ふくらはぎが筋肉質だと、軽い重りで回数を増やせば細くなると思いやすい。だが軽い負荷でも筋肉の厚さが増えた試験がある。かかと上げの研究から、負荷の重さ、血流制限の有無、筋肉ごとの反応を読み分ける。筋力の向上や脚全体の体積を、見た目の変化と取り違えないための記事である。
かかと上げの重りを軽くすれば、脚は「引き締まる」のだろうか。まず、筋肥大は筋肉が大きくなる変化で、見た目の「引き締まり」とは分けて考えたい。筋肉の厚さが増えても、脚全体の体積が変わらなかった試験がある。[4] 細い脚だけをよい形と決める必要はない。筋肉を大きくすることだけを目標にせず、力をつけたいのか、動きやすさを大切にしたいのか、自分の希望から運動を考えてよい。
しかし、軽い負荷で繰り返す運動でも筋肉の厚さは増えうる。トレーニング経験のある健康な男性を対象にした試験では、軽い負荷のかかと上げを続けたあと、腓腹筋の厚さが増えた一方、ふくらはぎ全体の体積は変わらなかった。この男性対象の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできず、女性でも同じ量だけ変わるという予測には使えない。[4]
したがって「軽く何回も行えば痩せる」という答えにはならない。問うべきなのは、重さをどこまで落とすかだけでなく、何を変えたいのか、研究では何が変わったのかである。負荷の軽さ、筋肉の厚さ、発揮できる力を別々に読むと、軽い重りに託しすぎずに済む。[4][5]

軽い負荷という言葉には、比較の相手がいる
研究で使われる負荷は、単にダンベルが軽そうに見えるという意味ではない。最大で持ち上げられる重さを基準にした割合で表す。最大で持ち上げられる重さを1RMと呼び、かかと上げの試験ではその30%を使っていた。これは参加者それぞれの最大重量に対する設定であり、全員に同じ重りを渡すこととは違う。[4]
同じ軽い重りでも、そこで何回繰り返すのか、どこで終えるのかが変われば、実施した練習は別になる。この試験は、週2回、6週間、各回4セットを続ける設計で、各セットは反復を続けられなくなるまで行われた。「重りが軽い」という条件だけを抜き出して、家で気が向いたときに少し動かすことと同じにしないほうがよい。[4]
既存記事「ふくらはぎ痩せの運動は毎日少しずつ?週の回数と筋肉の成長を分けて研究で読む」には頻度の問いを譲り、ここでは重りの軽重と、厚さの変化の関係に絞る。回数を残して終えるかどうかも別の問いであり、ここで限界まで行う練習を勧めるわけではない。
立川駅北口の夕方、買い物袋を持ったまま背伸びする場面を想像してほしい。袋が軽いことと、繰り返す運動が筋肉を育てる刺激にならないことは、別の話である。軽い負荷で筋厚が増えた試験がある以上、袋の重さだけで将来の脚の形を判定することはできない。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
軽いかかと上げでも筋厚が増えた試験
中心になるのは、健康な男性を血流制限ありの群と、なしの群に分けた無作為化試験である。血流制限とは、カフを用いて血流を制限する研究上の方法を指す。対象はそれぞれ12人と9人で、平均年齢は約27歳と約29歳、平均のトレーニング経験はどちらも約7年だった。18〜39歳の女性、とくに運動を始めたばかりの人への適用は、この男性対象の試験だけでは判断できない。[4]
両群とも最大重量の30%でかかと上げを行い、血流制限の有無による違いが比較された。腓腹筋は、ふくらはぎを構成する筋肉の一つとして厚さを測られている。介入後の筋厚の変化は、血流制限ありでプラス0.07cm、なしでプラス0.04cmだった。時間による変化は統計的に有意だったが、群による効果や、変化の仕方の群間差は確認されなかった。[4]
この結果を「血流制限のほうが厚くする」とは読まない。増加量を並べると数値は違って見えるものの、研究の比較で差が確認されたかどうかは別である。逆に、差が確認されなかったからといって、どんな人にも両方法が完全に同じ結果をもたらすという保証にもならない。少人数の試験として、その比較の範囲に置く必要がある。[4]
読者の問いに戻れば、重要なのは通常の血流で行った軽い運動でも、筋厚増加が観察されたことだ。軽い重りは、筋肉を減らすスイッチではなかった。ただし、この変化量をそのまま読者の脚に当てはめることもできない。経験のある男性が決められた条件で続けた結果であり、読者とは性別や練習の経歴が異なる。[4]
さらにこの試験は、軽い負荷と重い負荷を直接比べたものではない。軽い負荷という共通条件のもとで、血流制限を加えると違うかを調べている。「軽くても変化した」という問いには役立つが、「重い場合より何倍育つか」という問いの答えには使えない。この区別を挟むだけで、研究の紹介はずいぶん正確になる。[4]
もう一つ確かめたいのは、回数の単位である。血流制限なしの群では、介入期間を通じた各回の平均総反復回数が70回、血流制限ありでは52回だった。これは各セットの回数を全員同じにそろえたという数字ではなく、各回に行った反復の合計を平均したものだ。軽い負荷と多い回数が組み合わさっていることは分かるが、70回を毎日の目標にする根拠にはならない。[4]
この比較で血流制限ありの方法は反復回数が少なく、研究では時間効率の面が指摘されている。ただし、少ない反復で済んだという評価と、筋厚の増加が大きかったという評価は区別する必要がある。何を効率と呼ぶかによって、同じ結果の受け取り方が変わる。時間の短さを探す人と、見た目の変化を知りたい人が、同じ結論を持ち帰る必要はない。[4]

厚さが増えることと、脚全体が大きくなること
同じ試験では、筋肉の厚さだけでなく、ふくらはぎ全体の体積、最大重量、脚のばねとしての特性も調べられた。筋厚と最大重量には時間による有意な変化があった一方、体積と脚のばねの指標は変わらなかった。最大重量の増加は、血流制限ありで40kg、なしで34kgであり、この項目でも群間の効果の違いは確認されていない。[4]
筋厚は測った筋肉の厚さ、体積はふくらはぎ全体についての指標である。この試験では、前者が増えたから後者も増えた、という関係にはならなかった。超音波の数字と、靴を脱いで見下ろした輪郭を、同じものとして扱わないことが大切だ。筋厚の増加という研究結果を、外見が必ず大きく変わるという宣言に広げる必要はない。[4]
一方、体積が変わらなかったことを「脚が細くなった」と言い換えるのも誤りである。増えなかったと、減ったとの間には距離がある。研究で変わらなかった項目まで成功物語に組み込むと、軽い負荷が細くする方法だったように聞こえてしまう。結果は、増えた指標と変わらなかった指標をそのまま並べるほうがよい。[4]
たとえば、運動の記録で持ち上げられる重さが伸びても、鏡の前では違いが分からない場面を考える。そこで「意味がなかった」と決める前に、何を目標にした記録なのかを見直せる。力の指標、筋肉の厚さ、全体の体積を別に評価した研究は、成果の名前を一つにまとめないための手がかりになる。[4]
重い負荷との比較では、筋肉ごとに答えが違う
重い負荷と軽い負荷を比べた別の試験では、健康な成人28人が、片脚の足首を伸ばす運動を行った。重い条件は最大重量の75%で4セット、各10回。軽い条件は最大重量の20%で、血流制限を加えて実施した。期間は4週間、頻度は週5回であり、高頻度の介入として読む必要がある。健康な成人の結果でも、18〜39歳の女性に同じ反応が生じるかは、この試験だけで判断できない。[5]
この試験では、ふくらはぎを構成するヒラメ筋、腓腹筋の外側、腓腹筋の内側を分けて評価した。結論は、外側の腓腹筋の大きさの増加について重い負荷のほうが有効で、ヒラメ筋は両条件に似た反応を示したというものだった。内側の腓腹筋には、どちらの条件でも統計的な変化が認められなかった。[5]
「重いと太く、軽いと細く」という線引きより、ずっと入り組んでいる。外側で違いがあっても、ヒラメ筋まで同じ違いがあるとは限らない。ふくらはぎという呼び名は一つでも、測る筋肉を分けると結果が分かれる。また軽い条件には血流制限があるため、この比較を普通の軽いかかと上げとの比較へ置き換えることはできない。[5]
数字で読む、負荷と測った変化
30%:経験のある男性の試験で使われた、最大重量に対する負荷である。[4]
6週間:軽い負荷で筋厚と最大重量の変化を評価した介入期間である。[4]
プラス0.04cm:血流制限なしの群で観察された筋厚の変化。群間差の証拠とは別である。[4]
28人:高負荷と、血流制限を加えた低負荷を比べた健康な成人の人数である。[5]
43.6%と43.5%:別の男性対象試験で、低負荷・血流制限条件と高負荷条件にみられた足首を伸ばす動的筋力の増加である。[3]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






