脂肪燃焼に鶏肉は他の肉より有利?量をそろえて読む食後の熱と肉の選び方

脂肪燃焼のために鶏肉ばかり選ぶ必要はあるのか。肉と大豆で消費エネルギーを比べた試験、牛肉の量を変えた試験を読み、たんぱく質量と食品の違いを分けて考える。食後の熱、脂肪の利用、長期の体脂肪は別の結果であることを確かめ、夕食の主菜を選ぶときの見方につなげる。

夕食の主菜を決めるために冷蔵庫を開ける。鶏肉はあるが、今日は豚肉を食べたい。「脂肪燃焼には鶏肉」と聞いたことがあると、好みで選ぶだけの夕食が小さな試験になる。

先に答えると、ここで取り上げる人の比較試験から、鶏肉が他の肉より脂肪を燃やすと決めることはできない。肉由来のたんぱく質で消費エネルギーが高くなった試験がある一方、肉・乳・大豆の食事で脂肪の利用にも消費エネルギーにも有意差が出なかった試験がある。食品名だけの順位表にはならない。[19][14]

見るべきなのは、何を何に置き換え、たんぱく質量をどこまでそろえ、いつまで測ったかである。牛肉を多くした食事でも少なくした食事でも、減量後の維持期に体重やエネルギー代謝の変化が同様だった試験もある。鶏肉だけを正解にする前に、この比較の条件を確かめたい。[5]

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食後の熱と脂肪燃焼は同じ結果ではない

食後の熱産生という言葉に期待するのは、食べたあとに消費されるエネルギーだろう。ただし研究では、消費したエネルギーの量と、脂肪や糖、たんぱく質をどの程度利用したかを分けて測る。肉・乳・大豆を比べた試験でも、エネルギー消費、脂肪の酸化、糖質の酸化、たんぱく質の酸化は別の評価項目になっている。ここでいう酸化は、栄養素を体内で燃料として利用することを指す。[14]

この分け方は夕食の判断にも必要だ。「肉を食べると熱が出る」という話を、そのまま「体脂肪が多く減る」に進めない。食後の燃料利用を調べた試験と、生活を続けた後の脂肪量を調べた試験は、答えている問いが違う。前者の結果を後者の成果として読むと、測っていない変化まで期待に加わる。[14][5]

既存記事「脂肪燃焼の呼吸測定はたんぱく質を無視できる?食事と計算の前提を研究で読む」には測定の計算を譲り、ここでは食卓で肉を選ぶ際の比較条件に絞る。また、熱産生一般は「食事誘発性熱産生の実力 たんぱく質で増える食後の熱と、体重計に届かない理由」の領域である。

たとえば、鶏肉の主菜を加えて主食も他のおかずもそのままにする食事と、主菜を鶏肉から豚肉に替える食事では、変えているものが違う。前者は食事への追加、後者は食品の交換だ。等しいエネルギー量に調整した実験の結果を使うなら、自分の食事でも「足した話か、替えた話か」を先に区別する必要がある。[19][14]

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豚肉と大豆で差が出た試験は何をそろえたか

若く健康で、過体重から軽度の肥満にあたる非喫煙男性12人が参加した無作為化クロスオーバー試験がある。クロスオーバーとは、同じ参加者が期間を分けて異なる条件を経験する方法である。この試験は豚肉を中心とする食事、大豆を中心とする食事、糖質の多い食事を、それぞれ4日間続けて比較した。男性だけを対象にした結果を、18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできない。[19]

食事のエネルギー量は同じに調整されていた。豚肉食はエネルギーの29%をたんぱく質から、大豆食は28%をたんぱく質からとっていたのに対し、糖質食のたんぱく質は11%だった。脂質の割合は順に29%、29%、28%である。豚肉食と糖質食の比較は、肉の名前だけを替えたものではなく、栄養素の配分も大きく替えた比較だ。[19]

呼吸測定室で測った24時間の消費エネルギーは、豚肉食で大豆食より248 kJ/日、割合にして1.9%高かった。糖質食との差は492 kJ/日、3.9%だった。研究者は、糖質の一部を豚肉または大豆のたんぱく質に替えることで消費エネルギーが高くなり、豚肉と大豆の間にも差があったと報告している。[19]

この数字を読む際、比較相手を消さないことが大切だ。「豚肉で消費が増えた」だけでは、糖質の多い食事と比べたのか、同程度のたんぱく質を含む大豆食と比べたのかが分からなくなる。前者にはたんぱく質の割合を増やした違いが含まれ、後者では主なたんぱく質源の違いにより焦点が当たる。[19]

ただし、これは男性の短期試験であり、鶏肉と豚肉を直接比べた順位ではない。長期の体脂肪への影響は、後述する継続試験の結果と分けて読む。弁当のラベルにある「チキン」という文字に、この試験の差を移し替えることもできない。[19]

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同じ高たんぱく食でも差が出なかった試験がある

別の無作為化クロスオーバー試験では、成人12人が肉、乳、大豆を主なたんぱく質源とする食事をとり、測定室で8時間の評価を受けた。食事はいずれも同じエネルギー量で、たんぱく質30%、糖質40%、脂質30%という配分にそろえていた。食品の由来を比べる際に、栄養素の割合を共通にした設計である。成人全体の比較であり、18〜39歳の女性でも同じ結果になるかは別に確かめる必要がある。[14]

結果は、消費エネルギーに有意差がなく、脂肪の酸化にも糖質の酸化にも有意差がなかった。満腹感の自己評価にも有意な違いはみられなかった。肉なら大豆より必ず熱が出て、脂肪も多く使い、満腹感も高くなる、という一続きの説明は、この試験では支持されなかった。[14]

一方、たんぱく質の酸化には差があった。肉が中心の食事では、大豆が中心の食事よりたんぱく質の酸化が有意に低かった。研究者は肉によるたんぱく質の節約の可能性に触れているが、それは脂肪の酸化が増えたという結果とは違う。消費エネルギーに差がない中にも、利用する栄養素の内訳には違いがあったわけだ。[14]

たんぱく質の酸化が低いことを、その場で筋肉が増えたと読み替えるのも早い。食後の燃料利用と、継続した後の筋肉や除脂肪量の変化は分けて考える必要がある。この試験で直接比較されたのは食事後の代謝と満腹感であり、筋肉の増加量を競う試験ではない。[14]

豚肉と大豆で差が出た短期試験と、この食後の比較は、どちらかだけを採用する関係ではない。測った長さも、食事条件も、対象の記述も異なる。違いの原因を断定することはできないが、肉の由来による消費の差が、条件を越えて常に再現されると扱うのは難しい。食べ物の名札だけで燃焼の強さは決まらない。[19][14]

栄養素の割合が同じでも食品の違いは残る

食品名が無意味という話でもない。健康な男性26人(平均年齢46.6歳)が全測定を終えた12週間の入院無作為化試験では、体重を維持する食事を用い、糖質50%、脂質30%、たんぱく質20%という構成を共通にしたうえで、肉、魚、ソーダの組み合わせを変えている。食事の管理下で食品の違いを調べた予備的試験の二次結果である。男性を対象にしたこの結果が18〜39歳の女性にも当てはまるかは、女性を対象とする比較が必要だ。[4]

魚を含む条件では、含まない条件より24時間の消費エネルギーが126 kcal/日高かった。一方、ソーダを含む条件では132 kcal/日低く、その低下の約80%は、起きているが活動していない時間の消費の低下によるものだった。たんぱく質や糖質の供給源が、消費エネルギーに関わる可能性を示す結果である。[4]

この研究を読む際にも、魚の結果を鶏肉の宣伝に使わないことが重要だ。食品の供給源を区別する意味はあるが、ある食品で得られた結果を、別の食品へそのまま渡すことはできない。また、体重を維持するように組まれた食事での消費の差を、そのまま日常の体重減少の予測として使うべきでもない。[4]

食品を、たんぱく質だけを運ぶ入れ物として扱うと、この試験の問いを見失う。他方、食品全体の違いがあり得ることと、鶏肉が特別に有利だという主張との間にも距離がある。食事の配分をそろえて比べる作業と、具体的な食品を確かめる作業は、両方必要なのである。[4][14]

入院試験では開始時と12週間後に測定室で評価しているため、その場の食べた直後だけを見た比較とも異なる。また、魚による消費の違いは特定の消費成分だけでは説明されなかった。活動していない時間の違いが目立ったソーダの結果と、同じ仕組みだとまとめることもできない。食品ごとに結果の内訳を読む必要がある。[4]

夕食の写真が同じように見えても、管理された試験では栄養素の構成や体重維持という条件が設けられている。普段の食事に取り入れる際は、その管理条件まで再現できていると思い込まないことだ。食品の違いを知る研究は、単品の効能表とは読み方が違う。[4]

数字で読む肉と消費エネルギー

男性12人、各4日間。豚肉・大豆・糖質中心の食事を同じ参加者で比較した。[19]

248 kJ/日。豚肉食で大豆食より高かった24時間の消費エネルギーの差である。[19]

成人12人、8時間。肉・乳・大豆の高たんぱく食で、消費と脂肪酸化に有意差はなかった。[14]

牛肉25 g/日と150 g/日。減量後の維持期で、代謝や体重の変化に群間差はなかった。[5]

126 kcal/日。管理された食事で魚を含む条件と含まない条件の消費の差であり、鶏肉の効果量ではない。[4]

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宮川涼 Founder

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