ダイエットのえのきは細かく刻むと違う?細胞壁と消化から食べ方を研究で読む

えのきを細かく刻むと、ダイエットに役立つ成分が届きやすくなるのか。きのこの細胞壁、模擬消化、成分抽出の研究から、取り出しやすさと吸収、腸内細菌による利用を分けて読む。実験の数字を家庭の切り方や減量効果に置き換えず、忙しい日の調理で何を基準に選べばよいかを考える。

えのきをみそ汁に入れるなら、束をほぐすだけか、包丁で細かく刻むか。「刻むとダイエットによい成分がもっと出る」と聞くと、まな板の上で迷う。食べやすくするためのひと手間に、成分を届ける役目まで期待してよいのだろうか。

答えの芯は、きのこの構造が成分の取り出しやすさに関わることと、刻んだえのきで体重が減ることを分ける点にある。きのこの細胞壁はたんぱく質の抽出の障壁となり、菌の構造を変えた模擬消化実験では、残る菌体量や放出されるアミノ酸が変わった。しかし、これは家庭でえのきを刻んで食べる減量試験とは異なる。[5][13]

切り方に唯一の正解を探すより、どの成分を、どの段階で測った研究なのかを見るほうが役立つ。献立全体の話は既存記事「きのことダイエットの科学 低エネルギーの食材を減量につなぐ献立の条件」に譲り、ここでは包丁の先から消化までの間にある、細胞壁という構造に焦点を当てる。

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

細胞壁は、成分を包む構造でもある

きのこの細胞壁にはキチンやβグルカンなどの多糖類がある。多糖類とは糖が連なった物質である。ヒラタケの構造を扱ったレビューでは、キチンの硬さ、βグルカンの弾性、水を保持する性質が、食品の形を保つ性質に関わると整理されている。きのこの歯触りの背景には、こうした物質の組み合わせがある。[11]

ただし、細胞壁を「栄養を閉じ込める邪魔な袋」とだけ考えると話が狭くなる。たんぱく質を取り出す立場では障壁でも、多糖類そのものを調べる立場では研究対象となる成分である。きのこのたんぱく質に関するレビューと、多糖類に関するレビューでは、同じ食材を見ていても注目する場所が違う。[13][20]

料理の見た目で小さくなったことと、細胞壁の性質まで同じように変わったことも同義ではない。食品加工の研究では、超音波による物理的な破壊や、加熱による物質移動の促進など、異なる仕組みを使い分けている。したがって、細胞壁が関係するという説明から、包丁で刻めば抽出技術と同じ結果になるとは導けない。[13]

えのきを短く切る作業は、まず料理としての選択である。汁物に長いまま入れるか、具として細かく散らすか。食べやすさや料理へのなじみ方で選ぶことと、特定成分の吸収量を増やす目的で選ぶことは区別したい。後者を語るなら、切った大きさだけでなく、測定対象と処理の条件が対応している必要がある。

さらに、きのこをひとまとめにもできない。ヒラタケのレビューでは、柄は傘よりαグルカンが57%、βグルカンが33%多いとされる。同じきのこの中でも部位の違いがあるという話であり、えのきの柄と傘にも同じ割合が当てはまるという意味ではない。どの種類の、どの部分を調べたかが、成分の説明には付いて回る。[11]

台所では「きのこ」という売り場の分類で十分でも、研究ではその幅を意識する必要がある。ヒラタケの構造、別の菌の消化、抽出した多糖類の働きをつなぐときは、共通する発想と、種類を越えて持ち運べない数字を分ける。えのきを買った人にとって役立つのは、別のきのこの数字を自分の皿へ移すことではなく、その数字が何を比べているかを見抜くことである。

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

模擬消化で変わったのは、体重ではなく残る菌体量

細胞壁と消化の関係を具体的に示す研究として、サナギタケという菌を用いた実験がある。研究者は細胞壁の維持に関わる酵素に着目し、その発現を調節する遺伝子領域を改変した。菌そのものの性質を変えて消化されやすさを調べた基礎実験で、対象は人ではなくサナギタケである。18〜39歳の女性が刻んだえのきを食べた場合に、そのまま当てはめることはできない。[5]

模擬消化液で12時間処理した後、元の株では菌糸体の69.47±0.97%が残ったのに対し、改変した株では50.00±1.57%が残った。菌糸体とは、菌の糸状の体である。残存量の差は統計的に有意で、改変株からは模擬消化の間により多くのアミノ酸も放出された。研究は、酵素の発現量が、消化酵素の菌体への近づきやすさに影響すると示唆している。[5]

この結果の読みどころは「細胞壁に関わる条件を変えると、消化液の中での振る舞いが変わりうる」という点だ。数字の主語は食べた人ではなく、実験に使った菌体である。残存率が低いという結果を、体に取り込まれた栄養の割合や体脂肪の減少率として読むことはできない。[5]

また、12時間は実験の処理時間であり、食後にえのきが胃に残る時間の目安ではない。実験の時計と、夕食後の自分の消化を同じ時計として扱わないことが大切になる。研究の数字を生活へ持ち帰るときほど、その数字に付いていた条件を置き忘れやすい。[5]

改変株では子実体の風味が改善した一方、外観は損なわれたとも報告されている。子実体は、きのことして目にする部分である。食品の価値を考えるときは、消化されやすさに加えて、見た目や味も別の評価軸になる。これは、そのまま家庭の献立の話にも通じる視点だ。取り出す効率だけを追えば、食べたい形から離れる場合もある。[5]

この実験を知った後に包丁を持つなら、「細かくしたから同じ残存率になる」と期待するより、構造が消化に関わるという背景を理解するところまでにとどめるのが正確だ。機械的に切ること、酵素の働きを変えること、消化液にさらすことは、それぞれ違う操作である。料理に追加する作業を決める前に、この違いを保っておきたい。[5][13]

抽出の成功は、そのまま人の吸収率ではない

成分が「出る」という表現にも、いくつかの意味がある。食品から分析用の液へ取り出すこと、消化の途中で成分が放出されること、その後に人の体へ取り込まれることは、別々の問いだ。きのこのたんぱく質のレビューは、抽出の効率を高める技術を扱う一方で、この分野の食品利用研究は植物性たんぱく質に比べてまだ初期段階にあると整理している。[13]

その区別が見えやすいのが、セレンを多く含むよう育てたシイタケの分析である。セレンは研究で測った元素の名前だ。研究では栽培時に与えたセレンの形が異なるシイタケを比べ、どの化学的な形で、どこに結び付いているかを調べた。ふだん購入するえのきの栄養評価を行った実験ではない。[8]

シイタケの両試料で、セレンの80%超は所定の塩酸処理では抽出できなかった。一方の試料からはたんぱく質を分解する酵素で多くのセレノメチオニンが放出され、もう一方では細胞壁を分解する酵素によって主にセレン酸が放出された。同じ元素を追っても、結び付く相手や形によって、取り出しやすい処理が異なったのである。[8]

別のセレン強化マッシュルームの分析では、細胞壁を分解する酵素とたんぱく質を分解する酵素を組み合わせた段階的な処理で、抽出効率が89%に達した。ただし、成分の化学的な形を回収する成績は、別の処理のほうがよかった。取り出した総量と、目的の化学的な形を回収した量では、最良となる処理が異なるのである。[9]

ここで89%という数字を「食べれば89%吸収する」と読むと、分析の成績を人の生理へ置き換えることになる。切ったえのきの成分が何割増えるかを知りたい場面でも同様だ。数字だけが切り離されると、試験管の中で成分を回収する技術が、夕食の効能へと姿を変えてしまう。[9]

台所で確かめたい問いに戻すと、対象はえのきで、処理は家庭の調理で、知りたい結果は食べた後の変化である。シイタケやマッシュルームの特殊な試料を使った分析は、構造と成分の結び付きへの理解を助ける。しかし、その数値から家庭向けの切り幅を決める用途には進めない。研究が答えた問いを、別の問いへの答えとして売り渡さない姿勢が必要だ。[8][9]

分析では、全体の回収量と、特定の化学的な形を保って回収できた量も別の評価になる。セレン強化マッシュルームの研究で、抽出効率が最も高い処理と、化学的な形の回収が最もよい処理が一致しなかったことは、その具体例だ。「よく出た」のひと言では、研究の結果を十分に表せない。[9]

この点を料理の情報へ引き寄せるなら、割合を見つけたときに分母まで読む習慣が役立つ。元の試料に含まれた量なのか、処理後に残った量なのかで、数字の意味は変わる。えのきの食べ方を調べる途中でも、数字だけをメモせず、何に対する割合かを隣に残しておきたい。

数字で読むきのこの構造と測定条件

12時間:サナギタケの菌糸体を模擬消化液で処理した時間。家庭の消化時間ではない。[5]

69.47±0.97%:模擬消化後に残った元の株の菌糸体の割合。[5]

50.00±1.57%:同じ実験で残った改変株の菌糸体の割合。減量率ではない。[5]

80%超:セレン強化シイタケで、所定の塩酸処理では抽出できなかったセレンの割合。[8]

89%:セレン強化マッシュルームの酵素処理で得られた抽出効率。人の吸収率ではない。[9]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

1

2

Warning: Attempt to read property "show_author" on false in /home/c1531448/public_html/ontheshore.jp/wp-content/themes/heal_tcd077/single.php on line 165

関連記事

ご体験予約