インナーマッスルは全部遅筋なのか?速筋も含む深い筋肉と疲れにくさを読む

インナーマッスルは遅筋だけでできているのか。背骨の周りの筋肉と大腰筋を調べた研究から、深さと筋線維の種類を分けて読む。遅筋の割合、線維の太さ、姿勢を保つ時間はそれぞれ別の指標である。腰痛の研究も照らし合わせ、疲れた感覚だけで筋肉の種類や健康状態を決めない見方を示す。

マットの上で姿勢を保っていると、背中が先に疲れてくる。疲れにくいはずのインナーマッスルは、いま働いているのだろうか。答えは、疲れた感覚から筋線維の種類は判定できない、である。若年者と高年者を比べた実験でも、保持時間は出す力の強さと測る筋肉に左右された。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、年齢と動作の条件をそろえる必要がある。[2]

答えの芯は、インナーマッスルを全部遅筋と考えないことだ。背骨の後ろの筋群は遅筋に当たるタイプIの割合が比較的高い一方、大腰筋では速筋に当たるタイプIIの割合が高かった。この組織研究の対象は脊椎手術を受けた患者であり、18〜39歳の健康な女性の標準的な比率としてそのまま当てはめることはできない。[3]

洗面台の前で姿勢を保っていて背中がだるくなったとしても、それだけで筋線維の内訳は決められない。力の強さと筋肉の種類によって、姿勢を保てる時間は変わるからだ。[2] ここでは「どの種目なら姿勢が整うか」より前に、筋肉の名前と中身、疲れるという感覚の間にある距離を確かめる。

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インナーという場所の名前と、遅筋という中身を分ける

筋線維とは、筋肉を構成する線維のことである。腰の筋肉を扱ったレビューは、遅いタイプと速いタイプの線維の相対的な数にはかなりの幅があると整理している。[9] インナーという言葉を聞いても、まず「どの筋肉の話なのか」を確かめたい。位置を示す呼び名だけから、その内部の線維まで決まったものとして扱うと、この幅を落としてしまう。

腰部多裂筋は背骨の安定や動きに関わる筋肉で、脊柱起立筋とは位置に基づいて異なる系に分類される。[17] ただし、局所で支える役割があるから遅筋しかない、という順序ではない。多裂筋と脊柱起立筋を直接調べた研究では、どちらもタイプIが優勢だったが、タイプIの平均的な割合には有意差がなかった。[13] 役割の説明と組織の測定結果は、別々に確かめる必要がある。

タイプIは遅筋、タイプIIは速筋に対応する分類であり、腰の筋肉にも両方がある。[3][9] 論文では速筋側をさらにタイプIIAとタイプIIXに分けて示すことがある。[3] ここで大切なのは名前を暗記することより、筋肉を遅筋か速筋かのどちらかの箱へ丸ごと入れないことだ。たとえば「この背中の筋肉は遅筋が多い」という結果は、「速筋がない」という意味にはならない。

また、筋肉の種類を調べる研究と、運動中の働きを調べる研究でも測っているものが違う。慢性腰痛のある人を対象にした研究では、超音波で位置を定めて組織を採取し、ミオシン重鎖という筋線維の収縮特性を調べる手がかりを用いて分類した。[17] 患者で組織採取の方法を検討した結果であり、18〜39歳の健康な女性の線維比率をそのまま示す研究ではない。

研究のための組織採取を、運動を始める人が受けるべきだという話ではない。自宅で「今日は遅筋に効いた」と採点する前に、その言葉が本来どんな測定に基づくのかを知っておく、という距離感でよい。感じた場所は練習の記録に残せるが、組織の種類とは分けて書く。筋肉の奥行きは、感想の強さで測るものではない。

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背骨の後ろは遅筋が多いが、大腰筋は同じ配合ではない

深さと線維の関係を直接検討したのが、脊椎の低侵襲手術を受けた患者15人から組織を採取した横断研究である。多裂筋、最長筋、腸肋筋、大腰筋を比較し、複数の深さでも測定した。背骨の後ろにある筋群ではタイプIが63%、タイプIIAが19%、タイプIIXが18%だった。[3] 患者の組織を比較した数値なので、18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできない。

一方、大腰筋ではタイプIが42%、タイプIIAが33%、タイプIIXが26%だった。[3] 背骨の後ろの筋群に比べ、タイプIIAもタイプIIXも高い値である。同じ患者から複数の筋肉を採取して比べる設計なので、異なる人の数字を並べる比較とは条件が違う。18〜39歳の女性の日常の疲れやすさまで、この患者の比率から予測することはできない。

同じ研究は、多裂筋と大腰筋について、それぞれ異なる3段階の深さを比較している。線維タイプの分布には、深さによる有意差がなかった。[3] 筋肉同士の比較と、同じ筋肉の内部での比較を分けた点が重要だ。前者では大腰筋と背骨の後ろの筋群の分布に違いがあり、後者では深さによる差を検出しなかった。18〜39歳の女性にも同じ分布があるかは、この手術患者の比較からは確定できない。

測定に使ったのは、筋肉の収縮に関わるミオシン重鎖の種類を分ける方法だった。[3] つまり、運動中にどの線維がどれだけ働いたかを追った数字ではなく、採取した組織の構成を表す数字である。患者の筋肉の構成と、18〜39歳の女性がヨガの姿勢を保つ際の動員は区別する必要がある。レッスン中に背中が熱く感じたことを、この配合表の変化として記録することはできない。

もう少し広く背中の筋線維を見た系統的レビューでは、214件から18研究が選ばれた。採取部位や対象者の違いが大きいため、結果を統合して単一の値にはしていない。筋肉間や人の間の線維分布の違いについて、証拠は決定的でないか、差が乏しいと整理された。[8] 健康な対照者と腰痛患者を含む研究群なので、18〜39歳の女性だけにそのまま当てはめる標準値は決められない。

このレビューでは、タイプIが占める面積は男性より女性で大きい可能性が、比較的もっともらしい知見として挙げられた。[8] それも「女性は全員、遅筋型」と人を分類する結果ではない。線維の本数による割合と、線維が占める面積による割合を区別した上での話だ。腰痛患者と健康な対照者を含む比較であり、18〜39歳の女性の運動能力の差へそのまま当てはめるには、さらに対象を絞った検討が必要だ。

遅筋の本数、線維の太さ、保持できる時間は別の数字である

多裂筋と脊柱起立筋を比較した組織研究は、この区別をよく示している。多裂筋ではタイプIの線維そのものの断面積が有意に大きかった。一方、タイプIの平均的な割合には有意差がなく、筋線維全体の断面積の中でタイプIが占める相対的な面積にも有意差がなかった。[13] 「線維が太い」と「遅筋の割合が多い」は交換できない表現だ。

断面積とは、線維を横切った面の大きさである。線維が何本あるかを数えることと、その線維がどれだけの場所を占めるかを測ることは、別の見方になる。[13] 同じ「多い」という日本語でも、数が多いのか、面積が大きいのかで結果の意味は変わる。研究紹介で割合だけが目立つときは、何の割合なのかまで戻って読むとよい。

この研究の著者らも、相対的な面積に有意差がなかったため、構造の特徴だけから両筋の機能の違いをはっきり述べることはできないとしている。[13] 多裂筋のタイプI線維が大きいことは興味深いが、それだけで姿勢を何分長く保てるかまでは分からない。「支える筋肉らしい特徴」と「実際に長く支えた結果」は同じ証拠ではない。

保持時間を直接調べた別の実験では、18〜25歳の若年群24人と55〜65歳の高年群24人が、最大の力に対して30%、50%、70%の強さで肩を上げる動作と体幹を伸ばす動作を続けた。高年群は筋力が低い一方、保持時間が長く、局所疲労の進行も遅かった。ただし年齢による違いは力の強さや測る筋肉に左右され、体幹より肩で一貫していた。各群は男女同数であり、18〜39歳の女性全体へそのまま当てはめる比較ではない。[2]

この結果を「年齢が上がるほど必ず疲れにくい」とは読まない。比べたのはそれぞれの最大の力に対する割合をそろえた条件であり、同じ重さの荷物を持って立った比較ではない。[2] 通勤バッグを持つ場面に持ち帰るなら、保持時間を比べる際は、荷物や姿勢、力の条件を一緒に記録するという使い方になる。長く耐えたという結果だけに、遅筋の証明書を付けない。

この持久力実験は、疲労後の最大の力を15分間追って回復も確認した。回復の速さには、年齢や性別による有意な影響が見られなかった。[2] 保てた時間には違いがあっても、回復の速さには対応する差を認めなかった。疲れにくさ、最大の力、疲れた後に戻る速さを、ひとつの「筋肉の質」という言葉で包まないことが大切だ。若年男女と高年男女の実験なので、18〜39歳の女性の練習間隔にそのまま当てはめることはできない。

腰部の構造と機能を整理したレビューは、不活動に伴って速い線維の選択的な萎縮が生じる可能性を述べている。これは背中の痛みがある人だけでなく、座りがちな対照者にも見られるという整理だった。[9] 腰痛のある人と座りがちな対照者を含む知見であり、18〜39歳の女性の変化へそのまま当てはめることはできない。ここから特定の種目の回数までは決めず、日常の動きや練習内容を相談するとき、遅筋を増やす話だけで済ませない視点として使いたい。

数字で読む深い筋肉の配合と持久力

15人:手術時の組織を用いて筋肉間と深さを比較した研究の対象人数である。[3]

63%:背骨の後ろの筋群におけるタイプIの割合。速筋も含んでいる。[3]

42%:同じ研究の大腰筋におけるタイプIの割合。筋肉名が変われば内訳も違う。[3]

18研究:背中の筋線維を比較した系統的レビューの採択数。対象や採取部位の違いがあった。[8]

30%、50%、70%:持久力実験で用いた、各自の最大の力に対する強度である。[2]

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