ダイエット中、扱える重さは増えたのに筋肉量が増えない。そのずれを、エネルギー不足と筋トレを調べたメタ分析から読む。筋力と除脂肪量、筋肉を増やすことと保つことの違いを整理し、食事をさらに減らしたり運動量を増やしたりする前に、研究の数字から確かめたい点を示す。
筋トレの記録には、前より重い負荷を扱えた日が増えている。夕食を軽くする生活も続いている。それでも体組成の数字は動かない。「筋肉が増えないなら、もっと食べる量を減らそうか」。そこで進む向きは、いったん考え直したい。
エネルギー不足の状態で行う筋トレをまとめたメタ分析では、不足のない条件より除脂肪量の増加は妨げられた一方、筋力の伸びには統計的に明確な差が認められなかった。食事を減らす影響は、体の量と発揮する力で同じではなかったのである。[7]
したがって、筋力が伸びたから食事は十分とも、筋肉量が増えないから筋トレは無意味とも決められない。この記事では、減量中に「増やす」「保つ」「力を伸ばす」を分けて考える。筋トレの成果を、体重計だけに採点させる必要はない。[7][9]

食事を減らすと、何の伸びが鈍るのか
ここで扱うエネルギー不足とは、消費に対して摂取するエネルギーが不足した条件である。Murphyらの系統的レビュー・メタ分析は、そうした条件で少なくとも3週間の筋トレを行った無作為化比較試験を集めた。筋トレをしながらエネルギーを不足させた条件と、不足させなかった条件の違いを調べている。[7]
直接比較できる研究を統合した解析では、除脂肪量の増加に対する効果量は−0.57だった。これは不足のある条件で増加が小さかったことを示す、共通の尺度に換算した差であり、減った筋肉が0.57kgだったという意味ではない。一方、筋力の効果量は−0.31で、条件間の差は統計的に有意ではなかった。[7]
この違いは、減量中の記録を読むときの土台になる。筋肉を増やす目的で始めた人なら、重量が伸びていても、エネルギー不足が量の増加を妨げている可能性を考える。脂肪を減らしながら筋肉を保つ目的の人なら、量が増えていないことだけで失敗扱いしない。同じ結果でも、最初の目的によって評価は変わる。[7][9]
ただし、筋力への影響がまったくないと証明されたわけではない。「有意差がなかった」は、調べた研究を統合したときに明確な差を確認できなかったという読み方になる。どれだけ食事を減らしても力が伸びる、という許可証にはならない。[7]
研究者らは、除脂肪量を増やしたい人に長期のエネルギー不足を避けるよう述べている。また、減量中に除脂肪量を保ちたい場合にも、1日500kcalを超える不足を避けるよう提案している。この数値は、全員がそこまで減らしてよい上限や、個人に処方された食事量ではない。[7]
仕事帰りに主食を抜き、翌日の運動を追加する。その変更を、筋肉を育てるための工夫と呼んでよいかは別問題だ。減量と筋肉量の増加は、いつでも同じ操作で進む目標ではない。まず何を優先する期間なのかを言葉にするほうが、食事をさらに削る判断より先である。[7][9]
メタ分析の中にも、比較の確かさには段階がある。Murphyらは、同じ研究の中にエネルギー不足のない比較群がある試験をまず統合した。それとは別に、そうした比較群のない試験を、参加者や介入の特徴が近い他の試験と対応させて検討している。後者も除脂肪量の増加が妨げられる方向を支持したが、同じ試験内で条件を分けた比較と、別々の試験を組み合わせた比較を区別して読む必要がある。[7]
さらに、不足の大きさと除脂肪量の関係を検討するため、研究全体のデータを使ったメタ回帰も行われた。これは複数の研究で見られた関係を調べる解析であって、個人の食事を少し変えたときの反応を直接測るものではない。研究者の数値的な提案を、自分の夕食から引く量にそのまま換算しない理由はここにもある。[7]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
筋力の数字と除脂肪量は、同じ成績表ではない
筋力は、研究では膝を伸ばす力や重りを扱うテストなどで評価される。一方、除脂肪量は体組成の指標であり、その増減を骨格筋そのものの増減と同一視することはできない。体組成の変化と、筋力・身体機能の変化を分けて評価する必要があるという論点は、2型糖尿病や肥満の薬物治療による減量を扱うレビューでも強調されている。治療を受ける人の知見を18〜39歳の女性全般へ直接当てはめるには、治療条件の違いを考慮する必要がある。[2][20]
この区別が見えるのが、過体重・肥満のある65〜79歳の男女126人を対象にした無作為化比較試験だ。参加者は5か月間、週3日の漸進的な筋トレを行い、減量のための食事介入を加える群と、加えない群に分かれた。負荷を段階的に進める筋トレのもとで、食事介入の有無を比較した研究であり、18〜39歳の女性の筋肉づくりへ結果を直接適用するには対象が異なる。[20]
除脂肪量が減ったのは食事介入を加えた群だけだった。しかし、膝の筋力やパワー、歩行速度の改善は両群で同程度だった。さらに長い距離を歩く時間など、一部の移動能力では食事介入を加えた群に良好な結果が示されている。量の減少を、そのまま全機能の悪化へ置き換えることはできない結果である。[20]
この試験で注目するのは、「量が減った」と「力が落ちた」を分けて測っている点だ。食事制限の推奨として読むより、量と機能を別々に評価する研究の設計に目を向けたい。[20]
自分の記録にも、この分け方は使える。扱った負荷と回数は運動の記録として残し、体組成の表示とは別に読む。片方が良くなった日に、もう片方まで良くなったと推測しない。研究でも別の項目として測られているものを、日常のメモで無理にまとめなくてよい。[7][20]
既存記事「痩せ型の女性の筋トレは食事を増やすべき?余るエネルギーと筋肉の成長を読む」が扱うのは、食事を増やす側の問いである。こちらでは、減らしている間に筋力と体組成の読み方をどう分けるかに焦点を絞る。
筋トレのみと食事制限つきでは、期待する変化が違う
過体重・肥満のある人を対象としたLopezらの系統的レビュー・メタ分析は、114試験、計4,184人のデータをまとめている。筋トレのみ、筋トレと有酸素運動の併用、食事制限を含む方法などを調べ、それぞれを運動などの介入をしない群と比較した研究である。対象は年齢・性別に幅があり、18〜39歳の女性だけの結果として使うには範囲が広い。[9]
筋トレのみの条件では、介入しない群に比べて除脂肪量が平均0.8kg多く増加した。95%信頼区間は0.6〜1.0kgである。体脂肪量は平均1.0kg少なかった。これらは対象となった研究をまとめた値であり、筋トレを始めた人の体に必ず同じ増減が起こるという予測値ではない。[9]
筋トレに食事制限を組み合わせた条件では、体脂肪量の差は平均−5.3kg、95%信頼区間は−7.2〜−3.5kgだった。一方、除脂肪量の差はおよそ−0.3kgで有意ではなく、著者らは維持されたと評価している。脂肪を減らす変化の大きさと、除脂肪量を増やす変化の大きさは、同じ順番に並ばなかった。[9]
ここで、筋トレだけより食事制限つきのほうが誰にでも優秀、と順位を付けるのは早い。それぞれの数値は、何もしない対照群との比較を含む統合結果である。すべての参加者が同じ条件で、食事制限の有無だけを競った単一の試験ではない。体脂肪の減少を求めるか、除脂肪量の増加を求めるかによって、注目すべき数字も変わる。[9]
筋トレのみの平均値にも、対象の幅が含まれる。過体重・肥満の成人を対象にした別のメタ分析では、若い成人のほうが高齢の参加者より除脂肪量の改善が大きく、男性と女性でも体組成への反応に違いが見られた。運動の期間、量、強度といった用量は、体組成変化との有意な関連を示さなかった。18〜39歳の女性に当てはめる際も、体格や食事条件を含む対象の違いを確認する必要がある。[8]
したがって、「筋トレのみでダイエットした女性」という検索語だけでは、期待できる変化は決まらない。今回の統合結果を使えるのは、過体重・肥満を対象にした研究でどんな変化が見られたかを知るところまでである。自分と異なる対象の平均を達成できないからといって、食事や運動の努力が足りないという判定にはならない。[8][9]
数字で読む食事制限と筋トレ
エネルギー不足あり対なしの除脂肪量の効果量:−0.57。増加が妨げられた方向の差であり、kgの値ではない。[7]
同じ比較での筋力の効果量:−0.31。統計的に明確な群間差は認められなかった。[7]
過体重・肥満を扱った統合研究:114試験、4,184人。健康な若い女性だけを集めた解析ではない。[9]
筋トレのみの除脂肪量:対照群との差は平均+0.8kg、95%信頼区間0.6〜1.0kgだった。[9]
肥満のある高齢者の食事制限への筋トレ追加:除脂肪量の群間差は0.819kg、区間は0.364〜1.273kgだった。[17]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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