普通のコーヒーとデカフェでは、飲んだ後の空腹感に違いがあるのか。カフェイン単独も比べた試験から、空腹感、次の食事量、胃から食べ物が出る速さを分けて読む。食事量が減った研究と変わらなかった研究の条件を確かめ、コンビニで飲み物を選ぶ場面への見通しを示す。
朝食の横に置いたコーヒーを、デカフェに替えると空腹感も変わるのか。香りを楽しむカップにカフェインが入っていることと、飲んだ後にお腹が空くこと。その関係は、飲料の印象だけでは分からない。
答えの芯は、直接比較ではカフェイン入りに食欲を抑える明確な優位性が出ていない、である。女性を多く含む小規模な比較試験では、カフェインを除いたコーヒー、カフェイン単独、それらを組み合わせた飲料の間で、食事量や胃から食べ物が出る速さに有意な差は検出されなかった。[10]
一方、対象や飲む量によっては食事量が減った試験もある。ただし、その試験でも空腹感は変わっていない。[13] 「お腹が空かない」「食べる量が減る」「体重が変わる」を同じ意味で使わないことが、この飲み物を読む出発点だ。

コーヒーとカフェインを分けて比べる理由
コーヒーを飲んだ日と水を飲んだ日を比べ、食事量に違いがあったとしても、それだけでカフェインが働いたとは決められない。コーヒーという飲料と、その成分であるカフェインを切り分ける比較が必要になる。食欲を扱ったレビューも、コーヒーとカフェインを区別し、食事量、胃の働き、食欲に関係するホルモン、本人の感覚を別々に検討している。[12]
その区別を試験に組み込んだのが、成人12人を対象とした無作為化クロスオーバー試験である。クロスオーバーとは、同じ参加者が別の日に異なる条件を経験し、自分自身との比較にもなる設計だ。この試験では女性が9人、平均年齢は26.3歳で、平均BMIは22.7だった。BMIは体格を表す指標であり、この試験の対象が誰だったかを知る手がかりになる。[10]
条件は、対照、デカフェ、カフェイン、デカフェとカフェインの組み合わせである。飲料とカプセルを組み合わせて条件を作り、参加者にも評価する側にも割り付けを分からなくする二重盲検の設計だった。[10] 普通のコーヒーとデカフェという店頭の選択に近い問いを、成分の比較として調べている。
この設計の利点は、「コーヒーだから」という大きな説明を細かくできることだ。デカフェだけで変わるのか、カフェインだけで変わるのか、一緒にした場合に変わるのか。同じ人に条件を変えてもらうことで、もともとの食べる量の違いも考慮しやすい。この設計が答えるのは、同じ参加者の朝から昼までの反応が、飲料の条件で変わるかという問いだ。[10]
日常でも、飲み物の名前だけで結論を急がない方がよい。手元のカップが「コーヒー」であることと、研究で設定した条件が一致することは別である。研究を読むときは、飲料そのもの、カフェイン、飲む時刻のどれを比べた話なのかを先に確かめたい。[10][12]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
朝から昼までの試験ではデカフェとの差が出なかった
この試験では、そろえた朝食とともに225mLの飲料とカプセルをとり、その2時間後にも同じ量の飲料とカプセルをとった。朝食から4時間半後、参加者は自由に食べられる食事を与えられ、摂取エネルギーを測定された。途中では呼気、血液、食欲の感覚も調べられた。[10]
自由に食べた食事のエネルギーは、対照で2118±663kJ、デカフェで2128±739kJ、カフェインで2287±649kJ、デカフェとカフェインの組み合わせで2016±750kJだった。値の後ろの「±」は参加者間のばらつきを表す標準偏差であり、効果の確かさを示す信頼区間とは異なる。条件間の差は統計的に有意ではなかった。[10]
数字だけを見れば、組み合わせた条件の平均が低く見える。しかし、その平均の並びをそのまま「食欲を抑える飲料ランキング」にすると、試験の判断から離れてしまう。参加者によるばらつきを含めて検討した結果、差を確かめられなかったのである。研究の数字は、平均の順序と差の確かさを一緒に読む必要がある。[10]
胃排出、つまり食べ物が胃から先へ出ていく速さにも、有意な条件差はなかった。食事量だけでなく、胃に食べ物が残る時間が変わるという説明も、この試験では支持されていない。デカフェ、カフェイン、それらの組み合わせに有意な効果を検出しなかった、というのが著者らの結論だ。[10]
ここでの食事の流れは、朝食、追加の飲料、自由に食べる昼の食事である。食事をとったうえで飲料の条件を変えているため、比較の中心は普段の食事に何を添えるかにある。飲料の摂取時刻と食事の間隔も、結果を理解するための条件だ。[10]
空腹感と食事量は別々に測られている
別の無作為化クロスオーバー試験では、健康な男性16人が、カフェイン入りコーヒー、デカフェ、水を別の日に経験した。年齢は21〜39歳で、飲料は朝食の軽食とともに200mL、カフェイン入り条件は体重当たり3mg/kgだった。朝食後180分に自由に食べる食事が用意された。男性だけの結果であり、18〜39歳の女性にも同じ反応が出るかは、この試験では確かめられていない。[14]
この試験でも、食欲の自己評価、食欲に関連するホルモンの反応、自由に食べた食事のエネルギーには、飲料による全体的な効果が認められなかった。コーヒーとデカフェを直接比べても、カフェインの有無から空腹や食事量の差を期待できる結果ではなかった。[14] 対象が男性である点は、女性を多く含んだ先の試験と分けて覚えておきたい。
興味深いのは、すべての測定値が同じように動かなかったことだ。カフェイン入りの条件では、対照に比べて血中コルチゾールの濃度が朝食後60分以降に高かった。コルチゾールはストレス応答などに関わるホルモンである。しかし、食事量には条件間の差がなかった。[14]
「体内で何かが変わる」ことは、「その変化が空腹を抑える」ことの代わりにはならない。ホルモンの名前が出ると説明が強く見えるが、ここでは食欲の評点と食事量を実際に測っており、いずれにも全体的な差が出なかった。ホルモンだけを取り出して、飲み物の効き目を語るのは適切ではない。[14]
一方で、食事量が減っても本人の食欲の評点は変わらない試験もある。[13] 感覚は無意味なのではなく、食べた量と別の情報を持っている。午後の仕事中に「まだ食べられそう」と感じたことと、夕食で実際に何をどれだけ食べたかは、分けて振り返る方が研究の測り方に近い。
自由に食べる食事を用意した点にも意味がある。決められた量を完食してもらうだけなら、飲み物によって食べる量が変わるかを直接には比べにくい。この試験は、朝食をそろえたあとに選べる食事を置き、その摂取エネルギーを評価した。[10] 「食べたいか」と尋ねることに加え、食べる行動まで確認しているのである。
一方、この食事は研究で用意された機会だ。通勤途中に買う間食や、家に帰ってからの献立選びまでを、そのまま測った数字ではない。評価したのが朝食から昼食までの摂取なのか、その日全体の摂取なのかでも結果の意味は変わる。レビューが短期の摂取への可能性と、長期研究の必要性を分けて述べるのは、この時間の違いも踏まえて読む必要があるからだ。[10][12]
また、男性の試験では朝食後に繰り返し食欲と血液を調べている。[14] 飲んだ直後だけの印象で判定する設計ではない。昼までの間に空腹が変わっていくことと、その変化がどの飲料で大きいかは異なる問いだ。時間がたてば感覚が変わったという結果を、カフェイン入りだけの効果に置き換えないようにしたい。
店頭で普通のコーヒーとデカフェの違いを考えるときも、こうした測定の対象を思い出すとよい。少なくとも、直接比較の試験からは、普通のコーヒーに替えるだけで次の食事が確実に少なくなるとは約束できない。[10][14] 飲むことの楽しみと、測定された作用への期待は、別々の理由として持っていてよい。
数字で読むコーヒーと食欲の比較
12人中9人が女性:デカフェとカフェインを切り分けた比較試験の対象である。[10]
225mLを朝食時と2時間後に摂取:飲み方まで決めて検証した条件である。[10]
4時間半後の食事:カフェインとデカフェの組み合わせでも摂取エネルギーに有意差はなかった。[10]
男性16人の比較:カフェイン入り、デカフェ、水で食欲と食事量に全体的な差はなかった。[14]
33人の別試験:食事量への効果は過体重・肥満の参加者で認められ、空腹感への効果はなかった。[13]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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