大胸筋の筋トレ、女性もベンチを傾ける?角度で変わる胸と肩の働きを研究で読む

大胸筋の筋トレで女性が迷うベンチの角度。傾ければ胸の上部に効くのかを、女性のダンベル研究と男性の角度比較、継続したトレーニングの試験から読む。押す時と下ろす時の違い、肩の筋活動、筋厚と筋力の結果を分け、マシンにも同じ角度を当てはめてよいか、負荷を選ぶ際の見方を考える。

背もたれが斜めのベンチで、胸より肩の前が先に疲れる。角度を戻すべきか、そのまま続けるべきか。動画では「上の胸を狙う角度」と紹介されるが、肩の前ばかり疲れる気もする。

ベンチを傾けると、胸と肩の働き方は変わる。ただし女性のダンベル研究では、胸の上部の筋活動は、下ろす時には傾斜した種目で大きく、押す時には平らな種目で大きかった。「傾けた方が胸に効く」という一言だけでは、この違いが抜け落ちる。[7]

角度選びの芯は、胸全体の優劣を決めることではない。胸のどの部分を、動作のどの局面で見ているのかを確かめることだ。男性を対象に継続して鍛えた試験でも、傾斜の優位は筋厚を測った部位の一部に現れ、全般的な筋力の変化は群間で同程度だった。男性の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、この試験だけでは判断できない。[4]

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傾けると、胸と肩の分担が変わる

胸の筋肉として扱う大胸筋にも、鎖骨側の部分と胸骨側の部分がある。ここでは読みやすく、鎖骨側を胸の上部、胸骨側を胸骨側と呼ぶ。肩の前の筋肉は三角筋前部である。角度を比較した研究は、このように筋肉や部位を分けて測っているため、「胸に効いた」という全体の感想とは見ているものが違う。[1][7]

健康な男性15人の比較実験では、ベンチを水平の0度、28度、44度、56度に設定した。それぞれの角度で測った最大挙上重量、つまりその条件で1回持ち上げられる最大の重さの70%を使っている。同じ重りを持ち回った比較ではなく、各条件での能力に対する割合をそろえた比較だ。男性だけの実験なので、18〜39歳の女性にも同じ角度の差が現れるかは別に確かめる必要がある。[1]

胸の上部の筋活動は、44度と56度で水平より大きく、44度では28度より大きかった。一方、胸骨側の筋活動は水平で各傾斜条件より大きかった。肩の前の筋活動は、どの傾斜条件でも水平より大きい。傾斜によって胸の上部が働きやすくなる結果と、肩の前の働きが増える結果は、同時に起きている。[1]

そのため、肩の前を使っている感覚だけで「胸の種目に失敗した」と決める必要はない。少なくともこの実験では、傾けた時に肩の前の筋活動が増えること自体は観察された現象だ。ただし筋活動が大きいという結果は、そのまま痛みを我慢してよいという意味にはならない。角度比較の結果を、身体の異変の判定に使わないことも大切である。[1]

ここで注意したいのは、胸の上部で差が出た比較を、そのまま全角度の順位表にしないことだ。この実験で差が確認されたのは、44度と水平、56度と水平、44度と28度の比較である。高くすれば際限なく胸の上部の働きが増す、という一直線の関係を描くのも早い。比較で確かめられた組み合わせに沿って読む必要がある。[1]

また、胸骨側で水平の筋活動が大きかったからといって、水平では上部が休んでいるわけでもない。測っているのは、各条件での活動の大小である。「上部用」「下部用」と器具に名札を貼るだけでは、同じ動作に参加する胸と肩の働きが見えにくくなる。[1][5]

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女性の研究では、押す時と下ろす時で答えが違う

女性に直接関係する比較として、大学生年代の女性を対象にした研究がある。筋力トレーニング経験者12人と初心者12人が、ダンベルのベンチプレス、インクラインプレス、ショルダープレスを行った。インクラインは背もたれを傾けて押す種目であり、ショルダープレスと平らなベンチプレスとの間を比較している。[7]

この研究では、皮膚の上から電気的な信号を記録する表面筋電図で、筋肉の活動を調べた。重りを押し上げる局面と、下ろす局面を分けて平均を求めている。押し上げる時は筋肉が短くなりながら力を出す局面、下ろす時は伸ばされながら力を出す局面である。[7]

肩の前と、首から肩にかけての僧帽筋上部の筋活動は、どちらの局面でもショルダープレス、インクラインプレス、平らなベンチプレスの順に大きかった。上体を起こす方向に種目を変えると、肩側の働きが増える結果である。胸骨側の筋活動は、ベンチとインクラインの両方で、ショルダープレスより大きかった。[7]

胸の上部は、もっと単純には並ばない。下ろす局面ではインクラインが、平らなベンチとショルダープレスより大きかった。ところが押す局面では、平らなベンチがインクラインより大きく、インクラインはショルダープレスより大きかった。傾斜の利点を読むなら、「下ろす局面で」という条件を省けないのである。[7]

仕事帰りに動画を見直す時も、腕を伸ばした瞬間の写真だけで種目の性格を決めない方がよい。研究では動作を時間の流れとして扱っている。見た目は同じ斜めの姿勢でも、上げている途中なのか下ろしている途中なのかで、比較結果は違ってくる。静止画の角度には、動作の半分が写っていない。[7]

経験者と初心者の間に有意な違いはなかった。ただし、これは対象となった女性と種目の筋活動についての結果である。初心者にも経験者にも同じ重さが向く、あるいは同じ練習計画が必要だという意味には広げられない。経験の差がなかった指標と、日々の負荷設定は分けて扱いたい。[7]

この女性研究は、男性の角度比較から考えた見通しを、女性の実測で確かめる材料になる。同時に、「女性なら傾斜の効果が特別に大きい」という話でもない。女性を対象にした結果があることと、女性全般に最適な角度が決まったことは別である。[1][7]

同じ筋活動でも、平均の取り方で見える差が変わる

健康な筋トレ経験のある男性14人を調べた別の比較研究では、水平、30度、45度、頭側が下がるマイナス15度を比べた。バーベルを使い、最大挙上重量の65%で各条件を6回ずつ行い、動作の局面と、その途中の時間帯を分けて分析した。筋トレ経験のある男性の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、この比較では判断できない。[5]

胸の上部は、押し上げる局面全体の筋活動で比べると、ベンチ条件間に差がなかった。しかし、押し上げ時間の26〜50%の区間に限ると、30度と45度で水平とマイナス15度より大きかった。全体の平均で差がなくても、途中だけを切り出すと差が見えるという結果だ。[5]

これは先ほどの男性15人の研究で、胸の上部が傾斜条件で大きかったことを、なかったことにする結果ではない。対象、負荷の設定、使った角度、どの時間帯をまとめるかが異なる。角度をつければ胸の上部の活動が増す可能性はあるが、差の現れ方は分析する時間帯によって変わる。この幅を残した理解が、両方の研究に沿っている。[1][5]

同じ研究では、胸の下部の押し上げ局面全体の筋活動は、45度で水平、30度、マイナス15度より小さかった。胸の上部の一部の時間帯を狙う工夫が、胸全体の活動を一様に増やす操作とは区別する必要がある。角度は万能の強化ボタンではなく、働き方の配分を動かす設定と考えたい。[5]

数字を見る時には、その値の単位にも目を止めたい。この研究の筋電図の値は、最大の力で静止して収縮した時の信号を基準とする割合で示されている。筋肉が何割成長した、何割の力で押せた、という値ではない。研究の図に大きな割合があっても、筋肥大の割合へ読み替えることはできない。[5]

この時間区間での胸の上部の値は、30度で122.5±10.1%、45度で124±9.1%、水平で98.2±5.4%、マイナス15度で96.1±5.5%だった。いずれも静止した最大収縮時を基準にした筋電図の値である。傾斜条件で信号が大きかったことは読めるが、「胸への効果が約束される割合」として使う数字ではない。[5]

一方、押し上げ局面全体の胸の下部は、水平で100.1±5.2%、30度で86.6±4.8%、45度で71.9±4.5%、マイナス15度で100.4±5.7%だった。上部の途中区間と下部の局面全体では、比較している時間の幅も部位も違う。上部の大きい数字と下部の小さい数字を引き算して、胸の働きの合計を作ることはできない。[5]

このように結果の読み方をそろえると、「傾斜で上部が増えた」という説明にも複数の意味があると分かる。局面全体の平均なのか、途中の区間なのか、ピークなのか。研究の値を日々の種目選びに使う時は、角度の数字と同じくらい、何を平均した数字なのかが重要になる。[3][5][7]

数字で読むベンチの傾斜

15人:健康な男性が各角度の最大挙上重量の70%で比較した実験の対象者数である。[1]

44度:男性の実験で胸の上部の筋活動が水平と28度より大きかった角度である。[1]

12人ずつ:女性研究の経験者群と初心者群の人数。筋活動に群間の有意差はなかった。[7]

26〜50%:男性の別研究で、傾斜による胸の上部の差が見られた押し上げ時間の区間である。[5]

8週間:水平と傾斜の継続効果を、未経験の若い男性で比較した試験の期間である。[4]

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