社会人が体力をつける通勤歩行は毎日必要?出社日数と歩いた時間を分けて読む

社会人が通勤のウォーキングで体力をつけるには、毎日歩かなければならないのか。週の合計時間と強度をそろえた試験、回数と強度を変えた試験を読み分け、出社日数だけで運動量を判断しない方法を考える。心肺体力と血糖・体重の変化の違い、記録しておきたい条件も示す。

在宅勤務が続くと、玄関の靴だけが休暇に入る。出社した日は駅まで歩くのに、自宅で仕事をする日は、その移動が丸ごと消える。週末に予定表を見て「毎日歩けなかったから、体力づくりは失敗か」と考えるなら、出社の印と歩いた時間を別々に数えてみたい。勤怠表は勤務を記録する道具であり、運動の成績表ではない。

毎日の歩行は、心肺体力を伸ばすための必須条件ではない。高齢の糖尿病女性を対象に、週の合計時間と強度をそろえて歩く回数を変えた無作為化比較試験では、どちらの組でも体力指標が改善した。18〜39歳の女性への適用には、年齢や糖尿病の有無、管理された歩行と通勤の違いを考慮する必要がある。[14]

既存記事「有酸素運動は分割と連続で同じ効果?短く分ける前に知りたい体力の比較条件」には、短い運動を分ける問いを譲る。また「ウォーキングは週1回にまとめてもよい?合計時間と体力の伸びを分けて読む」と区別し、ここでは出社日の変動で歩く時間が変わる社会人の記録と比較を扱う。

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毎日かどうかを決める前に、週の中身を見る

通勤歩行を考えるとき、最初に置きたいのは「何日出社するか」ではなく「何を、どれくらい歩く計画か」という問いである。歩行の試験でも、回数、強度、時間は別の条件として扱われている。これらを分けたうえで比べなければ、増えた回数の効果と、増えた運動量の効果が混ざってしまう。[14][16]

たとえば、いつもの駅まで歩いた日と、帰りに遠回りをした日を、同じ出社日として記録してよいだろうか。仕事の記録なら同じでも、運動の計画を振り返る際には分けたい。家を出てから改札までの所要時間も、歩いていない時間も含まれる。信号待ちや買い物を含む移動時間と、足を動かした時間を、自分のメモでは区別しておくのである。

通勤には仕事の都合が割り込む。雨でバスに乗った日も、荷物を抱えてゆっくり歩いた日もある。これを「予定を守れなかった」とだけ書くと、どの条件が変わったのか消えてしまう。まず予定と実際を並べ、歩いた区間を言葉にする。これは特定の効果を保証する方法ではなく、研究の条件と自分の生活を取り違えないための整理である。[14][16]

心肺体力の比較に用いられる指標には、最大酸素摂取量や最高酸素摂取量がある。運動の際に体が取り込んで使える酸素の量を測る指標であり、研究では歩いた回数そのものとは別に評価している。出社の印が増えたことと、測定された体力が増えたことは、同じ出来事ではない。[14][16]

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合計時間をそろえた試験は、何を比べたのか

問いに直接近いのは、Simmondsらが行った、65〜74歳の2型糖尿病女性を対象とする試験である。参加者を無作為に分け、一方は週2回、各60分、もう一方は週4回、各30分のトレッドミル歩行を行った。週の合計はいずれも120分で、運動強度もそろえられていた。実施期間は12週間である。18〜39歳の女性に同じ配分が適するかは、この高齢患者の試験だけでは判断できない。[14]

この設計では、頻度を増やす側で毎回の時間を短くしている。したがって「たくさん通った側は、そのぶん長く運動した」という比較ではない。回数の配分を考えるには、この釣り合いが大切になる。毎回の長さを変えずに日数だけ増やす生活の変更とは、別の比較なのである。[14]

運動強度にはガス交換閾値が使われた。呼吸のガスから運動に対する体の反応の切り替わりを評価する指標であり、試験ではその閾値に相当する強度で歩いている。駅まで自由な速さで移動することを、そのまま同じ運動と見なすことはできない。時間が一致しても、強度の条件は別途確かめる必要がある。[14]

結果は、どちらの組でも最高酸素摂取量、疲労困憊に至るまでの運動時間、ガス交換閾値が有意に改善した、というものだった。心肺体力の改善は両方の組に認められた。少なくともこの対象と条件では、毎日行うことは改善の必須条件ではなかった。[14]

ただし「両方で改善した」は「両方が完全に同じだけ改善した」と同義ではない。この結果から使えるのは、合計時間と強度をそろえて頻度を配分する考え方である。若い社会人の全員に、低い頻度で同一の効果が出ると約束するための数字ではない。[14]

出社日が少ない週を想像すると、役に立つ点が見えてくる。歩く日数が減ったという情報だけでは、その週の歩行量がどれだけ変わったかは決まらない。長く歩ける日があったのか、予定した区間を省いたのか。通勤のない日を失点とする前に、実際の時間と歩き方を確認する余地がある。[14]

頻度を増やした研究では、総量も変わっていないか

働く世代の生活に近い視点では、座って過ごすことの多い成人492人を対象にしたDuncanらの無作為化比較試験も参考になる。参加者の64.0%が女性だった。男女を含む成人の結果であり、18〜39歳の女性に同じ改善が得られるかは別に確かめる必要がある。歩行を勧める支援の内容を分け、運動の種類を歩行、毎回の時間を30分にそろえ、強度と頻度を変えた処方を比較している。[16]

この試験では、強めの強度で高頻度、強めの強度で低頻度、中等度で高頻度の条件で、最大酸素摂取量の改善がみられた。さらに、医師の助言を受ける比較群に対して、体力と脂質指標の改善がそろって有意だったのは、強めの強度で高頻度の条件だった。結果を「頻度はどうでもよい」と読むのも正確ではない。[16]

一方、この比較は前の試験とは構造が違う。毎回の時間が固定されているため、回数を増やせば予定上の週の合計時間も増える。頻度が高い組の結果を見て、合計時間をそろえた場合にも回数だけで同じ差が出る、と結論することはできない。頻度の表示が同じでも、問いの立て方が違うのである。[14][16]

通勤でも同じ混同が起こる。いつもと同じ経路を歩く日を増やした場合と、同じ合計時間を別の日に配り直した場合を、どちらも「回数を変えた」と呼べる。しかし前者では、週全体として歩く時間を追加している可能性がある。自分の計画を書き換えるときは、増やしたいのが日数なのか、合計時間なのかを先に書いておきたい。[14][16]

長期の結果は、体力と脂質指標で分かれる。24か月時点では、いくつかの条件で開始時より最大酸素摂取量が高い状態が続き、強めの強度で高頻度の組は医師の助言群よりも高かった。一方、善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールや、総コレステロールとの比では、有意な効果を認めない結果となった。心肺体力が伸びたことから、別の検査値も必ず改善すると広げることはできない。[16]

比較の表を読む際には、割り当てられた歩行の条件と、支援そのものも区別する必要がある。Duncanらの試験は、単に歩く人を集めて多い順に並べた調査ではなく、運動の相談支援を含む条件へ無作為に割り当てた試験である。比較群も医師の助言と書面の情報を受けていた。「何もしない生活に対して歩行だけを追加した差」と読み替えると、実際に比べた内容を取り違える。[16]

また、同じ人の開始前と終了後を比べた変化と、別の群に比べて大きかった変化を分けたい。この試験では、最大酸素摂取量が開始時から改善した条件が複数ある一方、医師の助言群と比べても有意だった条件は限られた。改善という言葉を見つけたら、その隣に「何との比較か」を書き添えると、頻度への期待を必要以上に膨らませずに済む。[16]

自分の通勤記録に引き寄せるなら、前の月より歩いた日が増えたことと、同僚より体力が伸びたことを分ける感覚に近い。前者は手帳で確かめられるが、後者には相手と自分の開始時の状態や、体力を測る条件も関わる。研究で群を設ける理由を、職場の歩数順位に置き換えないためにも、まず自分の計画の変更点を明らかにしたい。[14][16]

ここで、回数を減らすこと自体を目標にする必要もない。出社のついでなら歩く予定を置きやすい人も、移動のない日にまとまった時間を確保したい人もいる。試験が示す比較条件を使って、予定表には日付、歩く区間、予定の時間、実際の時間を並べる。回数を変更した後に合計がどうなったかを見れば、「配り直した」のか「追加した」のかを自分で説明できる。これは試験の運動量を全員に指定する話ではなく、違う変更を同じ言葉で扱わないための方法である。[14][16]

数字で読む通勤歩行の比較条件

週2回×60分と週4回×30分:回数を変え、週の合計時間をそろえた比較である。[14]

週120分:上の試験における共通の合計時間であり、全員への最低必要量ではない。[14]

12週間:同じ試験の実施期間であり、通勤の翌日に体力を判定した結果ではない。[14]

492人:強度と頻度を変えた歩行支援の無作為化比較試験の対象者数である。[16]

30分:歩行支援の試験で固定された毎回の時間であり、頻度を増やせば予定の総量も変わる。[16]

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