ダイエット停滞期の代謝低下は筋肉だけ?減量前後の内臓の大きさを読む

ダイエット停滞期の代謝低下を、筋肉量だけで判断していないだろうか。減量前後の肝臓や腎臓、除脂肪量の内訳を調べた研究から、安静時の消費量が下がる理由を読む。女性の食事介入と肥満手術後の結果を分け、臓器が小さくなることと代謝適応の違い、体重計では分からない範囲を確かめる。

体重のグラフが横に伸び、体組成計の「基礎代謝」だけが下がっている。洗面所で表示を見比べると、「筋肉が落ちたから、もう減らないのか」。その説明だけでは、体の中身を大きく省略している。減量に伴う安静時の消費量の低下には、筋肉以外の臓器や組織の変化も関わるからだ。[2][8]

答えの芯は、脂肪以外を全部「筋肉」と読まないことである。肝臓や腎臓などの大きさまで調べると、筋肉量だけでは説明しきれない消費量の変化が見えてくる。ただし、横ばいになった体重から自分の内臓が小さくなったとは判断できない。研究で確かめた臓器の変化と、今朝の停滞感は分けて考える必要がある。[4][8]

既存記事「代謝を上げるには筋肉だけ増やす?臓器と筋肉で違う安静時の消費量を読む」では、臓器と筋肉の消費量の違いを扱っている。ここでは減量の前後を比べたとき、内臓の変化を計算に入れると「予想以上の代謝低下」の読み方がどう変わるかに絞る。

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脂肪以外の重さは、全部筋肉ではない

除脂肪量とは、体重から脂肪を除いた部分の量である。その中には骨格筋だけでなく、臓器や水分、骨の成分なども含まれる。減量と体重の再増加を扱ったレビューは、この部分を代謝の性質が同じ集まりとして扱うことに注意を促している。肝臓と腕の筋肉を、重さが同じというだけで同じ働きのものとして数えるわけにはいかない。[2][5]

ここでいう安静時エネルギー消費量は、安静にしているときの消費量である。研究では呼吸のガスから消費量を調べる間接熱量測定が使われている。検索語の「基礎代謝」と重なる関心ではあるが、この記事に出てくる測定結果は主に安静時の値だ。体組成計に出る表示と、研究施設で測った値をそのまま同じものとして扱わないことが出発点になる。[5][8]

筋肉の数字が変わらなければ、脂肪以外の体の構成も変わらない、という推論は成立しない。レビューでは、体重減少に伴う除脂肪量当たりの代謝率の低下には、代謝活動の高い臓器の割合や活動の変化が関わりうると整理されている。大きな袋に「脂肪以外」とラベルを貼るのは便利だが、袋の中を見なくてよいという意味ではない。[2]

この区別は、筋肉が重要ではないという話でもない。知りたいのが安静時の消費量の変化なら、筋肉を測ったかどうかに加え、ほかの組織をどう扱ったかも確認する、という話である。筋肉を守ることへの関心と、代謝低下の原因を筋肉だけに帰すことは別の判断だ。[2][8]

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女性の減量研究では、筋肉と臓器が一緒に変わった

過体重または肥満の女性45人を対象にした食事介入では、年齢は22〜46歳、介入期間は平均12.7週だった。研究者は磁気共鳴画像法であるMRIなどを使って体の構成を調べ、安静時の消費量も測定した。平均の体重減少は9.5 kgで、その内訳は脂肪量8.0 kg、除脂肪量1.5 kgの減少だった。これは研究参加者の平均であり、読者が目指す減量幅ではない。[8]

同じ研究では安静時の消費量が8%低下した。組織別には筋肉が3%、心臓が5%、肝臓が4%、腎臓が6%減少し、いずれも統計的に有意だった。筋肉だけが小さくなったわけではなく、代謝活動の高い臓器にも変化があったことになる。[8]

この数字は、臓器を小さくすればよいという助言にはならない。また、肝臓の重さが減ったことを、肝臓の働きが同じ割合で悪くなったことと読み替えるのも違う。ここで測ったのは組織の量と安静時消費量の変化であり、数字の役割は体重減少の内訳を詳しくすることにある。[8]

研究では、脂肪量と除脂肪量の減少で、安静時消費量の低下のおよそ半分が説明された。さらに個別の臓器の重さを考慮すると、体組成によって説明できる安静時消費量の変動は60%へ増えた。何を計算に入れるかによって、説明できる範囲そのものが変わるわけだ。[8]

ただし、これは「代謝低下の60%は内臓のせい」という意味ではない。脂肪量や除脂肪量に臓器の情報を追加した分析であり、内臓だけの寄与を示した割合ではない。体重計の数字を、筋肉由来と内臓由来に家庭で配分するための換算表でもない。研究の割合を生活へ持ち帰るときは、分母が何かを見失わないようにしたい。[8]

この女性の研究では、平均値の周りにも幅がある。体重減少は9.5±3.4 kg、除脂肪量の減少は1.5±3.1 kgと報告されており、±で示された値はばらつきを示す値である。平均だけでは見えない参加者ごとの違いにも目を向けたい。特に除脂肪量は平均値だけを見て、参加者全員が同じ量を失ったと思わないことが大切だ。[8]

脂肪量の減少は8.0±2.9 kgだった。体重の変化を脂肪とそれ以外に分け、さらにそれ以外を組織ごとに調べるという順序を踏んでいる。研究が示すのは、体重の減少を細かく見ると、異なる成分が違う割合で動くという事実である。減った重さのすべてを、脂肪の成果や筋肉の損失のどちらかに振り分ける必要はない。[8]

もうひとつ、割合の大小と失った重さの大小は別である。腎臓の減少率が筋肉より大きかったとしても、それだけで腎臓が筋肉より重く減ったとは読めない。比較しているのは、それぞれの組織の元の量に対する割合だからだ。論文の数字を横に並べるときは、同じ単位で書かれていても、基準になる量を確かめたい。[8]

予想より低い代謝は、予想の作り方でも変わる

代謝適応とは、減量などに伴う消費量の変化のうち、体の量から予測される変化を超える部分を捉える考え方だ。ところが、予測に使う除脂肪量の内訳を粗く扱えば、本来は組織構成の変化で説明できる分まで、予想外の低下として残る可能性がある。比較相手になる予測値にも、作り方がある。[2][5]

健康な若い男性32人を対象にした管理下の研究では、21日間のエネルギー制限と、その後14日間の過剰摂取を調べた。制限中には体重が平均4.2 kg、安静時消費量が平均173 kcal/日減少した。除脂肪量だけで調整した制限中の適応の大きさは平均116 kcal/日だったが、臓器や組織の構成も調整すると平均83 kcal/日になった。男性の短期実験なので、この数値を18〜39歳の女性の日常の停滞にそのまま当てはめることはできない。[5]

一方、水分やたんぱく質、骨のミネラルなど、別の角度から除脂肪量の構成を調整した場合は平均122 kcal/日だった。同じ若い男性のデータでも、補正に使う情報によって適応の算出値は変わる。解剖学的な内訳と、体を構成する成分の内訳は同じ情報ではなく、どこに補正を加えたかで残る差も変わる。[5]

この研究は、調整後の適応の大きさは、全体として減量を阻止したり、体重増加に抵抗したりするほど大きくはないと評価している。したがって、「代謝が適応したら何をしても体重は変わらない」という断定は、この実験の結果には合わない。ただし若い男性の短期実験であり、女性の長期の停滞をそのまま数値化した研究ではない。[5]

日常では「予想より落ちない」の予想が、以前の体重減少の勢いで作られていることもある。研究の代謝適応は、そうした感覚だけで名付けるものではない。実測値と、体組成を踏まえた予測値の関係を調べて初めて議論できる。横ばいのグラフに「代謝故障」と書き込むには、根拠が足りない。[5][8]

男性の実験には、制限を終えた後の観察もある。続く過剰摂取では体重が平均3.5 kg、安静時消費量が平均194 kcal/日増加した。除脂肪量だけで調整した適応は統計的に有意ではなかったが、解剖学的な内訳を調整すると有意になった。体組成を詳しく扱う効果は、制限時と過剰摂取時で異なる向きに働いた。[5]

この結果を「食べれば代謝が元通りになる」という実践法へ変換するのも早い。管理された短期実験は、量と構成の変化を計算でどう区別するかを検討している。生活の食事を増減させる処方としてではなく、予測と実測の差を読むための実験として受け止める方が、その目的に近い。[5]

数字で読む減量と臓器の変化

45人:食事介入で筋肉と臓器の変化を調べた、過体重・肥満の女性の人数である。[8]

8%:その研究での安静時消費量の低下であり、筋肉の減少率そのものではない。[8]

4%と6%:同じ研究の肝臓と腎臓の重さの減少率である。[8]

116から83 kcal/日:若い男性の研究で、除脂肪量に加えて解剖学的構成を調整したときの適応の大きさである。[5]

43人:肥満ではない成人を対象に、長期の臓器・組織変化を調べた無作為化試験の人数である。[18]

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宮川涼 Founder

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