運動習慣がつきにくいのは遺伝のせい?双子研究で読む生まれつきと環境の境目

運動習慣には遺伝と環境の両方が関わる。双子研究から、年齢や性別、活動の測り方で推定値が変わる理由を読む。幼いころの運動発達と後の行動の関連を確かめ、共有環境と非共有環境の違いを整理する。成人の継続率とは区別しながら、仕事や家事のある暮らしで見直す条件を考える。

玄関に置いた運動用のバッグを、今日もまたいで帰宅した。家族も運動好きではない。「続く人とは、もともと違うのか」。予約する前より、取り消した後に浮かびやすい問いである。

運動習慣に遺伝の影響はある。身体活動の遺伝研究をまとめたレビューでも、その寄与が報告されている。研究ごとの推定値には大きな幅がある。[11] 今回はその幅を手がかりに、家族と共通する条件、自分だけの条件、測定している行動を順に確かめる。

ここで考えるのは、運動を続ける行動の個人差である。体重の体質は既存記事「太りやすい体質は遺伝なのか FTOと減量研究で読む、変えられる環境の重さ」に譲る。ここでは子どもの双子の観察研究を中心に、活動の個人差を調べた結果と、成人が運動を続けるための工夫を区別して考える。[11][19]

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遺伝率は「自分の何割が決定済み」ではない

身体活動の遺伝研究を整理したレビューは、家族研究、双子研究、遺伝子との関連を調べる研究などを扱っている。家族研究の身体活動の遺伝率は0〜60%、双子研究では遺伝の寄与を示す推定値が0〜85%に及んだ。[11] 高い数字だけを抜き出せば生まれつきですべて決まるように見えるが、低い数字まで含めて読むと景色は変わる。

ここでの遺伝率は、調べた集団に見られる活動のばらつきを、遺伝的な違いでどの程度説明するかという統計上の推定である。[11][19] ある人の運動時間を遺伝由来と環境由来に切り分けて計量した値ではない。「遺伝率が高いから、私の予定表の大部分は変更不能」と置き換えるのは、集団の違いと個人の将来を取り違えている。

双子研究では、一卵性と二卵性の双子の似かたを手がかりに、遺伝、共有環境、非共有環境の寄与をモデルで推定する。共有環境とは双子に共通する環境、非共有環境とは共通しない環境という区分である。[17][19] 家族が似ているという観察だけでは、それがどちらの影響かを決められない。

同じ家で育つという言葉にも、暮らしの具体が詰まっている。どこへ通えるか、何に時間を使えるか、家で運動をどう話すか。これらを自分の生活を振り返る問いにすることはできる。ただし、双子研究の共有環境の推定値から、家族の声かけや送迎それぞれの効果を取り出すことはできない。[19] 「環境も関わる」と「この工夫が効く」は別の主張だ。

レビューでは、身体活動の共有環境の推定値も0〜84%と広く、非共有環境は12〜72%に分布していた。[11] 遺伝と環境の割合をいつでも使える固定の配分表として覚えるより、どんな人の、どんな行動を測ったのかを確認する読み方が必要になる。

双子が似ているかどうかを調べる設計には、似かたの背景をモデルで区分するという特徴がある。実際の生活では、行動と環境がきれいに別々の箱に入っているわけではない。レビューが家族研究と双子研究を分けて整理し、それぞれの推定値を示しているのも、異なる研究の数字を同じ精度の答えとして並べないために役立つ。[11]

例えば「運動する親に似た」という家族の話から、受け継いだ体質が理由だったのか、同じ活動に参加する機会があったのかを決めることはできない。家族の似かたは問いの出発点にはなるが、それだけで遺伝の証明にはならない。[11] 自分の家族について考えるときも、家系の印象と現在の生活条件を分けて眺めたい。

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同じ年齢でも「何を測るか」で答えが変わる

スウェーデンの9歳の双子2,046人を対象にした横断研究では、活動量計を使い、座っている時間、軽い活動、中くらいの活動、強い活動に費やす時間の割合を調べた。[17] 横断研究とは、その時点での状態や関連を見る観察研究である。対象は子どもであり、18〜39歳の女性の運動継続にそのまま当てはめることはできない。

全体の解析で遺伝の寄与が最も高かったのは強い活動で、推定値は0.64だった。座っている時間、軽い活動、中くらいの活動では0.50〜0.55だった。[17] 同じ子どもたちを対象にしても、活動のどの部分を取り出すかで数字が違う。遺伝率をひとまとめに「運動好きの割合」と呼べない理由である。

さらに男女別に見ると、強い活動の遺伝の寄与は女子で0.15、男子で0.57であり、この差には統計学的な有意差があった。[17] 全体の0.64を、そのまま女子にも男子にも配ることはできない。全体のモデルと男女別のモデルで推定された数字として扱う必要がある。

一方、軽い活動の遺伝の寄与は女子で0.44、男子で0.37だった。[17] これを見て「女子は生まれつき強い運動を好まない」と結論づけるのも飛躍だ。研究が示したのは、その集団の活動時間の個人差を説明する成分である。男女の好みや可能性を決める判定表ではない。

検索窓の「運動習慣のある人の特徴」は、ひとつの人物像を求めがちだ。だが、毎日の移動で動くことと、強い運動に時間を使うことを同じ特徴で説明しようとすると、この測定の違いを見落とす。[17] 友人の休日のランニングと、自分の平日の歩行を比べる前に、何を習慣と呼んでいるかをそろえたい。

身体活動と不活動を別の行動として整理したレビューも、両者には異なる遺伝的影響がある可能性を示している。[11] 運動の時間と座る時間の健康への関わりは隣の記事に譲り、ここでは「活動が多い」と「不活動が少ない」を、遺伝研究でも同じ測定結果として扱わない点を押さえておく。

子どものころの得意不得意は将来の判決にならない

オランダの双子登録を使った研究は、20,911組の双子について、母親が報告した運動発達の時期を調べた。その後の12年間には、一部の対象について運動技能やスポーツ・運動の行動を追っている。[19] 対象は子どもと青年であり、18〜39歳の女性の行動選択に同じ割合が当てはまるかは別に検討する必要がある。

運動行動への遺伝の寄与は、男子では7歳の22%から14歳の51%へ、女子では7歳の3%から14歳の18%へ増加した。同じ間に共有環境の寄与は、男子で68%から19%へ、女子で80%から48%へ低下した。[19] 年齢の異なる子を同じ比率で語れないことが分かる。

ただし、共有環境の寄与が低下したからといって、成長後は周囲の支援が無意味になるわけではない。この解析は、環境を変える支援を割り付け、その効果を比較したものではない。[19] 集団の個人差を説明する割合の変化と、ある人が環境を変えたときの変化は、答えようとしている問いが異なる。

幼いころの運動発達が説明した、その後の運動行動のばらつきは男子で4.3%、女子で1.9%だった。[19] 発達の早さと将来の行動に関連はあっても、その関連だけで運動習慣の大半を説明したことにはならない。体育が得意だった記憶も苦手だった記憶も、現在の自分を説明する唯一の書類にはならない。

さらに解析では、早い運動発達が直接その後の運動行動を増やすという因果的な説明は支持されなかった。男子では、共通する遺伝要因が発達と運動行動の関連の背景にあることが示唆された。[19] 「早くできた子ほど運動する」という関連を見て、「早くできるようにすれば将来は必ず続く」と介入の結論へ進めないのである。

親から「小さいころから運動が苦手だった」と聞かされても、それを大人の予定を閉じる理由にする必要はない。この研究は子どもから若年の運動行動を扱っている。[19] 仕事帰りの運動をこれからどう選ぶかという問いは、自分の現在の暮らしを見ながら考える余地がある。昔の体育の成績表に、今夜の予約欄は付いていない。

この追跡研究では、母親が報告する運動発達や運動行動を使っている。一方、スウェーデンの研究は活動量計で活動時間の割合を測っている。[17][19] どちらも双子研究だが、同じ物差しで同じ時期を測った結果ではない。数字が違うから一方が誤りだと急いで判断するより、研究が拾おうとした日常の断面を確認したい。

習い事としての運動を思い浮かべて読む人と、休み時間の遊びや移動まで含む活動を思い浮かべて読む人では、「運動する子」の像も違う。論文の活動時間と自分のレッスン出席を結びつける前に、このずれを言葉にしておく。測定する行動を区別することは、遺伝の影響を過小評価するためでも過大評価するためでもなく、研究の答えを別の問いへ運びすぎないためである。[11][17]

数字で読む運動習慣と双子研究

0〜85%:レビューに含まれた双子研究の身体活動の遺伝の寄与。研究間の幅が大きい。[11]

2,046人:活動量計で身体活動を測った、スウェーデンの9歳の双子の人数。[17]

22%から51%:オランダの男子で、7歳から14歳にかけて変化した運動行動の遺伝の寄与。[19]

4.3%と1.9%:早期の運動発達が説明した後の運動行動のばらつき。順に男子、女子の値である。[19]

80%から48%:オランダの女子で、7歳から14歳にかけて変化した運動行動への共有環境の寄与。[19]

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