インナーマッスルの足上げは膝を曲げる?てこの長さとお腹の働きを研究で読む

インナーマッスルを鍛える足上げで、膝を伸ばすか曲げるか迷ったときの考え方を整理する。脚の形と股関節の角度、呼吸で変わる腹部の筋厚を研究から読み、きつさと深い筋肉の働きを分けて考える。関節角度と筋活動の研究を手がかりに、見本の形を追う前に確かめたい点を紹介する。

膝を曲げた足上げは、手抜きなのだろうか。マットに仰向けになり、動画の見本どおり脚を伸ばそうとすると、足先の形ばかり気になる。膝を少し曲げると続けられそうなのに、「これではインナーマッスルを使えていないのでは」と迷う。脚をまっすぐにすることが、いつの間にか運動の合格条件になっている。

先に答えると、膝を曲げた形を失敗と考える必要はない。ただし「曲げるほど深い筋肉に効く」とも決められない。健康な若い成人の腹部を超音波で調べた研究では、脚の角度だけでなく、深く息を吐くという課題によっても腹横筋の収縮比が異なっていた。足先の形だけで、お腹の働きの採点はできないのである。[9]

ここで扱うのは、仰向けの足上げで膝の形をどう考えるかだ。お尻を持ち上げる運動の支持条件は、既存記事「インナーマッスルのヒップリフトは片脚で変わる?骨盤の回転とお腹の負荷を読む」に譲る。今回は脚の長さに見える違いを、関節の位置、呼吸、測定の意味に分けて見ていく。

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膝を曲げる話と、深い筋肉の話を分ける

足上げの見本には、膝を伸ばすものも、曲げて保つものもある。見た目では似ていても、膝を曲げることと、脚の付け根から太ももを持ち上げることは別の操作だ。研究でも、股関節の屈曲角度と膝の屈曲角度は別々の条件として扱われている。まず「膝を曲げた」と「脚を高くした」を同じ意味で使わないことが出発点になる。[9]

「てこが短くなる」という説明は、足先を体に近づける形を考えるための見取り図である。ただし、その見取り図だけで腹横筋の働く量までは計算できない。筋肉が生む力と関節を回す働きの関係には、筋肉の長さや関節からの距離などが関わる。太もも裏の筋肉を扱ったレビューも、関節角度と力の関係を、単純な筋活動の大小だけでは説明していない。[2]

レビューで扱われるハムストリングスは、太ももの裏側にある筋肉のまとまりだ。その中でも筋肉ごとに構造や力を発揮する性質が異なる。最大の力を出す能力や、長さの変化に対する力の変わり方が同じではなく、股関節と膝での働き方にも違いがある。脚という見た目のまとまりの中に、異なる条件で働く筋肉があるわけだ。[2]

ここから足上げに持ち帰れるのは、「脚が長く見えるほど、すべての筋肉が同じ割合で強く働く」という読み方をしないことだ。ハムストリングスについてのレビューを腹筋の実験に置き換えることはできないが、角度と筋肉の働きを分ける視点は役に立つ。膝の曲げ伸ばしだけで腹部の運動を順位づけするのは、この段階で急ぎすぎである。[2][9]

また、検索で見かける「インナーマッスル」という言葉は、お腹の中の単一の筋肉を指す名前としては扱わないほうがよい。腹部の研究では、腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋を区別して測っている。同じ動作をしていても、どの筋肉について述べているのかを確かめたい。深い場所の筋肉を鍛えたいという希望と、研究で測った部位をつなぐためである。[9]

腹横筋を意識したつもりだった、太ももが先に疲れた、お腹全体が硬く感じた。こうした感想は運動の記録として残せるが、そのまま研究上の筋厚や収縮比にはならない。感覚の言葉を捨てる必要はないものの、「どこがつらかったか」と「何を測れば働きが分かるか」は別の欄に置いておきたい。[9]

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腹部の研究では、脚の角度と呼吸を組み合わせた

腹部について直接の手がかりになるのは、健康な成人を対象に、体幹の運動中の筋厚を超音波で調べた研究だ。参加者は男性10人、女性12人の計22人で、平均年齢は22.82歳だった。測定対象は左右の腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋と、腹部の側面の筋層全体である。若い健康な人を調べた比較であることを、先に押さえておく。[9]

条件には、股関節と膝をともに伸ばした姿勢、股関節を45°・膝を90°曲げた姿勢、股関節と膝をともに90°曲げた姿勢があった。伸ばした姿勢では静かな呼吸と深い呼吸を、曲げた姿勢ではそれらに腹部を丸める運動などを加えて調べた。脚を曲げるかどうかだけの勝負ではなく、姿勢と課題の組み合わせを比較している。[9]

筋厚を測ったのは、息を吐き終えた時点だった。これは結果を読むうえで大切な条件である。動きながら好きな瞬間にお腹を見るのと、呼吸の時点をそろえて画像を比べるのとでは、比べているものが違う。家で足上げをしているときの「なんとなくお腹が動いた」という感想よりも、測定条件が細かく決められている。[9]

結果では、腹横筋の収縮比が最も大きい動作は深い呼気で、腹部を丸める運動やボールを用いた同様の運動より有意に大きかった。深く吐く課題の中では、腹横筋の収縮比は内腹斜筋、外腹斜筋よりも大きかった。著者らは、股関節と膝をともに90°曲げて深く息を吐く条件を、健康な若い人の側腹部、とくに腹横筋の活性化に適した動作と評価している。[9]

一方で、深く吐いたときの腹横筋の厚さそのものは、股関節90°で最も薄く、45°、0°の順だった。ここで「よく働いたなら最も厚いはず」と急いで結びつけると、結果を取り違える。厚さという測定値と収縮比という比較指標は、同じものとして扱えない。薄いという一語だけで失敗、収縮比が大きいという一語だけで万能、とする読み方は避けたい。[9]

この研究が示したのは、運動中の腹部の測定結果である。そこから、膝を曲げた足上げを続ければお腹の形が変わる、腰の不調が治る、と話を広げることはできない。今回の問いに即して言えば、脚を伸ばす難しさを増す前に、呼吸という別の条件にも目を向ける理由になる。きつさの調整つまみは、膝だけではなかったのだ。[9]

脚の高さは、お腹の強さの成績表ではない

膝を伸ばそうとすると太もも裏が気になり、曲げると脚の位置を変えやすく感じる人もいる。そんなとき、「お腹が弱いから」と理由を決める前に、脚の付け根と膝を別々に考えたい。ハムストリングスのレビューでは、股関節の屈曲が45°を超えるときに増える伸張への抵抗は、主に半膜様筋と大腿二頭筋長頭に由来すると整理されている。足先の高さだけでは、腹部以外の条件を見落とす。[2]

ただし、この角度を家で守るべき境界線にしてはいけない。レビューが整理した筋肉の性質と、個人が運動を中止する基準は別の話だ。ここで必要なのは、決まった高さを全員に課すことではなく、膝を伸ばした姿勢での動きに、太もも裏の条件も関わると理解することである。腹部の課題を見ていたはずなのに、実は脚の形をそろえることに集中していた、という行き違いを減らしたい。[2]

関節角度と筋活動の関係を考える補助になるのが、大腿二頭筋長頭を調べた実験だ。対象はレクリエーションとしてスポーツを行う男性15人で、股関節を0°、45°、90°曲げた条件で、片脚の膝を曲げる等尺性収縮を行った。等尺性とは、関節を動かさず力を出すことだ。18〜39歳の女性の足上げにそのまま当てはめられるかは、対象と動作が違うため別に確かめる必要がある。[13]

この実験では、高密度の表面筋電図を使い、大腿二頭筋長頭の体幹寄りと膝寄りの領域を分けて調べた。筋電図は筋肉の電気的な活動を測る方法であり、腹部を画像で見る超音波とは測定対象が違う。男性の運動愛好者では、体幹寄りの領域は膝寄りより活動の振幅が小さく、活動の分布も均一でなかった。18〜39歳の女性でも同じ分布になるかは、この男性の結果だけでは判断できない。[13]

男性15人の比較では、筋と腱を合わせた長さが長い条件ほど、両領域の活動の振幅が小さかった。つまり関節の形が変わるとき、同じ筋肉の中でも測る場所によって結果が異なる。18〜39歳の女性にこの関係を移すには検証が必要だが、少なくとも筋肉全体を一つの数値で語る前に、測った部位を確認する理由になる。足上げの説明でも「脚が伸びたから筋活動は全部増える」と一括りにせず、関節、筋肉、測定部位を順に確かめたい。[13]

ここで足上げに戻ると、膝を曲げて足先を近づける外見上の変化と、筋肉自体の関節に対する位置関係は分けて考えられる。レビューが扱ったモーメントアームとは、筋肉の力が関節を回す際の腕の長さである。脚全体をてことして見る説明と、個々の筋肉のモーメントアームを同じものとして読むと混乱する。ハムストリングスの力と長さを整理したレビューは、この区別の手がかりになる。[2]

たとえば「膝を曲げて楽になった」という感想を残すなら、まず曲げたのが膝であること、太ももの位置も動いたかどうかを添える。そのうえで、腹部の働きを知りたいなら腹部を測った研究へ戻る。太もも裏の研究は脚の条件を読むために使い、腹横筋の結論には腹部の超音波研究を使う。題材が隣り合っていても、根拠の担当を取り違えないことが、膝の形を選ぶ際の道筋になる。[2][9][13]

数字で読む足上げの周辺研究

22人:腹部の筋厚を調べた健康な成人の人数。男性10人、女性12人だった。[9]

90°と90°:深い呼気との組み合わせを評価された股関節と膝の角度。足上げの全員共通の目標値ではない。[9]

15人:股関節の角度と太もも裏の筋活動を比較した男性の運動愛好者。18〜39歳の女性への適用には検証が必要だ。[13]

0°・45°・90°:男性の筋電図実験で設定した股関節の角度。18〜39歳の女性向けの運動処方に移すには別の検証が必要だ。[13]

20人:筋力と柔軟性を調べた、運動習慣の乏しい中年女性の人数。18〜39歳の女性全体への一般化には慎重さが要る。[4]

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