HIITのもも上げは高く上げるほどよい?動きの幅と心肺の負担を読み解く

HIITのもも上げは、高さだけで心肺への負担や効果を決められるのか。もも上げを含む短時間運動の試験から、心拍数、運動と休息の組み方、続けやすさを読み分ける。動画の膝の位置をまねる前に確かめたい点と、測定機器の数字をその場走りに当てはめる際の注意点を整理する。

もも上げの途中で、膝の位置が少しずつ下がってくる。見本の高さまで戻すことに気を取られ、休息の合図を聞き逃す。高さを守ることと、運動の時間割を守ることでは、どちらを優先して考えればよいのだろう。

答えの芯は、ももの高さだけではHIITの負担も成果も判定できない、ということだ。もも上げを含む短時間運動で体力の変化を調べた試験はあるが、その結果は種目の組み合わせ、運動時間、休息、実施期間を含むプログラム全体の結果である。[5][15]

その場で動く運動を歩行と比べる問いは、既存記事「有酸素運動の足踏みは歩く代わりになる?その場で動く負担と続け方を研究で読む」に譲る。ここで扱うのは、もも上げの見た目をどこまで負荷の目印にしてよいか、という狭い問いだ。

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ももの高さを、運動の成績表にしない

「高く上げるほどよい」と言うには、何がよいのかを決める必要がある。心肺の体力なのか、脚の筋力なのか、運動中の心拍数なのか。もも上げを含む試験でも、これらは別々に測られている。運動中の強度と、続けた後の変化を同じものとして読まないことが出発点になる。[5][15]

過体重または肥満の女性を対象にした無作為化比較試験では、階段上り、ジャンプスクワット、もも上げを短く分けて行った。運動群では心肺体力と全身の筋力指標が改善したが、複数の動きを組み合わせた処方の成績である。平均年齢は読者層に近いが、過体重・肥満のない18〜39歳の女性への適用は、体格や実施条件を分けて考えたい。[5]

一方、運動習慣のない肥満の成人が動画に従って自重運動を続けた研究でも、もも上げはジャンプ系の動きやバーピーと組み合わされていた。自重とは、自分の体の重さを使うことだ。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、肥満度や運動習慣の違いを考慮する必要がある。こちらは実施前後の体力と、継続に関わる心理面を調べた研究である。[15]

動画を見る側は、まず自分の疑問を言葉にしておくとよい。「画面より低い」なのか、「指定された運動を続けられない」なのか。この区別は練習を振り返るための整理であり、膝をどこまで上げれば合格かという新しい基準ではない。画面の人の膝に、こちらの運動の採点まで任せる必要はない。

高さを観察すること自体をやめる必要もない。ただ、動きの見本として見ることと、体力向上を保証する印として見ることは別である。研究を読むときにも、種目名を確認した次に、誰が、どのような組み方で行い、何を測られたのかへ目を移したい。[5][15]

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短いもも上げにも、時間割がある

女性を対象にした試験では、参加者は平均年齢31.5歳の27人で、運動群13人と運動しない対照群14人に無作為に分けられた。運動は監督下で行われ、階段上り、ジャンプスクワット、もも上げによる1分間の運動を日に3回実施した。それぞれの間には1〜4時間を置き、週3日、6週間続けた。[5]

ここでいう短時間運動は、短い運動を生活の中に分散させる組み方だ。日に合計3分という部分だけを切り取ると簡単に見えるが、最大心拍数の77〜95%という強度を伴っていた。しかも実施は監督下である。通勤から帰って自己流でもも上げを始める場面と、条件を同一視しないほうがよい。[5]

研究では27人中24人が完了し、完了者は運動群、対照群ともに12人だった。運動への出席率は100%と報告された。これは実行可能性を考えるうえで参考になるが、生活の中で誰でも同じように継続できるという意味ではない。対象、監督の有無、期間を一緒に読む数字である。[5]

運動群では心肺体力が20%、全身の筋力指標が33%増加した。心肺体力は自転車を用いる最大下運動の検査から予測した値であり、筋力はチェストプレスとレッグプレスの最大挙上重量を使った指標だった。「もも上げが上手になった」という採点とは測定対象が違う。[5]

体重、体脂肪率、腹囲にも変化が認められた一方、代謝に関する変数は変わらなかった。体力の改善が、測定されたすべての項目の改善を意味するわけではない。この試験を参考にするなら、短さに加えて、分散した実施、強度、監督という条件まで受け取る必要がある。[5]

動画で続けた試験は、よい変化だけでは終わらない

動画に従う自重インターバル運動の研究には、運動習慣のない肥満の成人14人が参加した。平均年齢は30.7歳で、実施期間は6週間だった。もも上げ、スクワットジャンプ、脚を前後に開くジャンプ、ジャンピングランジ、バーピーを、最大努力の区間として行った。[15]

運動と休息の比率は、2週間ごとに1対3から1対1へ進められた。同じ種目名のままでも、休む時間を含めた組み方が変化している。もも上げの画面だけを切り出して比較すると、この処方の変化が見えなくなる。研究では運動区間だけでなく、その間の休息もプログラムの一部だった。[15]

実施前後では、体重当たりの大腿四頭筋の等尺性筋力が12.5%、酸素摂取量のピークの絶対値が4.2%増加した。等尺性筋力とは、関節を動かさずに力を出したときの筋力である。酸素摂取量のピークは心肺体力をみる指標として測られたもので、膝の高さの点数ではない。[15]

腹囲は2.1%減少したが、体組成や心肺代謝に関する血液指標には変化がなかった。研究者は体力などの効果を小〜中程度と位置づけている。対照群との無作為比較ではなく、参加者の実施前後をみた研究なので、先の女性の比較試験と同じ強さの証拠として並べないことも必要だ。[15]

さらに、運動を予定に組み込む自信は低下し、楽しさの得点は初週のほうが最終週より9.6%高かった。この試験では、体力指標の向上と楽しさの低下が同時に起きた。動画の再生回数だけで習慣の具合を判断しないための、実感に近い結果でもある。[15]

夕方の立川駅北口から帰宅し、夕食や明日の準備の間に動画を差し込む。そんな場面で考えたいのは、見本の高さに届いたかだけではない。予定に収まったか、次も取りかかれるか、どの条件なら続けられそうか。研究で継続に関わる心理面まで測っていたことは、日常の振り返りの項目を広げてくれる。[15]

女性の比較試験と動画の研究では、心肺体力の表し方にも違いがある。前者は体重当たりの予測値を用い、後者で増加が報告されたのは酸素摂取量のピークの絶対値である。割合が大きいほうを選べばよい、という比較にはならない。検査方法と数値の単位をそろえずに、増加率だけを横に並べないことが必要だ。[5][15]

筋力についても、女性の試験は上半身と下半身の挙上重量から全身の指標を作り、動画の研究は大腿四頭筋が動かずに力を出す場面を測った。大腿四頭筋は太ももの前側の筋群である。どちらも筋力に関係するが、別の検査で測った別の結果だ。「脚がきつかったから筋力も同じだけ伸びる」という読み方には結びつけない。[5][15]

体組成の結果も一様ではなかった。女性の比較試験では体脂肪率などが減少し、動画の研究では体組成の変化が認められなかった。同じもも上げを含むから同じ変化が出る、とは読めないのである。参加者とプログラムが違う以上、この食い違いをももの高さで説明することも避けたい。[5][15]

家で動画を探すとき、「短時間でできる」という言葉は予定を考える手がかりになる。ただ、研究の実施期間には、実際に動いた日々と休んだ日々が含まれている。短い運動の映像を見ただけでは、その積み重ねまで見えない。動画研究で変化を評価したのは、18回のセッションを含むプログラムを終えた後だった。[15]

だから、研究結果を自分の計画に使うときは、まず目的に近い評価項目を選びたい。心肺体力を知りたいのに腹囲だけを見る、続けやすさを知りたいのに筋力だけを見る、といったすれ違いを減らせる。複数の評価項目を持つ研究のよさは、運動の成果をひとつの数字に押し込めずに済むところにある。[5][15]

数字で読むもも上げを含む運動

27人:過体重または肥満の女性を無作為に分けた短時間運動の比較試験の参加者数。[5]

1分を日に3回:階段上りなどともも上げを分散して行った処方で、各回の間隔は1〜4時間だった。[5]

20%:女性の運動群で増加した、検査から予測された心肺体力の値。もも上げ単独の効果ではない。[5]

4.2%:動画による複合自重運動を続けた成人で増加した、酸素摂取量のピークの絶対値。[15]

11人:その場走りの接地時間を測る機器の妥当性を検証した研究の対象者数。[7]

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