ダイエット中のワインは運動後でもよい?晩酌と筋肉の回復を分けて読む

ダイエット中、運動後のワインやハイボールをどう考えるか。筋肉をつくる反応と翌日の筋力・筋肉痛では、飲酒の研究結果が異なる。女性を対象にした比較試験と系統的レビューから、飲酒量、食事、水分補給の条件を読み解き、晩酌を回復のご褒美にする前に確かめたい点を整理する。

スクワットを終えた夜、夕食の皿の横にワイングラスを置く。今日は脚をよく使ったから、ご褒美に飲もうか。ダイエット中ならハイボールを選ぶべきか。栓を開ける前に気になるのは、明日の筋肉痛と、今夜の筋肉づくりへの影響である。

答えの芯は、筋肉をつくる反応と、翌日に力を出せることを分ける点にある。筋トレ後の飲酒を扱う系統的レビューでは、筋たんぱく質合成の速度が低下する一方、筋力や筋肉痛には変化が見られないという結果が整理されている。体感がいつも通りでも、筋肉の中の反応まで同じとは限らない。[12]

ただし、飲んだら運動が全部無駄になる、という結論でもない。女性の比較試験では、運動後にアルコールを摂取しても、その後の筋力回復に有意な違いが見られなかった。[16][19] ワインを悪者にするより、何を回復の指標とし、誰に、どんな運動と飲酒条件で確かめたかを読むほうが、今夜の判断に役立つ。

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「回復した」は筋肉痛だけでは決まらない

階段を下りても脚が痛くない。買い物袋を持っても腕が重くない。日常では、こうした感覚が回復の目安になる。一方、研究で調べる回復には、力を出す能力、痛みの感覚、血液の変化、筋肉をつくる反応などがある。飲酒の影響をまとめた研究も、生物学的な指標と身体機能、認知機能を分けて扱っている。[12]

筋たんぱく質合成とは、筋肉のたんぱく質をつくる働きである。筋肉量は、つくられる分と分解される分の釣り合いに関わる。筋トレと栄養、アルコールがその調整にどう作用するかを論じたレビューは、この合成と分解の両方を出発点にしている。[6] 運動直後の体重や見た目だけを眺めても、同じ問いには答えられない。

筋力は「今、どれだけ力を出せるか」という機能の指標だ。筋たんぱく質合成は、筋肉をつくる側の反応を調べる指標である。筋肉痛は本人が感じる痛みだ。これらを同じ意味の「回復」に入れてしまうと、ある指標に差がなかったことが、すべてに差がなかったように読めてしまう。系統的レビューで結果が分かれたことこそ、この区別が必要な理由である。[12]

たとえば、翌朝に普通に歩けたという経験は、歩くときの自分の様子として大切にしてよい。ただ、その経験を根拠に「飲んでも筋肉づくりには影響しない」とまでは広げない。反対に、合成への影響を読んだだけで「昨日の運動で得たものはすべて消えた」と決めるのも、別の指標への飛躍だ。[6][12]

体重との関係は、既存記事「お酒とダイエット、アルコールが体重に関わる3つの経路と晩酌の見直し方」に譲る。ここで扱うのは、食事や運動のあと、筋肉の回復という窓から晩酌をどう見るかである。体重を減らすことを全員の目標に置く必要もない。動く習慣を続けたい人にとっても、指標を混ぜない読み方は使える。

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筋肉をつくる反応には飲酒の影響が見える

筋トレ後の飲酒を調べた2019年の系統的レビューでは、12研究が対象となった。そのうち10研究が生物学的な機能を、10研究が身体機能を、1研究が認知機能を測っていた。同じ研究で複数の種類の指標を測ることがあるため、分類の数を足して研究の総数と考えてはいけない。[12]

レビューの結論では、筋力、パワー、筋持久力、筋肉痛、自覚的な運動のきつさは、飲酒によって変わらないと整理された。一方で、コルチゾールは増え、テストステロン、血中アミノ酸、筋たんぱく質合成の速度は低下する傾向が示された。[12] 「翌日に動けた」という結果だけを抜き出すと、後者の変化を見落とす。

ここでのポイントは、複数の指標の変化を、ひとつの大きな効果量にまとめないことだ。ホルモンの変化を読んで、そのまま筋肉が減る量を計算することはできない。血液の変化と合成の反応、実際に出せる力は、それぞれの測定結果として扱う。レビューは筋肉づくりに関わる変化を示しているが、今夜の晩酌から将来の体型を占う計算式ではない。[12]

反応の仕組みを考える手掛かりになるのが、筋細胞内の調整経路だ。2022年のナラティブレビュー、つまり研究を整理して論じる総説は、筋たんぱく質の合成と分解に関わる「mTORC1」という細胞内の情報伝達経路を扱っている。栄養や筋トレがこの経路の働きを調整し、急性のアルコール摂取はその働きを妨げる方向に作用すると整理している。[6]

ただし、この仕組みも一律ではない。総説が扱う研究はモデルや性別がさまざまで、18〜39歳の女性に同じ反応の大きさをそのまま当てはめることはできない。食事、トレーニングの経験、アルコールの量によって影響が変わり、筋肉をつくる刺激がアルコールによる抑制を部分的に和らげる場合がある。[6] 「筋肉のスイッチが完全に切れる」と表現すると、こうした条件の違いが消えてしまう。

食事に関わる条件が結果を変えることと、たんぱく質を食べれば飲酒の影響を帳消しにできることは、同じではない。総説の表現は「部分的に」である。[6] 夕食にたんぱく質のある料理を選ぶことを、追加の飲酒を許可する証明書にしないほうが、研究の意味に沿っている。食事は食事、晩酌は晩酌として予定を考えるのが自然だ。

女性の筋力回復では「差がない」試験もある

女性を対象にした2017年の無作為化比較試験は、筋トレを趣味として行っている13人に、片脚の膝を伸ばす強い運動を行わせた。筋肉が伸ばされながら力を出す運動を300回行い、その後にアルコールかプラセボ、つまり比較用の飲み物を摂取する条件で調べている。アルコール量は除脂肪体重1 kgあたり1.09 gであった。[16]

除脂肪体重とは、脂肪を除いた体の重さを指す。ここでは試験の投与量の基準を読み分けるために使う言葉であり、家で飲む量の目標ではない。この試験では、体重全体あたりの量ではなく、除脂肪体重を基準にアルコールが与えられた。[16] 数値だけを別の研究と横並びにすると、同じ基準の量だと誤解しやすい。

運動した脚の力は、飲み物の条件にかかわらず24時間後に低下した。筋肉が縮みながら膝を伸ばす測定では、運動前の127±7 Nmから24時間後の106±6 Nmとなった。ここでNmは回す力の単位であり、値は平均と標準誤差で示されている。[16] 飲酒群だけが下がった数字ではなく、運動後の変化として読む必要がある。

48時間後には、動かさずに力を出す等尺性の測定で回復が見られ、伸ばされながら力を出す測定では部分的な回復が見られた。アルコール摂取は、調べた炎症反応の能力と筋機能の回復に影響しないように見えた、というのが試験の結論だ。[16] 同じ脚でも、力の出し方によって回復の経過は違っていた。

炎症についても、何を測ったかを確認したい。この試験は血液を運動前と運動後に採り、刺激を与えたときのサイトカイン、つまり炎症などの反応を伝える物質の産生を調べている。運動による変化はあったが、飲酒はその反応に影響しなかった。[16] これは調べた条件での炎症反応の能力の話であり、「飲酒しても体の炎症はすべて変わらない」と読み替える結果ではない。筋力の測定と血液の測定を合わせても、結論は測った範囲に沿って受け取る。

別の2017年の無作為化クロスオーバー試験では、若い女性8人が、太ももの筋肉を伸ばしながら力を出す運動を300回行った。同じ参加者が、運動直後に体重あたり0.88 gのアルコールを飲む条件と、同じエネルギー量のプラセボを飲む条件を経験している。[19] 同じ人の異なる条件を比較する設計であり、単に別々の人の生活習慣を比べた研究ではない。

この試験は運動後36時間と60時間の筋力などを測定し、飲酒による回復への有意な影響を認めなかった。ただし、動かさずに力を出す測定では、処置と時間の組み合わせに関する検定がp=0.077で、有意差に近い結果として報告されている。[19] 「差が検出されなかった」と「完全に同じと証明された」を分けて読む姿勢がここでも必要だ。

両試験の限界はここにまとめておく。対象は13人と8人の女性で、特定の強い運動と飲酒条件での短期の回復を測った試験である。18〜39歳の女性が日常のヨガや筋トレのあとに飲む場面へ、結果を一律に当てはめることはできない。[16][19] また、測ったのは筋機能や炎症反応などであり、長期の筋肉量の変化を直接比較した結果ではない。したがって、今回の筋力の結果と、合成速度に関するレビューの結果は、答える問いを分けて並べる。[12][16][19]

数字で読む飲酒と回復

12研究:筋トレ後の飲酒と回復をまとめた系統的レビューの対象数である。[12]

13人:筋トレ経験のある女性を対象に、筋機能と炎症反応を調べた試験の参加者数だ。[16]

1.09 g:女性の試験で用いた除脂肪体重1 kgあたりのアルコール量で、推奨量ではない。[16]

8人:若い女性が飲酒とプラセボの両条件を経験した試験の参加者数である。[19]

36時間・60時間:若い女性の試験で、運動後の筋力を測定した時点だ。[19]

16研究:ビールと運動の系統的レビューが整理した研究数である。[13]

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