体が硬い感覚は仮想の体でも変わる?動く怖さと実際の可動域を分けて読む

体が硬いと感じたとき、見え方を変えれば関節も動くのだろうか。仮想の体を自分の体のように感じる実験と、肩の痛みや膝の手術後の臨床試験を読み、動作への恐怖、痛みなく動ける範囲、関節の可動域を区別する。その場の変化と続く変化、日常の柔軟性へ応用するときの境界も確かめる。

上着の袖に腕を通すときは平気なのに、ヨガで腕を上げると途中で止めたくなる。自分の番になると、途中で「ここから先は硬い」と止めたくなる。もし画面の中に、もっと滑らかに動く自分の体が現れたら、その境目も変わるのだろうか。

仮想の体を自分の体のように感じる訓練には、動くことへの恐怖や、痛みなく動ける範囲が変化した研究がある。ただし、恐怖が減っても実際の可動域に比較群との差がなかった試験もある。体の感じ方と測った動きは、同じ成績表ではない。[1][12]

既存記事「体が硬い人は鏡で脚を見ると伸びる?前屈の見え方と測った限界を分けて読む」には鏡と前屈の問いを譲る。ここでは仮想の体への身体所有感、つまり「この体は自分のものだ」という感覚を軸に、動く怖さと動ける範囲がどこまで一緒に変わるかを読む。[13]

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仮想の腕を自分の腕だと感じるとは

身体所有感は、体の部位の名前を知っていることとは違う。見えている腕を「自分の腕」として経験する感覚である。知覚と動作の関係を扱ったレビューでは、体の内側からの位置の手がかりと、視覚など外側からの手がかりの対応が、所有感を考える鍵になると整理されている。自分で制御する道具や仮想の物体も、状況によって体に属するものとして感じられ得る。[16]

ここでいう位置の手がかりは、画面を見なくても腕がどこにあるかを感じる働きに関わる。レビューは、内側と外側の感覚が十分に対応しなければ、単純には統合されないと論じている。画面の腕を自分の体として受け入れるには、感覚の対応が関わる。これまでの動作経験によって、どんな感覚の組み合わせを自然だと扱うかも異なるという整理である。[16]

実験では、実際の手の動きを仮想の手へ移す方法も使われる。仮想の手の移動を人工的に増幅した研究では、自分の体に手を触れたときの対応が正しく保たれていれば、動きが増幅されていても身体化の感覚は保たれた。身体化とは、仮想の体を自分の体として経験することを指す。見える動きの大きさだけでなく、触れた瞬間の整合性も問題になるのである。[18]

たとえば画面の腕は大きく動くのに、自分の肩へ触れた瞬間だけ手の位置がずれていたらどうだろう。この研究が問うたのは、そのような実際と仮想の対応の条件である。大きく動く映像を見せればよい、という単純な仕掛けではない。動作の増幅と、自分の体に触れる感覚の一致を区別して読む必要がある。[18]

「体の表現は柔軟だ」という研究の言葉も、ここでは意味を確かめたい。レビューの主題は、自分の体に何を含めるかという感覚の変化であり、筋肉や腱を伸ばしたときの柔らかさそのものではない。言葉の上では同じ柔軟性でも、測っているものが違う。画面の腕を自分の腕と感じたことから、実際の肩が柔らかくなったとは直結させられない。[16][18]

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腕を動かさない訓練で変わったのはどの方向か

肩を動かすと痛む患者を対象にした実験は、この違いを具体的に見せる。患者は仮想の体への所有感を育てたうえで、仮想空間の上肢を動かす訓練を受けた。その間、実際の腕は静止したままであった。対象は21人、訓練は15分で、前後に自力で痛みなく動かせる範囲を測っている。肩に痛みがある患者での結果なので、18〜39歳の女性の日常の硬さへの効果は別に確かめる必要がある。[12]

訓練後には、腕を横から上げる動きと、手を背中側へ回す動きが改善した。一方、腕を前へ上げる動きには有意な改善がなかった。同じ肩でも、変化は方向ごとに異なった。また、改善の程度は身体化の程度と相関していた。仮想の体をより自分の体として感じた人ほど変化が大きいという関係であり、所有感だけを原因と確定することはできない。[12]

この測定の名前には「痛みなく」という条件が付いている。痛みを伴わずにどこまで動かせるかを調べた結果と、組織をどこまで伸ばせるかという問いは分けたい。この実験が示すのは、肩に動作関連の痛みがある人で、特定の方向の自動運動が直後に変わったという結果である。日頃から前屈が苦手な人全般への効果とするには対象が違う。[12]

さらに、この研究は比較群を置かず、同じ患者の訓練前後を比べた実験である。結果は関心を引くが、別の訓練と比べて優れていたと読む設計ではない。そして訓練から1週間後には、改善は維持されていなかった。直後の変化を、そのまま長く残る柔軟性の獲得と呼べないことまで含めて、この研究の答えになる。[12]

夕方に上着へ腕を通す場面を考えると、横へ上げること、前へ出すこと、背中へ回すことの違いが想像しやすい。「肩が動くようになった」という一言では、どの動作が変わったかが消えてしまう。日常の動作を研究と照らすときも、部位だけでなく動きの方向まで言葉にしたい。今回の実験なら、前へ上げる動きまで改善したと話を広げないことが大切である。[12]

動く怖さが減っても可動域は別に測る

膝の前十字靱帯再建術後のランダム化比較試験では、通常のリハビリテーションだけの群と、それに仮想現実の訓練を加えた群を比べた。47人が割り付けられ、44人が治療を完了した。仮想現実の群は、手術後4週間、毎日20分、自宅で仮想の体を使って動作を思い描き、計画し、実行するプログラムに取り組んだ。対象は術後の患者であり、18〜39歳の女性が感じる普段の硬さへの効果を直接調べた試験ではない。[1]

手術から4週の時点では、仮想現実の群で動作への恐怖が低かった。恐怖を測る質問票の得点は27.00に対し比較群は33.35で、標準偏差はそれぞれ6.58と5.07であった。研究で示された効果量は−0.971である。この数値は関節の角度ではなく、動作への恐怖を測った尺度の差を表している。[1]

同じ試験で、自力で膝を伸ばす可動域の左右の対称性と、太もも前面の筋力の左右の対称性には、有意な群間差がなかった。自己申告による膝の障害の得点も、群間の差は統計的に有意ではなかった。両群とも時間とともに各指標が改善したが、仮想現実を加えたことによる上乗せは、指標によって異なった。[1]

ここに、体が硬いという悩みに持ち帰れる読み方がある。怖さ、動ける角度、筋力、生活での困りごとは、別々に確かめる対象である。怖さが減った結果を角度の改善として言い直さず、角度に差がなかった結果で怖さの変化まで消さない。同じ参加者から得た結果でも、質問票と動作測定は違う側面を見ている。[1]

「気持ちが楽になったのだから、もっと曲げられるはず」と自分に要求する必要はない。この試験の結果は、恐怖の低下と可動域の群間差が並ばない場合を示している。反対に、角度の数字だけで訓練の価値を判断すれば、恐怖という変化を取り落とす。研究が複数の指標を測る理由が、ここでは身近になる。本人の感じ方と測定した動作を並べて読むことで、何が変わったのかを具体的に受け止められる。[1]

慢性期の片麻痺を対象に、所有感の錯覚と模倣訓練を組み合わせた実験もある。脳卒中後に麻痺のある手について、見ている手への所有感を変える条件を設けると、その後にまねて行う手の動きが大きくなった。ここで測ったのは、続いて行う模倣動作の範囲である。肩の痛みの実験とも、膝術後の試験とも、動作が変わる場面が異なる。慢性期の片麻痺患者の結果を、18〜39歳の女性の柔軟性に当てはめるには検証が必要である。[13]

この実験では、所有感を誘導する実験条件のもとで、麻痺のある手の模倣動作を調べている。患者の動作の可能性を引き出す訓練としての意義と、一般の教室で見本を見ることへの応用は分けて考えたい。[13]

それでも、実際の動作を確かめた点は重要である。「自分の手に感じた」という質問への答えだけで終わらず、その後の動作を評価しているからだ。所有感を扱う研究を読むときには、感覚を尋ねた段階と、実際に動いて測った段階を探すとよい。体をどう経験するかという問いから、何ができるかという問いへ進むには、こうした別の評価が必要になる。[13][15]

数字で読む仮想の体と動き

47人が割り付けられ、44人が完了した膝術後の比較試験では、恐怖の低下と可動域の群間差は一致しなかった。[1]

毎日20分を4週間という膝術後の訓練は、短い映像を眺めるだけの条件ではない。[1]

21人に行った肩の実験では、15分の訓練直後に改善した方向と、改善しなかった方向があった。[12]

肩の実験で直後に見られた改善は、1週間後には維持されていなかった。[12]

54人を比較した手首の骨折後の試験では、仮想の腕を使う群で関節運動範囲などに良好な結果があった。[15]

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宮川涼 Founder

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