テニスの翌日に脚が重いと、回復用のプロテインを探したくなる。だが、食事で必要なたんぱく質を確保する話と、筋損傷や筋肉痛を早く戻す話は別である。テニス選手の食事調査、栄養レビュー、補給の比較試験を読み、切り返し後の回復を一杯だけに任せない考え方と食事の確かめ方を示す。
横へ走って止まり、逆側のボールを追う。日曜のコートではできた動きなのに、月曜は椅子から立つと脚が重い。試合後に飲んだプロテインを思い出し、「これで明日は戻るだろうか」と考える。検索したいのは筋肉を大きくする商品より、次の予定を普通にこなせるか、ということだろう。
答えの芯は、たんぱく質の確保は食事の課題だが、試合後のプロテインで切り返した脚の筋損傷や筋肉痛が早く戻る効果は、ここで扱う研究では確かめられていないことである。テニスの栄養レビューは日常のたんぱく質摂取を扱う一方、食事調査ではたんぱく質を満たしていても、運動を支える食事全体が不足する選手が見られる。[7][19]
既存記事「ランナーのプロテインは長く走る力も伸ばす?筋肉の回復と走行成績を分けて読む」には持久走の成績という問いを譲る。ここでは、テニスの停止と再出発を繰り返した日の食事をどう見るか、そして「回復した」を何で判断するかに絞る。

切り返した脚に、何が戻れば回復なのか
読者が知りたいのは、脚の痛みが軽くなることかもしれない。しかしテニスの研究では、筋肉痛だけでなく、跳ぶ高さ、反復して走る能力、血液の指標、主観的な回復感、実際の試合成績を分けて測っている。回復という言葉の中には、別々の評価が入っているのだ。[5]
競技男性選手9人を対象にした試験は、その違いを考えやすい。参加者は模擬大会で、連続する5日間に毎日2時間半のシングルスを行った。軽い運動、ストレッチ、冷水浴、マッサージを組み合わせる条件と、受動的に休む条件を比較し、別の大会では条件を入れ替えた研究である。競技男性の連戦を調べた結果を、18〜39歳の女性の休日のテニスにそのまま当てはめるには、性別と競技負荷の違いを考える必要がある。[5]
組み合わせた回復法は、試合成績、試合中の負荷、連日の試合からの回復に違いをもたらさなかった。熱心に手入れをしたことと、測定された回復が改善したことは同義ではなかったのである。これはプロテインの試験ではないが、「何かを追加したら回復するはず」という期待を点検する材料になる。[5]
ただし、この結果からマッサージもストレッチも全員に不要、と広げるのも行き過ぎだ。比較したのは競技男性の連戦と、複数の方法をまとめた介入である。個々の方法の効果や、休日にテニスを楽しむ女性の翌朝を、それぞれ独立して決着させる試験ではない。[5]
切り返しという場面に戻ろう。気になる動作を具体的に書き留めるなら、「全身が疲れた」だけでなく、階段で感じた重さ、しゃがむときの感覚、次の練習で困った動き、といった形にできる。これは自己診断のための検査ではなく、自分が何を回復と呼んでいるのかをはっきりさせるメモである。
痛みを採点した数字と、ボールへ走れる感覚を同じ欄に混ぜない。その区別は、筋肉痛、反復走、跳躍、試合成績を別々に扱った研究の設計とも対応している。補給を評価するときも、飲んだ翌日に何を確かめたいのかを先に決めるほうが、広告の「回復」という大きな言葉に引っ張られにくい。[5]
「切り返し後の筋損傷対策におすすめ」という表現を見ると、その場面だけを調べた試験があるように感じる。だが、日常の栄養を扱うレビューの推奨量と、特定の動作の後に痛みや力が戻る速さを比べる試験は、答えている問いが違う。たんぱく質の摂取目安を、そのまま翌日の回復効果の大きさとして読むことはできない。[19]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
プロテインの量より先に、食事全体を見る
テニスの栄養に関するレビューは、高い強度で長時間の練習を毎日行う選手について、たんぱく質を体重1kg当たり約1.6g、1日で摂る目安を示している。これは競技生活を支える食事の指針であり、試合後に粉をその量だけ飲むという意味ではない。競技者向けの指針を18〜39歳の女性に使う際も、毎日の練習量が同じかを先に確かめたい。[19]
分母に体重、分子にたんぱく質、そして期間に1日が入る。食品と飲料を通じた摂取の話を、シェイカーに入れる粉の重さへ読み替えないことが大切だ。同じレビューは炭水化物、脂質、水分も扱っており、回復の相談をたんぱく質だけに狭めていない。[19]
しかも、この目安の対象は毎日高い負荷で練習する選手である。休日の短い練習に、そのまま同じ条件を当てはめる必要はない。競技者向けの数字は自分の練習量を考える手掛かりであり、運動した全員に追加の一杯を求める注文書ではない。[19]
食事全体を見る意味は、若いテニス選手27人の調査からも分かる。研究者は7日間の練習と試合の期間に、食事日誌、食事写真、聞き取りを用いて摂取状況を調べた。たんぱく質は目安を満たすか上回っていたが、炭水化物の摂取は各年齢群で指針を下回っていた。成長期の競技者の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできず、自分の食事を確認する視点として読む。[7]
年少の年齢群では、練習日にも試合日にも、たんぱく質が体重1kg当たり2g以上だった。それでも研究は、運動、適応、回復、健康を支える燃料が十分でない食事の問題を指摘している。「たんぱく質を多く摂れている」と「食事が足りている」は、同じ評価ではなかった。[7]
これは成長期の選手を調べた観察研究であり、大人のテニス愛好家に同じ不足があると決めつける数字ではない。また、炭水化物を増やしたら翌日の筋肉痛が何割減った、という介入結果でもない。ここから受け取れるのは、食事の弱点をプロテインの量だけで見つけようとしない視点だ。[7]
たとえば練習帰りの夕食を考えるとき、飲み物のラベルだけで点検を終えない。食事を取ったか、何を食べたか、その日の予定の中でどこが抜けたかを書き出す。粉を足すかどうかは、その後の話にできる。食事調査で実際に確かめたのも、単独の商品ではなく、食事と間食を含む摂取の全体像だった。[7]
「飲んでいる人が多い」は効いた証拠にならない
テニス選手70人の質問紙調査では、試合後の回復法としてプロテインシェイクを使う人は37%だった。フォームローリングは77%、冷水浴は40%で、複数の回復法を取り入れる人は80%だった。補給やケアが競技生活の一部になっている様子がうかがえる。テニス選手の習慣を集計した割合であり、18〜39歳の女性にも同じ割合が当てはまるかは別に確かめる必要がある。[8]
ここで数字の読み方を間違えない。37%は、飲んだ人の割合である。筋肉痛が37%減ったわけでも、飲めばその割合の人が回復するわけでもない。質問紙は習慣を尋ねたもので、同じ条件で飲む群と飲まない群を比較した効果の試験ではない。[8]
同じ調査で、試合の翌日の食事について「特に決めたものはない」と答えた選手は39%いた。試合前には炭水化物を意識していても、その後の食事や回復習慣には大きなばらつきがあった。研究が指摘したのは実践の改善余地であって、全員が同じ回復セットを買うべきだという結論ではない。[8]
シェイカーを洗ったことは、夕食を食べた証拠にはならない。試合直後の補給をしっかり覚えていても、帰宅後や翌日の予定は別に考えたい。質問紙の結果を生活に移すなら、「人が使っている商品」を探すより、自分は試合前、直後、翌日に何をしているかを分けて振り返るきっかけにするほうがよい。[8]
先の若い選手の調査では、たんぱく質の摂取は試合日より練習日のほうが約17%多く、昼食にも差があった。間食も毎日一定には取られていなかった。忙しい日ほど食事の配置が変わるという視点は、総量だけを眺めると見落としやすい。[7]
大会の日は移動や待ち時間があり、練習日と同じ時間に食卓へ座れるとは限らない。そこで「試合後に何を買うか」に加え、「帰宅して食べる予定はあるか」という問いを置く。これは特定の食べ物の効能を決める話ではなく、観察された日ごとの食事の違いを、自分の予定表で確かめるための工夫である。[7][8]
食事の記録を読むときには、調べ方にも目を向けたい。若い選手の研究は日誌だけでなく、写真や聞き取りも組み合わせていた。一方、70人の調査は習慣を質問する方法だった。実際の摂取を日ごとに追うことと、普段の行動を答えることでは、つかめる情報が違う。[7][8]
そのため、調査の割合を自分の食卓の採点基準にする必要はない。自分のメモには商品名だけでなく、食べた場面や予定を書いておけばよい。研究で観察された食事のばらつきを、自分にもあるかもしれない確認事項として受け取るのである。[7][8]
数字で読むテニスと補給
約1.6g/kg/日:毎日、高強度・長時間の練習をする選手に示されたたんぱく質の目安。試合後の粉の量ではない。[19]
27人・7日間:若い選手の食事調査。たんぱく質の充足と、燃料になる食事の充足は一致しなかった。[7]
37%:質問紙調査でプロテインシェイクを回復法に挙げた選手の割合。効果の大きさではない。[8]
9人・5日間:連戦で複合的な回復法を試した競技男性。比較条件との回復の差は認められなかった。[5]
93.63%対69.09%:アミノ酸の組み合わせを試合前に摂った試験で、試合後に正しい方向へ打てた割合。筋損傷の回復率ではない。[14]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







