスクワットを試す前に知りたいのは、最強の足幅よりも、何を変えたいかという問いである。[4][7]
筋活動の累積値は、動作中の活動を時間に沿ってまとめた指標である。瞬間の最大値と同じではない。重さと反復を変えた18人の実験では、重い条件で外側広筋と、太ももの後ろ側にある半腱様筋の累積活動が増えていた。足幅の説明だけを読んでいると、負荷設定の影響を見落としやすい。[2]
また、最大で3回挙げられる負荷を使った実験には、立ち上がりが難しくなる局面を調べるという目的がある。重いバーを持ち上げる途中の筋活動の配分を、朝の支度の合間に行う自重運動の感想と直接照らし合わせない。自分の動作に近い条件の結果から読み、異なる条件は補助的な情報として置くとよい。[5]
数字で読むクローズスクワット
18人:足幅、バーの位置、重さと反復を組み合わせた実験の対象者数。男性12人、女性6人であった。[2]
3.7°:同実験で狭い足幅の方が大きかった膝の最大屈曲角度の差。筋肉が育った量ではない。[2]
0.7倍と1.7倍:高負荷の男性の実験で、狭い・広い足幅を肩峰幅に対して定めた倍率である。[4]
0°と30°:自重の実験で比べた、つま先を外へ開く角度。内向きの角度の比較ではない。[7]
30人:足幅と姿勢制御を比較した予備的研究の健康な対象者数。広い足幅で揺れや荷重の左右差が大きかった。[6]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







