重りのベストとダイエット 減量中の骨を守る期待は歩くだけでかなうのか

重りのベストを着れば、減量しながら骨や筋肉も守れるのか。高齢者の減量試験と働く女性の歩行試験を比べ、体重、骨密度、筋力で異なる結果を整理する。着用だけの場合と運動に組み合わせる場合の違い、腰の痛みの報告まで確かめ、重さを増やす前に考えたい使い方を示す。

せっかく減らした体重を、ベストの重りでわざわざ戻す。ダイエットの買い物としては、少し不思議な発想である。だが研究者が狙ったのは、減量の取り消しではなく、体が軽くなっても骨や筋肉にかかる負荷を残すことだった。[1][2]

重りのベストには、歩く運動に負荷を足す使い方と、減った体重を外から補いながら暮らす使い方がある。この違いを飛ばして「着れば痩せる」と理解すると、研究の目的から離れてしまう。高齢者の減量試験では、ベストを使っても使わなくても体重は同程度に減り、大きな試験で股関節の骨密度低下を抑える効果は確認されなかった。[1][2]

一方、ベストを使った運動で脚の筋力や姿勢の安定性が改善した報告もある。[6] 重りが役立つ場面を考えるには、体重、骨、動く力を別々に見るところから始めたい。

重りの入ったベストを身に着けスクワットに取り組んでいる人物 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

減った重さを外から補うという発想

減量中に骨を守りたい、という問いが出発点である。肥満のある高齢者を対象にした研究では、体重減少と骨量減少が併せて問題になることから、外部の重りで失われた負荷を補う方法が検討された。骨が機械的な刺激に応答することを踏まえた試みである。[1]

この発想では、ベストの重さを初めから固定するとは限らない。小規模な予備試験では、参加者の減量に合わせて毎週ベストに重りを加えた。着用中の身体全体としては、減量前に近い荷重を残そうとする設計だった。[2] 重いほど多く痩せる道具というより、軽くなった体に負荷を戻す道具として調べられたのである。

予備試験の対象は、日常の身体機能が保たれた、肥満のある65〜79歳の男女37人だった。食事による減量指導にベストを加える群と、食事の指導だけの群を無作為に分け、22週間比較した。無作為化とは、参加者自身の希望で方法を選ぶのでなく、割り付けによって群を作る仕組みである。[2]

減った体重は食事だけの群で平均11.2kg、ベスト併用群で11.0kgだった。群の間に有意な差はなく、脂肪量、除脂肪量、体脂肪率の減少にも群間差はなかった。除脂肪量は、体脂肪以外の部分をまとめて捉える測定値であり、筋肉だけを意味する言葉としては扱えない。[2][11]

ここで分かるのは、食事介入にベストを追加しても、この条件では追加の体重減少が見られなかったことだ。両群が食事介入を受けており、比較されたのは、その食事介入にベストを足す効果だった。[2] 宣伝で大きな減量幅だけを見かけたら、比較相手も同じくらい減っていないかを確かめたい。

予備試験で注目されたのは、脚のパワーである。食事だけの群ではベスト併用群より脚のパワーの低下が大きかった。ただし、それ以外の身体機能の評価には群間差がなかった。[2] 脚に関する測定の一部で差があったことを、歩行全般や全身の筋力が守られたという説明に広げないほうが、結果を実際の選択に使いやすい。

参加者が日常生活でよく動ける高齢者だった点も、使う場面を考える材料になる。対象者の身体機能が保たれていたことは、結果を使う際の前提になる。[2] 立川駅まで歩くときに使いたい人、家事の間に着たい人、親の体力が気になって購入したい人では、目的も負担も違う。家族に勧める場合ほど、本人が何を困っているかを確かめ、研究の対象との距離を小さく見積もらないようにしたい。

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骨密度を守れるか、大きな試験の答え

予備試験の次に注目したいのが、150人を対象にした12か月の無作為化比較試験である。平均年齢は66.4歳で、女性が約4分の3を占めた。食事による減量のみ、減量とベスト、減量と段階的な筋力トレーニングという群に分け、股関節の骨密度を調べた。[1]

食事介入は体重の10%減少を目標とし、カルシウム、ビタミンD、たんぱく質の摂取にも配慮する内容だった。ベスト群の着用目標は日中8時間、筋トレ群は監督下で週3回の運動という設計である。[1] これは研究で比較するための条件であり、そのまま一般の人が目指す着用時間や運動回数にはならない。

実際の減量幅は各群で9.0〜11.2%と同程度だった。ところが、股関節の海綿骨という内部の骨組織を立体的に評価した骨密度は、どの群も1.2〜1.9%低下した。ベストを加えた群と減量だけの群の差は、統計的に有意とは判定されなかった。[1]

群間差の推定値はベスト群に有利な方向で0.91mg/cm3だったが、97.5%信頼区間は−0.27〜2.09mg/cm3と、差がない値をまたいでいた。信頼区間は、推定の不確かさを幅で示したものだ。この結果から、ベストで骨密度を保てると断定することはできない。[1]

別の方法で測った股関節の骨密度でも同様の結果だった。著者らは、この試験ではベストも段階的な筋トレも、減量に伴う股関節の骨量減少を抑えられなかったと結論づけている。[1] 骨の評価では、運動の有無よりも実際に測定された変化を確認したい。

ただし、この結果が対象にしているのは、肥満のある高齢者が食事で減量する局面である。年齢と減量の有無をそろえて読むことが、結果を使う前提となる。骨のためにベストを買う前には、自分が研究の対象にどれくらい近いか、そもそも減量を進めるべき状態かを医師に確かめたい。[1]

着て暮らすことと、着て動くことは違う

ベストの研究を並べるときは、重りの数字より先に、その間に何をしたかを見ると整理しやすい。平均74歳の男女62人を対象にした27週間の無作為化試験では、ベストなし、体重の3%の重り、5%の重りを比べた。着用は週4日、日中2時間の処方で、特定の運動は指定されなかった。[8]

ベストなしの群は21人、体重の3%の群は19人、5%の群は22人に割り付けられた。最終評価には、それぞれ19人、15人、20人が参加した。[8] 自宅で着用する試験であり、研究施設に集まって同じ動きを練習する構成とは違っていた。[8]

この試験では、筋力、筋持久力、身体機能、骨の代謝を表す検査値、健康に関する生活の質のいずれにも、割り付けによる差は見られなかった。研究者は、この条件でベストが与えた刺激は、筋力や骨に変化を起こすには足りなかったと解釈している。[8] 服を着る手間と運動の成果が、必ず交換できるわけでもなさそうだ。

対照的に、閉経後の女性44人が参加した9か月の比較研究では、下半身の筋力や素早く力を出す能力を重視した運動にベストを使った。参加者は50〜75歳の非喫煙者で、全員が閉経から5年以上経っていた。運動は週3回行われ、負荷は個別に、段階的に増やされた。運動群では対照群に比べ、下半身の筋力が16〜33%、筋パワーが13%、脚の除脂肪量が3.5%改善した。[6]

筋パワーとは、単に大きな力を出すだけでなく、素早く力を発揮する能力を捉える指標である。椅子から立つ場面を考えると、重さを支えられるかという問いと、すっと動き始められるかという問いの違いを想像しやすい。研究では、検査での筋力やパワーに加え、姿勢の安定性も測定された。[6]

この研究では、大腿骨頸部(太ももの骨の付け根)の骨量に有意な変化がなかった。[6] また、運動群と普段どおりに過ごす対照群の比較なので、改善のすべてをベスト単独の効果として切り出せない。[6]

歩くだけの上乗せを直接調べた試験もある。30〜60歳の働く女性48人を、ベスト付きの歩行とベストなしの歩行に無作為に分け、12週間比較した。両群の歩行は、傾斜のないトレッドミルで1回30分、週3回行われ、強度は最大心拍数の65〜75%だった。ベスト群も最初の2週間は重りなしで歩き、3週目から毎週体重の2%ずつ負荷を増やし、6週目に8%へ達した。[7]

骨を作る側、壊す側の活動を反映する検査値と体力の測定値には、両群の間で統計的な差がなかった。一方、両群それぞれで脚や腕の筋力・持久力、最大酸素摂取量などが改善した。[7] 比較の結果は、通常の歩行に対する重りの優位性を支持しなかった。歩く習慣を始めたい人にとっては、装備をそろえる前の歩行にも目を向けられる結果である。

数字で読む重りのベスト

150人:減量中の骨密度を調べた無作為化試験の参加者数である。[1]

9.0〜11.2%:その試験で各群が達成した減量幅。ベスト群だけの成果ではない。[1]

−1.2〜−1.9%:各群で見られた股関節の海綿骨の骨密度の変化である。[1]

48人:ベスト付きとベストなしの歩行を比較した、働く女性の人数である。[7]

5人:予備試験でベストによる背中や腰の痛み、痛みを伴う不快感を報告した人数である。[2]

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