ダイエットは食事制限なしの運動だけで進む?週単位の消費と補償を読み分ける

食事制限なしで運動を続けても、使ったエネルギーがそのまま体脂肪の変化になるとは限らない。運動後の食事と週単位の補償を調べた研究から、食べた量の増加と体組成から計算する補償の違い、個人差、週末の食事の考え方を読み解く。運動量を増やす前に確かめたい点も整理する。

運動した週の外食は、使ったエネルギーを帳消しにするのだろうか。食事を厳しく制限せず、運動を生活に足していきたい。食事制限なしの運動でも体脂肪が減る例はあるが、消費量と体脂肪の変化にはずれが生じる。[15]過体重から肥満の成人を対象にした試験では、運動量の多い群で体脂肪が減った一方、両群でエネルギーの「補償」が算出された。[15] この対象の結果を18〜39歳の女性全体にそのまま当てはめることはできない。

補償とは、運動で生じるはずのエネルギー不足の一部が埋め合わされることである。ただし、体組成の変化から計算した補償を、そのまま「食べすぎた分」と読むのは誤りだ。摂取量が変わらなくても補償が算出された試験がある。[15] 食事を罰として削る前に、何を測った数字なのかを確かめたい。

既存記事「ダイエットの停滞期は食事制限を休む?運動を続けて維持量に戻す研究を読む」は食事制限を休む判断に譲る。ここでは、食事制限なしで運動を足したとき、直後の食事と週単位の体の変化がどう対応するかに絞る。週末の外食を失敗扱いするための記事ではない。

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運動の消費量は、そのまま体脂肪の差にならない

エネルギー補償を扱う系統的レビューでは、運動による消費に対して、脂肪量や除脂肪量を含む体のエネルギーがどれほど変化したかを比較している。除脂肪量とは、体重から脂肪を除いた部分の量である。年齢や開始時の脂肪量の異なる参加者を含む61研究、合計928人が対象で、平均の補償は18%、ばらつきを示す標準偏差は93%だった。[18] この集計値は18〜39歳の女性だけの予測値として使えない。

平均だけを見れば、運動による不足の一部が埋まる程度に思える。しかし、ばらつきが大きい。全員の消費から同じ割合を差し引けば予測できる、という結果ではない。研究間の対象者や期間も含む集計なので、この平均を自分の運動記録に掛けて体脂肪の減少量を算出する使い方には向かない。[18]

体組成から逆算する補償には、食事だけを直接測っていないという特徴がある。買った菓子の量、夕食のおかわり、運動以外の時間の過ごし方を個別に確定する数字ではない。後で扱う試験でも、体組成からは補償が算出されたのに、測定した摂取量と安静時代謝には変化がなかった。[15] 「補償がある」と「摂取量が増えた」は、別々に確認する必要がある。

補償率の分母が何かにも注意したい。食事を測る試験では、運動日と安静日の摂取差を運動の消費と比べる。一方、長期の介入では、脂肪と除脂肪組織の変化を使って予想との差を求める。同じ割合の形でも、前者は飲食の反応、後者は体に蓄えられたエネルギーの結果を含む。[1][18] 食事が増えなかったという報告と補償があったという報告を、直ちに矛盾と考える必要はない。比較する前に、測定した対象をそろえることが大切だ。

立川駅北口から歩いた日の運動記録に消費量が表示されても、それはその日の食事を追加できる券にはならない。反対に、予想ほど体脂肪が変わらないからといって、食事を隠れて増やしたと決めつける根拠にもならない。消費の記録と体組成の結果の間にずれがある、というところから考え始めればよい。

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次の食事だけでは、その日の補償を拾いきれない

若い非肥満男性18人を対象にした比較試験では、自転車運動を60分行う日と安静の日を比べた。運動後の昼食の摂取量には条件間の差がなかったが、その後の24時間では運動した条件の摂取量が多かった。昼食で増えなかったことと、その日を通して増えなかったことは同じではなかった。[1] 男性を対象にした結果なので、18〜39歳の女性に同じ補償率をそのまま当てはめることはできない。

参加者は、体脂肪が比較的多く体力が低い群と、体脂肪が比較的少なく体力が高い群に分けられた。消費に対する平均の補償はそれぞれ49.8%と37.8%で、いずれも全量には届かなかった。運動後は両群で脂肪とたんぱく質の摂取が増え、脂肪由来のエネルギー割合が増えたのは前者の群だった。[1]

この試験では、運動直後の昼食の増加は認められなかった。[1]昼食だけを眺めると見えない差が、後の飲食を含めると現れたのである。夕方の間食や帰宅後の食事まで考える、という生活上の着眼点は得られる。ただし、この結果は若い男性の試験であり、働く女性の休日の食事に同じ補償率を当てはめることはできない。[1]

また、増えた摂取をすべて悪い行動と呼ぶ必要もない。ここで研究が測ったのは、安静条件とのエネルギー摂取の差である。食事の楽しみや空腹への対応の良し悪しは、この数字の評価対象から外れる。食事制限なしの方針を考えるときには、「増えたか」と「その食べ方を変える必要があるか」を分けておきたい。

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週単位では、補償の割合と量を分けて読む

過体重から肥満で普段あまり運動しない男女36人を無作為に割り付けた試験では、運動による消費を週1,500 kcalまたは週3,000 kcalとする条件を12週間続けた。各回の設定は300 kcalまたは600 kcalで、頻度は週5日だった。試験を完了したのは、それぞれ14人と15人である。[15] 過体重から肥満の男女の結果であり、18〜39歳の女性に同じ効果をそのまま見込むことはできない。

体組成から計算した週当たりの補償は、少ない運動量の群が943 kcal、多い群が1,007 kcalだった。平均値の95%信頼区間は前者で−164〜2,050 kcal、後者で32〜1,982 kcalと幅があり、両群の補償量に有意な差は認められなかった。多く動いた群ほど、補償量が比例して増えたという結果ではなかった。[15]

一方、運動消費に対する補償の割合は62.9%と33.6%だった。補償された量がおおむね同程度でも、もとの消費量が違えば割合は違う。体脂肪の量と割合が有意に減ったのは、週3,000 kcalの群だった。ここでは、補償が存在しても運動による体脂肪の減少が起こりうることが示されている。[15]

信頼区間の幅も読み飛ばせない。少ない運動量の群の区間は、補償がない場合に当たるゼロをまたいでいる。[15] 平均値は参加者全員が同じだけ埋め合わせたことを意味せず、群の値をどの程度の精度で推定できたかと、各人の食べ方がどうだったかも別の問題だ。表に並ぶ平均値だけを見て、少ない運動なら必ず大半が相殺されると決めると、結果を強く言いすぎる。完了者が限られる試験の数字として、幅と一緒に受け取りたい。[15]

ただし、この運動量をそのまま読者の目標にする話ではない。小規模で期間の限られた試験であり、運動量を急に増やすための処方ではないからだ。注目したいのは、補償率が高いという表現だけで運動の意味を否定できず、逆に消費量の設定だけで結果を約束もできない点である。[15]

さらに、この試験では安静時代謝と摂取量に変化がなかった。[15] 補償が約週1,000 kcalだったことを「週末にそれだけ食べ足した」と翻訳してはいけない。週当たりの計算結果は、いつ、何が起きたかを示す食事日記ではない。週末という言葉は暮らしには便利だが、研究の数字に曜日は印刷されていない。

食事制限なしを、食事を見ないことにしない

運動の経験の受け止め方と、その後の食べ方にも研究がある。成人を対象とする23研究を整理したスコーピングレビューでは、運動を楽しくない、自分で選べない、重労働だと感じる状況で、エネルギー密度の高い食品の摂取が増えた研究が報告されている。エネルギー密度とは、食品の量に対して含まれるエネルギーの多さである。[5]

このレビューは、運動後の食事を回復のための補給として考えることと、頑張った報酬として食べることを区別している。含まれた研究は、摂取エネルギー、盛り付け量、食品選択、自己申告など、測っているものも異なった。運動後の食べ方に心理的な背景があることは読み取れるが、それが成人全体にどれほど広がっているかは確定していない。[5]

「間食は運動で使った分だけ増える?ご褒美の意識と実際の補食量を研究で読む」が個々の間食を扱うのに対し、ここでは運動を足す方針全体に戻して考える。厳しい食事制限を設けなくても、運動を嫌々こなした埋め合わせとして毎回食べていないか、という問いは持てる。食事の内容を意識することと、食事を罰の対象にすることは別だ。

数字で読む消費と補償

61研究・928人:体組成と運動消費を比較した系統的レビューの規模である。[18]

49.8%と37.8%:若い男性の試験で、運動後24時間に見られた群別の平均補償率である。[1]

943 kcalと1,007 kcal:運動量の異なる群で算出された週当たりの平均補償量である。[15]

62.9%と33.6%:同じ試験でも、運動消費に対する割合で表すと差がつく。[15]

23研究:運動の受け止め方と食べ方を整理したレビューで、長期の実験は限られていた。[5]

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宮川涼 Founder

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