ヨガのポーズは頭の中なら速くできる?想像と実際の時間がずれる理由を読む

ヨガのポーズを頭でたどると、実際より速く終わる気がする。その時間のずれを、指や腕の動作、練習量、疲労を調べた研究から読む。想像が鮮明なことと時間が正確なことの違い、実際の動きと比べる際の注意点を整理し、頭の中の予習を速さの競争にしないための手がかりを示す。

マットを敷く前に目を閉じて、昨日のヨガの流れを頭の中で再生する。腕を上げ、体を傾け、元に戻る。思い出すだけならすぐなのに、マットの上では次の動きまでずいぶん長かった気がする。ポーズの名前は出てくる。それでも、動いていた時間まで思い出せているだろうか。

想像の時計と実際の時計にはずれが生じる。頭の中での動きが実際より遅くなる例もある。指の動作を調べた実験では、練習で想像も実動作も速くなった一方、想像する時間は実際より長いままだった。[9]

ここで扱うのは、ポーズの名前を覚えたかではなく、動き始めから終わりまでをどんな長さでたどるかだ。根拠となるのは指や腕、競泳などの研究であり、ヨガのポーズで同じ結果が出ると確定した話ではない。動作の時間を比べる視点として、マットの外での予習に持ち帰れる部分を探したい。[9][12][20]

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頭の中で動くことと、名前を並べることは違う

運動イメージとは、実際に動作を行わずに、その動作を頭の中でリハーサルすることだ。健康な若者を対象にした無作為化比較の予備試験でも、この意味で用いられている。動作を思い浮かべる能力は質問紙だけでなく、想像と実動作の時間を測る方法などで評価された。[2]

例えば「立つ、腕を上げる、下ろす」と言葉だけで確認する場面と、腕が上がり始めてから下りきるまでをたどる場面を考えてみる。前者では順序を確認している。後者で初めて、動作そのものの長さを比べる問いが立つ。記事を読み終わる時間と、書かれた動きを行う時間を同じものとして扱う必要はない。

研究で使われるメンタルクロノメトリーは、想像した動作にかかった時間を測り、実際の動作時間と比較する方法である。時間の一致は運動イメージを評価する切り口のひとつだが、時間測定と質問紙は、能力の異なる側面を見る。予備試験では、時間測定に加え、質問紙や手の左右を判断する課題、面接も組み合わされていた。[2]

ヨガの名前や種類を検索し、写真を見て形を知る作業と、その形になるまでの時間を予行する作業も分けて考えたい。見た目を想像するか動く感覚を使うかという問いは、既存記事「ピラティス初心者のイメージ練習は形を想像する?動く感覚との使い分けを読む」に譲る。ここでは再生する速さと、現実の動作の長さに焦点を絞る。

時間を測る前には、どこを始まり、どこを終わりとするかを言葉にしておくと問いが明確になる。「腕を上げる」だけでは、上げ終わった姿を思い出して終えるのか、元に戻るまでを含めるのかが曖昧だ。研究の結果を日常で考えるなら、まず比べている内容をそろえたい。速かったという感想より、どの区間をたどったかを確かめる方が先である。

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練習すれば、想像と実際の時計はそろうのか

この問いを正面から扱ったのが、参加者31人による指の連続動作の実験である。最初に実際に動かす時間と想像する時間を測り、その後3日間、動作の系列によって多く練習する条件、少なく練習する条件、練習しない条件を設けた。多い条件は各回150反復、少ない条件は各回10反復だった。[9]

訓練後には、実動作にかかる時間も想像にかかる時間も短くなった。ところが、想像は実動作より一貫して長かった。初回から最終回にかけて両者の時間差は縮まったものの、その縮まり方は練習量によって変わらなかった。練習しない系列も比較に含まれているため、最初と最後の差だけを見るのではなく、練習量を変えた系列の間で差があるかまで読む必要がある。実行も想像も速くなったという結果と、時間差の縮小が練習量に左右されなかったという結果をセットで受け取る。[9]多く反復した動きなら、時間まで自動的に正確になるという単純な関係ではなかったのである。[9]

ここには別々に読むべき結果がある。動作にかかる時間が短くなることと、想像と実動作の差が小さくなることだ。この実験では、前者には練習量による変化があっても、後者にはなかった。「慣れたから頭の中も現実どおり」と結びつけると、この実験の大事な部分が抜け落ちる。[9]

実際の動作と想像は同じ時間になるはずだ、という理論上の予測も、この結果ではそのまま成り立たなかった。研究者は両者が常に時間的に等価であるという予測の限界を指摘している。想像が現実より遅いという結果は、頭の中なら制約がなく何でも早送りできる、という見方への反例になる。[9]

ヨガへ置き換えるなら、流れを覚えた感覚と、流れの長さを正確にたどれる感覚を同一視しない、という読み方になる。ただし指の系列を反復した試験から、全身のポーズに必要な練習量は決められない。150反復という数字は実験条件であり、家で行うべき回数ではない。研究の設定を、そのまま宿題に変えないことも大切だ。[9]

速さと滑らかさでは、練習による変化が違う

時間の一致を考えると、ついストップウォッチだけを見たくなる。しかし動作の研究では、所要時間以外の指標も測られている。腕で目標を指す課題を使った実験では、実際に練習する群、想像で練習する群、練習しない群を各15人設け、動作時間や速度、滑らかさの変化を比べた。[12]

実際の練習と想像の練習は、どちらも練習しない場合より動作時間や平均・最大速度の改善が大きく、その改善は練習方法の間で同程度だった。一方、速度の山の数からみた滑らかさの改善は、実際の練習の方が大きかった。同じように速くなっても、途中の動き方まで同じにはならなかったのである。[12]

研究者は、この違いの説明として、実際に動くときに得られる感覚の情報と、それを使った途中の修正を挙げている。想像では現実の身体や環境から同じ形の情報を受け取れない。この説明は可能性として示されたものであり、滑らかさの違いの原因がすべて確定したという意味ではない。[12]

別の腕の目標指し課題でも、実際の練習とイメージ練習の後に動作時間は短くなった。ただし訓練後の成績や学習の進み方には、実際の練習の方が優れる面があった。追加の実験では、どちらの練習後にも、直後と24時間後に腕の軌道がより直線的で速くなる変化が確認された。[19]

この実験が示すのは、想像でも動作の学習に関われるという点である。同時に、現実の練習との違いも測定されている。研究者が置き換えの可能性を述べた範囲も、健康な若者が短い実動作の練習を行った後の課題である。最初から体を動かさずにヨガを習得できる、という意味には広げられない。[19]

ポーズを頭で再生して「今日は早く終わった」と感じても、それだけで動きが丁寧になったかを採点しない方がよい。速さ、途中の滑らかさ、目標に届いたかは別の欄に置いておく。腕の実験が測った指標の違いを知ると、秒数だけに合格印を押さずに済む。[12]

ここで気になるのは、実動作より長い想像を失敗と呼ぶべきか、という点だ。指の研究で示されたのは時間の差が残るという現象であり、その人が動作をまったく思い浮かべられないという判定ではない。訓練に伴って想像する時間自体は短くなっていた。変化があることと、現実と一致することを分ければ、ずれを見つけたときの受け止め方も変わる。[9]

例えば、流れの途中で次の姿勢を思い出すために止まったなら、その停止も含めて予習したのかを振り返ってみたい。逆に、完成した姿から次の完成した姿へ飛んでいたなら、その間を動作としてたどったかを問い直せる。これは速さを改善する手順ではなく、何の時間を比べていたかを明らかにするための確認である。時計の数字を眺める前に、再生した内容へ戻る余地を残しておく。

研究の読み方にも同じ確認が要る。指の連続動作と、腕を目標へ伸ばす課題では、動かす場所も求められる正確さも違う。指の研究の時間差と腕の研究の滑らかさを、同じ人の同じ変化のようにつなげてはならない。別の課題がそれぞれ何を明らかにしたかを持ち寄ることで、速さだけでは練習を語れない理由が見えてくる。[9][12]

数字で読む想像と実動作の時間

31人:指の連続動作について、想像と実行の所要時間を比べた実験の参加者数である。[9]

3日間:指の動作を実際に訓練した期間である。訓練後も想像の方が長かった。[9]

150反復と10反復:各回の訓練量を変えた条件であり、ヨガの推奨回数ではない。[9]

各15人:腕の課題で実練習、想像練習、練習なしを比較した各群の人数である。[12]

100回:腕の動きを連続して想像した実験で、参加者が精神的な疲れを訴えた時点の反復数である。[17]

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