部分やせと腹筋運動の科学 お腹だけ痩せたい願いに、異なる試験が示した答え

腹筋は続けているのに、お腹の脂肪が変わらない。部分やせを調べた比較試験には、脂肪が減らなかった結果と、体幹脂肪の減少差を示した結果がある。対象者、運動の組み合わせ、測定部位を比べ、筋持久力と脂肪減少の違い、体重や腹囲の受け止め方、日常の運動選びまで考える。

欲しいのは体重計の小さな数字より、しまい込んだパンツに、もう一度足を通すこと。そんなとき、全身運動よりも「お腹に効く」と名の付いた動きに目が向く。使った筋肉のすぐ上から脂肪が減るなら、話はわかりやすい。

ところが腹筋運動の試験では、腹筋を繰り返せる回数が増えても、腹部の脂肪や腹囲には有意な変化がなかった。一方、別の小規模な比較試験は、腹部の持久的な運動を走行運動に加えた群で、体幹脂肪がより減ったと報告した。部分やせを考えるには、この両方を同じ机に置くところから始めたい。[9][10]

ここで扱うのは、運動した部位の脂肪が優先して減るかという問いである。柔軟性の話は「ストレッチとダイエットの関係」の記事に、継続の話は「楽しい運動は続くのか」の記事に譲る。お腹への努力を捨てるのでも、期待だけを膨らませるのでもなく、どの成果を待つ運動なのかを選び直すための読み物だ。

腹筋運動で上体を起こす動作に取り組んでいる人物のトレーニングの様子 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

腹筋が強くなることと、腹部脂肪が減ること

腹筋運動が役に立ったかを確かめるなら、まず成果の名前を決める。筋持久力は、筋肉を繰り返し働かせる力を指す。一方、腹部の脂肪量は、その場所にある脂肪の量である。腹筋運動を比べた試験では、前者が改善し、後者に有意な変化を認めないという組み合わせが実際に起きている。両者は別々に評価するのが筋道だ。[9]

この試験の参加者は、健康だが普段は運動していない18〜40歳の男女24人で、男性14人、女性10人だった。無作為に、腹筋運動をする群と、介入を受けない対照群へ割り付けられた。無作為化とは、群への割り当てに偶然を用い、参加者の違いが片側へ偏るのを抑える方法である。全員が研究期間中、エネルギー摂取を一定にする食事を維持した。[9]

運動群は7種類の腹筋運動を、それぞれ10回ずつ2セット、週5日、6週間行った。この条件で、体重、体脂肪率、腹部周辺の脂肪指標、腹囲、腹部と腸骨上部の皮下脂肪厚に有意な効果はなかった。皮下脂肪厚は、皮膚の下の脂肪の厚みをみる指標である。研究者は、この腹筋運動単独では腹部皮下脂肪や体組成の改善に十分でなかったと結論した。[9]

ただし、運動後のカールアップ、つまり上体を起こす動作の反復回数は、運動群が47±13回、対照群が32±9回だった。運動群は対照群より有意に多く繰り返せた。腹筋は仕事を覚えたが、脂肪への退去通知までは届かなかった、という結果である。脂肪が動かなかったという理由だけで、この練習の成果を丸ごと消すのは惜しい。[9]

日常に置き換えるなら、運動メニューの横に「何を変えたいか」を添えてみる。上体を起こす動作を続けられるようになりたいのか、腹部脂肪を減らしたいのか。同じ動きを選んでいても、待っている結果が違う。先の試験は、腹筋運動を増やせば腹部の脂肪も同じように減る、という期待を支えなかったのである。[9]

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部分やせを認めた試験は、何を比べたのか

一方で、部分やせを肯定した無作為化比較試験もある。2023年の報告は、過体重の男性16人を対象とし、平均年齢は43±9歳、体格を身長と体重の関係で表すBMIは29.8±3.3だった。腹部の持久的な運動を組み合わせる群と、走行運動のみの群を比べた試験である。女性を含む先の試験とは、対象も運動内容も異なる。[10]

腹部運動群はトレッドミルでの走行と、体幹を回す運動、腹部を曲げる運動を組み合わせ、週4日、10週間実施した。腹部の運動には最大筋力の30〜40%という比較的軽い負荷を用いた。対照群はトレッドミルで走行する運動を行った。研究では酸素摂取量を用いて運動時のエネルギー消費を管理した。単に腹部運動群だけが多くのエネルギーを使えばよい、という比較を避けようとした設計だ。[10]

走行の条件も具体的に示されている。腹部運動群は最大心拍数の70%で27分走り、対照群は同じ心拍数の水準で45分走った。持久的運動と一口にいっても、走る長さまで同じにした比較ではなく、腹部運動を含めてエネルギー消費を管理している。体幹回旋や腹部を曲げる運動を加えた介入と、走行のみの介入の違いを、この設計と一緒に読む。[10]

局所の脂肪量の評価には、DEXAと呼ばれるX線を用いた体組成測定法が使われた。腹部運動群の体幹脂肪は1170±1093g、約7%減少し、群間の減少差は697g、3%と報告された。この差は統計学的に有意だった。研究者は、成人男性で腹部の持久的運動による部分やせを認めたと結論している。肯定的な結果を、昔からの常識に合わないからと取り除く理由はない。[10]

ここで数字の置き場所を確認する。1170gは腹部運動群の開始前後の減少量であり、697gは群間の減少差である。全身の脂肪量は腹部運動群で1705±1179g、走行のみの群で1134±731g減り、体重もそれぞれ1.2±1.2kg、2.3±0.9kg減った。全身の脂肪量と体重の減少は両群で同程度と評価された。体幹で差が見つかっても、体重で優位とは限らない。[10]

体重計だけを見ていたら、この研究で注目された違いは見落とされる。逆に「お腹に効いた」という見出しだけなら、全身の脂肪も減っていたという背景が消える。お腹だけが減り、他はそのままという結果として受け取るのは行き過ぎである。また、測ったものは体幹脂肪であり、読者が指でつまんだへそ周囲の脂肪だけを取り出した数字とは区別したい。[10]

腕と脚の試験を足しても、簡単な処方にはならない

腹部以外にも、部位を意識した運動と脂肪減少を調べた試験がある。2017年の研究では、普段運動していない女性16人、平均年齢31±4歳、BMI27.5±2.1を無作為に分け、8週間のトレーニングを実施した。上半身の筋力運動の後に自転車をこぐ群と、下半身の筋力運動の後に腕でこぐ装置を使う群を比較した。[2]

どちらも、筋力運動に続けて別の部位で持久的な運動を行う組み合わせだった。上半身の筋力運動群では、上肢の脂肪量の変化が−12.1±3.4%、下肢が−4.0±4.7%。下半身の筋力運動群では、上肢が−2.3±7.0%、下肢が−11.5±8.2%だった。それぞれの群内で、筋力運動を行った側の部位に、より大きい脂肪量減少が認められたのである。[2]

この試験は、局所の筋力運動と持久的運動を組み合わせることで、部位ごとの脂肪量に異なる変化が生じる可能性を示す。対象は女性16人で、測定部位は上肢と下肢だった。体の地図が同じでも、研究で測った住所が違う。[2]

また、比較したのはいずれも複合運動の群であるため、組み合わせのどの要素が結果を生んだかは切り分けられない。腹筋単独の試験、腹部の持久的運動を組み合わせた試験、四肢の筋力運動と持久的運動を組み合わせた試験は、それぞれ異なる問いを検証している。[2][9][10]

この女性の試験では、脂肪だけでなく除脂肪量も測っている。除脂肪量とは、脂肪を除いた組織の量である。下半身の筋力運動群で、下肢の除脂肪量は8.4±5.8%増え、上肢は2.7±5.0%減った。上半身の筋力運動群では、上肢と下肢の除脂肪量の変化に差を認めなかった。脂肪量の部位差と、除脂肪量の部位差は、別の結果として読む。[2]

一方、男性の腹部持久的運動の試験では、体幹回旋の最大筋力が腹部運動群で39%、腹部を曲げる運動の最大筋力が36%増えた。最大筋力は、繰り返し動ける回数とは別の能力である。脂肪量だけに注目すると隠れるが、この介入は筋力にも変化をもたらしていた。[10]

服の着心地を変えたくて運動を始める場合でも、研究の成果をすべて「痩せた」の一語へ畳むと、何が改善したのかがわかりにくくなる。四肢の脂肪量、除脂肪量、体幹の脂肪量、最大筋力。それぞれの測定値を確かめ、自分が求める成果に近い結果を探すほうが、種目名だけで選ぶより判断しやすい。[2][10]

数字で読む部分やせ

24人:腹筋運動単独を調べた無作為化試験の参加者数。脂肪指標に有意な効果は認めなかった。[9]

47回と32回:同じ試験の運動後のカールアップ反復回数の群平均。筋持久力には差があった。[9]

16人:腹部持久的運動と走行のみを比べた試験の参加者数。全員が過体重の男性だった。[10]

697g:その試験で報告された体幹脂肪の群間減少差。過体重の男性の比較結果。[10]

8週間:女性の上半身・下半身の複合運動を比べた試験期間。筋力運動と持久的運動を組み合わせた。[2]

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